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再読。『二つの祖国』を読み、思い出して再度手に取りました。
アメリカンドリームを夢見た大原幹三郎とその妻佳乃から始まる日系人三世代の家族の話。
語り手は三世に当たるジュンコ。
母ハンナはアメリカ人として生き、子供達にもアメリカン人として生きることを望んでいたが、ジュンコだけは日本を焦がれ、日本人の心を求めていた。
『二つの祖国』ほど、アイデンティティに悩む人達の姿を感じることは無く、史実に基づいた実際にあった人種差別の、そして、母娘の話として読み進めていました。
戦争が生んだ更なる人種差別。
この歴史を知り、今後そんな不幸が起こることのないようにと願います。
二羽の鶴に有刺鉄線が絡まるブロンズ像、思わず画像を検索してしまいました。
こんな簡単なものでは無いはず…、は著者の言葉だと思いました。
教科書で学ぶことのなかった歴史です。
本との出会いで知れて良かった。
まだまだ知らなければならないことは、きっとたくさんあるのだと思っています。
2017.11.02 初読
3代に渡る日系アメリカ人家族の物語。
アメリカンドリームを夢見た日本人達がいた事は、無知の私は知りませんでした。
そして、第二次世界大戦中の、日系人の苦悩もまるで知りませんでした。
敵国の血を持つ者がどんな目に合うかは想像出来るようで、その域はきっと越えていることでしょう。
悲しいことです。
立場が違えば、戦争に対する見方も感じ方も変わります。
でも、誰も幸せではない。
戦争は、今後決して起こしてはいけない悲劇だと思います。
興味深く、とても素晴らしい本でした。
多くの人に読むべきものだと思います。
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ある一家の日系移民の3代にわたる苦難の歴史が綴られた物語。その中の言葉が心に沁みる。「何者でもない者として生まれてきた小さき者が、何者かになろうとして懸命に努力し、結局、何者にもなれないまま死んでいったとしても、その人が生きてきた時間は、決して無駄なものではないのです。それらの命は宇宙のかたすみで、一瞬であったかもしれないけれど、確かに輝きを放っていた星たちなのです。わたしたちはみな、流れ星と同じように、空に輝いたあと燃え尽きて、流れ落ちていくのです。その営みを、その儚い運命を、わたしは尊く美しいものだと思っています」
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日系移民の3世代に亘る話。太平洋戦争時の日系人収容所の話が軸になるが、各世代の生き様、葛藤がよく描きこまれている。時代が飛び視点が飛んでも物語が破綻することなく、最後まで心地良い緊張感を保っている。。
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国を挙げて移民を奨励していた時代が日本にもあった。
今や難民や移民に冷たい国なのに。
アメリカに渡った3世代の物語。苦労してようやく手に入れたアメリカでの生活も真珠湾攻撃で激変していく。それまでも差別・排斥はあったけれど、それが露骨になっていく。どうして、戦争になると国というものに囚われてしまうのだろう。個人としてつき合ってきて、どういう人かがわかっている場合でさえも、敵対、排斥されていってしまう。本気でスパイだと思うのだろうか。本気で隔離しなくてはいけないと思うのだろうか。人は何のために戦うのだろう。どうして国のために人を殺したり、殺されたりしなくてはならないのだろう。
私たち人間は非常事態に直面すると、集団は排除の論理に呑みこまれてしまいがち。それを乗り越えていくことはできないのだろうか。どんな時も何があっても多様性を尊重し、認め合うことができるようになりたい。
3世代の女性が誰の話なのか、誰が誰に語っているのかが途中混乱してしまい、何度も読み返した。今、人に貸してしまって手元にないけれど、もう一度丁寧に読み返したい。
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アメリカ移民の三代に渡る記録.極貧から成り上がる強い意志と運.差別感情や戦争で翻弄されるも日本よりアメリカを選びとった人々の強い気持ち.そして母親の子供への愛,また子が母を思う気持ちに,せつなくなった.全体的に感情を抑えたさらりとした文章ながら,その言葉の背景に広がる壮絶な歴史をみせられていて,心にずっしりと響く物語だった.小手鞠氏の中で一番好きな小説になりました.
