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投稿者:おどおどさん - この投稿者のレビュー一覧を見る
総合商社とは何なのか、わかっていない。会社と何が違うのか、何をしているのか、知ってみるのも面白い。さすがに転職はしないと思うけど。
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投稿者:melon - この投稿者のレビュー一覧を見る
総合商社とは何者なのか。他の製造業や金融業などと比べその実態はわかりにくい。本書によると、昔は売買仲介メインであったが、そういったビジネスでは商社外しが起こり、現在では事業投資に重きを置いているようだ。ただし投資銀行のように金融を行っているだけではなく、実際に自身でも人を送り込んで一緒に事業をするようである。また総合商社というと資源ビジネスというイメージがあるが、三菱商事と三井物産を除く商社はあまり資源の比率が高くないようだ。そもそも資源は帝国石油開発や石油メジャーなど、資源を専門に扱う会社があり、それらの隙間を縫っているのが現状のようで、資源会社というのも当たらないのが実際のようだ。
本書で共感したのは「○×ジャパンの蹉跌」というものだ。外国の高級ブランドのライセンスを扱って、日本国内でそのブランドを成長させると、外国のブランドは商社を外そうとしてくる。結局ブランドを成長させる大変なところは商社が行い、それが成功するとおいしいところはライセンス元に取られてしまう。ブランドを自前で作らず、ライセンスに依存することが危険であることがよくわかる。やはりブランドビジネスでは供給元のブランドホルダーが圧倒的に強く、売れないラインナップだけを供給したりなどの手段で嫌がらせだってできるようだ。そこで商社はとんびに油揚げをさらわれてしまうことになる。このままではブランドビジネスでは弱者のままになってしまうので、商社はやはり売買仲介型から事業投資型に移行し、ブランドを買収するなどして、一緒に経営して成長する手段を採るようになったようだ。私が思うに、業界は異なるが、オンワード樫山などは自前でブランドを作り成長させているが、こういったことは商社はやらないものなのかと不思議に感じる。日本企業は自動車や家電などの工業製品では高いブランド力を発揮しているものが多いが、ファッションなどの世界ではあまりブランドを作る力が強くないのかと思う。
総合商社という会社が何をやっている会社なのか、本書を読んでもいまいちピンとこなかった。本書ではキメラであって、こういうものだと割り切ることができないものだとしているが、そういった性質のため、結局総合商社は何かというのはわからない。ただし、本書は特定の会社についての話題を避けるようにしているようで、抽象的な話が多く、そういった意味でもわかりづらいのだろう。他の業界のようにどの会社も同じ事をしているというものではないため、それぞれの企業ごとに何をしているのか把握しないと結局なんだかわからないことになるためではなかろうか。
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『ふしぎな総合商社』
小林 敬幸 著
講談社(講談社+α新書)
2017/09 208p 840円(税別)
1.「ヘンな会社」としての総合商社
2.サラリーマンとしての商社マン
3.課題先進企業としての総合商社
4.ビジネスとしての総合商社
5.仕事としての総合商社
6.商人としての総合商社
終.総合商社の未来
【要旨】英語で「SOGO SHOSHA」とそのまま表記されるなど、「総合商社」が
日本独自の企業形態であるのは有名だ。しかし、実際に現在の総合商社がどん
な仕事をしているのか、一般にはあまり知られていないのではないだろうか。
総合商社は実は30年ほど前から少しずつ、とくに2001年以降はそのビジネス
の形態を大きく変えている。財閥を引き継ぐ旧態依然の衰退業種と思いきや、
バブル以降、トップ5社の利益が約10倍になるなど急成長を遂げているので
ある。本書では、そんな総合商社の実態、新しいビジネスモデル、成長の秘
訣などについて、元商社マンの著者が実体験を踏まえながら詳しく解説して
いる。著者は1986年から2016年までの30年間、三井物産に勤務。お台場の観
覧車、ライフネット生命保険の起業などに携わり、現在は日系大手メーカー
でIoT領域の新規事業を担当している。
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●売買仲介型から事業投資型へ劇的にビジネスモデルが変化
