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2017年38冊目。
イギリスで、労働者階級に対する不快感を込めて使われる言葉「チャヴ」。
中流階級のような上品さがない粗野な下流階級、という意味合いが込められているという。
チャヴヘイトとも言える彼らへの攻撃は、マスコミの報道、政治家の発言、チャヴ撃退を謳うトレーニングビジネスの宣伝文句にまで表れる。
その過激さに、正直吐き気がした。
暴力的、不正受給した社会保障を食い物にしている、金がないくせに子どもをたくさん生む...
(一部そのような事実があることは認めるにせよ)そのような悪印象だけが一面的に語られ、「貧しいのは自己責任」と切り捨てられる。
そんな社会に怒りを覚え、警告をあげたのが、本書著者のオーウェン・ジョーンズ。
20代で書き上げたこの本は世界中で翻訳され、各国の政治運動に大きな影響を与えているという。
・社会保障の不正受給による損失は年間約10億ポンド=約1450億円であるのに対し、脱税による損失は毎年約700億ポンド=約10兆1500億円。約70倍。
・法人税を世界最低水準の24%に引き下げた一方、貧困層ほど割が重くなる付加価値税(消費税に近いもの)は20%に引き上げられた
このデータはほんの一例で、他にも彼らの悲惨な住宅事情や求職の難しさが、そもそも(特にサッチャー時代の)政策から生み出されていることを指摘している。
労働者階級の人々の環境は、彼らの自己責任というだけで低福祉社会に移行していくことで、本当に改善していくのだろうか。
貧困構造を生み出しているもっと大きな課題はないのだろうか。
この問いは、イギリスだけに当てはまるものではなく、日本人の立場で読んでもかなり考えさせられる。
政治家や全国紙のジャーナリストのほとんどは、中流以上の階級の出身だそう。
現場感のない権力者ほど恐ろしいものはない、と思う。
(「イギリス人の平均年収はいくらだと思う?」という質問に、ある編集者は「8万ポンド=約1160万円」と答えたそう。実態の4倍近く)
現場の真実を知ってしまうことが既得権益者にとって不都合、として避けているのであれば、なおさら。
少なくとも本書を読んだ限りでは、現場を本当に知った上で「自己責任だ」という言葉が出てきているのだとは、とても思えなかった。
衝撃の強い一冊。
まさに「世に問う」という意気込みを感じた。
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読み途中。(みんな読んでー!)
サッチャー政権から(ほんとはもっと昔?)仕向けられてきた格差ある社会。政策、とまでいかない小さな変化が伏線だった?まさにいまの日本でも!?
2011年のベストセラーというのに、日本語版はつい先月に発売。一刻も早く読まないと!あせってくる。こわいけど、目をそむけたらダメだ、考えるのをやめたらダメだ。まして一緒になってチャヴを揶揄したら見るべきものが見えなくなっちゃうYO!!!
