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投稿者:ケロン - この投稿者のレビュー一覧を見る
次々と予想を裏切る展開が繰り返され、「あれ?そうなの?」「え?そっち?」と先が読めない展開が続いて・・・。
最後はいろんな意味で大満足でした。
紙の本
文庫になるのが待ちきれない その2
2018/05/04 03:20
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投稿者:かしこん - この投稿者のレビュー一覧を見る
→ 上巻からの続き。
主役の一人は刑事だし、現在でも過去でも子供をめぐる事件が起きているのだけれど、厳密にいうとこの物語はミステリではない。『忘れられた花園』や『秘密』同様、特に女性の生き方に重きを置いた人間ドラマです。
また、翻訳物にはなくてはならない<登場人物一覧表>がこの本にはない。ネタバレになるから、というよりも、セイディが出会っていく人々を読者もまた同時進行に知っていくほうが面白いから、それに10代のアリスと80代のアリスの間を埋める“時間”もこの物語のもう一つの主役であるから、かしら。
登場人物はそれなりに多いんだけど、順番に出てくるし章をおいて何度も登場するから自然と頭に入ってしまう(というか、今回あたしは一気読みをするつもりで読んでいるけれど、一気読みせざるを得ない内容なので忘れようがないというか)。「えっと、この人は誰?」となることは一度もなかった。 説明不十分のまま時代を飛んだりするにもかかわらず。
そして重要なキーワード、コインシデンス(偶然)の存在。
セイディが<湖畔荘>を見つけたのも偶然、コンウォールの図書館員がセイディに協力的な人なのも偶然、<湖畔荘>に関する古い情報がたまたま見つかって修復に出され、閲覧可能になったばかりという偶然、などなど・・・細かいところから真相にかかわることまでコインシデンスがちりばめられている(登場人物たちもあまりの偶然の多さに驚嘆の声を上げるほど)。
それを「ご都合主義」ととる人も多いかもしれない。でも私はあえて断言する。偶然も、いくつか重なればそれは必然である。
えっ、こんなことがこんなことに?、という経験、ある程度の年数を生きてきたら誰しもあるはず。ただそれを「たまたまそうなっただけ」と思って流すか(もしくは気づきもしないか)、その意味を考えるか(そうすると大袈裟にも<運命>という言葉が浮かんでしまうのだが)の違いで。なので、そんな<必然>を理解する人にとって必読の書!
まぁ、でも個人的には前作『秘密』のほうが心動かされたかなぁ、と読みながら思っていましたが、終盤で不意に落涙。またやられてしまった・・・。
更にエンディング、描かれるべきところをさらりと省略し、一言でその過程を全部想像させるところはすさまじく、それもこれもここに至るまでのことを読者に読み込ませていたからで、そこも「やられた!」って感じ。
デュ・モーリアをリアルタイムで読んでいた読者もこんな気持ちになったのかなぁ、とまた<時間>というものに思いをはせてみたり。
しかしながら・・・東京創元社の本にしては珍しく、誤植というか校閲ミスのようなものが目立ち(、が。になっていたり、助詞が抜けていたり、など結構何か所も)、残念な印象。出版社に連絡すべきかと思ったが、発売されて結構たってるし、連絡すべき人がしているだろうし、多分向こうも把握しているだろうから、重版以降は直っているのかもしれない。文庫になるときには間違いなく訂正されているだろうから、そっちも購入することでしょう。
というか、むしろ『秘密』を早く文庫化して!