総合商社(以下、商社)は、ヘンな会社だ。存在は知られているけれど、
ホントの仕事の内容を知っている人は少ない。
現在の商社では、売上ゼロの「営業部」がたくさんある。売上がゼロなの
だから、営業損益はもちろん大赤字だ。それでも別に営業部長が叱責される
訳でもなく、ときにはボーナスが良かったりする。
種明かしをすると、現在、商社の業績評価の基準は、本社単体の売上高で
はなくて、連結決算の当期純利益(税後利益)になっている。つまり、営業
部ごとに計算している連結当期純利益さえいい数字が出ていれば、売上高が
ゼロでもいい点数がついてボーナスをたくさんもらえる。
変わったのは、商社が利益を得る方法(業態)を変えたからだ。この30年
ほどでモノを売って儲ける売買仲介型から事業投資型に劇的にビジネスモデ
ルを変えてきた。モノを買ったり売ったりすることよりも、新しい事業を立
ち上げたり、出資した事業会社の収益の持ち分を利益とすることのほうが大
きくなってきた。
1社だけではなかった。商社みんなが、同じ方向に変わったのだ。そして、
ラーメンからミサイルまでと言われた多岐にわたる商品分野のほとんどすべ
てに、その転換が進められている。こんな例は、世界のビジネスの中でも珍
しい。
以前は、海外との輸出や輸入、あるいは、その貿易業務の代理業(エージェン
ト)をして口銭(コミッション)をもらうのが主流だった。いわば、モノを
安く買って、国境をまたいで運んで、高く売る商売だった。いまの事業投資
型のビジネスは、会社(事業)の一部または全部を買って、成長を助けて、
成長した分の利益持ち分を得る。
30年前、商社は輸出や輸入の貿易ビジネスを中心としていたので、売上高
が大きい商社を収益力の大きな商社だと見なすのは正しかった。しかし、世
間が売上高で商社の評価を決めるのが常態化すると、各商社は、本来の目的
である利益そっちのけで、とにかく売上高をあげようと、無意味な競争に走っ
てしまう。
そのあまり意味のない商社の売上高競争の典型的な例に、「貿易代行」売
上というものがあった。例えば、1億円の貨物の輸出代行をすれば、その5%
の500万円がメーカーから商社に支払われる。しかし、その経理処理は、妙な
ものだった。普通に考えれば、商社の売上は、その口銭の数%、上の例でい
えば500万円だけのはずだ。しかし、当時の商社は、売上高をかさ上げするた
めに、その輸出価額全体の1億円も貿易代行の売上としていた。
そうした売上高競争を経て1980年代から2000年頃にかけて、商社は、業績
の指標を、単体決算の売上から単体決算の税後利益に移していった。さらに、
2000年頃から現在にかけて、商社は、単体決算の税後利益から、連結決算の
税後利益(当期純利益)に業績指標を移していく。それは、前述したように、
商社が、ビジネスモデルを売買仲介型から事業投資型に変えたからだ。おそ
らく、商社が30年前にやっていた売上高競争をあのまま続けていたら、みん
な潰れていただろう。
ユニークな商品・サービスを出している会社を訪ねてする打ち合わせの内
容も昔とは変わってきた。そういう打ち合わせでは、最初は、それぞれの会
社の紹介をしたうえで、その商品の説明を伺って、お互いにいろいろと質疑
応答をする。そして、打ち解けて盛り上がってきた頃、売買仲介型のビジネ
スならば、「この商品をA国のB社向けに、当社で取り扱いさせていただけ
ないでしょうか」と聞くことになる。
ところが、事業投資型のビジネスの場合、「資本政策は、どうお考えでしょ
うか」と相手の会社の資本政策、つまり資金需要と増資の計画を聞き、自分
たちがその会社に出資する(株を買う)チャンスがあるかどうか尋ねること
になる。
●「何でもやる」「すっかり変えられる」姿勢が生き残りの秘訣
商社は、何でも売る、取扱商品の多様さを誇ってきた。何千億円もするプ
ラントの契約をするかと思えば、単価数百円の農産物も売買する。他にも鉄
鉱石、原油、化学品、ブランドの服飾、紙など、世の中のあらゆるものを扱っ
ている。しかし現在では、商社以外でも、アマゾンなど、取扱商品や事業が
多様な会社も増えてきた。
じつは、商社だけにしかないような際立った特徴というのは、いまではあ
まりない。グローバルという特徴も、パナソニックやトヨタ、あるいは、プ
ラントエンジニアリング会社なども、世界中の隅々まで進出していて、唯一
独自のものではない。事業投資をするといっても、米国の投資銀行や、ファン
ドのほうが、その分野では先行しているように見える。資源ビジネスなら、
資源メジャーと同じようなことをしている。プラント建設でもプラント会社
