紙の本
最後のひとかけらの瓦礫が片付くその日まで
2019/07/25 23:31
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:読人不知 - この投稿者のレビュー一覧を見る
あの時、何が起こったのか。
本書は、政府の調査結果や東電の発表とは違った角度から、福島第一原発事故の経緯を読み解くカギになる。
実名でインタビューに応じた人々の証言を元に、あの時、現場で何が起きたのかを語るドキュメンタリー。
現場の尽力、福島や他の地域の人々が何を為し、何を成し遂げたのか大変よくわかった。
人・地域・仕事・責任……そんなキーワードで繋がれたヒューマンドラマでもあるが、フィクションではなく、現実に起きた出来事で、まだ何も終わっていない。
現場の社員や協力(下請け)企業、東電とは無関係の建設会社までもが、命懸けで未曽有の事象と戦った。
あの時、一旦は現場を離脱して戻った協力企業関係者がショベルカーで獅子奮迅の活躍をしなければ、高濃度に汚染されたと知りながら手作業で瓦礫を撤去し道を作った現場職員が居なければ、二号機に留まり手動で冷却装置を作動し続ける地元の東電社員が居なければ、二号機も爆発していたと知り、納得と同時に背筋が凍った。
同時に、協力企業の社員が普通の靴で地下に突入し、高濃度汚染水でベータ線熱傷を負ったことや、三重の建設会社がポンプ車の提供を申し出てから長時間待機させられたこと、ポンプ車の現場到着後の東電対応など、「東電にあらずば人にあらず」などと揶揄された残念な経緯も浮き彫りに。
当時の政府と東電本店の詳細な対応を知り、虚偽報告をしてでも冷却を続行させた吉田所長の胃の痛みが自分にも伝わった。
新聞で読んだが、通しで読むと更に状況がわかりやすくなった。
連載時にあった多数の図はかなり減らされたが、その分テキストが増え、読み応えが増した。
まだ、事故の終息作業は続く。
最後のひとかけらの瓦礫が片付くその日まで、ずっと読み継がれて欲しい一冊。
紙の本
福島第一原発事故の生々しい記録
2018/11/30 19:42
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投稿者:YK - この投稿者のレビュー一覧を見る
島第一原発の事故については多くの本が出版されていますが、本書は現場に居合わせた現場作業員の方の証言をメインに集めて事態の推移を描いた本です。
東日本全域が人の住めなくなる状況となるような最悪の事態を避けられたのは事故発生からの数日間に現場の方々の文字通り自らの命を顧みない作業のおかげであったことを改めて知ることができます。
しかしその現場がいかに過酷であったのかが読み取れるのは、本書に登場する多くの作業員の方が現場で感じた命の危険や恐怖を正直に語っておられる証言です。以下に抜粋します。
「怖かったです。でも原子炉建屋に入るってことは半端じゃない被ばくをするってことです。死ぬかもしれない。やっぱり行きたくなかったですよ。家族のことが頭をよぎりました(原子炉建屋に入る作業員を募る際に挙手できなかった時の心境)」、「完全に戦意喪失でした。『死を覚悟した』なんて言うけど、俺は死ぬって覚悟もないまま実際に死にかけた。あと10秒早く車に乗っていたら車ごと潰されていた。目の前に『死』があった(3号機建屋の水素爆発の際、飛散したコンクリートの塊で作業車両が破壊された作業員)」
他にも生々しい証言が多数収められています。忘れてはならないのは2名の方が地震直後の点検作業中に津波によって原発内でお亡くなりになっている事です。
技術的な説明は極力抑えて、多くの人の証言から事態の推移を描いているので非常に読みやすく、何よりあの時に現場がどのような状況であったのか、その過酷さの一端が伝わってくるノンフィクションでした。
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福島第一原発事故
2018/03/14 17:45
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投稿者:カピバラさん - この投稿者のレビュー一覧を見る
東日本大震災から7年目。福島第一原発事故の廃炉作業には今後30・40年はかかる。原発の安全神話が崩れ、東京オリンピックを前に、今後、原発はどうなるのか考えさせられる1冊。
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壮絶な人間ドラマ
