紙の本
続きを早く読みたい 楽しみなシリーズ
2017/09/13 20:24
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:M77 - この投稿者のレビュー一覧を見る
歴史を描いたノンフィクション新書なのに、もう今から続きが楽しみなんですけど!
みなもと太郎によるマンガの歴史1.戦前~1966。
近年は手塚に偏った歴史認識だと批判されるようになったが、やはりこの時代はどうしても手塚の影響力が大きくなる。
何しろ描き過ぎなのだが、それでも全ての媒体に描けはしない。
手塚が赤本ブームを作り、その後の貸本ブームは足りない作家を紙芝居の世界に求め、
雑誌「漫画少年」は人気作家が獲得出来ず投稿者を育成、それがトキワ荘グループや劇画グループへと育って行く。
そして手塚に嫌われたマガジンは、手塚のカウンター的な貸本劇画作家で逆転を狙う。
こういうアナザーでオルタナティブな才能やメディアが、手を伸ばせばそこに有り、それぞれにチームを作って切磋琢磨している、というところが日本の二次元文化の豊かさであり、漫画文化の特異性に繋がっているんだと思う。
手塚も戦前の漫画や宝塚、ディズニー映画などから強い影響を受けている。
手塚が先輩漫画家達からどう評価されたかというのも余所では語られていない珍しい視点。雑誌漫画少年が生まれた遠因がGHQによるパージだったという話もドラマチックで、さすがみなもと先生は歴史の面白さのツボを心得ている。
そして漫画をほとんど読めずに育ったちばてつやが主観的な時間表現を漫画に導入。「ちかいの魔球」が影響を及ぼし遂に「巨人の星」へと繋がる。次回乞うご期待!
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重要人物や出来事がシンプルに書かれていて、分かりやすいし読みやすい。特に、貸本マンガの興亡から劇画誕生の流れがとても面白かった。取り上げるマンガが載って無いので、ググりながら読みました。
欲を言えば、参考資料として取り上げるマンガのコマを載せて欲しかった。ただ、「調べる新書」とあるので、自分で調べながら読むのも良いか。
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生けるマンガ史たる著者が、わかりやすくマンガを解いたもの。
コマを構成単位とする物語性のある絵は、海外から来たものを参考にしてというのが定説であるが、著者はさらにそこから、その線条性のある絵の表現は日本の浮世絵からと説く。
他、マンガ界のどろどろしたものや、トキワ荘に多数のマンガ家がいたことによるメリット、などを解説。
貸本、雑誌の掲載による表現、インターネットでのもの、を網羅する執拗さは、凄まじい。
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読みやすくてわかりやすい。
手塚治虫のくだりなんて他でも何かと何度も
見聞きしてるハズなんだけどあらためて
手塚治虫という革命と奇跡と宿命・運命を
思い知らされました。
図版は必要ないと思います。調べてくれ、買って読め
と言う事でしょう”調べる学習新書”。
手間のかかった開きやすい製本は
いかにも本がばらけそうで怖いですがw
それと、こういう目の付け所は岩崎夏海お見事!
と言うかありがとう!と言えば良いのか。
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『マンガの歴史』作者:みなもと太郎という文字列だけで買うべきとわかる本。
あまりに有名な「トキワ荘」中心のマンガ史観にとらわれすぎていて見えなかった日本におけるマンガという文化の歴史を、丁寧に紐解いている。映画も様々な作品群から影響を受けて歴史の流れが生まれているのとなんら変わらず、マンガも影響し、影響されあって発展していったのだということがよくわかる。
小学生以上向けに書かれていることもあり、文は平易も平易。しかし書かれていることはガチ。
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ちばてつやに関する件が一番興味深かった。むしろ、ちばてつやで一冊書いて欲しいくらい。朝日や青空を描くのではなく、目覚めて、起きて、布団を畳んで、顔を洗って…という一連の「生活」の流れをゆっくり、じっくり描くことで「朝」を表現したのが「新しかった」のだと。手塚、トキワ荘の流れとは別のところで育ったちばてつやだからこそなし得た新しさ。
こういう視点で漫画を読んだことなかったので非情に参考になった。漫画に限らず映画でも何でも、「何気ないシーン」にも何か意味がある(何かを表現している)、というのは何となく意識はしていたけれど、こういう読み解き方をすればいいのだ(そう簡単なことではないけれど)。
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満点にしなかったのは図版が1枚も無いことから。
価格を安く抑えたかったのだろうが、マンガの研究書で図版が無いのは隔靴掻痒。
この本、異様なまでに開きやすく、最初は背割れしているのかと思った。コデックス装という特殊な製本らしい。
苦言を呈したものの、全巻つきあうつもりでいる。
マンガの背景描写の革新に関谷ひさしが一役買っているという指摘はさすがみなもと先生。
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みなもと太郎先生と岡田斗司夫の対談を見て、この人面白い!と思って読んでみた!!!
今まで何冊か漫画の歴史を紐解いた本を読んできたが、この本はその本達と一線をかくすキレ味のある素敵な本だった。
何しろ、みなもと太郎先生自体が、実際その時代を生き漫画家として過ごしたのだ、書き味のリアリティは別格だ。(多分に主観が入ってるかもしれないが)
また、もともと歴史モノが好きな先生で、
「歴史は数多くの名もなき人の、ちょっとしたことで大きく動くことがある」というメッセージも好きだった。
書いてあって結構意外だったのが、
手塚治虫が、意外と嫉妬深いというか、若手にライバル心を燃やしている人だったということだ。
マガジンとサンデーのバトルや、
劇画、かわいいという日本古来の概念、少女マンガなども面白かった。
続きが見たくて仕方がないが、
亡くなられたみなもと先生の置き土産として、
続きは自分で妄想することに。
ご冥福をお祈りいたします。