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太平洋戦争時に多くの日系人がアメリカの捕虜となった。
ぼんやりとした知識は持っているけれど、詳しくは知らないし、この史実をもとにした小説や映画もまったく触れた事はない。
戦後70年を超え、徐々に戦争が風化している。
戦争からたった30年しかたっていない頃に生まれた私でさえ、戦争についての知識は乏しい。もう平成も終わるこの日本にあって、今の若者たちの戦争への意識はどんなものなのか。
改憲に向けての流れは変えられないのかもしれない。
9条の重みは薄れ、自国は自国で守るべきなのかもしれない。
でもその前に知らないといけない。
日本が最後に戦ったあの戦争で何が起こったのか。
日本で、アメリカで、中国で、マリアナ諸島で、マレーシアで。
知識こそ一番の武器だ。
この本には日系人が戦時下において、どれほどの辛酸をなめたのかが描かれている。
小手鞠るいさん、書いてくれてありがとう。
私に知識をもたらしてくれてありがとう。
アメリカ在住の作家さんならではの切り口で、日系人のリアルな生活感が伝わってきて良かった。
作品によってだいぶ評価が乱高下してしまうけれど、「アップルソング」やこの作品のようリアリティのある作品の方が性に合ってる気がする・・・。
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『アメリカで生まれ育ち、日本語を知らない、日本人の顔をした母は、アメリカで産んだ四人の子どもたちに、小鳥の名前を与えた。』
ではじまる物語
物語の最後からループする
小手鞠るいさんの著作を読むのは二冊目。
『アップルソング』
https://booklog.jp/item/1/4591149889
と同じで、世代を跨いで語られる物語
世代の広いお話し、繋がっていく世代
それからその世代の出来事
『アップルソング』とともに戦中、戦後を生きた日系人のお話し
佳乃、ハンナ、ジュンコ
三世代母娘の関わり
【覚書】
母から小さな愛しいわたしの女の子へ
日系一世
大原幹三郎(1904年17歳渡米)ー佳乃(かの)(1916年渡米写真花嫁)
日系二世
ジョー 暴漢に襲われ話さなくなる
ケン アメリカ陸軍第442連隊戦闘団(日系アメリカ人) 戦死
メグ
ナオミ カナダへ
双子 アサ(病死)とリサ
エミ(幹三郎の妹の養女に出される)
ハンナ(子どもたちを徹底的にアメリカ人として育てたい)
日系三世(小鳥の名前を持つ子どもたち)
ロビン(アメリカン・ロビン)
チカ(チカディ ブラック・キャップト・チカディ)
ジュンコ(ダーク・アイド・ジュンコ)
1970年12月17日生まれ
12月17日 幹三郎が連行された日、ケンが戦死した日
フィービー
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「この旗を掲げ、この旗を守るために、いったいどれほどの人間が命を落としたことだろう」
明治時代の棄民政策でアメリカに渡った幹三郎は、写真花嫁である佳乃を呼び寄せ、アメリカで家庭を築いていく。多くの子どもに恵まれ平和に暮らしていたが、真珠湾が攻撃され日本との戦争が始まる。幹三郎は危険人物として捕まり、家族も収容所に入れられ、日系二世である息子はアメリカ兵として戦争に参加する。
幹三郎の時代だけでなく、日系三世である孫のジュンコの現在も書かれている。
読むのが辛い部分も多かったけれど、読めて良かった。おすすめです。
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これまで読んだこの作家の作品の中では一番良かった。
子ども向けの本も書いている作家だが、これは大人向け。
1904年に岡山から移民してきた一世の幹三郎から、その孫のジュンコまで語り手を変えながら、日系人一家の戦前から現在までを綴る作品。
差別され苦労を重ねながらもアメリカ社会に溶け込み財を築いて、家族を増やした一世の努力を全て奪った戦争。
長男は真珠湾攻撃の直後、アメリカ人の集団に暴行され、家族は全財産を奪われ収容所へ。ノーノーボーイにはならなかった次男は戦死。
戦後から現在までも描かれるが、圧倒的に力を入れて描かれるのは、戦前の家族の姿で、それだけに奪われたものの大きさがリアルに伝わる。