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上下巻纏めて。
これまでに邦訳された諸作同様、過去と現在が互い違いに語られる構成。ラストは綺麗に収まるところに収まった感。
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ミステリーだけにカテゴライズせずこれは人生・家族モノ、歴史ものとしても広く読める本です。と見終えてすぐ「上」からまたページをめくりひそませてある伏線にいちいち驚いてます。一字一句見逃せない。
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1910年代、1930年代、2000年代を行き来し、そえぞれの時代の秘密をあぶり出すという、ジグソーパズル的謎解きの基本を抑えた展開は相変わらず。今回はいつにも増して時代の入れ替わりが目まぐるしいので、特に上巻は迷宮を進んでいるような感覚に陥る。登場人物ひとりひとりの胸に去来する記憶の断片が巧妙にシャッフルされて作中にばらまかれ、そのカードが表を向くたび吸引力も増して行く焦らされまくりの展開はさすがの一言。
親子の問題を幾重にも重ねてストーリーに厚みを持たせているが、本作品で際立つのは謎解きの醍醐味かもしれない。巧妙に張られた伏線と手掛かりの蒔き方は本格のプロセスそのもの。「あまりにも多すぎるパズルのピース。しかも各人がまちまちのピースを握りしめていた」との記述が一言で言い表している。
作者が大事にしているのは「語りの公正」なんだとか。読後に、これは完璧で必然的な結末だと感じさせてくれるバランス感覚。その感覚に寄り添えるよう、深く豊かに織り上げる物語には圧倒される。ラストの驚きは予想可能だが、むしろ「そこまで読者を引っ張っていってくれるのか?」というレールの伸び具合に注目しながら読んでいた。メロドラマ的な感はあるものの、こういう狙い澄ました結末はこの作者だから満足できるんでしょうね。
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<上下巻併せての評です>
とにかく再読すること。一度目は語り手の語るまま素直に読めばいい。二度目は、事件の真相を知った上で、語り手がいかにフェアに叙述していたかに驚嘆しつつ読む。ある意味で詐術的な書き方ではあるのだが、両義性を帯びた書き方で書かれているため、初読時はミスディレクションが効果的に働き、よほどひねくれた心根の持ち主でなければ、正解にはたどり着けないように仕組まてれいる。しかし再読すれば、いくつもの目配せがあり、伏線が敷かれていて、読もうと思えば正しく読めたことをことごとく確認できる。ここまで、フェアに読者を欺く書き手にあったことがない。
ウェルメイド・ミステリという呼び名があったら是非進呈したい。最初から最後までしっかり考え抜かれ、最後にあっと驚かせるしかけが凝らされている。上下二巻という長丁場だが、二つの大戦をはさむ1930年代と2003年、ロンドンとコーンウォールという二つの時間と空間に魅力的な人物を配置し、失意の恋もあれば道ならぬ恋もあって、最後まで飽きさせない。特に上巻末尾には、絶対に下巻を読まさずにおくものかという気迫に満ちた告白の予告が待ち受けており、これを読まずにすますことのできる読者はいないだろう。
主たる舞台となるのは、コーンウォールの谷間に広がる森に囲まれた土地に建つ、土地の方言で「湖の家」という意味の<ローアンネス>と呼ばれる館。もとはジェントリーが所有する広壮なマナーハウスの一部であったが、本館が火事に遭い、残った庭師頭の住居を修復して子孫が住むようになったものだ。1933年当時そこに住んでいたのは、アンソニーとエリナ夫妻に、デボラ、アリス、クレメンタインの三人姉妹、末っ子のセオドア、エリナの母であるコンスタンスというエダヴェイン一族。夏の間は祖父の旧友でルウェリンという物語作家が滞在している。
ミッド・サマー・パーティーの夜、皆に愛されていた弟のセオがいなくなる。まだ歩きはじめたばかりの赤ん坊が一人でいなくなるはずがない。事故か誘拐か、地元警察はもとより、スコットランド・ヤードの刑事も加わって捜査されたにもかかわらず、セオは見つからずじまい。以後悲劇の舞台となった<ローアンネス>は封印され、一家はロンドンに引っ越す。もともと森の中にあった敷地は訪れる者とてないまま、繁り放題の樹々に囲まれて静かに眠り込んでいた。