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読後天を仰ぎいろいろ絶望。たぶん今後の日本にはこれを上回るひどい状況が待ち受けているであろうことも明白でさらに嘆息。
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2018年1月読了。
149ページ以降で紹介されている「チャブ・ヘイト」の紹介が印象的。
「ようこそ、王族が労働者階級のまねをしてふざける二一世紀のイギリスへ!」(150ページ)
「ブリティッシュロック」の国はどこに向かっているのか。
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イギリスの白人労働者階級が職を失い、苦境に陥っているのは、産業の空洞化、エリート階級による搾取が原因だ。
しかし、彼らを貶め、怠惰と決めつけることが現在の風潮になってしまっている。そのからくりを見事に暴いた名著。
安易な固定観念で「自己責任」で片付ける風潮は怖い。
本書に書かれていたように、社会保障費の不正受給の総額よりも(もちろん、これもあってはならないことだが)、富裕層、超富裕層の脱税の総額はそれをはるかに上回っている。
冒頭に書いた「弱者を敵視する社会」となってしまった現代のイギリス。
この現象は、先進国で起こっており、そして、まさに今日本で起こりつつある現象で、日本が歩んでしまうような危惧を覚える。
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チャブとは、低所得白人層をさす侮蔑後。
イギリスにおける、この層に対するバッシング、というかもはやイジメとしか思えないの状況と、その背景にある労働党の変質、サッチャー政権による労組無力化を説明している。
この本を読むと、ここ数年の日本でのリベラルへの不信、そして生活保護へのバッシングが、別に日本独自なわけではなく、イギリスで先行していたいわゆる「改革」によって引き起こされていることが理解できる。
原著は2012年で、トランプ政権発足や、BRIXITを織り込んでいないが、ブレイディみかこの一連の本と併せ読みすると、より立体的に理解できるように思う。
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「弱者を敵視する社会」とある。英メディアが生活保護不正受給者をバッシングする過剰報道を行う一方、その何十倍の規模で着服され続ける政治資金には触れられることがない社会。そして、中流階級の子供が誘拐された時には同情的世論が集まる一方で、労働者階級の子供が同じように誘拐された時には、その家族が批判される社会。
その背景にはサッチャリズムにより作られらた中流階級志向がある。労働者階級と中流階級には格差があり、労働者階級からの脱却は向上心があればできるという幻想が作られた。つまり労働者は怠惰によってその位置にいるわけであり、貧しい生活を強いられるのも自己責任、よって社会福祉予算を削減することも致し方がないという風潮ができあがった。
サッチャリズム以前のイギリスでは、労働者階級とは英産業を支える役割として認識されていた。しかしサッチャリズム以降、労働者階級とは「貧しく、知性がない」という意味合いとして捉えられるようになった。
そこには、保守党の脅威として存在した労働党や労働組合自体の弱体化の狙いがある。
「チャヴ」という言葉は「貧しく知性がない労働者階級の若者」という意味を持つ。サッチャリズム以降に醸成された「労働者階級=怠惰、無気力」といったような自己責任社会において最下層に置かれる若者を指す。
しかし、労働者階級の多くの人々がそうならざるを得なかった背景には、保守党が行ってきた英産業の破壊による労働者階級のコミュニティや雇用先の破滅がある。
奪うものを奪っておいて、結果は「自己責任」である。
日本でもこのような風潮が見られる。若者を中心とした政治不信に、労働に対する忌避感。生活保護受給者に対する国民の目線は厳しく、メディアの偏向報道に従って国民の世論は「炎上」する。大相撲の暴力事件や不倫騒動を一日中報道する中、看過されたもっと大きな出来事はないのか不安にもなる。
国によって「弱者」と定義される人は変わる。その弱者がどのようにして、何の目的で生まれたのかを知らなければならないと感じた。
学力社会における弱者は、大学にまで行けなかった人達。では行けなかった理由は彼らが怠惰だったから?貧困に陥っていたから?ではそうなった理由はどこにあるのか。自己責任で片付けてはいけない。
個人の生活としてもこの本から学んだことは生かせる。職場でいきいきと働くことのできていない人がいる。その人がそのような状態にあることを自己責任で片付けてはいけない。原因はどこにあるのか、考えなければならない。
Twitterアカウント
@morichy3333
#chavs #チャヴ というタグ付きでその時考えたことも呟いています!
