紙の本
23年も総括されなかったカンボジアでの警察官の犠牲、国際貢献のあり方。しかし、いまこそ、真摯に検証していくことが求められている
2018/02/06 08:31
8人中、8人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:くりくり - この投稿者のレビュー一覧を見る
カンボジアPKOは、「自衛隊を初めて海外派遣する」ことに国会でも反対である野党と推進与党の間で激しい攻防が行われた。このとき、野党は最後「牛歩」戦術で対抗したが、数の論理でPKO法案は自衛隊の派兵も含めて可決成立した。そもそも、賛否は「自衛隊の派兵」を問うものだった。憲法9条に違反するからだ。しかし、カンボジアPKOで犠牲になったのは文民警察官だ。タイトルにある「あるPKO隊員の死」は警察官のこと。自衛隊と違って武器の携行を許されず、停戦後の総選挙に向けての活動を行うものだった。文民警察官はなぜ死ななければならなかったのか・・・この真実、現地での活動が元隊員の日記、インタビュー、ともに活動した海外の警察官や兵員へのインタビューで23年たって初めて明かされる。
「国際貢献」といえば聞こえはいいが、読み進むと国家の見栄の張り合いで、派遣警察官はただの「駒」だ。大前提の停戦は崩れていて、戦闘状態であることも明らかとなる。そのことが日本には伝わらず、いや伝わりつつも、あえて撤退させなかった。日本人の命が軽んじられている様が苦しい。しかし、派遣された警察官は最後まで職務を全うしようと様々な工夫をしている。
南スーダンで自衛隊員が派遣された。「戦闘状態」の日報が隠されていたことが最近でも問題になった。
初めてのカンボジアPKOでの犠牲が、生かされていない。告発の中でひとりの警察官はポルポト派に拘束されそうになり銃口を向けられたが、「武器を持っていない」ことが命拾いをしたと告白している。死亡した警察官は、攻撃を受けた車両に乗っていた外国人兵隊の発砲が引き金となって集中攻撃されたことも本書の取材で明らかになっていく。
いま、集団的自衛権行使ができることとなり、海外に自衛隊が派兵されることが可能となった。「駆けつけ警護」で武力行使をすれば、戦闘状態に油を注ぎ国際貢献どころか、自衛隊にも派遣された国の人々にも多くの犠牲を出すだろうことが予測される。
23年も総括されなかったカンボジアでの警察官の犠牲、国際貢献のあり方。しかし、いまこそ、真摯に検証していくことが求められている。
証言をし、インタビューや日記を公開した派遣された警察官の勇気に感謝。犠牲者高田さんに合掌。
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自衛隊の海外派遣について考える時、まず読むべき1冊と思う
2018/11/30 19:40
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:YK - この投稿者のレビュー一覧を見る
1993年、日本が初めて国連のPKOに人員を派遣したカンボジアで文民警察官の高田氏が殉職されるという悲劇を覚えておられる方は少ないのではないでしょうか。
政府は自衛隊を初めて国外に派遣することになったこの機会に万が一戦闘に巻き込まれる様な事態を恐れていました。自衛隊が配置されたのは治安も良い地域に全員が1か所に派遣されるという恵まれた状況であったのに対し、文民警察官の方は政府の関心も自衛隊ほどではなく、事前の根回し不足もあって数人ずつの小グループで各地に分散し、タイ国境付近の治安の悪化した地域にも配置されました。彼らが派遣されたのはポル・ポト派が支配するまさに「戦場」だったのです。「支給された防弾チョッキは拳銃にしか対応しておらず、そんな装備で普通の農民がAK47という自動小銃を携帯している所に放り込まれた」、「夜には遠くで迫撃砲の着弾音がひっきりなしに鳴り響き、塹壕の中で身をかがめていた」、「自動小銃の乾いた発射音。銃弾が車体をこする高い金属音。車体に銃弾がめりこむ鈍い金属音。窓ガラスが割れる粉砕音。頭上でロケット弾の炸裂音。弾丸が顔の肌を舐めていく。その弾丸の風圧が顔の皮膚に伝わる。」等の証言があります。襲撃を受けた際に殉職された高田氏と同じ車両に乗っておられた方の証言は、もはや戦闘の最前線としか言いようのない激しいものです。
派遣の前提である「紛争地域には派遣しない=派遣先に危険はない」という建前論のために十分な装備も準備されない中で起こった悲劇であったのです。
当時のカンボジアの政治状況から、PKO活動の実態、そして驚くべきことには襲撃した加害者側であるポル・ポト派の元司令官にまで取材をして証言を得ています。現地に派遣された警察官の方々の信じられないほどの責任感、派遣された文民警察官の現地指揮官が部下の安全を案じる苦悩と、建前論に徹する政治家の議論がここまで対照的に、かつしっかりとした裏付けで描かれている本書はハードカバーで400ページ近い大作ですが、是非一読をお勧めします。ここ数年で読んだノンフィクションの中で間違いなくベスト3に入ると思います。
政治家の答弁が「停戦合意は成立している」等の建前論に終始する様は南スーダンPKOの時と全く同じじゃないか、と改めて憤りを感じます。
紙の本
必読の書
2019/12/06 20:08
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投稿者:まさたか - この投稿者のレビュー一覧を見る
PKOの現実について
