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桜庭一樹の最新作。暫く新刊が出ていなかったような気がするが、そうでもないのかな?
『暴君』と『脂肪遊戯』に覚えがあって初出を確認したら、『異形コレクション』の収録作だった。単行本になって何よりだ(〝異形コレクション〟自体も新作が出て欲しいのだが……)。
その他の短編は、全体的にホラー調というか、読後にちょっと薄ら寒くなるもの、という印象。特に『SF Japan 2005 WINTER』初出の『A』が、良い感じのホラーSFだった。
また、『ロボトミー』の、主人公と妻の関係性、妻とその母親の関係性も、これ、相当怖いよね……。
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久しぶりの桜庭一樹はやはりとても面白かったです。ひとつひとつの物語が生温かでぬめぬめとした甘さでもって絡みついてくる。甘い気持ち悪さ。
「なんかいやだなぁ、この人たち、なんかすごく変だし気持ち悪いしいやだいやだ」と思っているはずなのに、なんとも離れがたい。魅力的、とはちがう、なんでしょう、この引っ張られるような飲み込まれるようないやさは。
本当はものすごく純粋でけなげな何かを必死に守ろうとして、化け物じみた狂気をまとっているような。どこかでこの破滅を求める狂気に同化しようとしている自分もまた気持ち悪いヤツなのかもしれません。
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桜庭一樹さんの七編からなる短編集。彼女らしさは随所に見られるが、どの短編も、作品としてはイマイチかなと感じてしまう。
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みんなの愛玩動物、由美子ちゃんセンセと一緒にわたしは退屈な放課後から逃げ出した-。表題作のほか、「砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない」の後日談「暴君」「脂肪遊戯」など全7編を収録。
「じごくゆきっ」や「脂肪遊戯」など10年以上前に書かれたものから2014年の作品までバラエティに富んだ短編集。過度に感傷的な文章の中にハッとする表現がある初期の作品の魅力は再確認できるのだけれど、1冊の短編集としての魅力はどうか?
(C)
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『砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない』の後日談を含む全7編。
山田なぎさのいる世界。海野藻屑のいない世界。
今日も世界は残酷で、絶望した子供たちは、それぞれの弾丸で世界に抗う。著者10年間の軌跡。
アンソロジー収録作品と単行本未収録・未刊行作品で、ほぼ読んでいたけど、まとめて読むとまたいい感じだなぁ~。
桜庭一樹という人の書きたいものが詰まってる感じ♡
「ロボトミー」好きだな。切なくて、哀しくて、怖くて。
ほんとうの女の子と大人になりきれない女の子のふわふわとしたピンク色とドス黒さ!桜庭一樹の書く少女たちの世界にまたもや魅了されてしまう私なのでありました~!!!
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どうしようもない大きな力と戦う人たちの物語でした。切なかったり、苦しかったりしました。
『暴君』
“罪で神に近づくことを欲する(p41)”魂が眠っていた少女が大人になり、事件は起きてしまいます。特別な人間は羨ましいけれど、平凡で愚民、それでいいのです。
『ビザール』
過去を忘れて、未来に生きていきたい、幸せになりたいと思う主人公ですが、それで幸せなのか、もやもやした気持ちが残りました。
『A』
二千五十年代、アイドルは存在しなくなります。しかし、“アイコンの神”とよばれる力にとり憑かれた老女Aが、電気ジャックを埋め込まれ、若く美しい体を持つ生きた死体Bと接続されることにより、アイドルが復活します。けれども、事件が起こったせいでAの接続は切られ、消えてしまいます。アイドルの力を持った老女の、せつない物語でした。
『ロボトミー』
まず、娘ユーノを愛しすぎているお義母さんを恐ろしいと感じました。そして、脳腫瘍のため記憶障害を患ってしまった元妻のユーノに、「お義母さんは死んだ」と伝え、反応を楽しむという虐待を行う主人公を恐ろしいと思いました。
ユーノは、ずっと過去にいて、楽しそうですが、かわいそう、と思ってしまいました。ユーノと主人公の関係性が、不思議でした。