2018/04/07 18:08
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投稿者:飛行白秋男 - この投稿者のレビュー一覧を見る
強さも弱さもあるのが人間。
吉田所長のように魅力的な人になりたかったなあ。
人間としてすごいから人がついてきてくれるのになあ。
当時の首相はそれ知らなかったのかなあ。
出来ないのに、自分は出来ると勘違いしている指揮官の部下はつらいよねえ。
感情的になる人は、幼稚にみえるね、みっともない。
原発の現場の人たちに心から感謝いたします。
日本の救世主のみなさま、ありがとうございます。
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投稿者:ハム - この投稿者のレビュー一覧を見る
事故の時の記憶が鮮明に描かれているので、臨場感がありました。ドキドキしながら、読みました。すごかったです。
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2018/3/15 Amazonより届く。
2019/5/21〜5/27
あの事故から8年。凄まじい記録である。現場の人たちの揺れ動く心、政府首脳の無能さ。今、大きな事故があっても、こうしてそれなりに暮らしていけている我々。全日本人が読むべき本。所長が吉田さんでよかった。ご冥福をお祈りします。
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購入からだいぶ時間たったけど、読み始めたら一晩で読了。原発事故を詳しく取材した共同通信のドキュメント。震災から2年後くらいに客観的にまとめられているので、とても詳しくて参考になる。色々な不運と幸運とアクシデントや勘違いが様々に重なったんだよね。3・14から15くらいが、本当の山場だったんだね。でも、吉田さんっていう人はえらいよ。国民栄誉賞っていうのは、こういう人のためにあるような気もするけどね。
こういう本を教材として、高校あたりで使うといろんな意味で役に立つと思うんだけど、政治的思惑が入っちゃうから難しいんだろうね。
それにしても、この時だけ民主党政権だったっていうのが、なんともね。原発を推進してきた自民党こそこの非常事態を経験すべきだったのにね。
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福島第一原発の事故については多くの本が出版されていますが、本書は現場に居合わせた現場作業員の方の証言をメインに集めて事態の推移を描いた本です。
東日本全域が人の住めなくなる状況となるような最悪の事態を避けられたのは事故発生からの数日間に現場の方々の文字通り自らの命を顧みない作業のおかげであったことを改めて知ることができます。
しかしその現場がいかに過酷であったのかが読み取れるのは、本書に登場する多くの作業員の方が現場で感じた命の危険や恐怖を正直に語っておられる証言です。以下に抜粋します。
「怖かったです。でも原子炉建屋に入るってことは半端じゃない被ばくをするってことです。死ぬかもしれない。やっぱり行きたくなかったですよ。家族のことが頭をよぎりました(原子炉建屋に入る作業員を募る際に挙手できなかった時の心境)」、「完全に戦意喪失でした。『死を覚悟した』なんて言うけど、俺は死ぬって覚悟もないまま実際に死にかけた。あと10秒早く車に乗っていたら車ごと潰されていた。目の前に『死』があった(3号機建屋の水素爆発の際、飛散したコンクリートの塊で作業車両が破壊された作業員)」
他にも生々しい証言が多数収められています。忘れてはならないのは2名の方が地震直後の点検作業中に津波によって原発内でお亡くなりになっている事です。
技術的な説明は極力抑えて、多くの人の証言から事態の推移を描いているので非常に読みやすく、何よりあの時に現場がどのような状況であったのか、その過酷さの一端が伝わってくるノンフィクションでした。
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原発ものは余計な主張が入りやすく適当な読み物が乏しいが、これはかなり出来事だけに絞られており、かつ読み物として惹きつけられるものがある。
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日本史に負の名を残すだろう、東日本が死の国になるかも知れない未曾有の危機に対応した東電福島原発の証言ドキュメンタリー。