日本のメディアではあまり報道されず国会でも具体的には議論されない平和維持活動
この本をきっかけに目が開く事は間違いない
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投稿者:飛行白秋男 - この投稿者のレビュー一覧を見る
なぜ高田警視が殺されたのか、憎いです。
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どうにも救いのない話… 国内政治や外交において、語られれ国際貢献と現場の落差。完璧に安全であることはあり得ないにしても、あまりにも体制が整っていない中に大した装備もなく投入されてしまう。官僚組織同士の妥協の中で一番犠牲になってしまったのは、未経験ゆえなのだろうか。日本政府の手には負えないものではなかろうかとも思ったりする。
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初めて日本が自衛隊を海外派兵したカンボジアPKO。あのとき、文民警察官75名もまた派遣されて、そして一名が殺された。
派遣のための条件である「停戦合意」が事実上破綻していたのは明白にもかかわらず、政府は都合のいい解釈を続け、国民世論を欺き、したがって撤収することをせず、一名を見殺しにした。現場の隊員からは、実態は内戦状態にあること、具体的な命の危機にさらされていること、そして実際に多くの「事件」(ほんとうは「戦闘」)が起こっていることが報告されているにもかかわらず、「面子」にこだわり、何もしなかった。ほんとうに何もしなかった。そしてそれは、UNTACも同様だった。
生きて帰ってきた隊員たちは、組織によって声を上げることを封じられた。そして、政府は何の検証もしなかった。なぜ一人の隊員は殺されなければならなかったのか、本来ならば派遣の意思決定ないたる経過も含めて、徹底的に検証されてしかるべきだった。結局そうしなかったことが、今日の例えば南スーダンのPKO問題(現実を直視せず「戦闘状態にない」と、カンボジアのときと同様に強弁を続ける)ことにつながる。犠牲を強いられるのは、いつでも最先端のものたちてある。
23年の沈黙を破って、元隊員たちが真実を語った。日本の政府、官僚組織がこの悲劇を受けても何も変わらなかった、それが悲しい。
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1993年、日本が初めて国連のPKOに人員を派遣したカンボジアで文民警察官の高田氏が殉職されるという悲劇を覚えておられる方は少ないのではないでしょうか。
政府は自衛隊を初めて国外に派遣することになったこの機会に万が一戦闘に巻き込まれる様な事態を恐れていました。自衛隊が配置されたのは治安も良い地域に全員が1か所に派遣されるという恵まれた状況であったのに対し、文民警察官の方は政府の関心も自衛隊ほどではなく、事前の根回し不足もあって数人ずつの小グループで各地に分散し、タイ国境付近の治安の悪化した地域にも配置されました。彼らが派遣されたのはポル・ポト派が支配するまさに「戦場」だったのです。「支給された防弾チョッキは拳銃にしか対応しておらず、そんな装備で普通の農民がAK47という自動小銃を携帯している所に放り込まれた」、「夜には遠くで迫撃砲の着弾音がひっきりなしに鳴り響き、塹壕の中で身をかがめていた」、「自動小銃の乾いた発射音。銃弾が車体をこする高い金属音。車体に銃弾がめりこむ鈍い金属音。窓ガラスが割れる粉砕音。頭上でロケット弾の炸裂音。弾丸が顔の肌を舐めていく。その弾丸の風圧が顔の皮膚に伝わる。」等の証言があります。襲撃を受けた際に殉職された高田氏と同じ車両に乗っておられた方の証言は、もはや戦闘の最前線としか言いようのない激しいものです。
派遣の前提である「紛争地域には派遣しない=派遣先に危険はない」という建前論のために十分な装備も準備されない中で起こった悲劇であったのです。
当時のカンボジアの政治状況から、PKO活動の実態、そして驚くべきことには襲撃した加害者側であるポル・ポト派の元司令官にまで取材をして証言を得ています。現地に派遣された警察官の方々の信じられないほどの責任感、派遣された文民警察官の現地指揮官が部下の安全を案じる苦悩と、建前論に徹する政治家の議論がここまで対照的に、かつしっかりとした裏付けで描かれている本書はハードカバーで400ページ近い大作ですが、是非一読をお勧めします。ここ数年で読んだノンフィクションの中で間違いなくベスト3に入ると思います。
政治家の答弁が「停戦合意は成立している」等の建前論に終始する様は南スーダンPKOの時と全く同じじゃないか、と改めて憤りを感じます。
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特殊な訓練を受けず、街のおまわりさんが文民警察としてカンボジアに派遣された。
カンボジアも含め、PKOへの理解が圧倒的に低い日本。
いつまでそのままでいるのか。
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NHKにも立派な仕事をしている人々がいることを知った.関係者から聞きにくい話を聞き,資料を提供してもらい,現地にも足を運び,過去の扉をこじ開けた.TVを見なかったことが悔やまれます.でも文章に本にしてくださって読めて良かった.安倍内閣のきれいごとに惑わされないで,過去を現在に生かしていきたいです.政治はメンツのためのゲームではないということを政治家は知るべきです.