が商社を介さず独自で受注することもある。
私が就職活動をしていた30年前に、すでに商社不要論が出ていた。
その就活のときのことだ。リクルーターをしてくれた数年上の先輩に、率
直に「冬の時代と言われていますが、本当ですか」と聞いたことがあった。
そこに居合わせた二人の先輩が目を見合わせた後、はっきりと「冬の時代
は、本当だよ。僕たちは、次の新しい機能を見つけ出さなければならない。
必死だよ」と言ってくれた。私は、その言葉を聞いて、妙な安心感を持って
この会社に行こうと思ったのをいまでも鮮明に覚えている。これだけ変わり
身の早い会社が、こんな若い社員も含めてみんなが変わらなければ生き残れ
ないと信じているなら、なんとか生き残るだろう。
冬の時代は、本当だった。1990年代の商社は、利益の低下に苦しむ。それ
でも、しばらくすると商社は、巨額の利益を出して復活してきた。
この10年くらいは、商社は資源ビジネスで稼いだと思っている人も多いか
もしれない。しかし、5大商社(伊藤忠商事、住友商事、丸紅、三井物産、
三菱商事)のうち、資源ビジネスが全社の利益に占める比率が高いのは、三
井物産と三菱商事の2社だけだ。貿易エージェントコミッションの収益が落
ち、資源ビジネスの比率もそれほど高くないなら、一体、どうやって生き延
びてきたのだろうか。
それは、いま振り返ると、事業の多様性と自分たちを変える力のおかげだっ
たと思う。「何でもやっちゃう」「すっかり変わっちゃう」からこそ生き延
びてこられたのだ。
現代の社会は、工業・製造業重視の「近代社会」から、サービス化、情報
化が進み、低成長の中で激しい変化と超競争をしていく「成熟社会」にます
ます進んでいる。その社会の変化による困難を真っ先に被ったのが商社だ。
高度成長期に持っていた商社のコアな機能、すなわち、資源の輸入、工業
製品の輸出、先進事業の導入という機能が、ことごとく、グローバルな社会
変動で意味をなさなくなってきた。それに対して、「事業投資型ビジネス」
というモデルを取り入れ、従来の「売買仲介型ビジネス」と併存させること
で、文字通り七転八倒しながら適応してきたのも商社だ。従来の機能の意味
づけを完全には捨てきらずに、しかし大胆に変更して対応してきた。
社会全体から見れば、課題先進企業であったし、これからもそうあり続け
るだろう。商社以外の企業でも、そうした社会の変化に適応するために事業
投資型ビジネスを取り入れようとしている。そのときに、課題先進企業であ
る商社が、どういう困難に直面して、どういう判断をして乗り越えてきたの
か、その経緯を知ることは、大いに参考になるだろう。
コメント: 総合商社のような歴史がある巨大な組織は、硬直的で恐竜のよ
うに動きが鈍い、というイメージを抱きがちではないだろう��。だが、本書
を読む限り、総合商社は恐竜のように滅亡するどころか、環境変化に柔軟に
対応し、生き残っているようだ。言わば“巨大なアメーバ”といえよう。と
なると、「大きい」「人数が多い」「事業の幅が広い」といった特徴が俄然
生き残りのメリットとして働く。柔軟性さえあれば、人が多かったり、経験
が豊富なことが、新たな事業展開を図るための材料になるからだ。総合商社
以外の業種は、総合商社の変革を見習うとともに、“巨大なアメーバ”をう
まく触媒として使うことを考えるといいかもしれない。
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著者はかつて三井物産の社員であり、数々の新規事業を経験。氏の説く総合商社論はリアル。
トレードから事業投資にスタイルを切り替えるなどして柔軟に時代時代に適応し、数々の苦難を乗り越え今では最高益を次々更新している総合商社。
かといって、商社がかつて明確な戦略を打ち立てそれら着実に実行して今に至ったかというと、「そうではない」と著者は説く。単にバブル崩壊後の強烈な危機感と、その場その場での試行錯誤の集積の結果が今につながった、と。
私も商社で働く人間の端くれだが、特に共感した点は、「商社における人事評価の難しさ」。
商社では5年程度で部署異動することが普通。
1つの部署での在籍期間にすぐには結果の出ない、結実するかどうかさえわからない案件を担当し、在籍期間中に全く芽が出なかったが、部署異動することが決まり後任に引き継いで以降に成果が出始める、というようなことは日常茶飯事である。
しかし、「前任者」が評価を受ける仕組みは実質、無い。人事部の人どうにかしてください(笑
