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サマセット・モームのスパイ小説が新訳で登場。
岩波文庫版と創元推理文庫版を持っているので、『アシェンデン』に関してはこれで3冊目となる。
スパイ小説というと手に汗握るアクションや謀略を想像するが、本書に関して言うならば、そういう如何にもといった道具立ては登場しない。寧ろ解説にもあるように、『人間ドラマのおもしろさ』を楽しむ小説だと思う。
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どこをきってもモームはモーム。
期待したほどハードボイルドでなくて、でもやっぱり安定の面白さだった。
スパイ的な要素は、政治的事情により書けなかったこともあるのだろうが、
それよりもモームは人間を描きたかったのかと思う。
スパイではなくて、根っからの小説家だ。
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短編の名手、そして「月と六ペンス」のイメージの強いモームであるが、こんなに娯楽性の高い作品があったとは。
ゴダード1919三部作も思い出す。
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第一次大戦中,モームは実際にイギリスのスパイだった.その時の体験を踏まえて書かれた小説.
ここに描かれてあることの,どこまでが実話でどこまでが虚構なのかは分からないが,ロシアを舞台に工作をしていたのは事実らしい.恐らく,事実を背景として借りてきて,そこに細やかに描かれた人物を重ね置くことによって,小説として創作されていると思われる.
もちろんモーム自身が主人公なので,アクションは全く無く,情報を集める,偽情報を与えることが諜報活動であり,モーム的な可笑しいエピソードも挟まれつつも,巻末に近づくにしたがって,徐々にトーンが緊迫してゆく.いや,連作であるのだが,後半にゆくにしたがって短編の緊迫度がましてゆき,最後はロシア革命に巻き込まれた男の悲劇で終わる.
個人的には,アシェンデンが熱弁する「虚栄心」のエピソード,それからスクランブルエッグのくだりが好きだ.
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これといったドラマがあるわけでもなく、諜報員がテーマとはいえミステリー的な要素もないが、やっぱりモームは面白い。ただただ人間が描かれている。それが何より面白い。
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モーム自身が諜報員であった経歴を活かして書かれたフィクション。諜報員アシェンデンの仕事が短編を連ねて描かれる。小粋な会話が多くて、本編も楽しめたけれど、フィクショナルなものについて書かれた前書きが、作家の熱を感じさせるようで良い文章だった。
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これまでに読んだモームさんの作品の中では比較的エンターテインメント色が強いように感じましたが、小説家でスパイというのがスマートな感じです。
登場するキャラクターたちはどれもみんな際立っていて、それぞれのエピソードがくっきりとしています。
各章読み切りではありませんが、いくつかの短編の連作のように見えます。
戦時におかれた人間の深層を、複数の登場人物の愛憎を折り重ねて描出していくような作品です。
淡々と仕事をこなす諜報員の活動を中心ですので快刀乱麻、八面六臂の大活躍はありませんが、そこに強烈なリアリティを感じます。
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なんとなく図書館で借りる。予想したよりも面白い。第一次世界大戦あたりに英国諜報員が各国で働く様子が書かれる。出てくる登場人物は皆おもしろく、会話もおしゃれで一気読みしてしまった。
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一話完結の連ドラのように気楽に楽しめるから、旅行のお供にはうってつけですよ。Msキングの厚化粧が、何の脈絡もなく、ふと、立ちのぼって来ることがある。その口紅の真っ赤が、鮮やかなカラー映像で、一瞬、私の前を通り過ぎるのよね。。。。ハイさすがモーム!
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小説家でスパイの主人公の冒険譚のような短編集。モーム自身がスパイだったせいか、何となくリアルさを感じさせる静けさがある。ただ、モームらしい人間観察は少しだけ影を潜めているような、それとは違うところで読む人を楽しませようとしているような。モームらしい本を読みたいとしたら、あまりお勧めはしないところ。純粋にスパイ小説として読むと面白い。
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スパイもの好きとして手にとってみた。モームの作品は初。モーム自身も英国スパイとして活動していた経験があるらしい。(ロシア革命を阻止しようとして失敗したとのこと)
この時代(第一次世界大戦ごろ)のスパイ活動ってこんな感じだったんだなぁ、と学びながら。
スパイ小説というより、純文学として取りかかったほうが、正しい期待値で読める。ハラハラドキドキなサスペンスではなく、美しい描写や文章力を味わうつもりで。
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p354 上の連中がみんなそうだ。結果は欲しいが、手段をためらう。うまくいったら利用するつもりでいるくせに、それを実行する責任は他のものに負わせようとする。
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面白かった。アクションはないが、むしろスパイ業の本質は人間観察と状況判断なのだろうと思う。作家さんが皆怪しく思えちゃう。娯楽ものとしても楽しめるが、当時の世界で自分が生き残れるだろうかとふと考えてしまった。
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面白かった。
モームが描く人物は、どの人も魅力的だと思う。ちょっと頼りなくていけてない人でさえ、いい所あるんじゃないのかなぁ、なんて思ってしまう。
会ってみたいなぁー。
戦争中の話しなので、背景を知って読んだ方が面白いのだろうけど、知らなくても全然楽しめる。
彼の人物観察眼は、素晴らしい。
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「諜報員」という漢字に惹かれて購入。
時代背景もあるかもしれないが、思ったよりも淡々と物語りはすすむ。何か大きな活動を行うかといえばそんなことはない。「諜報」というよりも「諜報員いろいろ」という感じ。アシェンデンが関わる様々な諜報員たちの個性を楽しむお話でした。諜報活動の展開を期待するとちょっとガッカリするかも。
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いかにも英国風。連作短編集の趣
前書きにある、若い盲目の兵士の痛みを償う「ひとつだけあるはず」の方法とはなんなのだろうか?