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面白すぎてやや狼狽しているところだ。
ドイツ知識人の頭脳と呼ばれ、日本では『数の悪魔』がロングセラーになっているエンツェンスベルガーの経済学の本。
お国柄が出ているのだろうか。東西統一という歴史を持つドイツならではの現実主義的なお金の本だ(例1 「嫉妬で人殺しする者は、どこにでもいる経済の犯罪者とくらべると、純粋無垢の天使なのだ」 例2 「金持ちは自分たちだけでいるほうが好きだからね」)。資本主義を疑い、信用しないお父さんなども出てくる。
お金というものがどうして使われるようになったか、その歴史的変遷、お金の不可解さ(時間とは何かと聞かれたアウグスティヌスが、その質問をされないかぎり時間とは何か知っているのに、もっと詳しく教えてと言われると、誰も時間とは何か説明できないと答えたが、お金についてもまったく同じだ、という例もエレガントで見事)
社会の仕組み、人間というものの本質についても考えさせられる記述が多い(例 誰かを助けようとするなら、その人のことを本気になって考えなくちゃ。でないと、その人が何を本当に必要としているか、分からないじゃない。・・・自分のことをスーパーマンみたいだと思っているだけでしょ。・・・実際に人助けしようなんて気はない。ファビアンが見ている人はみんな、アリみたいにちっぽけなのよ。みんなが殴り合ったり、お金を奪い合ったりしているのを見て、お腹をよじって大笑いするわけでしょ)。
「大切なことは、お金で何をするつもりかではなく、お金が私に何をするのかなのだ」など哲学的な言葉が出てくるのも魅力だ。
「哲学者たちは富を軽視した。それは、貧困による屈辱からみずからを守るための策略だった」など、お金にまつわる名言がページの右下に収められているのもまた楽しい。
控え目だけど心にじんわりと沁みてくるイラストも味わい深い絵物語。
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内容は社会とお金についてフェおばさんが3人の子供たちにお話をする内容。核心的な事やフェおばさんの手帳の中身が公開されなかったのでガッカリ。
あと、ドイツ語の原書にカラーイラストと写真がふんだんに使われているそうなので、原書版を読んでみたい。
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資産家のフェおばさんが3人の孫に自分の経済観念、経験を日常生活を通じて教示する内容になっている。フェおばさんは未亡人で同居家族はいないようで、一時は他人の策略などで財産を失いそうになるが、お屋敷だけは取り戻す。しかしながら最後は誰に見守られる事なく亡くなる。信頼できる親族がいないことは悲しいけど事という感想を持った。
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借りたもの。
富豪と思しき老女・フェおばさんと、3人の子供たちとの会話から、お金との付き合い方を考える本。
何か、具体的な資産運用の話をするのではない。
そもそもお金とは何なのか――?
それは“信用”(額面に見合う価値がある)という抽象的な概念である。
その“信用”が無ければ、硬貨も紙幣も安物の金属と紙きれでしかない。すなわち、価値が無い。
社会生活の中で、あらゆる物・事にコスト――対価――は発生し、無料というものは存在しない。(その場合、何か権利を提供、売っているようなもの)
貧富の差が無くなっては安いものは存在しなくなる、ネズミ講は上層部だけ儲かるといった、“お金の悪魔”を赤裸々に語る。
ページの隅には、そのページのエピソードに言及されている事象を端的に表した先人たちの格言などが書かれている。何かと思ったら、最後にフェおばさんの手帳との関連が示唆されている。
物語としても、フェおばさんは何者なのか――その財産の由来と、どうなってゆくのか――というミステリーとしても読める。
高齢な女性なので、遺産相続に絡んで事件が起こってしまうのではないか?など……
登場人物も、真面目に働いていてもお金に悩む中産階級に焦点を当てている点、親近感があるのではないか?
主人公の母親が、「割引セール」というお得感に騙され浪費している点など、身近に潜んでいる“お金の悪魔”を垣間見る。
第一次大戦後、ハイパーインフラを経験した国だけあって、ドイツ人のお金の歴史観、哲学を知る良い本だった。お金についての、普遍的な物語である。
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ドイツ人の詩人である著者が物語を通してお金の歴史や経済についてのことについて書いた一冊。
大金持ちのフェおばさんと3人の子供たちのやり取りからお金について色々と考えさせられました。借金や景気、貧困などフェおばさんの人柄と共にお金に対しての考え方を身につける事が出来ました。
本書には明確に答えというものはなく、読む人によって感じ方は異なるものでら何度も読んでお金の1つの世界観を感じるというものだと思いました。
またドイツについての知識も得る事ができた一冊でした。
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年収300万円で楽しく幸せに暮らす人もいる。
どれだけ稼いでも、不安でもっともっとと
何かに追われている人もいる。
不足すれば不幸なんだろうけど、
あればあるほど幸福かと問われたら、
どうやらそうではなさそうだ。
お金。
かくも悩ましく魅力的で得体の知れないもの。
多分、手段に過ぎないのに、
いつの間にか目的にすり替わっているもの。
お金が悪いんじゃなくて、
問題は使う人の側にあるのだろうけれど、
お金に汚さや狡さや、
良くないイメージがつきまとうのは残念。