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・「ニート」発祥の地、イギリスにおける「チャヴ」という現象。
日本において定着した労働政策に関する用語の一つに「ニート」がある。ニートとは、Not in Education,Employment or Training “NEET”つまり、就学、就労、職業訓練を受けていない事を意味する用語である。
本国イギリスでは、1999年の労働政策の中で作成された調査報告書内の一文から出てきたものである。
本書においても一箇所、ニートについて触れている部分がある。
以下、引用本書261頁より
「地元には、やってみたくなるまっとうな仕事がほとんどない。若者の四人に一人はどこかの段階で『ニート』になる。ー六歳から一八の『教育も受けず、雇用もされず、研修中でもない』若者のことだ。産業に徒弟制度がなくなったことで、労働者階級の若い男性の多くには、選択肢もほとんどなくなった」
本書ではこれ以上ニートに関する話題は出てこない。しかし、この言葉の定義以上にイメージが定着した日本の「ニート」とイギリスの「チャヴ」、それがどういった若者達をさすかは非常に似ている。
まず、日本におけるニートのイメージは以下の本田由紀のインタビュー記事の引用にあるように、今まであった様々な問題を含めた上で結局若者の「やる気のなさ」「向上心が欠けている」というような個人の内面の問題として捉えられてきたし、捉える方が都合が良かった。
以下、引用
http://www.futoko.org/special/special-02/page0513-121.html
「ニート」という言葉は、04~05年にかけて急速に広がりました〜きっかけの一つが、「働かない若者『ニート』、10年で1・6倍 就業意欲なく親に”寄生“」という見出しで一面に掲載された、2004年5月17日づけの産経新聞の記事です。それにより、日本のニート概念、つまり「意欲のない若者の増加」「親への寄生」というイメージが色濃く定まってしまった感があります。その後、「ひきこもり」や「パラサイト・シングル」といったニート以前の既存の概念もニートに集約され、あの急速な広まりが生まれました〜ニートという言葉の広がりを見て、政治家や識者からは「愛国心がないから、国のために働かず、ニートになるんだ」「ニートを育てた親の教育が悪い」といった意見も出されました。
本書「チャヴ」においても似た議論がある。広まる時期まで似ている。
本書15頁より
「二〇〇五年に初めてコリンズ英語辞典に載ったとき、『チャヴ』の定義は『カジュアルなスポーツウェアを着た労働者階級』の若者だったが、その意味は著しく広がった〜いまや、チャヴということばには、労働者階級に関連した暴力、怠惰、十代での妊娠、人種差別、アルコール依存などあらゆるネガティブな特徴が含まれている」
以上のように本書ではチャヴという言葉の使われ方、イメージがどのように広がっていったかが述べられる。
そしれ、その言葉のイメージと実態が異なる事、実態を見えなくさせようとする動きを指摘している。
・上下を隠す動き
昔に比べて無気力な若者が増えてイギリスが悪くなったという言説、「ブロークンブリテン」と呼ばれるものは、実際には、サッチャー政権下でおきた���働者階級の分断、産業の空洞化がもたらした真空地帯にほとんど何も手当を施さなかったどころか、「支援を受けるやつは向上心の無い怠け者だ」とするレッテルを貼って、責任を個人の能力の欠如とした事だった。
レッテル貼りにはその政権の人間だけでなく、メディアや有識者も、左派も右派も加勢した。
これは上下の対立を見えなくするやり方であって、本書の核心は常に権力のあり方、行使のされ方だった。
本書361頁より
「本書で論じたかったのは、憐れみやノスタルジーではなく、権力だった〜われわれは実質的にみな中流階級だとか、階級という概念はもはや時代遅れ、社会問題は個人の失敗の結果といった言説、どれもまちがっている」
権力のあり方が資本と結びつく事を指摘した世界で最も有名な著者、カールマルクスはドイツ人ジャーナリストだった。ジャーナリストは世界を下から見ていき、権力のあり方を分析し、批判するべきだと思う。
これはまっとうなジャーナリストが正面から権力について迫った本だった。
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本書を読むと、日本も英国も、資本主義の矛盾としての「失業」「貧困」が、政権党の政策の失敗であることが、共通点として、うかびあがる
失業は何より「階級問題」だ、と著者は明確に述べる
本書は、第5章で明確な「労働者階級」の定義をする。
著者は、右傾化した労働党のニール・キノックの労働者階級とは、労働力を売るほかない階級だと、右傾化したわりには、マルクスの定義通り語るキノックの言葉を引用しつつ、検証的な批判をする。
大学教授も他人に労働力を売るほかない労働者階級だろうか、と。
ちなみに、副題に弱者と書かれてあるが、それは、弱者ではなく、労働者階級、なのだ。正しく、労働者階級と書かなくてはならない。
本書によると、英国の左派も階級政治からアイデンティティ政治へ鞍替えした、とある。
日本もそうだが、おかしなことに、日本では、小池百合子がアイデンティティ政治の先頭を切ろうとした。
本書は、バス運転手、清掃員、スーパーのレジ係がいなくなると社会は困るが、広告会社の重役、経営コンサルタントが突然いなくなっても困らない、むしろ、改善されるだろう、と断言!