もちろん政治的な内容もあるが、日系人一家の、写真花嫁として幹三郎と結婚した佳乃、その娘のハンナ、ハンナの娘のジュンコが主な語り手であるため、イデオロギーより感情が表現としてさきにあるので、共感できる。
日系人強制収容の小説はたくさんあるが、読むべきものの一つだと思う。
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米国で物語が進んでいくのですが、やはり戦争物…ツライ、辛すぎる物語でした。
日本だけじゃなくて、アメリカでも中国でも人々が被った戦争の悲惨さは変わらないんですね。日系アメリカ人という視点でみるとそこに人種差別が絡んできているので、更に理不尽さが加わり、やるせない気持ちになりました。
日系アメリカ人の過去にそんな辛い物語があるなんて全然知りませんでした。
あと、メインは戦争下でのおはなしですが、その裏にある親娘の複雑な関係性が描かれていたように思います。愛したいけど愛せない関係もある。戦争と同じくらい暗くて怖い。
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114藤原ていさんの作品を彷彿とさせる世代を超えた物語。こういう歴史を教えない教育とはなんだろう。時系列が前後しないもので読んで見たい。
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日系アメリカ人をテーマにした、壮大なファミリーストーリー。前半は、日系1世の夫婦によるアメリカ移住にいたる背景と、新しい生活への取り組みが描かれ、中盤以降、その子どもたちを含め、戦時中(第二次世界大戦・太平洋戦争)の彼らを取り巻く状況がメインに描かれている。
全編を貫いて、日系人に対するアメリカ社会による差別、がテーマとなっており、登場人物たちの心情を追うことで、その理不尽さが浮き彫りにされていく。抗う術ももたず、時代に翻弄されていく、しかしそんな中でも家族を核として懸命に生きようとする彼らの姿には心をうたれる。
以前、やはり戦時中の日系人に対する差別を掘り下げたノンフィクションのもの(『アメリカの汚名 第二次世界大戦下の日系人強制収容所』リチャード・リーヴス著 園部 哲 訳 http://violinprince.blog.fc2.com/blog-entry-303.html)を手にしたことがあり、セットでとらえることで、よりこの歴史の暗部に迫ることができた(もちろん、どちらか一方のみでも十分にこのことはつかむことはできる)。
小説という手法を使うことで、フィクションながら、より心情面において読む者を近づかせることができるのかな、と感じる(実際、自分は近づいた)。このような差別は、マイノリティ、弱者とされる側への想像力を働かせること(シンプルに自分がそちらの立場だったら、ということ)が歯止めになる、と聞いたことがあり、まさにこの小説を手にすることが、そうした貴重な機会、一つの手段である、なんていうことも感じた。
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小手鞠るい 3作品目。
明治初期、移民政策でUSAへ渡った幹三郎と写真花嫁・佳乃の太平洋戦争終戦までの物語。
物語は、ニューヨーク近代美術館、ジャスパー・ジョーンズの「旗」の場面で終わる。
この旗を掲げ、この旗を守るために、いったいどれほどの人間が命を落としたことだろう。星ちりばめたる旗の掲げる理念、理想、正義のために、どれほど多くのネイティブアメリカンが、メキシコ人が、太平洋戦争時には日本人が殺され、…。その続きに暇はない。
本当は、日本を追い出された移民(棄民)は、米国で所帯を持ち、定住し、できるならば「アメリカン・ドリーム」の実現を夢見るしかなかった。しかし、それが、子孫たちが日系移民の苦しい時代の最後の遺産を受け継ぐだけともしらないで。
きっと、「個人的な関係によって、人種差別も乗り越えられる」ハズだった。ただ、真珠湾攻撃が、反日感情を、強制収容に仕上げていったに過ぎない。移住にかけた燃える気持ちをすべてを奪い去って。戦争が、すべての人を理不尽な暴力にさらされていく。そして、民族に溜まる闇が牙を剥くチャンスを与え、集団の力となって噴出するとき、より弱い者に悲しい運命が訪れる。