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読んで良かった。1992年、PKOとしてカンボジアに自衛隊が派遣された時、同時に75人の警察官が「文民警察官」として派遣された。自衛隊は安全な場所に基地が置かれたが、文民警察官は危険な場所に分散して配置され、毎日銃声が鳴り響くような中過ごしていた。文民警察官がいくら現状を訴えても、政府は停戦合意が成立しているとの姿勢を崩さず、薄い防弾チョッキしか用意もさせず、結果、日本人が一人殺され、何人もが重軽傷を負う。人民警察官について他国は検証を行っているが、日本は検証を行っていない。日本は隠す国家なのだと思った。
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こんなことがあったなんで全然知らなかった。
それ自体が今後もふつうの「おまわりさん」や戦場に行く予定のない人が、戦場に行かされてしまう可能性を高めているのではないかと思った。
多くの人に読んでほしい本。
文章としても読みやすいし、死に至るまでの経緯も分かりやすきまとめられている。
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NHKはたまに残しておかなければならない隠された真実を、ドキュメンタリーとして放送することがある。
本書に書かれているのは、日本が初めてPKOに人を出したカンボジア選挙のこと。
そして、その活動中に命を落とした文民警察官の事。
政府、警察組織、そしてそれらに阿るマスコミ達は、カンボジアPKOで何があったかを覆い隠し真実を語らない。
それは、本書の元となったドキュメンタリーが制作された時点でも変わらない。だから本書には現役警察官の証言は語られていない。
本書に書かれているのは、組織の一員として、現場でないがあったかを隠し続けてきた元警察官、他国の軍人、そして当のカンボジア武装勢力たちの言葉で綴られた、何が為され、何が起こったかと言うストーリー。
それはおそらく、政府の公式報告書には書かれない事。
紛争地域に人を派遣するということはどういうことか、こちらが武装しているとかしていないとか、文民だとか軍隊だとかには関係なく、相手はどう接してくるのか、よく考えた方が良い。
日本は戦争を放棄すると同時に、国際協力を行い、平和を維持する国際社会において名誉ある地位を占めたいと思うと宣言した。
これは、国際協力である国連の活動に積極的に参加するということ。そして、国連は今まさに戦闘が行われている地域に殴り込んで力づくで双方を引き剥がすような活動をも行なっているということ。
その現場に、明後日の方角の議論で無理を押し付けるぐらいなら、名誉ある地位なんか放っぽり出して、撤退したろうが良い。
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内容についてほとんど知らなかった自分を恥じたい。国際平和活動や政治、組織について考えさせられる。ぜひ番組も見てみたい。
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中田厚仁さんがカンボジアで襲撃されて亡くなったのは知っていた。でも、文民警察として派遣されていた男性がなくなったことは知らなかった。その無知を、いや無関心を恥じた。
この本を読んで憤りを感じるのは私だけではないと思う。「国益のため」「平和に貢献するため」と言いながら、自分は安全地帯から一歩も出ず、丸腰の警察官を派遣する。しかし、まともな情報収集も事前準備もせず、まともな防弾チョッキも支給しない。「ここは戦闘区域」という現地の声に耳を貸さず、「平和条約は守られている」と平和ボケした議員に官僚。人の命をなんと思っているのか。
国益、国際貢献、人、命、国ということについて考えさせられた一冊。
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とにかく、こんなにカンボジアの為に尽くしてくれた日本の警察の方がいたこと、知らなかったことがはずかしかった
そもそも、警察官がカンボジアに派遣されていたなんてニュースになっていたのだろうか
何ごとも初めに関わる人間は大変な思いをするが、これは、日本の官僚の能天気さによる苦労がほとんどだった
語ることすら許されなかった方々の証言が生々しく苦しかった
23年も胸に抱えてきたなんて、どんな日々だったのか
読むのが苦しかった
でも、日本人として知るべきことだと思った
現在も活動中のPKOは、本当に必要なのだろうか
意識もバラバラで、寄せ集めのチームが、本当に平和を促すことができるのだろうか
私なら、自国の争いに外国人がやってきたら、恐怖を覚える