本書は、左派は海外での不当な戦争に反対するのもよいが、労働者階級の喫緊の問題に対処すべきだ、と訴える。
私も同じ意見である。
久しぶりに、スカッとした読み物だ。
労働者階級必読書
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畳みかけるようにいろいろ出てくるのでゲッソリしてくる。ともかく量があるので、やはり日本語で読んで正解。原著だったら投げ出してるな。この量感が英米の力なんだろう。
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とても興味深かった。ただ、英国に居住しない人にはあまり関連がない内容だとは思う。
著者は労働者階級の町出身で、オックスフォード大学で学んだ20代の若者である。彼は英国では生まれながらにして階級制度が存在するため、下層の人たちに機会がないことに憤慨している。そして社会の断絶や貧富の差をひどくしたのは、サッチャー元首相による、工業と労働組合の破壊だと論じる。昔の労働者階級はスキルも誇りもあったのに、今は公営住宅に住んでいる人々はチャヴと呼ばれ蔑まれている。中流階級の人は、彼らが今の状態にあるのは怠惰が原因と考えるが、努力不足でそうなっているとは限らない。著者はブレア元首相率いるニューレイバーにも落胆している。
よくここまで調べてはっきりと書いたな、という感想である。ただ、自分が非英国人だからかもしれないが、ブレイディみかこ氏の「労働者階級の反乱」の方が、よく書かれていると思う。チャヴというタイトルはセンセーショナルだが、内容はイギリスの政治史に近い。それだけだと日本人との関連が薄いので、帯に日本でも同じことが起こる、と書いてあるが、私はそうは思わない。
10年ほど前にジェイドという女性がメディアにいて、典型的チャヴだったのを思い出した。10代で出産し、貧乏なエリアに育ち、教養のない話し方をする。私が住む街にも当然たくさんいる。上下揃いのジャージ、闘犬を連れていて、日本でいうなら不良と呼ばれる人かもしれない。イギリスの階級は本当に根深く、チャヴの家庭に生まれたら、努力で中流に属するようになるのは、ほとんど不可能である。筆者はそれを嘆いていて、彼なりの提案もあるが、社会を変えることはできないだろう。面白いのは、この本が英国外で意外なほど反響を呼んだということだ。
イギリスの社会問題に興味がある人にオススメ。
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イギリスの労働者階級が、サッチャーの新自由主義以降にいかに保守層からの攻撃によって貶められてきたかを、20代の著者が解き明かし、糾弾した本。
著者の熱い筆致が400ページにわたって繰り広げられ、読みながらも何ともやるせない気持ちになります。
本著によると、サッチャー以降にイギリスに起きた出来事として・・・
・サッチャーが階級なんて無いんだよ、自己責任だよ、と主張
・労働運動を弾圧して、労働者層を中流階級に行けるそうとそうでない層に分断
・結果、意外に労働者層にも受けて、労働党がボロ負けして労働党も中流寄りの「ニュー・レイバー」に変化(サッチャーは、この敵の変節が自分の最大の功績だと言ったとか)
・労働者層の味方はいなくなり、賃金が下がり、仕事も補助金もなくなり、税金は上がる
・そこまで大きな影響じゃなかった移民の影響を取り上げたナショナリズム政党が躍進
というコトが起き、労働党何やっとんねん!とキレる事象にいたった訳です。
驚いたのは、「金持ちケンカせず」って言うと思うんですが、イギリスの富裕層はメッチャ労働者層にケンカ売って法人税やら所得税やらを下げにかかってきたところ。
著者は、法人税を引き下げて、貧困層に重くなる付加価値税(消費税見合い)を引き上げたことを「これこそ(富裕層から貧困層への)階級闘争だ」と表現していますが、そういえば思い返してみると、どこかの国でも同じようなコトをやってませんかね。。
電話+パソコンの普及がコールセンターを生み出し、人ではなく機械で構成される工場の拡大が工場労働者の消滅に至るこの流れ自体は、イギリスだけではなく世界中どこでも起こること。