星ちりばめたる旗、星条旗はずるい、と思う。星の意味するもの、個人一人ひとりの生き方から、コミュニティ、そして州へと広げている。同時に、光の速さの限界に紐づけて、理性の限界をも示している。
私たちの目にする星は、何万年も前に燃え尽きたもの。けれど儚さと同時に強いきらめきを放つ星は、一人ひとりの人生のようでもある。一瞬を生きていく力に。
明治初期の移民政策に関する書籍については、
南米移民:垣根 涼介 『ワイルド・ソウル』、北 杜夫『輝ける碧き空の下で』(未読)
写真花嫁:ジュリー オオツカ『屋根裏の仏さま』
カナダ移民:ジョイ・コガワ『失われた祖国』(未読)
頑張って、読み続けてみよう。
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読みごたえはすごいけれど読むのは苦痛ではない、そんな話だった。根底に「家族とはなにか」を考えさせられる、感じさせられる。
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1904(明治37)年にアメリカに移民した大原幹三郎を祖とする家族三代の物語です。
メインとなるのは幹三郎の妻の佳乃であり、その子のハンナと孫のジュンコの3人の女性です。
皆さんの評価は高い。しかしそこには背景となった日系移民について、この本で初めて触れた人が多い為では無いかと思います。
家族三代の物語として見た場合、描かれてきた登場人物像がくるりと姿を変える様な事がしばしば起こり、結構なキャラの脇役像も、なぜそこまで娘が反抗的になったのかとか、暴行を受けて言語障害になった伯父がどう日常を生きていたのかなど、どうも未消化な所が多く、色んな所でアレ?アレ?と思いながら読んでいました。
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再渡航と家族の呼び寄せ以外の日本人の移民が禁止された後に、米国に移住した男性と写真・履歴書などだけで、実際に会うことなく婚姻届けを出し、妻として渡航した女性たち「写真花嫁」、日本人の土地所有を禁止した「排日土地法」、太平洋戦争開戦後に在米日系人を収容した「日本人強制収容所」であり、日系人で構成されヨーロッパ戦線で奮戦した「442連隊」など様々な話題が、物語の主要な背景として描かれています。
私の大叔父(祖父の長兄)は幹三郎の一年前、1903年にカリフォルニアに移民しました。主人公と違うのは一旦ハワイへ移民し、その後に転航している事。夫婦での移民であり、ハワイで生まれた娘を連れていた事などです。また、この物語の主人公・佳乃は1916年に写真花嫁として幹三郎の元に嫁入しますが、私の大叔母二人はそれぞれ1910年と1918年に写真花嫁として渡米しています。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%97%A5%E7%B3%BB%E4%BA%BA%E3%81%AE%E5%BC%B7%E5%88%B6%E5%8F%8E%E5%AE%B9#/media/%E3%83%95%E3%82%A1%E3%82%A4%E3%83%AB:Florin,_Sacramento_County,_California._A_soldier_and_his_mother_in_a_strawberry_field._The_soldier_._._._-_NARA_-_536474.jpg
442連隊に志願した息子が強制収容される母を手伝いに帰って来たところを写し、「日本人強制収容」の悲劇を示す写真としてしばしば用いられるこの写真の人物は、1910年に移民した私の大叔母です。(この本の中で佳乃の息子は強制収容後に志願しますが、大叔母一家の場合はそれ以前に志願していたようです。)
そんなことも有って知識はあったのですが、もう少しリアルな生活イメージが得られればと手に取った本です。ただ、主題は家族の物語であり、背景として描かれるために、私の知識から大きく変わる事はありませんでした。
忘れたならないのは、日本においても大戦中に米・英・仏人などの強制収容が有り、米国における日本人と同等の扱いを受けていた事です。つまり、この類は米国、あるいは日本といった国や人の問題では無く、「戦争」が引き起こす悲劇だという事です。