紙の本
やや説得力に欠ける
2018/12/05 09:23
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投稿者:美佳子 - この投稿者のレビュー一覧を見る
「クリスマスに倒産が決まった子供服メーカーの社員・大和俊介。同僚で元恋人の柊子に秘かな思いを残していた。そんな二人を頼ってきたのは、会社に併設された学童に通う小学生の航平。両親の離婚を止めたいという航平の願いを叶えるため、彼らは別居中の航平の父親を訪ねることに――。逆境でもたらされる、ささやかな奇跡の連鎖を描く感動の物語。」
と背表紙の粗筋を読んで、こじれた恋愛関係と、両親の離婚の危機に直面している傷ついた少年を絡めたお話しなんだろうと思って、読みだした最初の一行でびっくりしました。
「こちらを向いた銃口にはまるで現実感がなかった。」
プロローグは不穏に始まり、「大和俊介、享年三十二――墓碑銘どうする?男は思いつくまで待つつもりはないようだった。」と不穏に終わります。
なんで子供服メーカーのしがない社員でヘタレな恋愛を見せてくれるはずの主人公がいきなり物騒な銃口を向けられる羽目になっているのか、ミステリータッチで始まる物語は、全然ミステリーでなく、いろんな立場の人たちのいろいろな生い立ちや思いを描く、「根っからの悪人はいない」的なお話しでした。
大和俊介の不幸な生い立ちや不器用なキャラと両親の別居でどちらか一方の味方になることを迫られる航平の絡みや、トラウマゆえに柊子とすれ違って別れてしまったこととか、航平の両親のやり取りとか、その辺は実にうまく描写されていて、説得力があるのですが、航平の父の勤め先である整骨院の院長のところに借金の取り立てに来るチンピラが実は気弱な使えない奴らで、とかその上司である「赤木ファイナンス」社長の選択肢のない気の毒な生い立ちとか、その辺は「どうかな」と疑問が残る感じです。少しご都合主義的なキャラ設定のような印象がなくもないような気がします。身内に義理堅く優しいやーさんが居ることは別に否定しませんし、森本梢子の「ごくせん」に出て来るような年端も行かない子供のうちに親に捨てられて、たまたまやくざに拾われたのでそのままその世界に入った、みたいな生い立ちも無くはないのかもしれません。でも、他人を陥れたり傷めつけたりしてお金を稼ぐような生業は、自己都合を優先し、他人に対する共感力にどこか欠けている人でないと続けられるものではないんじゃないでしょうか。なので、「赤城ファイナンス」の面々の行動が説得力あるようなないような、どちらかというとない方に振り子が揺れるような気がして、それゆえに物語に素直に感動できないように思えました。いろんな泣けるシーンはあるのですけど、ストーリー全体を振り返ると、「でも」というひっかかりが残ってしまう気がしました。それがちょっと残念でしたね。
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クリスマスに倒産が決まった子供服メーカーに勤める俊介と柊子は元恋人。そんな二人を頼って近所の学童に通う航平がやってきた。両親の離婚を止めたいという航平の願いを叶えるため奮闘する二人。そんな二人はある事件に巻き込まれてしまい物語はジェットコースターのように加速していきます。ささやかな願いすら叶わないクリスマスなんてあるもんか!幸せになるために必要なのはちょっとの勇気と素直になる心ですよ。
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すっきりさっぱりとしたハッピーエンドでした。「不幸の比べっこなんてしても仕方ない」おばさんのこの言葉が何度も出てきて心に沁みます。
夫婦仲がうまくいかないお父さんお母さんと息子の航平、結婚寸前だったのに彼女と別れてしまった大和、それぞれの生きてきた環境によって好きな人との結婚には様々な思い方があります。「どうせ誰もわかってくれないから」と壁をつくって篭りたくなるときもある。けれど自分が話すのを待ってくれてる人もいたんだと最後に大和が気付けたシーンはとても良かったです。
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なぜか単行本をスルーしていた作品。
でも、子どもが授かった今この時期に
読み出会えたことに感謝しよう。
不幸の比べっこはしないように。
過去の自分はわかってなかったな。
ひとりだけども、ひとりじゃないって、
こういうことなのかと、ふと思う。
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いや~、有川浩って久し振り。前は毎月のように読んでいたように思うけど…。
登場人物がそれぞれにイタくて、お話し全体もイタくて、読んでて多少キツいかな。
ストーリー展開もありがちで、最初の不穏なプロローグがあっても、行き先はなんとなく想像がつく。
でもって、子供を使ってこちらの涙腺緩ませるなんてのはズルいよな。
まあ、それがこの作者らしいところではあるけどな。
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クリスマスに倒産が決まっていた会社が主な舞台だけれど、そこがやっている学童保育にやってくる航平くんが話の中心なのかと思う。なかなかしっかり者で彼のために周りの大人達が奮闘。かなりドタバタなシーンがありちょっと期待外れな感じはした。そして有川さんらしいベタな恋愛話はないけれどドタバタを除けばほんわかな雰囲気で進み、そして終わる。
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キャロリングはCaroling。
いわゆるクリスマスキャロル…歓喜の歌声。
まさにそのとおり!
