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皆川博子の初期作品は近年かなり入手難易度が下がったが、本書もその1冊。『水底の祭り』も『悦楽園』も持っているので、再読にはなるのだが、何度読んでもゾクゾクする。
そして、『愛と髑髏と』が再刊される可能性があるらしい。活字になったということは、近いうちに公式な発表があるのだろうか……?
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たぶん読んだことのある短編もいくつか。
■水底の祭り
■牡鹿の首 ★
■紅い弔旗 ★
■鏡の国への招待
■鎖と罠 ★
■まどろみの檻
■疫病船
■風狩り人 ★
■聖夜
■反聖域 ★
起承転結の転を書き出しにしていること、
現在と過去が結び付きながら並行して語られること、
といった時間軸の手法は赤江瀑そっくりだ。
《しらじらとひらけた曠野に、少女が、銃をかまえて立っている。空も地平も、ただ、明るく輝いている。少女は、風を撃った。》
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面白かったです。サスペンス色の強いお話たちでした。
愛憎が縺れに縺れて息苦しい程です。
でも単なる下世話なドロドロではなく、もっとグチャグチャとした粘度のある深い闇でした。時代設定が少し前というのも、現代よりも逃れられない柵を感じさせられて良かったです。
短い作品ですが「聖夜」がとても好き。他の作品にもありますが、幼いから無垢だからといって、犯した罪を許されてもそれはずっと燻り続けるのだな。その人を壊してしまうくらい。。
ちょっとどころでなくゾッとしますが、皆川博子さんはやはり読まされます。さすが。
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一貫して描かれているものが、愛ではなく執着であり、与えることでなく奪うことだから、読んでてほんとに消耗する。
『紅い弔旗』の憎むくらいに執着している人と似た人を、よく似た違う人だから好きになってしまうくだりとか、そういう事あるよな‥と思いました。
人は多分愛する事を生き甲斐にできる人と、愛してくれない人を憎む事でしか生きられない人に別れると思うのです。女は大体後者だ。絶対。
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復讐を描く、10の物語。
独白のうちに、物語は過去と今を行き来して、
過去がそれを正当化する。
そして今、私に手を下させる。
けれど、それを遂行すれば未来はない。
そういう一刹那に、うっとりするほどの頽廃的な魅力を感じてしまう。
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表題作の残酷さよ。
しかし奥底から滲み出る甘美さよ。
さすがの一言に尽きる。
どれも70年代に発表された作品にも関わらず、まったく色あせていない。古くない。
どれも残酷で意地が悪くて、可憐。
そして甘美。
どの短篇も、ささやかな謎がじわじわと読者を蝕んでいく。
そして登場人物たちが抱える傷や罪をほのかに照らし出す。
読者は共犯者であり、傍観者。
うっとりと、罪の沼にともに沈んでいくしかないのだ。
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皆川先生の初期作品集第2弾。
ミステリ要素はほぼ皆無。初期の金井美恵子や赤江瀑大先生みたいな、暗い情念は渦巻くものの、陰鬱でモッサい感じが濃厚。皆川美学が洗練される前の時期と見た。
そういう意味では北見隆の表紙はベストマッチ。少なくてもサンタさんが持ってきてくれるような本じゃない。
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過去に縛られた者たちを待ちかまえる死の罠――。幻想ミステリの女王・皆川博子の初期傑作を厳選した、文庫オリジナル短篇集。〈解説〉日下三蔵
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初期の短編を集めた一冊。幻想小説を期待して読むと肩すかしをくらう感じがするかも。
しかし、これはこれで“皆川さんらしさ”みたいなのも感じられ、ファンは楽しく読めるのではないでしょうか。ともあれ、良い作品集でした。
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湖から屍蝋が上がった―。小さなバーのママと常連客は、そのニュースに激しく動揺する(「水底の祭り」)。十二年前の夏、不注意から起こった悲劇。大人になり再会した二人は狩りに出た(「風狩り人」)。兄のひと言から、封印された暴力の記憶が甦り…(「鎖と罠」)。初期の傑作を厳選した、文庫オリジナル短篇集。(表紙裏)
水底の祭り
牡鹿の首
紅い弔旗
鏡の国への招待
鎖と罠
まどろみの檻
疫病船
風狩り人
聖夜
反聖域
初期の、とあるように近年に見える幻想的なストーリーはなく、生々しいお話ばかりです。
ことにそう感じるのは、各話の主人公の視点が、比較的常識人のものだからでしょう。後になればなるほど、世事から離れていく主人公が多いような。
表現に煌びやかなものが散見され、皆川さんの幻想文学者としての萌芽が見受けられるように思いました。
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初期短編集。男女や家族間での愛憎を、美しくしっとりと、しかし烈しく描いた作品ばかり。読めば読むほど甘美な毒に酔わされる心境です。
お気に入りは「風狩り人」。過去の悲劇の真相が実に恐ろしく、だけれどもそれが共感はできないにしろ理解できてしまうことがさらに恐ろしく感じられました。その心情は「反聖域」に描かれた物語のラストも似ているような。ひどく醜い人間の部分を描きながらも、美しく切なく感じてしまいます。
そして今の時代に読んでぞっとしてしまったのが「疫病船」。はるかに昔の話だけれど、現代のコロナ禍にも重ね合わせることができて、どちらの立場からも苦しくなるような物語でした。あまりにやりきれないのだけれど。病に恐怖を覚えただけの加害者側を完全な「悪」であると決めつけることもできないのが、さらにやりきれない話。これは現実でも同じですね。
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北見隆氏の手掛ける表紙絵が既に不穏で・・・最高ですね。
「水底の祭り」差別と因襲にまみれたこの場所で、私たちは誰かと同じものなど生涯見られはしないのだ。
「牡鹿の首」いとしいものに愛される未来なんて、一生見つけられない。
「紅い弔旗」やるせなさも虚しさも孤独も届かない愛情も、全てあなたが教えてくれたのに。
「鏡の国への招待」誰もがそこでは、くだらない表層など無意味になる。
表題作は、兄弟の残虐な記憶。悪夢は連鎖するし、決して決別などできはしない。
「まどろみの檻」おぞましいような愛情を、狂気と呼ぶのか。
「疫病船」戦争ものだから・・・ってのもあるんだろうけど、後味の悪さでは収録作で最大値だと思う・・・。誰も目を逸らしてはならぬ。私達は誰もが、石を投げられうる存在なのだから。
「風狩り人」母子の愛と呪い、それから、銃口。
「聖夜」記念すべき夜。解放の夜。
「反聖域」彼は、誰も救わない。
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皆川博子さん2冊目。
一話50ページくらいの短編集ですが、どれもこれも濃い。ドロドロというかネバネバというか、あっさりしていない。サクッと読むというわけにはいきません。
50ページくらいの話にこれだけの濃度の人生劇を詰め込めるのかと思う。筆力の成せる業なのか。