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アルパインスタイルで週末の夜に一気読みだ。面白かった。物語のクライマックスの章に紙幅があまり割かれてなく、そこに至るアプローチが長すぎるなど不満もあるが、悪くない。一匹狼の若者が社会性を学びながら成長する姿と、昨今の登山界の諸事情や歴史も学べて興味深く読み進めることができた。
若きアルパインクライマーの奈良原和志が、ローツェ南壁に挑む。まず思い出されるのは島崎三歩だ。ローツェもそうだけど、ルクラ、パクディン、ナムチェ・バザールなどの地名が出てくると、自然と『岳』16巻で描かれた風景が目に浮かぶ。
映画『エベレスト3D』(2015米英)、『ヒマラヤ地上8000mの絆』(2016韓)で観た景色も作品中の描写を補完してくれてスイスイ読めた。
そしてそこまでのアプローチで、山の先輩磯村、スポンサー企業の山際、友梨たちのサポートが描かれ、なんと言ってもトモ・チェセンとの出会いが秀逸。実在のアルピニストだ。しかもまだご存命のトモ。彼との出会い、数々の含蓄のある言葉、これらは著者が実際にトモに取材したものだろうか。このあたりが本書を、ノンフィクションのような、どっしりとした現実味のある作品に見せていて面白いんだなあ(エベレストの見張り番ミス・エリザベス・ホーリーも実在なんですね~。へ~x 10)
あ、長谷川恒男さんのことも1行出てきます(^^ v
トモ・チェセンの疑惑の登攀、その疑惑を晴らすことがテーマのひとつとして描かれ、それにまつわる登山界のあれこれの話が実に面白い(私のような素人にとって、という意味ですが)。
トモ・チェセンの言葉、
「あらゆる登頂について証拠が必要だななどという犯罪捜査さながらの風潮が、登山の世界を支配するなんて想像すらしていなかった」
は、実際に聴き取ったものなのだろう。登山そのもの以外のことろで多大な神経を使わなければならない風潮には少なからず異論を唱えているのが本書のトーンのように感じた。
その他、極地方に対するアルパインスタイルの位置づけ、パキスタンとネパールの国としての対応、道具の改良、通信装置の発展など、ここ100年の登山史をざっと概観できるようで、本書の核心のローツェ南壁に取りつくまでの長いアプローチを飽きることなく読み進めた。
まぁ、ここが意見の分かれるところだろうなぁ。”比較的”飽きることなく読み進めた、くらいかもしれないし、もっとローツェでの奮闘ぶり、あるいはその登攀を妨害しようとする反対勢力との現場でのあれこれがあったほうがスリリングだったのに、と肩透かしなところも無きにしもあらず。
ただ、それは逆に、本当に山を知る者からしたら、生存の極限の8000mでは、敵も味方も自分の登山で精一杯、人の妨害をするなんて嘘っぽい話はあり得ない。ということで、サラっと描いたのかもしれない。うん、きっとそうだな、こちらのほうが現実なんだろうな。
あとは・・実は、「死」が出てこないんだな。これはかなり意外。当然、終盤は、いつか誰かが、とおっかなびっくり読み進むのだが、そこも肩透かし。けっして期待していたわけではないのだけど、一種のカタルシスを求める欲求は満たされなかった。
��ひょっとしたら同じ登場人物たちによる続編があるのかもしれない。
だとしたら、、、 うん、読みたいな。
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一人で難壁を登攀してきた男が
仲間と昇る喜びを知る。
このあとを知りたくもあるが。
【図書館・初読・10月13日読了】
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山登りの趣味はないけど、山岳小説を読むのは好きだ。現在の書き手では笹本稜平さんの山岳小説が気に入っている。
今回は単独で8516mのローツェを南壁から攻める。
初登攀にはならないのだが、初登攀した後、疑惑が起こったトモ・チェセンの疑いを晴らすためにも必死になって攻める。
あわや!という時に、山の神というか、サードマンが出て来て窮地を脱する場面は手に汗を握る。
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ソロで山に挑戦する主人公、奈良原がローツェ最難関の南壁を冬季単独登攀に挑戦。真摯で潔いその姿勢に彼を支える仲間や理解者が次々に登場する。大自然や仲間の絆に加え敵役の登場も盛り上げに一役買う。趣味で夏山に上る程度の自分には技術的なことはさっぱりだが十分楽しめる。『越境捜査』シリーズとはモノが違う。やはりこの作者さんは山岳小説に限る。
