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黒い迷宮 ルーシー・ブラックマン事件の真実 下 みんなのレビュー
- リチャード・ロイド・パリー (著), 濱野 大道 (訳)
- 税込価格:814円(7pt)
- 出版社:早川書房
- 発売日:2017/07/20
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文庫
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紙の本
もし、これが裁判員制度施行後だったら
2017/08/27 07:50
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:かしこん - この投稿者のレビュー一覧を見る
ふと思うのは・・・もしこの事件のときに裁判員制度が導入されていたらどういうことになっただろう、ということだ。
もっと警察は証拠固めをしっかりしたはずだろう、自白がなくても証明ができるように。そして基本前例主義の裁判官でなく、裁判員がいたなら、そこまで偶然が重なるかは審議になっただろうし、検察側も弁護側ももっと力の入った論戦を繰り広げていただろう(そして弁護側の繰り出す矛盾点に、もっとツッコミが入ったはず)。そう考えると、裁判員制度の導入は「よかったこと」になる。裁判官側の意識改革だけでなく、硬直した警察の取調べ制度にもメスが入るようになったのだから(となれば取調べ可視化は当然の流れ)。
ずっと不思議だった。海外ドラマや警察小説を読んでいると自白なしでも証拠が確実ならば起訴はできるのに、何故日本ではそうならないのか(もっとも、外国ではその分証拠の調査・保管手順が重要視され、そこで不手際を起こすと起訴が取り下げられて犯人は釈放されてしまうという危険性もあり、弁護士の力量次第でなんとでもなるという印象がある。日本の司法がまだまだであるのは事実だが、外国がパーフェクトであるともいえないのも事実)。
日本の警察が優秀とは言えないのは、難解で複雑怪奇な事件に対応できないから(そういう事件が諸外国と比べて起こる件数が極端に少ないから)。日本の警察がうまく機能してるように見えるのは、警察が優秀なのではなく日本社会が順法精神にあふれおとなしく従順であるからに過ぎない、と著者に断言されてしまう部分は「確かに・・・」と思わずにはいられなかった。地元の県警、収賄や横領なんかにはすごく能力を発揮するけど、殺人事件となると勢いが弱まってた。現行犯とか、犯人が親族・顔見知り以外の事件は解決に時間がかかってたし、語り継がれる迷宮入り事件もあった。
2017年現在、多少変わってきただろうけど、2000年の東京でもまだこうだったのか、というのは地方出身者にとって驚きだ。それだけ人の数が多いのだろうが・・・刑事ドラマや警察小説がこんなにも人気なのは、現実はそこまで行ってないという証明か。
しかし著者はイギリス人なれど、『ザ・タイムズ』の日本特派員として20年以上日本に住んでいる。普通の日本人にもインタビューしているから日本語の日常会話には困らない程度なのだろう(さすがにすべて日本語でこの本を書くことは難しかったのか、最初から英語圏での出版を考えていたからなのか)。それでもそういう歴史認識なのか・・・という部分は読んでいて悲しくなる(大英帝国はそういう帝国主義で植民地化を押し進めた経緯があるから同じだと思っているのだろうか)。私も当時生きてたわけじゃないからわからないけど、そこは日本人とは違うなぁ、と。でもこの本がアメリカ・イギリスの犯罪ノンフィクション賞を受賞したりノミネートされたりしたってことはそれだけ国際的に読まれてしまったわけで、ここに書かれた歴史認識がそのまま広まるのは不本意である、と感じる。勿論、読者側がすべてを信じてしまわないというリテラシーを持っていることも重要だけど、他の考え方も発信していかなければいけないということ。日本国内でも議論になっているのに、一方的な情報だけ広まるのはよろしくない。
同時に、外国のノンフィクションを読む際にも同様に考え、気をつけなければならないということだ。
日本は特異な国だといわれる、いい意味でも悪い意味でも。
けれど日本にいるとそれが当たり前で、外国のほうが特異に思える。
けれどそれで片づけるには、もう世界は狭くなりすぎたんだろう。
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