紙の本
いま読まなければ
2017/10/19 11:26
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投稿者:ころ - この投稿者のレビュー一覧を見る
日本の現状と、起こりうる(既に起きている?)未来を描いた本。
数年前に連載開始した小説の内容が、現実になってきていることが恐ろしい。
「目を背けずに現実をみて、自分の言葉で考える」「多様性を受容する」等、"人間"らしいことが当たり前でなくなり、利権や富が一部の人に集中し、マスコミ報道への圧力もかかるようになってしまった現在。その結果、将来どうなるかを、多くの人に読んで考えてほしい1冊。
紙の本
本質的な何か
2018/02/22 21:20
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投稿者:暇ではいけないはずの誰か - この投稿者のレビュー一覧を見る
ナショナリズムが暴走し、独裁体制の監視国家が出現した時代を描くSF作品。
ジョージ・オーウェル氏の1984に少し似た内容だったかなと思う。
救いがないところも同じく。矢崎なんてまさにウィンストン。
読んでいてゾッとするのは、やはりこの本が人間の本質を突いているからではないだろうか。
例えば、半径5メートルの幸福や、気持ちよい流れに身を任せ、ふとすれば考えることを放棄する民衆。正しく生きるということは、幸福に生きることとは違う、「幸福」になるためには、周囲で確実に起こっている不幸から目を背け、隔絶した空間に逃げ込むこと、などなど。
なにより恐ろしいのが、こうして感想を書いていても、一週間後には私自身もこの内容を忘れてしまっているだろうということ。結局、自分もその狭い「幸福」に満足してしまうのではないか、という恐怖。
このように問題提起をされる中村氏に敬意。
最後に、教団Xや今作品への、あまりにも的外れな批評が多いので、個人的見解を述べたい。(どんな批評も、基本は認められるべきだと思っているが、こればっかりは)
多かったのが、左翼思想だ、という批判だが(Amazonレビュー等)、この作品が指摘しているのは、人間の本質であって、それは左翼右翼のさらに一段深いところのものだろう。それを、左翼に被れた~、などと言って批判しているのは、流石に的外れではないだろうか。
紙の本
1番怖い
2022/10/03 13:59
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投稿者:ひま - この投稿者のレビュー一覧を見る
小さい頃からぼんやり怖かったことを一つずつ精細に描き出された印象でした。
そしてあの時怖がってたことは間違ってなかったと思えました。
正しく恐怖して、正しく選択することは難しい。
簡単な落とし所を選ばないこと、自分は視野が狭くて怠惰な人間だと自戒すること、共に生きること。
共に生きたいです、とても。
人はどこからチンパンジーなのかなと思ったが、どうもたまに見るチンパンジーはなぜか、チンパンジーであることを誇りに思っているように見える。
思うな。
紙の本
オーバーラップする
2017/12/23 18:52
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投稿者:咲耶子 - この投稿者のレビュー一覧を見る
近未来の世界、あちこちで起こってる戦争、島国R帝国で起こる侵略やテロなどを描いてます。
結構残酷で、救いようがない内容なのに、勢いがあって一気に読んでしまいました。
現実の出来事が正体不明の小説として出て来たり、今の世界情勢と重なる所もあり、ちょっと怖かったですね。
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建前として民主主義で運営されているR帝国。国は実質「党」が支配し、マスコミも支配下にある。野党すら「党」に選定されている。しかし国民は結構豊かな生活を享受している。そんななか突如Y宗国という宗教原理主義国の侵略を受け、戦争状態に陥る。侵略されたコーマ市は島で、沖縄のように軍事基地建設を拒否していた行政区であった。この唐突に始まった戦争は、何の目的で起こったのか、その理由が徐々に明らかになっていく。
そして、主人公達の極小さなグループは、世論を操り、戦争を主導している権力に対し、真実を明らかにすることで戦争終結を試み、成功を収めたかに思えた。
しかし、「人々が欲しいのは、真実ではなく、半径5メートルの幸福なのだ」となる。
パラレルワールドであり、Rは日本、YはISIS、Cは中国みたいな世界観なので、イメージはし易い。
ただそれ故に、R帝国の悪どさも、現日本の陰湿さと似通っていて、新味が感じられないのは残念。
戦争・格差・人種差別・・・これらに対して、現代日本の(世界的なのかも知れないが)少し延長上にある考え、人間の本質をいやらしく書いた、なかなか面白い本では有る。
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〝世の中〟を覆う、抗いようの無い大きな厄災。
〝社会〟〝世界〟の薄皮を捲るて見える、黒く渦巻く爛れた意思。
どうしようもない〝今〟を抉る問題作。
この作品を否定できるヤツはいるのか?
