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紙の本
タイトル通りの安定感とフックの利いた終盤の妙
2018/03/02 22:14
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:DSK - この投稿者のレビュー一覧を見る
2014年の『熟女の海-未亡人義母と未亡人女教師と未亡人海女』以来、離島を舞台にした、主に未亡人熟女の抗えない肉欲を7作に渡って上梓して人気を博してきた作者だが、今回は川崎を発着地として東北から北陸を旅する少年主人公の、まさにタイトル通りな作品である。とは言っても従前の作風と大きく変わることはなく、これまで通りに匂い立つような熟女達の濃厚な官能が堪能できる仕上がりと言える。
海外出張中の夫に呼ばれて家を1週間空ける39歳の義母。この期間に19歳の主人公も旅行に出かけると言うのだが、かつての恩師たる34歳の女教師を訪れるのは良いとしても32歳の兄嫁には会って欲しくない様子。不仲を窺わせている。そんな義息たる主人公の気を引くために思わず発した一言が積年の想いを抱く主人公の迫りを誘う。この時点ではどうにか手淫や口淫で凌ぐが、1週間後に含みを持たせている。何かしら思うところがある義母なのだが、そうとは知らない主人公が恩師や兄嫁と懇ろになっていたというすれ違いの流れである。
その主人公の旅だが、偶然に居合わせた36歳の熟女との行きずりの情交から始まっている。かなり都合の良い展開に感じられ、主人公自身も訝しむほどの僥倖なのだが、やはり出来過ぎの感は否めず、背徳感にも乏しいせいか、官能的な興奮度はあまり高くない。しかし、肉欲を渇望する熟女がイレ込むとどうなるかという今後を示す役割にはなっているようである。官能面の本番は恩師からである。
今は未亡人の恩師は主人公の突然の来訪に驚きながらも歓待する。ただ、予約した宿をキャンセルさせてまで家に泊まるよう促す時点で何となくの思惑は感じてしまう。双方には卒業時に忘れられない思い出があり、その再燃を見込んでいる主人公と、それを察する恩師という予定調和があからさまに過ぎる気がする。それでもかつての教師と生徒という禁忌を興奮に変えて燃え盛る官能描写は作者にとっても水を得た魚のごときであり、濃厚な情交が描かれている。
兄嫁とも過去にほろ苦い思い出がある。恩師と併せて合体に至る理由は用意されており、兄嫁の方がやや積極的なのだが、ヤル気満々の主人公と察して受け入れる熟女という構図は変わっていない(ついでに言えば、ここで旅の日程と義母の帰国にもズレが生じている)。ただし、義弟たる主人公の成長した姿に兄(亡夫)の面影を感じつつ、亡夫に開発された体が再び開花するように悶絶を極める兄嫁の痴態は淫猥この上なく、兄嫁の心にまで変化を及ぼしている。これが後に兄嫁の大胆な行動の源となる。
起承転結の「転」として意外な面白さが出てくる終盤だが、義母と兄嫁の確執は根深く、これにはかつての同居時代にまで遡る遺恨があるらしい。思わぬ形ですれ違ってしまった義母とはここで晴れて濃密に結ばれるのだが、やや忙しない感じで兄嫁との鞘当ても始まる。最終的には渋々ながらの和解と共有へと至るのだが、その遺恨については蛇足の感も否めない。
いわゆる「一竿主義」を貫くなら不要に思うし、赤裸々にしてしまうのも読み手のイマドキな趣向には合致しないであろうことからの小出し演出と思うが、後味に少しばかりの濁りを感じるところではある。行きずりの熟女や恩師にも想いを馳せる主人公の心情にもはっきりしないところがあるため、それを正解のない男女の感情と思えば相応の落としどころなのかもしれないが、その曖昧さが余韻として残ってしまっている。
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