有川浩さんらしい甘い恋の物語が
ここまで大人の物語に成長するなんて!
読み終えた瞬間に はからずも
きれいな涙をこぼしそうになった。
最高!
追記
赤井さん。レイ。
彼らとその家族たちにも
幸せなクリスマスを過ごす日が
訪れますように。
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ほのぼのもあり、サスペンスもありで、安定の面白さだった。普通の男女の恋愛モノになりそうなところを、登場人物(ヤクザたち)を絡ませることでスリルのある作品にもしているのは新しい試みと感じた。
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銃をつきつけられ、命を狙われているシーンから始まるタイトルや表紙のほんわかイメージとはかけ離れた出だしに、まったく展開が予想つかずに読みはじめる。
クリスマスに廃業することが決まっている子供服メーカーの社員たちと、その企業が運営する学童に通う少年とその家族。みな、問題を抱えており、無事にクリスマスを迎えられるのかをハラハラ見守る。
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出てくる登場人物すべてが優しくて暖かくてすごく素敵でした。
ポロポロと泣けてしまいます。
切なさと暖かさ、両方を感じて胸がギューっとなるようなお話でした。
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久々に読める有川作品。
クリスマスの奇跡。
恋愛モノ方向の作品だとハートウォーミングな印象が強いけれど、この作品も。
家族、友達、仲間、いろいろな関係の間にいろいろな形があって、クリスマスに向かっていく。
倒産や誘拐など安易だったり雑だったりもするけれど、人の感情の表現は素晴らしいなぁと思った。
大和が『図書館戦争』の堂上とちょっと似てるかな?
帯は最悪。
これ、裏表紙のあらすじ読んだだけだってもうちょいマシなの書けるだろ!
作者にも作品にも失礼に感じた。
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現代版、クリスマスの奇跡の物語。
どこにいても腐らずいじけず頑張りましょう、という言葉が心にやさしく広がっていく。
だけど、家庭に潜む闇と傷つく子どもたちの物語でもある。
子どもだけど大人で、だけど子どもな小学校6年生の男の子がいい。
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一気読み。
有川さんらしい、いい人たちばかりが出てくるほっこりする物語。横浜の景色を思い出しながら読んで、自分の思い出とも重なって少しほろりとしました。
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誰もみなが優しくて、
誰もがみな情けない。
世の中って
こんなもんかも。
世の中って
そんなものかも。
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有川浩さんが書かれた「キャロリング (幻冬舎文庫)」は、人と人とのつながりや絆や、そういったことを超越した運命のようなものを感じさせてくれる物語だ。
主人公は子供服メーカーに営業として勤める大和俊介。社長を入れても社員数5名という零細メーカーだが、丁寧なものづくりと独自のセンスで小さいながらも堅実な事業運営を行ってきた。また、子供服メーカーなのに学童保育も運営しており、社会的な責任を少しでも担おうという前向きな姿勢も社会に受け入れられてきた。
しかし、得意先の倒産によって資金繰りに困窮し、クリスマスに倒産することが決まってしまった。社長の意向により取引先への支払いや従業員への給料はきちんと行えることになったが、それ以上事業を継続することが困難になったのだ。
クリスマス倒産へのカウントダウンを行う中で、最後まで学童に通っていた小学生の航平が、両親の離婚を止めたいという願いを持つ。その願いをかなえるために、同僚で元恋人の柊子とともに航平の父親に会いに行く。ちょっとしたことだと思っていた人助けが、思いがけず大きな事件へとつながっていくが、その中で思いがけず人の心の奥深くにある優しさや哀しさを知ることになる。
主人公が勤務する子供服メーカーが倒産するまでを期限として、主人公を取り巻く人々の過去や性格や想いなどが交錯して物語が進んでいく。一見、何の関係もなさそうなことが問題解決に関係していたり、逆に問題を複雑にしてしまう。そんなちょっとしたことが実に良く考えられているなと、物語を読み進めながら感心してしまう。さすがに有川浩さん、ちょっと変わったラブストーリーが天下一品だ。
そして、読者の「こうなると良いのに」と思うことを、少し裏切りながらもほぼその通りの結論に向かっていく辺りもすごい。そういった部分が、読者が物語の登場人物に対して共感を覚えながら読み進めていける理由の一つなのだろう。
そして読後の満足感と爽快感とともに、人と人との絆や運命の素晴らしさを感じさせてくれる温かさも感じられて良い。生きていくことは辛いことや厳しいこともあるのだが、当然のように楽しいことや幸せなことも同じようにある。それに気づくかどうかは本人次第だということも、この物語はそっと押してくれているような気がする。
心が疲れた時に読むと、じわっと元気が出る素敵なサプリメントのような一冊だ。