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痛烈な描写。それは現に檸檬を見て、匂いを嗅いでいるかのよう。そして思わず顔をしかめずにはいられないくらいの、吐かれた痰の色。それらは病に侵され、憂鬱が満ちた生活を送った作者だからこそ見えた世界であり、出来た描写だと思うのです。そんな作者の生活がリアルに写された、短篇集が詰まった本でした。この本、「桜の木の下には屍体が埋まっている!」の一文の原作を知りたくて購入しました。この短篇も痛烈な描写と、人間心理が描かれている印象深いものでした。どの短篇も言葉遣いが難しく、ページ数の割には個人的に読了に時間が掛かってしまいましたが、じっくりとものの描写や人間心理を感じながら読める1冊だと思います。
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あまりのクレイジーっぷりに、高校の現代文の授業ではいまいちピンと来なかったんだよなあ。
今ではだいすきな作品です。
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読むのに結構疲れた。というのは難しいというんじゃなく、似たような話が多くどれも病気の人の話なので気が滅入る。
文章自体はとてもきれいで詩を読んでいるよう。まだ道路が舗装されていなくて、木の柱に括り付けられた電灯がぼんやり灯り、板を打ち付けた塀の向こうから生活の気配を感じる、そんな昔の光景がありありと浮かぶ。
一冊通して読むと疲れるので、時間の空いた時に一編だけ読むという読み方がお勧め。
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面白かった…けど、ちょっと難しかった。
一気に読んだのは失敗だった。
私にはちょっと早かったな、これを読むのは。
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風邪をひいたときに、ふと普段はなんてことのない、取るに足らないようなものが無性に愛おしく感じたり、逆に憎らしくなったりする。そんな感覚で梶井基次郎の檸檬への愛着を捉えると、色、重力、形がなんとも鬱状態の対岸に位置する象徴的な意味合いを帯びてくるから不思議だ。質量の捉え方が大きく揺さぶられる。自分の無意識的な質量に対する概念が意識下にさらけ出されるような作品。
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高校生以来、読んでこなかった檸檬。
久々に手にとる。この本を読むと、色彩が思い浮かぶ。だんだん明るくなったり、急に暗くなったり。
けど、最後は霞んだパステル調で終わる。
短いけど、ドキドキしたり、ワクワクしたり、憂鬱になったり、主人公と一緒に気持ちが変わっていくのも、楽しい。
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「読書が趣味」なんつーからには、やっぱり名作は一通り読んどかないとまずいわな、ってんで手に取ったのが本書。
そう、未読だったんです。
表題作はあまりにも有名ですよね。
病魔に侵された主人公の「私」。
しつこかった憂鬱が、たった一顆の檸檬で紛らされる。
それに近い経験ってありますね。
すぐに思い浮かばないけど。
ところで、梶井には「瀬山の話」という作品もあり、本書にも収録されているのですが、その中に「檸檬」の一部が含まれていて、何と言うか、一人悦に入りました。
梶井は大正から昭和にかけて活躍した作家です。
作品は原文を新字・新かなづかいに改めているものの、現代人であるところの私には、やっぱり読み慣れていないからか、字面を追いながらも途中、集中を欠いて「ああ、山岡家のラーメンが食べたいな」などと全く別の事を考えて、筋を見失うということが何度かありました。
文豪に対して何て失礼な。
でも、やっぱり、たとえば「城のある町にて」の描写なんて思わず息を呑むし、「Kの昇天」の不思議な世界観は、これまで読んだ小説にはないもので瞠目しました。
いいね、梶井基次郎。
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主人公のほとんどが結核や神経衰弱に苦しめられている青年です。
日常のワンシーン。その時の彼の行動、彼が思ったこと。などが眈々と書かれていて、これは静かにゆっくりと死へ向かっている人の話で、とても寂しい。劇的な事が何にもないことがとても寂しい。
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病的ながらも清々しい檸檬、の印象に謀られ後半げっそり。一生言ってれば…と思ったら著者は一生言って他界したそう。あっぱれ。