なお、著者が文中に挙げたイギリスの平均年収は300万円台だったのですが、ネットで検索すると614万円という数値が出てきます。(ちなみに日本は429万円)
614万円は正規雇用者で、著者の数値が非正規を含む数値なのかなと踏んだのですが、日本も結局同じコトで、非正規の年収を検索すると200万円を切っていて、結局日本は既に上記のイギリスよりも悪い状況にあるように感じます。
強いて救いがあると思うのは、本著の末尾にもちょっと出てきた、格差を著すジニ係数をネットで検索してみると、イギリスよりも日本が「ちょっとマシ」な様子なこと。まぁ大して変わらないのですが。
本著を読んだ個人的な目的の1つとして、イギリスのこの状況は日本と比べてどうなのか、将来どうなるのかということがあるのですが、読み終わってみて、どうにも明るい気持ちにはなれなかったです。
敢えて言うと、日本では安部政権が労働者の賃金を上げようとしているというのはあります。(実際に上がっているのかは正直気がかりですが。。)
とは言え、本著を読むことで日本の将来を推測して暗~い気持ちになるのはあながち的外れではないのではないかと感じてしまいます。
ではどうするのか。富裕層ばかりが太る世の中の流れを止め、最低限の機会平等を実現するためにも、本著を読んで感じたことは「ちゃんと政治参加(投票)をすること」です。
正直、政治ができるコトなんてこの時��もはや限られていると思っていたのですが、本著がなぞったイギリスの流れを読むと、政治的影響力が弱まるとその層への徴税強化や補助金削減に繋がっていて、意外にあなどれない要素になると感じました。
適切な投票先は、ひょっとすると未来永劫産まれないかもしれませんが、それでもちゃんと選んで、投票に行って政治参加することが大事なんでしょう。
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チャヴってのは、映画でいうとあれですね。「アタック・ザ・ブロック」に出てくる子供たち。あと「キングスマン」のエグジー。
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高齢化社会をひた走るトップランナー、日本。これに関して先例は無く歴史から習うことができないのだが、格差社会、階級社会に関しては英米という格好の教材がある。「チャヴ」という、低収入労働者クラスタを示す言葉。近い将来日本でも造語されそう。今でも「非正規」「B層」「マイルドヤンキー」あたりにその萌芽を感じる。
「自己責任」という欺瞞に満ちた言葉、差別意識を刷り込み分断を図る富裕層、政治家とマスメディアという構造が実に分かりやすい。わかりやすいということは、多分に虚構が混じっているか、さもなければ身近に似た構造があるのだ、
分断社会(国家)の往く道は衰亡か革命か。二択はゴメンだ。
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そこそこ簡単で、それなりの給与と地位が約束される仕事」が消えた世の中では、見えにくい「弱者」が増えている、と題されたネット記事を読んで感じるところがあり、記事中で本書が一部引用されていて興味をもった。
本書はイギリス社会で「チャヴ」というレッテルが貼られている人たちを取り巻いている環境やチャヴではない人たちが「チャヴ」に対してどのように考え、行動しているかを事実に基づいて紹介している。マイノリティ憑依や著者の主張する本来的なものへ回帰といった内容にはなっていない。
興味深いのは、本書のボリュームに対して、チャヴその人たちの主張や声がほとんど目立たないこと。これは意図的な構成でこのようになっているものと思う。声を積み上げるかたちではなく、環境やチャヴではない人たちの言動を詳述することで、チャヴという現実を効果的に浮き彫りにしているように思う。
以下、興味深かった本書のテーマを点描。
・ニュー・レイバーの主張する向上心と自己責任の問題
・メリトクラシーと社会的流動性
・社会階級を民族にすり替えるレトリック
・イギリスの左派が空転している理由
徹頭徹尾、イギリスの現状を綴っているものと思われるけども、なんだかとても身近な話題のように感じられた。