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戦前昭和の政治リーダー十数名について、専門家が書いた人物像
2021/07/12 17:30
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投稿者:y0a - この投稿者のレビュー一覧を見る
戦前昭和の政治リーダー十数名について、それぞれ専門家が書いた人物像。一般的な歴史が縦糸だとすると、こちらは横糸に相当する感じか。○○事変とか○○事件とか、少し知ったうえで、それに関わった人の章を読むという読み方もあろう。あるいは、こちらから読んで、有名な事件の方を読むとか、いろいろな使い方があるのでは。
昭和史講義のシリーズは、近年の学問的知見がそれなりに込められているものと、私は期待して読んでいる。読者ごとの歴史の詳しさにもよるだろうが、あまり知識のない自分には、けっこう入門的で面白かった気がする。
以下は蛇足だが、田中義一の親方日の丸的ダメっぷりが、今読むととても残念だしセンスのない恥ずかしい人に思える(個人的感想です)。岡田啓介もひでえなぁと思う。でもそもそも、軍部の、特に関東軍の暴走体質は誰か個人が止められるような状況じゃなかったはずなんだよな、とか、そんなことを考えながら読めました。
紙の本
危うくもある
2023/01/23 13:24
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投稿者:ichikawan - この投稿者のレビュー一覧を見る
十五人の「リーダー」を通して戦争への道を探るものだが、政治史的分析の限界をかえって感じさせなくもない。勉強になるところもあるが、リーダーを通してだけであの戦争を理解しようとする危うさから逃れられていない。
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<目次>
第1講 加藤高明~二大政党政治の扉
第2講 若槻礼次郎~世論を説得しようとした政治家の悲劇
第3講 田中義一~政党内閣期の軍人宰相
第4講 幣原喜重郎~戦前期日本の国際協調外交の象徴
第5講 浜口雄幸~調整型指導者と立憲民政党
第6講 犬養毅~野党指導者の奇遇
第7講 岡田啓介~「国を思う狸」の功罪
第8講 広田弘毅~「協和外交」の破綻から日中戦争まで
第9講 宇垣一成~「大正デモクラシー」が生んだ軍人
第10講 近衛文麿~アメリカという「幻」に賭けた政治家
第11講 米内光政~天皇の絶対的な信頼を得た海軍軍人
第12講 松岡洋右~ポピュリストの誤算
第13講 東条英機~ヴィジョンなき戦争指導者
第14講 鈴木貫太郎~選択としての「聖断」
第15講 重光葵~対中外交の可能性とその限界
<内容>
筒井氏監修の昭和史講義シリーズの第3弾(第2弾は読んでいません
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筒木清忠編のちくま新書による「昭和史講義」シリーズ第3弾は、人物にスポットを当てての入門書。
15名の人物(加藤高明、若槻礼次郎、田中義一、幣原喜重郎、濱口雄幸、犬養毅、岡田啓介、廣田弘毅、宇垣一成、近衛文麿、米内光政、松岡洋右、東條英機、鈴木貫太郎、重光葵)が取り上げられている。このうち首相経験者は、12名。宇垣、松岡、重光以外は首相をやったことがあるから、サブタイトルにある通り「リーダーを通してみる戦争への道」でいうリーダーはほぼほぼ首相ということになろうか。逆に首相非経験者3名が軍人、外交官という選定(宇垣は大命降下までいって組閣失敗という事例だが)。
外交官関係は加藤、幣原、廣田、松岡、重光の5名で全体の3分の1。うち加藤、幣原、廣田は首相経験者。逆に財政通と言えるのは、濱口のみ。陸海軍関係は、田中、岡田、宇垣、米内、東條、鈴木で外交官を若干上回る。
戦後は軍人は当然だが、外交官出身の首相がほとんどいない。吉田茂以降は皆無。アメリカの世界戦略の中に完全に組み込まれてしまった戦後は外交畑でリーダーシップを取る余地がなくなったということか。
もっとも加藤高明以前も外交官出身の首相は皆無なのだが……。
というように考えてみるとこの昭和戦前期は外交というフィールドの重要性がわかる気がする。
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学者が人物史を書くとつまらない。歴史小説がいかに良くできているかがよく分かる。とは言え、史実に則るとこうとしか書けないんだろうなぁ。敗戦までの首相経験者を中心に人物から「なぜ戦争に突入していったのか」を探っているけど、読めば読むほど情けなくなる。近衛首相と松岡大臣なんて最低としか言いようがないけど、当時の国民からは絶大な人気があったという。情報が開示されない恐ろしさってこういうことなんだな。
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3巻目は首相や首相候補・外相などの列伝、人物から見る戦前・戦中の昭和史。1920年代から終戦に至るまでにリーダーを務めた人物15人に焦点をあて、実証的研究の成果をふまえてその実像に迫る。「リーダーを通して見る戦争への道」の副題どおり、各人物の行動や思想・政策などから、戦争に至る過程を見ていく。なぜ、そうなったのか? 現時点における確度の高い説が提示されている。
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戦前の昭和史を事件ごとに、最新の研究を成果を踏まえて解説する「昭和史講義」のシリーズは、学ぶところが多い。なんとなく、イメージとして、こんなことなんだろうと思っていることが、現在の研究ではニュアンスが変わっていることがわかると歴史の理解が深まるし、今の日本の見方も変わってくる感じがする。
そんなシリーズの3弾目は、国の政治リーダー、首相や外務大臣などの人物ごとの解説。前の2冊で議論されたことを違う角度から見つめ直すような感じ。
あらためて、こうしたリーダーを人物としてみてみると、当たり前だが、とても優秀、有能な人々だということがわかる。
こうした優秀な人々が、そして人格もしっかりしていて、人望もある人々が、時代のなかで、愚かなことを考えて、やってしまうという構造をリアルに感じた。つまり、政治というか、戦争というのは、そういうことなのだ。
とくに衝撃だったのは、近衛文麿と松岡洋右で、そのポピュリスト的で全体主義への共感性の高いこの二人が、日本が勝てない戦争に進んだことに、もっとも責任が重いと思っているのだが、本人は、言っていることと本当に考えていることは同じではないという。つまり、政治的な権力闘争のなかで、相手を騙したり、全体をある方向に誘導して、かならずしも本意でない発言をしたりする。
そういう政治的な発言が、本人の意図を超えて、違う流れを生み出していくという不運。
そういうなかで、結局、戦争の責任をおうことになった東条英樹は、(やはり)官僚的に有能なだけの人。いわば、アイヒマンみたいな人なのだ。
だれもアメリカと戦争をしたくないのに、どんどんそっちのほうに引き込まれている。
身につまされる話が多かったかな?
まあ、そんなに責任のある仕事をしているわけではないので、あんまり関係ないかもだが。。。。