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「Kの昇天」
"哀れなるかな イカルスが幾人もきては落っこちる"
月夜のN海岸にいつまでも佇みK君の魂の飛翔を見つめていたくなります。(R.K)
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梶井基次郎の代表作と言われている『檸檬』を読みたくて大分前に購入したのですがずっと積読状態になっていたところをやっとこ読了。
うーん。久々の純文学でしたが面白かった。
(毎度の事ながら理解が出来なかった作品もしばしば有。)
この方が生前は評価されていなかったことや三十一歳の若さで亡くなっていたこと、『檸檬』が『瀬山の話』の挿話であったことなど知らないことばかりで驚いた。
そして1番印象に残ったのはやはり『瀬山の話』。
精神が分裂していく中で瀬山が自分の名前を呼び叫ぶ場面は鳥肌もの。
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「檸檬」「城のある町にて」「雪後」「Kの昇天」「冬の日」「桜の木の下には」「冬の蠅」「ある崖上の感情」「闇の絵巻」「交尾」「のんきな患者」「瀬山の話」「海」「温泉」
解説「梶井基次郎ー人と作品」相馬庸郎
作品解説 淀野隆三
同時代人の回想 荻原朔太郎、三好達治
心情の表現の仕方を楽しむべき、詩だ。そこに、物語というものは必要ない。あらすじを書く事の容易でない小品集。
「桜の木の下には」と「Kの昇天」は、まるでポオの短編のような雰囲気があった。
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詩や散文の延長線上にあるような文章で、ひたすら表現が美しい短編集。
濃かったり激しい波があるような物語はほとんどなくて、そうなると平坦になりがちなのに、表現だけで読ませるような感じ。
そういうのを書くのはすごく難しいと思う。
物語自体を波だらけにするのはそこまで難しくないけれど、何もないような物語を名作にするというのは。
長らく肺結核を患い、31歳という若さで亡くなった著者なので、病を患った陰鬱な内容もけっこう多い。だけどその状態をシニカルな視点で見ているような感覚もある。
その死後に認められ、稀有な作家だったと皆が口を揃えて言うようになった作家。
ボードレールの詩に親しんでいた影響も随所に出ているらしい。
映画の「小さな悪の華」を観た影響でボードレールの詩集を1冊持ってるんだけど、内容が暗く激しくてずっと読み続けることは出来なかった。ということを思い出しました。笑
「Kの昇天」「桜の樹の下には」「冬の蠅」「ある崖上の感情」がとくに好き。
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【推薦コメント】
梶井基次郎の代表作「檸檬」は、高校の授業で触れたことがある人も多いのではないでしょうか。私は本当に梶井基次郎の作品達を愛していて、彼の繊細で、五感に語りかけてくるような描写の巧さがたまらなく好きです。
ひとたび読み始めると、憂鬱なのに美しい世界にどっぷりとのめり込んでしまいます。きれいなものではなく薄汚いものにひかれ、美しいと思っていたものが嫌いになったり…精神や体力の衰えから、主人公は物事をややひねくれて受け取っている様子がなんとも痛々しく、それでいて物語の色や風景が、コロッとビー玉を転がすように鮮やかに変わっていく様子が読んでいてとても面白い。
作中に出てくる「赤や黄のオードコロンやオードキニン。洒落た切子細工や典雅なロココ趣味の浮模様を持った琥珀色や翡翠色の香水壜。煙管、小刀、石鹸、煙草。」など、物語に鮮やかさを演出する、彼の好きなものたちに、私もすっかり魅了されてしまいました。情景描写がまるで水彩画なみたいな彼の作品は、文学であり、芸術(アート)作品をみているような気持ちになります。興味のある方は、ぜひ御一読ください。
<情報学部 Wさん>
企画コーナー「企画本棚2015-後輩に贈る本」は(2Fカウンター前)にて展示中です。どうぞご覧下さい。展示期間中の貸出利用は本学在学生および教職員に限られます。【展示期間:2015/4/13〜】
湘南OPAC : http://sopac.lib.bunkyo.ac.jp/mylimedio/search/book.do?target=local&bibid=1642833
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一年近くかけて読了。
始め退屈だと思っていたけど、最後の「海」「温泉」等の未完成作品を読むころには読み終わるのが惜しくなっていた。
透徹した表現力が好きだ。