その眠りを妨げたのがロンドンから来た女性刑事セイディ。個人的事情から担当中の事件に感情的移入してルールを犯し、ほとぼりがさめるまで祖父バーティの住むコーンウォールに長期休暇中だった。日課となった犬とのランニングの途中、敷地内に残る古い桟橋に足を取られて身動きとれなくなった犬を助け出した時、館を見つけた。敏腕刑事であるセイディには、当時のまま時を止めたかのように息をひそめた館には何か隠された秘密のあることが感じとれた。調べてみると過去の事件が明らかになる。
館を相続しているのは次女のアリス。今ではA・C・エダヴェインという有名なミステリー作家だ。未解決事件の捜査のため家を調べる許可を求める手紙を書いたセイディに許可が与えられたのはしばらくして���らだった。アリスは、この年になって姉のデボラからとんでもない事実を知らされ、長年自分が思い込んでいたのとは全く異なる家族の秘密を知り、あらためて事件の真相を知りたくなったのだ。助手のピーターの勧めもあり、自身もコーンウォールに足を運んだアリスを待ち受けていたのは、思いもよらぬ結末だった。
冒頭、ケンブリッジ出の学者肌の父、てきぱきと家事を取り仕切る美しい母、結婚が決まり社交界デビューも近い長女、物語作者を目指す次女、飛行機に夢中なお転婆の三女、愛らしい弟で構成される裕福な家族が、自然に囲まれた美しい湖畔の家で楽しく暮らす様子が英国風俗小説そのままにたっぷりと描かれる。十五歳になったアリスは、庭師募集の広告に応じて現れたジプシー風の若者ベンに夢中。完成したばかりの処女作をベンに捧げ、愛を告白する予定だった。ふだんは余人を避け、ひっそりと暮らす夫妻が年に一度、三百人の客を招いて行う夏至の前夜祭のパーティーの夜、事件は起きた。
ミステリの要素は濃いが、読後感じるのはむしろ普遍的な主題である。これは母と子の物語であり、戦争の災禍の物語である。主人公の女性は十代で娘を産み、養子に出した過去を持つ。それについての罪悪感が災いして、幼児遺棄の事件に関して過度に反応し失職の危機に遭う。意志に反して子どもと別れなければならなくなった母親のあり方について深い考察がめぐらされている。また、人類が初めて遭遇した大量殺戮である第一次世界大戦時における兵士のPTSD、当時はシェルショックと呼ばれた戦争後遺症についても、その非人間性が静かに告発されている。
ミステリ作家であるアリスの口を通じて、今は懐かしい「ノックスの十戒」が引き合いに出されているのも忘れ難い。犯人は最初から登場していなければならない、とか秘密の通路は一つに限る、とか作家としての自戒が、いちいち本作に用いられているのが律儀と言える。フーダニットからハウダニットに移行したあたりから小説が味わい深くなったとか、自作を語るアリスに作者その人を重ねたくなるのも無理はない。しかも、そのアリスの読みが肝心なところで外れていたのも皮肉と言えば皮肉で、このあたりのシニカルさはアメリカのミステリにはないものだ。
家の相続、良家との縁組といった上流階級ならではの慣行が、母と子の間に確執を生み、物事が単純に進んでいくことを邪魔する。そんな階級にあって、エダヴェインの娘たちは自由奔放に生きようとする。エリナがそうであり、アリスもクレメンタインもまた同じだ。思春期の揺れる心をクレメンタインが、女ざかりの時代を母エリナが、そして独身の老人女性をアリスが代表している。生来奔放な女性が、戦争の時代に翻弄されながら、それでも自分らしく最後まで正直に生き抜いた姿が読後胸に迫る。すべてが明らかにされた場面、ミステリではおよそ覚えたことのない感情に支配される。至福の読書体験である。
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とても面白かったが、最後はちょっとまとまり過ぎ
な感じもした。上巻からたくさんの伏せんが気がつくと
合った事など最後の最後にわかる仕組みになっている。
やっぱりまとまりすぎかな。
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おもしろーい。もうすごく好み! カバーに「もしもあなたが複雑精緻なプロットや、家族の秘密といったテーマに惹かれる読者であれば、私のこの喜びに同感してくれるはずだ」という紹介文が載っているが、まさにその通り。付け加えるならば、時間を行き来する語りによって少しずつ物語が見えてくるというタイプのお話が好きな人ならば、一気読みせずにはいられないと思う。
最初のあたりは、その時間の行き来がちょっとつらい感じもする。視点人物が次々変わるので、えーと、これは誰だったっけ?とモタモタする。しかし上巻半ばくらいからは、まさに本を措くあたわず、先の展開が気になって気になって、ページを繰る手が止まらない。この感覚は久しぶり。物語を読むのって本当に楽しい!
