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休暇で滞在していた宿の一室で、とある成金の老人がガス中毒死した。現場の状況は、自殺にも他殺にも取れる様子だった。保険会社の専属探偵であるブリードンは、保険金の支払いが絡むこの事件の調査へと趣くことになる。
たいへん英国風のくすぐりに溢れたミステリでした。(読みながら流石ノックス。宗教事情も絡ませつつ、物語を描写するときの視線の置き所が英国的。ミステリお約束の「ワトソン役をお望み?」と奥さんに言わせる辺りとか、もー判ってらっしゃる、と感心することしきり)
宿の照明が未だガス灯によるもので、一つの元栓からスタンドランプと壁掛け式ランプの2箇所へとガスが枝分かれに配給されていて、それぞれにもガス栓が付いてる……ってところから、本書のタイトルは「三つの栓」なのですね。
現代の、このキモになる『ガス灯』とは縁遠い生活となっている私たちからは仕組みのイメージが湧きづらい所がありますが、ちゃんとこのややこしい、栓が開いてる/閉まってるのところも図解で解説されてて良かった。
探偵役が二人いる(刑事と保険会社の探偵)ところも、交互に推理を披露するという推理合戦の様相を呈してワクワクするし、関係者皆になにやら怪しい行動や動機がチラチラ見え隠れする上に、当の本人が自殺している可能性まであるので、一体誰が殺人犯なんだー?と最後まで真相を読ませないプロット、堪能いたしました。
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この著者の作品は、ノックス自身がローマンカトリックの大司教という肩書を持っていますが宗教色が強い作品ではないように思います。
一九二一年には、シャーロックホームズに関する研究論文を書いてコナン・ドイルを驚かせたという逸話がありますが、探偵作家としての主な活動期間は十数年間だという。
さて小説は、資産家モットラムがインディスクライバブル社という保険会社との交渉で始まります。
モットラムは、ロンドンの主治医から余命二年と宣告され生命保険(安楽死保険)で支払い済みの保険料の半額を払い戻して欲しいという申し出である。保険契約は、六五歳満期・死亡保険金50万ポンド(自殺の場合は支払われない)、六五歳以降は保険の年金だけで裕福な暮らしが出来るというものだが現金が欲しいため解約したいとのことである。
社は契約書通りその申し出を断った。
社には、調査員という名の私立探偵(主人公ブリードン)を雇っている。
それから数日後、モットラムが保養地のチルソープの宿で死亡したという知らせが入り、現場に向かうことになる。ロンドン警視庁の警部リーランドも駆けつけた。
彼の死亡原因はガス中毒だったと、医師が確認し、部屋は内側から鍵が掛かっておりモットラムの秘書と医師がドアを破って侵入したところ、ベッドに睡眠薬を飲んで横たわっていたという。その時、確認したところガス栓は閉まっていた。誰が閉めたのでしょうか?
宿の客室にはガス管が通り、壁掛けランプとスタンドランプはガスに火を灯すようになっていた。暖房は暖炉があるのです、電気は通っていない。
ブリードンは、社の代理人として自殺を主張しリーランドは、殺人(他殺)を主張しどちらにも根拠がある。
僕は宛ら、「安楽椅子探偵」の如く淡々と推理しながら小説を楽しんでいた。
現場に残る両者の根拠は対立するが、時間の経過とともに捜査が進展し他殺説が濃厚となる。ブリードン危うし!
モットラムは特にカトリックを否定している訳ではないが、かつて司教に「人は善なる目的のためなら悪を為しても道徳的に正当である」と告げていた。
物語に派手さはありませんが、論理の対立は面白い。
全体から見れば、おおらかなユーモアに包まれた明るい物語です。
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片田舎の宿屋の一室で資産家のモットラムが亡くなっているのが発見された。部屋には不可解な点が多く、自殺なのか、他殺なのか判断がつかない。
モットラムは多額の保険を自身にかけていたため、保険会社の調査員であるブリードンが調査に赴く。
あまり乗り気じゃない探偵も珍しい。
ブリードンとリーランドの推理合戦が面白かった。
分かりにくいガス栓の状態が図解されててありがたい。