『じごくゆきっ』
みんなの愛玩動物由美子ちゃんセンセとわたしが、ある日かけおちします。一年C組にとってアイドルの由美子ちゃんセンセとふたりっきりでいるわたしは、夢の中だと感じます。由美子ちゃんセンセにとっては、相手はだれでもよかったのです。二人は現実に戻ってしまいますが、思い出の力は残っています。
『ゴッドレス』
主人公は、父の香さんからコントロール、支配されてきて、なかなか逃げられません。量産型暴力男の香さんが、憎い、けれど愛しいのは、“香さんに愛されて暮らすのは、自分の意思のない生活を送ること”で、“辛いけど甘い日々だった”(p257)からなのかなと思いました。
『脂肪遊戯』
脂肪に守られた紗沙羅は、不幸の素とともに主人公を魅惑し続けた特別性も失います。紗沙羅が生きるため食べ続けていたことを知ると、胸が苦しくなりました。
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初出は2013〜16年「小説すばる」ほか。
7短編。
久しぶりの桜庭作品。
最初の「暴君」と最後の「脂肪遊戯」だけが 巨漢の少女がいる同じ場所で書かれている。
ビザールのハンドルネームで実社会での建前的生活と違う発言をするOL、かつてアイドルだった老婆に宿るアイドルのアイコン、親や家族を知らない青年とその妻で母親に溺愛され続けて結婚生活を壊された歌手、愚かでかわいいと生徒から思われている女子高の副担任と副委員長、ゲイの父親の暴力支配から脱したい娘。
みんな歪んでいて、その歪みに苦しんでいる。
だが作者によってデフォルメされて強調された歪みは、わたしたち人間のもつ歪みではないのか。作者の視点はそこにあるような気がする。
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2017/7/26
the 桜庭一樹ワールド。
もったり胃もたれしそうな、どこかに連れて行かれそうな。
「暴君」一家心中を一人だけ免れた三雲くん、助けてしまった金堂さん
「ビザール」
「A」アイドルとは
「ロボトミー」みなしごと仲良し母娘
「じごくゆきっ」読んだことあるんだけどなにかに収録されてた?
「ゴッドレス」
「脂肪遊戯」太ることで自分を守る
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初読。図書館。桜庭さんお得意の少女たちの短編集。重い過去にとらわれながらも、真っ直ぐではないけれどもなんとか生きのびようとする弱くて強い生き物。単純に愛おしい存在とは言い難いが、見捨てることができない女の子たちの物語。楽しい読後感とは言えないけど、また手に取りたくなる。
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桜庭さんの描く大人になる前の子どもたちの姿が好きだから、「暴君」と「脂肪遊戯」が好きだった。「ロボトミー」と「ゴッドレス」は怖い。追い詰められて精神がやられていっちゃう感じが。「ロボトミー」の母親なんて、こんな人いないと言えないのが余計に恐怖に感じる。「あっ、おかえりぃ。タカノ」って言葉が悲しいな。
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★2017年9月18日読了『じごくゆきっ』桜庭一樹著 評価B
短編7編。うち最初と最後の2編は関連性あり。
相変わらず、ややダークな桜庭小説全開。「ロボトミー」が中では一番印象に残るかな。正直このレベルの短編集だとすれば、金を出して買う気にはとてもなれない。製鉄天使のような長編でしっかりした構想に基づいた作品を彼女には望みたい。
「暴君 」 いつものハチャメチャさと弾けたおどろおどろしい内容で始まる田舎の地方都市に住む女子中学生の一編
「ビザール」普通のOLが普通の人生を歩もうとして、はまり込みそうになる人生の隘路を辛くもずるく抜け出す顛末
「A」50年前のアイドルAは有る事件を起こして、アイドルをやめさせられるが、その後50年間アイドルは出現しなかった。アイドルの出現を画策して有るプロダクションがアイドルBをデコイに、アイドルAから電気的にBをコントロールするが、、、
「ロボトミー」元4人グループのメインボーカルだったユーノと結婚した僕だったが、彼女の母親の娘に対する異常な愛から結婚生活は破綻していく。
「じごくゆきっ」都立女子高生の由美子は、ある日その高校の先生とひょんな事からじごくを目指して旅行に出てしまうのだが、、、
「ゴッドレス」イケメンの中年父は暴力的ゲイ。娘ニノは幼少からの暴力に精神は破綻。父は、現在の愛人勉と暮らせる身勝手な提案をニノに持ち込む。
