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以前、『からくりサーカス』に、「英雄」と言う曲がピッタリだ、と書きました
その「英雄」に負けないくらい、相性が良さそうな曲の一つ、それは、米津玄師さんの「Lemon」だと思います、はい
YouTubeでは、様々なアニメのmad動画の曲に使われている「Lemon」ですが、「からくりサーカス」のストーリーとも、歌詞がベストマッチのように思えました
残念なことに、まだ、その動画は誰も製作していないようです
その手のノウハウがあれば、自分で作ってしまいたいんですが、如何せん、その手の方面は、てんでお手上げでして
この『からくりサーカス』(5)の感想を読んだ人が作ってくれたら、そう願ってしまうのは、ズルいでしょうかね
では、気を取り直して、感想を書くとします
いきなり、情けない話ですが、今回は、どうにも、十行に纏め切る事が難しそうなので、二十行に増やさせてください
フラヴィーオを倒し、初めて、人を救えた喜びに泣き、自分がすべき事、したい事を見据えた鳴海は、「しろがね」として戦っていく事を決意する
そんな彼に、最古参のしろがねの一人、ルシールがその口から語るのは、世界で最初に、自動人形、そして、ゾナハ病によって亡びを与えられた、己の村についての話
それなりに修羅場を潜ってきた鳴海ですら、クローグ村で起こった惨劇には戦慄と恐怖を余儀なくされる
元々、藤田先生の作品は、結構、スプラッタな描写が多い。なので、この『からくりサーカス』もモブの死に方が凄惨。改めて読んで思ったが、よく、少年誌での掲載が許されてたな。これも、時代か
ルシールの昔語りの最中で、乱入してきたのは、自動人形の幹部であるアルレッキーノ
鳴海とギイの関係は、「好敵手」と書いて、“ライバル”と読むべきもの。鳴海とアルレッキーノの関係もまた、ライバルでしょうが、書き方は「嫌敵手」のように思えます
鳴海とギイは、言い争いこそしますが、互いの強さや信念、生き方を認め、そこには好感があります
しかし、鳴海はアルレッキーノに対して、弱い人間を踏み躙り、自分達の目的に利用する事しか考えていないスタンスに怒りや嫌悪感しか抱いていません。アルレッキーノも、鳴海に興味は持ちながらも、完全に見下しています。つまり、好敵手と書くに相応しい間柄に必要な、対等さがないのです
ルシール達から聞かされた話によって、鳴海は勝たねばならない戦いに身を投じた事を思い知る。しかし、彼が萎縮するはずがなく、更に闘争心が滾る
そんな彼らは、「柔らかい石」を宿す者を探し、とある国を訪れる。その国では、一体の自動人形が、その国の王女・エリを狙っていた
フランシーヌ人形の従者であった、アプ・チャーは主の願いを叶えるべく、エリに成り替わろうとしていたのだ
その為に、病の身である故に権力に固執する男を誑かし、エリが成長するまで十年も待ったアプ・チャー
老いのない自動人形にとっちゃ、十年くらい、大した事はなかったんだろうが、とことん、フランシーヌ人形の為だけに行動しているんだな、コイツら
歓談した事で、鳴海はエリにも、王女なりの気苦労がある��知り、彼女の良さを知る。だからこそ、彼女の気持ちも考えないルシールに憤慨したんだが、逆に、ルシールは鳴海の関わりすぎる面を窘める
もっとも、あえて誘拐させたエリを救い出すべく、ドンパチをやらかす辺り、ギイとルシールも結構、しろがねらしくないのかも
一方、エリとまんまと入れ替わる事に成功したアプ・チャー。だが、人間にしても、人形にしても、計画が上手く行っている、と調子に乗っている時ほど、ヘマをしてしまうものだ
予想だにもしていなかった争いに巻き込まれた王女は、その恐怖の中で、自分が人間として生きていくに必要な強さを、最初から最後まで無礼だった鳴海や、冷血ぶりながらも人間臭さが香るお節介を焼くギイやルシールから教えられる
立ち向ったエリの背後から、復活した鳴海が、アプ・チャーの顔面へ、強烈な突きを直撃させたシーンは、かなり、グッと来た
ほんと、これは個人的な印象で、本当の所は違うのかも知れないけど、踊る鳴海がエリに語った夢は、嘘なんじゃないかな、と思ってる。けど、エリさんの気持ちに、不器用なりに真面目な態度で答えようとした、優しい彼の下手糞な嘘が魅力だ、と私は感じる
この台詞を引用に選んだのは、いつも通り、藤田イズムが感じられるからだ
他のファンも感じている事だろうが、藤田先生の作品が面白いのは、藤田先生が「人間」だからだ
様々な作品や人、出来事と触れ合う事で、見方が変わっていき、その良い変化を作品に活かす為の努力を惜しまない、つまり、「人間」であろうとしています。だから、藤田先生の作品は面白いんです
そんな藤田先生の信義が感じられる台詞だ、と私は思いました
「アプ・チャー・・・人間に替わるなど、あなたにはできないわ」
「何ィ!?」
「十年の歳月を経て、ギュンター伯父はあなたを、愛するようになったのに、あなたは変わっていないでしょう。人間はね、きっと、物の見方で、どんどん変わってゆけるのよ。私は変われた。だから、人間―――でも・・・あなたは変われない。不変なものが、人形だもの」
「おまえに・・・おまえに、私の何がわかる!?」
「わかるはずがなかろう、無礼者め!私は、ローエンシュタインの公女エリだ!人形なんかに、私の場所を渡すものかっ!!」(byエリ、アプ・チャー)