紙の本
巡り合わせの不思議さ
2020/11/15 16:15
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投稿者:とりこま - この投稿者のレビュー一覧を見る
西南戦争で西郷隆盛の首を見つけた千田文次郎と大久保利通を暗殺した島田一郎が共に加賀藩出身、下級武士の出で親友であった、という巡り合わせの不思議さと幕末から明治維新にかけての光と影をじっくりと描いた作品。
幕末の動乱期、多くの藩であったろう尊王攘夷論争、武士の階級という壁に悩まされたり、窮乏する民を救おうとしたり、というのをふたりで乗り越えていく姿を描く前半があっただけに、明治になり、片や軍隊で出世を遂げる千田、片や維新後の社会に不満を募らせ実力行使に出ようとする島田、と離れていく後半の姿に胸がつまる思いがした。
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島田一郎をどう評価するかそれが問題
2017/12/06 18:34
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投稿者:のりちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
確かに伊東氏の著作らしくて面白く骨太に書かれている。しかし、西郷の首が発見されたことで武士の世は完全に終わったと言い切ることが出来るのか。西郷の首とは関係ないのではないのか。
また島田一郎を時代変革に対応し政治の刷新をはかるために大久保利通を暗殺した英雄みたいな書き方をしているが、とんでもないことである。彼は凶悪なテロリストであり、自分の主義を貫くためには暴力いや殺人もいとわないという危険人物である。大久保とさしで話したことがあったのか。話そうとしたのか。大久保の考えも聞かずいきなり徒党を組んで殺人に及ぶとは言語同断。彼の行為は日本のその後の歴史に重大なブレーキをかけたことになる。
そんな極悪人にスポットを当てたこの小説は、絶対に評価することは出来ない。武士の世が終わって苦労していると明治維新後に言うならば、これまで長年に亘ってその武士に搾取されてきた百姓、商人、町人らはどうなのか。島田一郎はそんなこともわからん馬鹿者なのだ。そんな者を主人公としたこと自体に非常に憤りを覚える作品である。
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好みとしては、幕末モノは基本辛い事しかないので、あまり積極的に読みたくないのだけど、伊東氏の戦国モノをほぼ読んでしまったので「仕方なく」借りたら、これが面白い。タイトルから西郷どんのお話と思いきや、西郷どんの死=侍の時代の終わりを象徴していて、やっぱり幕末モノらしく、溌剌な若者が段々と辛い状況に否応なく追い込まれながら、自らの信念たるものにすがりつくように破滅していくわけだけど、そこを辛いだけにしないところが、伊東氏ならではと言えるのかもしれない。読んだ後に、赤坂見附周辺を散策するのも一興だろう。次は少し時間置いて「走狗」を読んでみるつもり。
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時代を動かしたのは二人の加賀藩士。かたや新政府のために軍人となり西郷の首をとり、かたや士族の困窮を救うべく武人として大久保の首をとる。運命というにはあまりにも数奇で残酷。
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西郷隆盛や大久保利通について、歴史が理解出来た。伊東潤氏のストーリーは最後の結末に猛ダッシュするところが良いね。
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これは面白かった。
西郷の首を見つけた男と大久保を殺した男。
二人は加賀藩出身で親友だった。
西南戦争を扱った作品とややリンクしていて、あ、読んだわって思わされる部分も。
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ちょっと苦手な歴史物。
帯に惹かれて読み始めたものの、
案の定読み終えるのに時間がかかってしまった。
フィクションとノンフィクションが入り混じっているのか?
歴史に詳しくない自分にはちょっとわからなかった。
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明治維新からの一つの時代の終焉。その中で生きなければならない武士や人間像。そして何故加賀藩出身のこの二人がこんな人生を・・・。
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タイトルから西南戦争の話かと思ったら、薩摩藩ではなく加賀藩の話が進む。
足軽の二人を軸に倒幕から明治維新への時代の激変を描く。
終盤になってタイトルはそういうことか、と分かったが、うーん、このタイトルにしなくても…と思ってしまった。
全体的に加賀藩のように報われない人々の怨嗟の叫びが聞こえるような話だった。
高い理想を掲げての闘いの筈が結局は権力の座を巡っての椅子取りゲームのように見えていく。椅子に座れなかった人々は諦めるのか抵抗するかしかないのか。
文次郎、一郎、袂を分かった二人が決めた道、どちらが勝ちでどちらが負けというわけではないし、西郷が負けで大久保が勝ちというわけでもなく、それぞれに大義があり抱えるものもあるだろう。
一つ言えるのは、こうした時代の激変には数多くの人々の苦しみがあるということ。
伊東さんはこうした歴史の裏を描くのが上手い。
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西郷の首の発見が士族の気概を失わせ、真の意味で武士の世が終焉したのだという意味でのタイトルが素晴らしいと思った。伊東潤の本も、加賀藩にまつわる本を読むのも初めてだったが、面白くて一気読み。
著者の作品をもっと読み込んでゆきたい。
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首。それがあるかないかで、その後が変わる。義経の首。信長の首。西郷の首。首があることで、死が確実なものになる。
大久保にとどめを刺す前に、一郎が言う。「大久保さんなりの大義があったのだ」と。信念を持って生きたいと思う。
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タイトルの西郷が、後半になるまでなかなか出てこない。
色々なところで取り上げられる、薩摩や長州以外でも歴史の節目では多くの人がいろいろなことに巻き込まれていたのだろうなという当たり前のことを再認識させられる。
歴史というのは奥深い。
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西郷の首というタイトルではありましたが、西郷さんは殆ど出てこず、加賀藩出身の志士が世を変えたいという強い意志を持ちながらも、残念な結末を向かえるという物語。
残念ではあるものの、様々な要素の中から選択肢がどんどん減っていき、新しい世の決定事項に関与できず、正確な情報を入手できない中、不合理であると思い込んでしまう流れをうまく表現されている。
偏った思想に囚われていくとこのような判断しかできなくなるのかという非常に残念ではあるが、世の中を良くしようと考え抜いた末の強行。
全体最適といえば聞こえは良いが、総論賛成というものも形成できなかった時期でもあろうかと思われるし、結果として国を挙げて戦争に踏み切っていく日本という国の運命を示唆していたのかも知れない。
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加賀藩士の維新歴史小説。
タイトルにすっかり騙されました。
でも、さすがは変化球で攻める作者だけに内容は大変面白いです。
島田一郎は知っていましたが千田文次郎は全く覚えがありませんでした。
子供の頭ほどある下腹部で西郷と判断したエピソードが有名ですが、西郷の首って見つかっていたのですね。
とはいうものの、西南戦争はほんの数ページ、西郷も数回ちらっと登場するだけです。
先に読んだ佐藤賢一の「遺訓」での庄内藩に続き、加賀藩の維新での動きが勉強になるので、おすすめです。
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メインは、大久保利通が暗殺される清水谷事件だが、幕末の加賀藩の活動をよく調べていると思う。面白く読めた。