自衛隊、警察、消防の活躍した記事や作品は読む機会はあったが、地元で育ち、懸命に守ろうとした東電原発の社員達の苦闘というのは、初めて読んだ。
死を覚悟し、責任感を奮い立たせ職務を全うする人、恐怖で職務を放棄する人など、偏りがない証言を記載され、一気読みであった。
吉田所長の遺言や、施設内で罹災した同僚の捜索には、涙なしには読めない。
打つ手がない逆境に向かう人たちのノンフィクションは、読む人を選ばないはずだと確信する。
現場と中枢の壁、現場を乱す当時の首相の姿は、危機のリーダーシップや危機管理のあり方を問う作品でもある。
あとがきの池上彰というのも、本当にお買い得でもある。
この作品が本屋から無くなったら、日本人は同じような誤りを繰り返し、瞬間的ブラック企業被害社員であった、東電の現場社員達のような犠牲者を出してしまうだろう。
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まずあとがきの池上さんの全ての世代の人間がその時どうしていたかを話し合える話題となることになるほどと感心してしまう。
原発で何があったのかは実はよく知らない。
何か大変なことがあったけど、ギリギリでなんとかなったんでしょ。
たくさんの現場の方々が犠牲になったんでしょ。
所長さんもこの事件が原因で亡くなったんでしょ。
などなどが自分の認識であったのでいい機会だからちゃんと知ろうと思い読み始めた。
結果、読み物として本当に面白い。
何よりも感じるのが著者がとてもフラットな立場で物語を進めてくれるので一定の人々や団体に対しても偏りがないこと。これはとても好感が持てた。(若干政府に対しては皮肉も入るが…)
そうすると実際に起こったことがとてもフラットに分かりやすく見えてくる。
実際にありえない様なことが現実で起こりそれに逃げずに立ち向かっていった関係者の方々やご家族の方々にはとても敬意を感じる。
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事故から7年たちましたが、現場で何が起きていたのか、本店、官邸がどう対応したのかが、よくわかりました。
現場で命をかけて対策に取り組んだ人たちと、現場の事情を把握せずに無理難題を押し付けた本店、官邸が対照的なのは、どこも同じ構図だと思いました。
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証言をドキュメンタリーに再配置した内容が中心だが、かなり中立的に描いている。事態が刻々と切迫していくあたりは、読んでいても息苦しさを覚える。
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まずもって、フェアな本。
この話題について、イデオロギーや結論ありきでなく理解しなおしたい人にとっての必読書。
海外の良質なノンフィクションを読みなれている人の中には、時系列でやみくもに進む描写に「なにがなんだか」感を覚える人もいるだろう。
ほら、外国人ライターって「現場の混乱を離れて、まずはリアクターというものを理解しておこう」みたいな筋の立て方が上手じゃないですか。本書はそういう感じじゃない。
だが、いやだからこそ、ああこの混乱がまさに現場で起きていたことなんだ、振り返ればわかる全体像なんてものは当時は誰も持っていなかったんだということがストレートに伝わってくる。
「いいわね、必ず生きて帰ってらっしゃい」。若手職員が避難所の母親に電話したときの言葉が胸に迫りくる。
あのとき、同じ会社の中で逃げ回った人と立ち向かった人がいた。それは日ごろからの人格の差ともいえるし、たまたまそこにいた「めぐり合わせ」ともいえる。
誰もが「もしそこに自分がいたら」を内省せずにはいられない本。
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門田隆将「死の淵を見た男 吉田昌郎と福島第一原発」よりもこちらの方が読みやすかった。あちらに書かれていない内容もあった。併読するとより事故に対応していた人たちについての理解が深まるような気がする。現場の状況が把握理解できていない本社や官邸。ぎりぎりの状況で現場は対応していた。安全神話など無いということも改めて実感した。航空業界のように細かいヒューマンエラーや事故から多くのことを学び、少しでも安全の確立を上げて欲しいものです。わずかな隠蔽やごまかしは許せません。最悪の事態を想定するのも重要だと感じた。