紙の本
耳で聞きたい文章
2020/06/02 16:21
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投稿者:amisha - この投稿者のレビュー一覧を見る
日本語の中に、台湾語、中国語(北京語、上海語)が混じり、ピンインがあり、カタカナ表記がある。最初は面食らうのだが、あれ?こんな経験をどこかでしたぞ?と思いだす。学生時代、中華街の広東料理屋でアルバイトをしていた時だ。雇用主は華僑、厨房は香港人、お運びの日本人。毎日、複数の中華系の言葉と日本語で、まくしたてられた。まだ注文は手書きの頃だったので、繁体字で書き取りし、だんだん面倒になってきて簡体字の存在を知り、愕然としたのを覚えている。人間関係もいろいろあったが、学生で人生経験が浅かったこともあり、当時のことは非常によく覚えている。
日本はいろんなルーツを持つ人たちの吹き溜りという意味で極東である。しかしながら、政治や歴史の、その時々の都合によって事実が広く知られることは少ない。このような文学に出会えて、四半世紀抱えていたつかえが取れた。
著者が本屋さんのイベントで話しているのをポッドキャストで聞いたことがある。この本は、ひょっとしてラジオドラマなどの音読にすると、よりリアリティがあるものに感じられるかもしれない。ことばの持つ響きが非常に重要な作品だと感じた。
電子書籍
言葉の自由
2017/10/23 07:05
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投稿者:猫目太郎 - この投稿者のレビュー一覧を見る
柔らかい文体に感じられる「言葉はとは何か」。どれが正しい「国語」でどの言葉が「間違い」なのか。言葉は自由であり、喋る人が多ければ「多様」だと。登場人物が言う「愛の子」という言葉に、多言語多文化で育った著者の気持ちが感じられる。青春小説の爽やかも良い。
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興味深くというより興味本位で読んだ感じなので、難しいテーマなのに文章がライトで読みやすかった。真ん中ってそういう意味か。他人から、それは正しくない、あなたは純粋じゃない、って否定されるのは悲しいね。
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作者の温さんと重なった。
本当に繊細で、他者の言葉に振り回されてしまい苦しむ少女が、たくましく成長したラストにはにこにこを通り越してにやにやしてしまった。
真ん中の子どもたちが今後もっともっと元気に生きられる風通しのよい世界になりますように。
そんな世界はきっとすべての人々を笑顔にすることになるでしょう。
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YAとして中高生から読むといい本だなと思う。帰属と母語をめぐって揺れる青春の物語。越境する子どもたちの悩みはますます普遍的になる時代なので、各学校図書館に一冊あるといいな。
作中「台湾語」と台湾の歴史について説明が少ないのが気になる。明治の日本統治以前は福建などからの移住が多かった、台湾の半分は清の手が入らず原住民の言葉が話されていた、中華民国政府が共産党に追われて来てから北京語を話す人達が優位になった……とわたしは認識しているのだが、そのあたり簡単にでも説明が欲しかった。
主人公は歴史にまったく疎い19歳という設定なんだろうけど、こんなに「台湾語」で悩むなら台湾語とは何かを調べる場面があるはずだと思う。
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佳作かなにかもらった前作のほうがよかった
あまり内容的にも変わっていない
なんとか最後まで読めたけれど、このままこの作者はいくのかな…と、少し残念に思う
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台湾人の母と日本人の父の間に生まれた琴子が中国語を学ぶために中国に留学する青春ストーリー。
台湾語と日本語と関西弁が混じって書かれていて面白い。
大好きな台湾のことが知れて、台湾語でもある「あいのこ」の苦悩も知ることができました。
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台湾出身の母と日本人の父の間に生まれた琴子。よく笑う事からミーミーと呼ばれている。
母の国の言葉をもっと知りたいと短期留学した上海での描写が物語の大部分をしめる。
中国にとって、台湾は国の一部。
けれどミーミーにはあくまでも母の母国。
発音の違いを先生に指摘されるたび、ミーミーは自分の存在も否定されていると感じてしまう。
同じく父が台湾出身のルームメイト、リンリンは「私は私」と自分のルーツに誇りをもっているし、同級生の舜哉は帰化した元中国人の両親というルーツから、だから何人にもなれるという考え。
いろんな立場があり、考えがある。
どれが正しく、どれが間違いと決めるのは誰か?
結局、自分がどう納得して生きていくかなんだと思う。
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以前読んだ『台湾生まれ 日本語育ち』の小説版?