「脂肪遊戯」再び最初の短編の女子中学生とその近所の男子中学生のお話。メチャクチャな幻想の中学時代から次第に大人になっていく中学生3人。
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だいぶドス黒くて、時々優しい。
だけど切なくてページをめくる手が止まらなくなる。
桜庭さんの書く小説は、
いつも後味が甘くて苦くて複雑なのだ。
ここに出てくる『愛』の様なものは、私が知っている愛とはだいぶ違うのだけれど
小説の登場人物たちが、これは愛だと信じて言い張ると、
もしかしたら愛ってものすごくドス黒いものだったかもしれないと
恐ろしいことに思えて来てしまうのだ。
親の愛も、男女の愛も、師弟間の愛も
なんだか怖いぞ。。。ゾゾゾ・・・
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脅威だった存在がいなくなったと思ったら、今度は今まで無視してきた自分の歪みが牙をむく。自分も周囲の人も気持ちよく幸せに生きていくためには、いったい何をどうすればいいのかな。
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かわいいかわいい由美子ちゃんセンセ。こどもみたいな、ばかな大人。みんなの愛玩動物。そんな由美子ちゃんの一言で、わたしと彼女は、退屈な放課後から逃げ出した。あまずっぱじょっぱい、青春譚――「じごくゆきっ」。
ぼくのうつくしいユーノは、笑顔で、文句なく幸福そうだった。あのときの彼女は、いまどこにいるんだろうか。ユーノのお母さんの咆哮のような恐ろしい泣き声。僕はユーノにも、その母親にも追い詰められていく――「ロボトミー」。
とある田舎町に暮らす、二人の中学生――虚弱な矢井田賢一と、巨漢の田中紗沙羅。紗沙羅の電話口からは、いつも何かを咀嚼する大きくて鈍い音が聞こえてくる。醜さを求める女子の奥底に眠る秘密とは――「脂肪遊戯」。
7編収録の短編集。
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文章はごく淡々としているのに、描かれていることはいずれもどろどろしていたり、身勝手だったリ、屈折していたりと、思わず逃げ出したくなるような事々なのである。淡々と書かれているからこそ、逃げたいのに逃げることのできない心のもがきが増幅されるような気がする。心が悲鳴を上げるとき人が取る行動が、どれほど解決からかけ離れているかということも、改めて思い知らされる。どんよりした読後感を引きずる一冊でもある。
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桜庭一樹感満載の一冊。どんどん引き込まれる。どの短編もそれぞれ面白かった。心が壊れている表現が絶妙。
暴君は、田舎での一家心中の事件。主人公の同級生の陸の家の一家心中の現場に居合わせ、生き残った陸との繋がりと別れ。
他人の母親のことを「クソばばあ」と表現し続けるのにも、闇の中でもがき変わってしまう人への哀愁にも惹かれた。文章や陸との会話にとても引き込まれる。
一番好き。
ビザールは、トラウマだらけの過去に消えた故郷と同郷の狂ったおじさんとの恋とも言えない依存。理解はできないし怖いけど、やっぱり沁みる。
Aは、アイコンの神といわれる過去の栄光のアイドルを人格だけ別の女の子に移した話。不思議だけど面白い。社会性が高くて考える作品。丁度読んでいた時に安室奈美恵が引退発表をして、ビックリ。
ロボトミーは、家族のいない男が母親に溺愛されている美女ユーノに暴力を振るって離婚するが、母親に翻弄され続け後に記憶障害を患っているユーノと再開する。母親がひたすら気持ち悪くてうざいけど、男の心も分からないけど、読み進んでしまう。
じごくゆきっは、女子高生が子どもみたいな先生と失踪する話。先生が終始謎だしずるいけど、翻弄される女子高生の気持ちは沁みる。恋なのか、誰かに愛されたい、愛したい欲求の芽生えなのか…。大人であって大人でない女の子たち。
ゴッドレスは、ホモの父親に虐待され続けた女の末路。それでも振りほどけない父親との関係。レズの恋人に暴力を振るわせたり、心が壊れている様が見事。父親がクソ野郎すぎてイライラする。理解はできないけれど、引き込まれる。
脂肪遊戯は、暴君の時に出ていた元美人巨漢女のしゃさらの幼馴染の男の子の話。心が壊れた女の子。自分を守るために太り続ける女の子。自分を守るために自分を狂気で固める女の子。
どの話を引き込まれる、当たりの短編集だった。言葉、文章がとても沁みる。