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う~ん、山岳小説ですごく期待して読みましたが・・・
ワクワクしない、ハラハラしない。
壁や、雪の情景が伝わってこない。
実際の登山家の実録には及ばないにしても・・・
山岳小説というと、かつての新田次郎の小説を思って勝手に期待してしまう。
自分が本当に、垂直の雪の岸壁で一夜を明かしたり、
ホワイトアウトの山中をさまよったりとその臨場感は素晴らしいものだった。
新田次郎を超える山岳小説があったら教えてほしい。
もう一度読み返してみようかな。
残念ですが、ぱたんです。
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図書館で借りた本。孤独なクライマーが友情や人との信頼を築きながら人間性も成長していく話。
スポンサーが付くのを承諾するまでのグダグダ感。心情はもう分かったから次に進んでくれと思いながら読み進めなければならなかった。分厚い本なのは無駄に長い心情が多すぎるせいもある。そのせいで、最後のクライマックスは、あっさりしすぎになった感もある。ヒマラマの山々、ネパールの国、クライミングの様子の描写は良いが突然のハプニングも唐突だし、それほど感動を得るという内容ではなかったな。
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トモ・チェセンのローチェ単独疑惑をベースにした小説。
題材も着眼点もいいんだから、もっと面白く書けないものか、と思う。人物描写も薄っぺらいし。
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命の危険のある事が怖くて出来ないので、基本登山もハイキング程度しかしようとは思いません。エベレストとかヒマラヤに行きたいと思った事はありません。しかし物語の世界としてはとっても魅力的で、好きなジャンルの一つとなっています。
この本は題名が全てを物語っているソロで登山する青年の話で、人の力を借りないというポリシーから頑なにスポンサーを固辞していたが、信頼出来るスポンサーのサポートを受けて大きな飛躍を遂げようとする姿を描いています。
相当のボリュームがあるので読むの苦労しましたが、この後に続けるための滑走路的な本なのかなと思いました。
この本ではさほどの大事件もカタルシスも無いので、この時点で判断は早計かなと。それだけこの本が退屈だったということになるのですが、明らかにシリーズとして膨らませていきたい意欲は感じます。
ただ、1作目ってインパクトが必要で、次のつかみになるのだからもうちょっと工夫が欲しかったです。登場人物等のスペックは感じるんですがいかんせん地味。ずっと登山の準備ばっかりしているので話が進まないんです。
「春を背負って」とか「還るべき場所」なんていう名作があるだけに比べちゃいます。
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「ソロ」っていうタイトルに期待するハングリーさとか孤独感とか皆無。
というか、この本はソロばっかりやっていた主人公がチームワークとか周囲への感謝とかなんかそんなまるっこいものに目覚めていくという物語なので、「ソロ」というタイトルがそもそも相応しくない、と思う。
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トモ・チェセン、ミス・エリザベス・ホーリーなど存命の実在人物も主人公側人物もキレイに書いてるな。核心のローツェ南壁に取りつくまでの長いアプローチは比較的飽きることなく読み進められる。ただもっと人物にクセがあったり、登攀を妨害しようとする勢力との絡みがあったほうが物語としては盛り上がるかな。ただ初踏ルートだけではフィクションとして弱いのはわかるけど、人物描写やトラブルも安易な感がある。山の描写も緻密でクライミングシーンについてはやはり面白いのだが。
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いつもながら、ストーリーも人間描写も自然描写も清々しく、山への謙虚さと愛に溢れた一冊でした。
実在の人物を登場させるところなど、「え?いいの?」とちょっぴりドキドキもしました。作中に登場したエリザベス・ホーリーさんの訃報(大往生ですよね)が読書中に入ってきたこともあり、忘れられない一冊になりそうです。ただ、最後の3行をどう解釈すべきか悩みます。