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本書を読む前にちくまの正史三國志を読んでしまっていたのだが、本書を読んでからそれを読めばよかったと思えるくらい、分かりやすく、三国志の歴史の流れがすっきりと理解できる内容だった。
特に良いと感じたのが2点。
1点目は序章での三国志の基本知識の解説。
三国志の歴史の大体の流れと細かいエピソード、これは本書を読む前から十分理解していた。しかし州や郡といった行政の区の単位や牧、司徒、各種の将軍等の役職等、三国志関連の書籍を読むと必ず目にする用語を全く理解していなかった。
しかし本書は序章でそれらをわかりやすく解説しており、これによってなんとなくで理解していた内容(特に序盤の黄巾の乱から董卓討伐のあたり)をより深く理解することが出来た。
2点目は簡易な地図の活用による位置関係のイメージしやすさの向上。
各項の最初にデフォルメ化された簡易な地図を示し、本文で登場する各地点の位置関係及び各軍の概略の侵攻方位等を示すとともに、本文でその地図上での位置を座標で簡易に参照できる形にしており、これにより各種戦闘等の流れ・推移を、具体的にイメージしながら理解することが出来た。
文書中に地図を示す書籍は他にもあまたあるが、地図上の座標(A-3等)を本文で示すことにより、本文で言及されている内容の理解しやすさが格段に向上していた。
以上のとおり非常に良い本であったが、1点だけ難点があった。
著者の主張が若干強く、人物の評価が解説ではなく、決めつけに近い内容となっている部分が多々見受けられた。内容的には同意できる部分と同意できない部分がああったが、同意できるできないに関わらず、著者の主張を述べるのではなく解説に徹してほしい気がした。
まあ本書の価値を損なうほどではないが、後半になるほど個人的には余計と感じる主張が目に付くようになり、良い本だっただけに少々残念に感じた。