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今の総合商社が、売上高ではなく、連結利益で商売をしているとは!商社が変化した背景についての著者の分析が面白い。
仕事に行き詰まり感のある僕は元気をもらった。
また著者独自の「おもてなし」の解釈も面白い。
日本はモノづくりを尊重するあまり実は最高品質のサービスは世界に劣るらしい。
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2019年2月14日(木)〜2月19日(火)
日本語: 3冊目 (合計: 3冊)
・三井物産株式会社に以前勤めていた、小林敬幸さんが執筆しているので、総合商社が具体的にどの様な仕事を行なっているのか、順序立てて説明されているので分かりやすい。
・総合商社という業界が、契機により売買仲介型から事業投資型へとビジネスモデルを変化させる経緯と歴史について学べる。1971年のニクソンショックによって、低成長時代に入ると「商社冬の時代」と言われる。1973・1979年のオイルショックにより「資源の輸入から資源の安定的調達」へと機能を変える。また1985年のプラザ合意による、円高の影響で「工業製品の輸出から工業の海外進出支援」へと機能を変化させた。
・ブエノスアイレスでのクレーム対応の仕事に苦しんでいる際に、元を取ろうと、休日にアンデス山脈を旅行したエピソードから、商社で働く人の前向きなマインドが感じられて惹かれた。
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本書全体を通して商社内で昔は売買の仲介ビジネスが軸だったのに対して、今は事業投資が軸になっているとの内容が繰り返されていた。
簡単に言うと、今と昔では常識が違う。
今の「常識」が将来でも「常識」であるとは限らない。
商社業界は冬の時代から先見の目を光らせていた。
それは正しいのか、なぜそれをするのか、考える事を辞めない人が周りとは色の違う特別な存在になれるのだろう
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商社出身の著者が商社について説明した本。
バブル前後での変化など勉強になった。
本当に幅広い仕事だ。
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商社とは、事業投資と金融投資の両生類であり、どちらかに特化しようと舵を切ると、衰退するであろう、という主張が面白い。
経験からきた新事業への取り組み方や仕事その物への姿勢など、ためになりました。
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タイトル通り総合商社は不思議だど思った。総合商社の現在の繁栄は、90年代の冬の時代があればこそだとわかった。危機の経験を糧にする、と。
また、総合商社はキメラというのは金言。白黒つけないからこそのビジネス、存在意義があるということか。
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点だらけのビジネスを手掛けている印象だったけど、やっとひとつの線で結ぶことが出来た。
心地よい腹落ち感。
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実際に何をやってるか外からわかりづらい総合商社について、過去からの変遷も含めて、具体的に説明をしてくれているので、これから就職を控える学生をはじめ、総合商社のビジネスを理解したいビジネスマンにとっても有用な書。本書では、戦略やトップダウンのリーダーシップではなく、全社の危機感からボトムアップで、ビジネストランスフォーメーションが生まれたと主張してるが、この点は少し疑っている。もちろん、現場の頑張りはあったという前提で、その頑張りをうまく吸い上げて、既存事業推進派との対立の中で、強烈にリーダーシップを発揮して、会社をトランスフォーメーションしていったリーダーないしチームがあったはずで、それは、どんな課題と苦闘しながら、成し遂げていったのかのアナザーストーリーも知りたいと思った。
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商社業務の不透明さ、わかりにくさを丁寧に紐解いてくれている一冊だった。
この世の中で商社だけがやっているビジネスはほぼない。むしろ、その多様性が商社の強みでもあるというのを、過去の事例をもとに説明してくれている。
商社は両生類(投資会社と事業会社)だという見方も納得できる。商社の仕事を振り返りたいときにまた読みたい。