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党に牛耳られる国民もこわいが、HPという機器にあやつられてしまう国民もこわい。電車の中で読んでいてふと顔をあげたときにスマホにのめり込んでいる乗客ばかりが目に入り、ぞっとした。
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「共に生きましょう」というのは、教団Xのあとがきにもあったっけ。
こちらのほうが共に生きようの重みが強い気がする。
カルトであれ、国家であれ、未来の日本にとって脅威となる構造自体は似たようなものだが、国家が主体となるとやはり恐ろしい。
「1984年」や「華氏451度」よりも起こりうる監視社会。
思考停止に陥らぬようアンテナを張り巡らさなければ。
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「R帝国」
中村文則18作目。
「ななにー」での誕生日サプライズで小説やインタビューからは見え難い中村文則の人間的な魅力が見えた。あの日以降、小説以外の面で妙に気になる作家さんである。自らを暗い性格でそれが小説に反映されていると何かの媒体で聞いた気がする。でもユーモアな小説を書いたらとても面白いのでは無いか?と思っている。
R帝国はどうみてもユーモアなものでは無く、絶対権力の「党」が支配する国で人々はどのように振る舞うのか?が一つのポイントになっている。もう一つは、あとがきにある「現実にあるものを風刺していると一目で分かるもの」から「一見何を風刺しているか分からないもの」「風刺ではなく根源を見ることで文学として表現したもの」が盛り込まれていると言う所。
後者については、現実世界に生きる我々の社会の行く末がこの小説の将来を決める構図になっている点をも踏まえると、現実世界に生きる私達はR帝国の戦争を見届けて終わりと言う訳にはいかない。ただのフィクションであればお終いで良いが、フィクションに沢山の風刺が盛り込まれ、其々が重要な役目を果たしている。全ての風刺を言い当てることは出来ないが、分かる範囲の風刺だけで、このR帝国はフィクションでは無いと感じ取れてしまう。吉川のメッセージ「誰か僕達を助けてくれ」。現実世界の社会の行く末がR帝国の将来を決める。そうであれば、私達は吉川の叫びを聞き、助けてあげることが出来る。
吉川だけではなく、アルファ、矢崎、サキ、栗原と、様々な立場の人間がメッセージを発している。そして、加賀。彼の独白は、現実世界に生きる人間における芯を言い当てている部分がある。特に、人々が欲しいのは、真実ではなく半径5メートルの幸福だ、は痛烈、痛快、皮肉、正論、大論点なメッセージだと感じた。このメッセージは、間違いなく今の世界に該当する。
前者は、後者と連動していたと感じた。絶対権力の「党」が支配する国は、支配とだけ聞けばR帝国は住み難い国である。党が真実を制御し、正しいとしたい真実だけを人々に流している。一方で、人々はと言うと、その真実が自分達に都合の良いものと解釈し、そこで満足する。又は、都合良く処理し、不適当なものには罵詈雑言を吐く。彼らにとってみれば、都合良い真実があれば、自分達の暮らしは維持される訳で、それはそれで都合の良いR帝国となっている。人々が欲しいのは、真実ではなく半径5メートルの幸福だから、5メートル以上は関係無い。
Lとしては、対峙すべき相手は党だけでは不十分で、本当は人々であった。この追加された「人々」が最も対処困難であり、ラスボスはこっち。しかし、攻略は容易では無い。それは、現実世界に生きる私達が最も良く理解していると思う。党が制御する真実以上に、その真実をどう捉えるかと言った個々人の思考までを正す、説得するのは非常に困難。それは、例えばどんなに理論整然に説明しても納得しない、できない、しようとしない人がいるのと同じと考える。
風刺を盛り込んでいる分、R帝国の世界は無視出来ないもう一つの現実とはっきり見えてくる。中村文則の言わんと���たメッセージがじわじわ、ぞろぞろ、のそのそと這い出てくる。R帝国の先を占う意味でも、現実世界で生きる意味でも、頭を捻りながら、メッセージを考慮する必要がありそうだ。
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いかにも賛否が分かれそうな内容。
著者が無政府、無秩序主義者ではないとは思うが。