終盤にさしかかり、事の真相が見えてきた頃、おや?もしやこれは…、いやまさかそれはちょっとやりすぎだよね、と読み進めていったらば、その通りの事実が最後に明かされた。いや参った参った。しかし最初から読み返してみると、これが「偶然」(作中で何度も繰り返される言葉)などではなく、物語全体がそこに収斂していくような必然性を持っていることに気づく。うーん、すごい。
この点や、あまりにも頻繁に時間や場面が切り替わる点に、ちょっと「やり過ぎ感」を感じないでもないが、訳者あとがきに「これは大人のためのお伽噺なのだ」とあって、そういうことだよねと納得。うーん、そう来ましたか!と楽しめばいいのだ。
また、本書の底には、戦争で人生を狂わされた人たちを悼む気持ちが流れているのを感じた。ジャンルは違うが、なんとなくコニー・ウィリスを思い出す。作風がヒューマンで、登場人物の運命はつらいものだが、後味がいいところが共通しているように思う。
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あとがきで言う、そう来たか、といよりは読んでいるうちに募るやっぱりね感がある展開ではあるが、まずはここまで楽しませてくれば及第点。
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上巻の終盤までは、登場人物や動物達の覚える名前の多さや、時間も場所も様々に飛んで交差する内容に、物語に入り込むことがなかなか難しかったのだけれど、上巻終盤以降は引き込まれて一気に読むことができた。後半になってパズルがどんどん嵌り出し、胸のすくような結末になだれこんでいく展開にカタルシスを感じた。
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上巻を読んだだけで、この作者を買いかぶってしまっていた。
ノックスの十戒縛りか、なんて思ったがそんなこともなく、
叙述トリックやツイスト風なところもかすんでしまう
予定調和、大団円が印象的な物語ミステリ。あー残念。
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最初はクラシックな世界観にどうもハマれず、いつ悲惨な事件が起こりそれは解決されるのか、と急かすような気持ちで読んでいたんだけど、ちょうど上巻の最終ページから熱中して読み込み始めた。
叙述トリック… とは少し違うのかな…… 時代を行き来しつつ、そして複数の登場人物の一人称で進むストーリー。
どれだけ人が主観に沿って物事を判断し、不確かな事実を「絶対」と思い込み、そして聞く側も我知らず納得できるだけの材料さえあれば主観による判断を受け入れてしまうのだという危うさ。
読了後、思わず最初から読み直してしまった!
物語に関しても優しい風合いで閉じられて、少し諌められたような気持ちになったのだった。
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謹慎中の女性刑事が、滞在先の祖父の家で過去の事件に関わることになるミステリー。大戦を挟み、過去と現在を行き来しながら、因縁の謎が解き明かされていく。
初めての作家だったが、行きつ戻りつしながら静かに品よく語られていく物語に引き込まれた。
自身も封印したはずの過去に悩む刑事は、過去の幼児失踪事件について少しずつ明かされていくピースを頼りに迷走する。真相だと思われたものは二転三転し、じれったくなるほどゆっくりと解き明かされていく。
だからこそ、いよいよ真実が明かされていく終盤の盛り上がりには胸が詰まり、あり得ないような偶然もこのストーリーにおいては決して茶番にならない。
綿密に練られた構成と展開で深みのある長編ミステリー、クリスマスイブに読み終えたこともまた感慨深く、心地のよい余韻に浸ることができた。
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現在と過去を行き来しつつ重層的に紡がれる物語はよく練られている。
最後をカタルシスと感じるか、都合が良いと思うかは、その人次第だろう。
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いきなり冒頭で、ローズの子孫が「テオ=ローズの実子」説を否定。あらら〜。しかもアンソニーのシェルショック発覚。エリナとベンの密通発覚。そして、真相解明。ローズ罷免の理由も判明し、シェルショックの原因から、この真相がベストだったことがわかる。謎解きって本当に面白い。面白かった!
まあ、児童作品作家ダヴィズ・ルウェリンとエリナの母・コンスタンスの確執は重いサイドストーリーかな。
トドメは主人公セイディが身を寄せる祖父バーティの素性…。幾ら何でもこの偶然はやり過ぎやろうと思う一方、セオは結局、多くの人の好意に導かれて生まれた土地に戻ってた訳だ。