日本人として産まれると母語とか母国語について考える機会は少ない。
言葉と歴史が絡み合って個人を越えた遠い過去を引きずる、
世界にはそういう人々がたくさん存在していると気づかされる。
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アメトークで光浦靖子さんが紹介しているのを見て読んでみました。
セリフでストーリー展開していくので、読みやすい。
ハーフや帰国子女は、自分のアイデンティティーが何か悩むことが多いと聞いたことがあったけど、この本を読んで想像できるようになった。
グローバル化が進んで、日本人も海外に駐在する人が多くなると、「何人か」という括りではしっくりこなくなるんだろうなぁ。
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芥川賞の一件で見聞きして気になっていた本。
台湾人の母と日本人の父を持つ少女が、中国、台湾、日本のことばの狭間でアイデンティティーのゆらぎを感じながら、自分を確立していくお話。おそらく作者自身の生涯のテーマ。少なくとも私は対岸の火事とは思わず興味深く読み進めた。
先日、シンガポールと日本人のハーフの小さな男の子がぺらぺらの鳥取弁を話していて驚いた。驚くのはこっちの勝手で、彼にしてみればふつうのこと。
「台湾人の母を持つわりには中国語はへただね」とか、「見かけは日本人ではないのに日本語を喋れるなんてすごい」とか。何気なく私たちが普段口にしかねない「ふつう」を基準にした物言いが、当人達にとっては大きな傷になり得る場合もある。こういう小説を読んででも、自分の知らない環境を知り、思いを馳せることが大切。
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ナニジンだから何語を喋らなきゃならないとか、縛られる必要はない。両親が日本人じゃなくても日本語を喋っていいし、母親が台湾人だけれど中国語を喋らなきゃいけないってこともない。言語と個人の関係は、もっと自由なはずなんだよ。
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台湾人の母と日本人の父を持つミーミー.上海留学での学生生活の中で母国語中国語の存在意義を問い直す.青春時代の友情や恋はもちろん,厳格な教師との触れ合いなどが自分を成長させその後の進路を決める,とても中身の濃い1月の留学生活を描いている.そして何よりミーミーの父母の包み込むような愛が素敵だ.
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日本人の父と台湾人の母を持ち、3歳までは台湾で過ごしていた琴子。日本では日本語を使っていたが、母の母語への興味があり、19歳の時に上海に中国語を学びに行く。上海で、「台湾人なんていない、中国人だ」「君の中国語は訛っている。台湾の訛りだ」「母親が中国人なのに中国語が下手だね」みたいな言葉を耳にし、自分とは何かがわからなくなり、思い悩む。琴子の悩みは、日本人として普通に生まれ育っていたら全く持つことのない悩み。こんな悩みを持つ人がいるんだ、と知ることができたのはよかった。
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作者じしんの分身と思われる主人公の天原琴子、ミーミーは、日本人の父と台湾人の母をもつ日本育ち。
幼いころから親しんできた、しかし日本語に囲まれて育つうちにいつか遠のいてしまった母の言葉を習得したい。そう思って留学した先の中国・上海で、彼女は、ここで教え込まれる「正しい中国語」がじぶんの求める「母の言葉」ではなかったことに気づく。ここちよく自分を受け入れてくれる母語の代わりに彼女が見出したのは、ここでも「訛りのある」言葉を話す中途半端な存在として扱われる自分自身だった。
小説は、ミーミーが同じ中国語学校に通う日本からの(必ずしも「日本人」ではない)留学生仲間――なかでも、台湾人の父親と日本人の母親を持ち、台湾語の中で育ってきたリンリンと、両親ともに台湾系だが日本国籍をもつ龍舜哉――と交流するなかで、日本人でも中国人でも台湾人でもない、いずれかの「正しさ」にも属することのできない自分たちのありよう、それを表す言葉をみつけていく過程を描き出していく。
小説としての完成度という面では、やや若書きという感じがするのは否めない。特に悩みを抱えて煩悶するミーミーやリンリンに対し、そうした葛藤を頭一つ抜け出したような舜哉との性愛に主人公が救いを見出すような展開にはやや疑問も感じる。
しかしおそらくまだ完成されていない若い作家だからこそ、芥川賞選考委員による「日本人にとっては対岸の火事」発言に対してあのように怒ることができたのだろうし、その怒りは、小説を読むこと、自分と違うひとびとの声を聞き理解しようとすることについて、人々の間に議論が生まれるきっかけをつくることができた。そのことも含めてきわめて同時代的文学的な実践であったと思う。作者がこれからさらに優れた作品を生み出すことを期待したい。
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もう少し掘り下げて欲しかったけど~3歳で台湾から日本に来た琴子は母の言葉を習いたくて上海への短期留学を決める。父は台湾の民俗研究者で日本人だ。上海へ行くと、台湾出身は出自を否定され、発音は矯正される羽目になる。同じ思いを抱えるのは、父親が台湾人の玲玲と両親が台湾出身で日本に帰化した龍舜哉だ。自分は偽日本人なのか、台湾語でも使われているアイノコというのがピンとくる。舜哉との関係はこの留学期間だけだけど、日本にいるボーイフレンドの彗は物足りない。帰国の日が近づいて二十歳の誕生日を迎える~ルーツがあちこちにある台湾に中国語を習いに来る学生達を世話するために台湾に渡る・という落ちは弱いなぁ