国民国家の暗部や悲劇を描いた本は過去にもたくさんあるが、本書は明らかに昨今の政治状況に依っていて、読んでいて居心地が悪い。
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夕刊連載ということもあるのか、著者の作品にしては珍しくド直球の作品。構図が単純な分、本当に考えさせられる内容だった。特に342頁からの加賀の語りは示唆に富んでいる。また作品中に「小説」として出てくる現実世界の歴史解釈にも目を見張るものがあった。深いが読みやすくあっという間に読了。「掏摸」とは全く違う意味で著者の作品が好きになった。北朝鮮がミサイル発射を繰り返し、水爆実験をも実行している今こそ、是非読みたい一冊だと思います。
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面白い。
設定がユニーク。
国の言うことをを鵜呑みにせず、疑ってかかるべきだと言われているよう。実際にこの作品のような事が起こっているのではないかと思わされる。
最後、浮かばれない、悲しい展開。
映画化されたら面白いんじゃないかな。
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情報統制された国のお話。政治的なものあり宗教的なものあり、現代の風刺、そして、中村さんのお話である善と悪との物語。チンパンジーのこと、幸せのこと、いろいろ考えさせる。重い。
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===qte===
あとがきのあと「R帝国」 中村文則氏 全体主義が覆う近未来
2017/9/16付日本経済新聞 朝刊
天才スリ師の葛藤を描いた小説「掏摸(スリ)」の英訳が米紙の2012年小説ベスト10に選ばれ、14年には優れたノワール(暗黒小説)の書き手に与えられる米デイビッド・グディス賞を受賞した。海外でも注目を集める作家の新作は、近未来の島国を舞台にしたディストピア(反理想郷)小説だ。
「資本主義で民主主義、経済大国なのに独裁主義という国家を思い描いた。意識したのはジョージ・オーウェルの小説『一九八四年』ですが、そこで描かれた『ビッグブラザー』という独裁者が君臨するのとは違う形を考えました」
絶対的存在の政権与党、国家党(略称“党”)が支配するR帝国。会社員の矢崎は戦争のさなか、女性兵士アルファと出会う。かたや“党”の幹部によって記憶を消されそうになった政治家秘書の栗原は、秘密組織“L”のメンバー、サキと行動を共にする。
「最初に思いついたのは『朝、目が覚めると戦争が始まっていた』という冒頭のシーン。全体主義の国だったら、たとえ戦争が起きたとしても驚かないだろうと考えた」と振り返る。
人工知能搭載の携帯電話が普及するなど情報化がさらに進展する一方で、全体主義が蔓延(まんえん)する近未来の島国を舞台に、男女4人が過酷な運命に巻き込まれる。「政治、戦争、テロ、差別など様々な問題を取り入れた。テーマが大きいので、主要な登場人物だけでも4人は必要だった」
宗教や善悪の問題に迫った「教団X」(14年)など社会的テーマを小説で取り上げてきた。「自らが疑問や不安、不満を感じたら、ためらわずに書くのが作家だと思う。僕はサルトルや大江健三郎さんに影響を受けていることもあり、政治や戦争については書いていきたい」と話す。
海外の読者を意識しながらも「日本人だから思いつくことを大切にする」という。「小説を読んでもらうことは他者への共感につながる」と信じ、幅広い作品の執筆に邁進(まいしん)する。(中央公論新社・1600円)
(なかむら・ふみのり)1977年愛知県生まれ、福島大卒。2002年「銃」で新潮新人賞を受賞してデビュー。著書に『土の中の子供』(芥川賞)、『私の消滅』など。
===unqte===
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近未来のR帝国が舞台。帝国の住民に巻き起こる戦争や政治や社会問題なども提起されていたり、家族間の問題、住民同士の様々な感情が渦巻く世界を感じる。更に現代のSNSの投稿によって虚飾されたもうひとりの自分がいて、互いに本当の自分を見せずにいい事だけを見せたり、自己顕示欲の表れが強いことなど、作中のことは現代に起こっていることもあったり、近々起こりゆるだろうと感じてしまう。想像すると悍ましい気持ちである。もうすぐ選挙もあり、政治は変わるのか、近未来といえば、AIが生活にどう影響するのか気になる。