電子書籍
彼女の初々しい時代
2020/07/19 10:10
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投稿者:Todoslo - この投稿者のレビュー一覧を見る
表題作では、新聞記者時代の太刀洗万智の活躍を堪能できます。「王のサーカス」への期待感もあり、フリーのジャーナリストへの憧れも伝わってきました。
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投稿者:るう - この投稿者のレビュー一覧を見る
太刀洗万智を主人公にしたビターな味わいのある短編集。
特に苦いのが「恋累心中」...最後の最後までこの世の悪意を踏みにじられた若い二人が哀れ。
「名を刻む死」の万智の言葉には驚かされた。彼女はあんな言葉が出るほど苦く醜い事柄を今まで見つめてきたのか。
その辛さから逃げないからこそ彼女なのだろうが。
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米澤氏らしい淡々と真実に迫っていくようなミステリ。
主人公の太刀洗女史は感情の起伏がなく個人的には魅力に欠けるが、これも作者らしさ。そのぶん読者は純粋に謎解きを楽しめる。
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刊行当時から話題になっていた短編集が文庫化。『あとがき』によると、『ユリイカ』で著者の特集が組まれたのがきっかけで生まれたものらしい。
表題作が一番好きだが、『名を刻む死』も良かった。唐突に終わるというか、突き放したようなラストが多いのが印象的。
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真実の10メートル手前/正義漢/恋累心中/名を刻む死/ナイフを失われた思い出の中に/綱渡りの成功例
辿り着いた真実はそこにある…でも もう 届かない
自分は絶対に正しい…その自信は でも 正しいのか
こいがさね での心中…その裏には あぁ 醜い
独居老人の孤独死…身勝手な人の残した物は 不要
記憶の中の温かさ…守りたい この身を挺しても
救助された老夫婦…その後ろめたさをほぐしてあげたい
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派手さはないが、じっくり読ませ、心の中にある痛みや哀しみに問いかけてくるような話が6つ。
その風貌には「翳と険、ついでに鋭さ」があり、「強いて孤高を望むわけでもないのにどこか超然とした気風」を感じさせるという、大刀洗万智、フリージャーナリスト。
その造形はとても魅力的で、興味深く。本書を読んで、作者の「単行本版あとがき」を読めば、彼女がどんな少女だったのか、俄然知りたくなった。
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新刊出た~と購入。短編集なんだ、と読み始めて知りました。それにしても太刀洗さんって変わった苗字だなぁ。さよなら妖精を読んだのは大分前なのでもう一度読み返そうかしらん?
真実の10メートル手前
ライブドア事件を彷彿させるような冒頭。え?ここで終わるの?と思ったら長編もあるらしい。なるほど、なぁんだ。
正義漢
電車とかバスに乗ると眉を顰めるマナーの悪い方がいらっしゃいますが…まあ殺すことは無いよなぁ。正義って振りかざすものでもないし…なんて思いました。
恋累心中
これは酷いお話。徹底して大人に裏切られた子供が痛ましい。でも確かに子供たちがその劇薬をどこから手に入れたかで結構すぐにお縄になりそうではある。ウン。
名を刻む死
純粋な少年に落とされた毒、という感じ。
確かに会社社長としてはそんな人物雇う事は出来ないよなぁ。同情だけでは受諾できないものがある。珍しい強気な言葉は少年を救うためだったのかな。
ナイフを失われた思い出の中に
これも中々痛ましいお話。本文を読んでわかってくれた人が居るというのは確かに救いなのかもしれないけど… いずれにせよ父親最低だなぁ。
綱渡りの成功例
被害者とそしてそれを取り巻く状況と。
絶望的状況に追い込まれて尚、人の事を気にかける余力があるのだろうか?難しい問題だなぁ。
太刀洗さんが記者ということもあり、顔の見えない不特定多数の物事をカテゴライズしたがる傾向とか、机上の空論のようなきれいごととか正義感とかが透けて見えてああ、イヤだな、と思うことあり、でも人と人のつながりはそれほど捨てたものでもないのかもしれないと思ったり。そんな事を考えました。
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面白かった。
「真実の10m手前」
「正義感」の二つは好きでしたね。
他の作品もよかったですが、どちらも最後のオチが素晴らしかった。うなるものを感じました。
他の作品も少し入りにくいものもありましたが、
とてもよかったです。王とサーカスも楽しみです。
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短編集だとは知らなかった。各話『不幸な事件』を扱ったものだから仕方ないかもしれないが、冷やりとする後味が遣り切れない。謎を解き明かしても救われる人ばかりじゃないし、むしろどうにもならないことの方が多い。事実と向き合って太刀洗さんは気が滅入らないのだろうか。
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米澤穂信の短編集
ジャーナリスト:太刀洗万智が活躍します。
「さよなら妖精」のセンドーって、こんな成長をしたんだ・・・と不思議な感覚に囚われました。
が、ジャーナリストを主軸とした「人間ドラマのミステリ」としては秀逸!あっという間に読み終えました(^_^;)
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真実は時に人を傷つける。
解釈でしかないこの世界。
都合のいい、安心できる結論が期待されるこの世界。
なにがいいのか、なにが悪いのか。
結局は主観で選んでいくしかない。
語られ方ひとつで変わっていくこと。
せめて自分は、自分が正しいと思ったことを信じていきたい。
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太刀洗シリーズの短編集。ジャーナリズムの在り方とか、内容は同シリーズの”王と~”と同じベクトルで書かれていて、同作を気に入った自分としては、本作にも同様の満足感が得られたのでした。個人的には、心中の話と、幼女殺人の話が印象に残りました。
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高校生の心中事件。二人が死んだ場所の名をとって、それは恋累心中と呼ばれた。週刊深層編集部の都留は、フリージャーナリストの大刀洗と合流して取材を開始するが、徐々に事件の有り様に違和感を覚え始める。大刀洗はなにを考えているのか? 滑稽な悲劇、あるいはグロテスクな妄執――己の身に痛みを引き受けながら、それらを直視するジャーナリスト、大刀洗万智の活動記録。
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ジャーナリスト太刀洗万智の事件簿
洞察力と推理力の鋭い彼女は、常に事件の真相の側に立つ!
自分の発信する言葉の威力と他人の迷惑を省みない現代の報道関係者にこそ読んで欲しい!小説の世界は幻想ではあるが世界の何処かに太刀洗のような記者が居れば良いなぁと思った。
因みに私のオススメは『綱渡りの成功例』です。
他の短編は何らかの事件の匂いがしているのですが『綱渡りの〜』だけは前半の何処からもそれを感じさせません。しかし太刀洗が登場したところから急に事件が輪郭をボンヤリと映し出してきます。
一番最後の短編であったことから他の作品から滲み出る出汁のようなものが効いていたのかもしれません。
太刀洗を主人公とした作品が他にもあるようです。私は読んではいないのですが《さよなら妖精》を読んでから本作を読んだ方が良いのではと思いました。
8月に文庫化される《王とサーカス》が出るまでに読みたいと思います。
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記者として脂の乗り始めた太刀洗万智にまつわる短編6篇.短編ながら,人の業と真実に対する真摯な姿勢が冷徹な筆致で描ききられており,いずれも珠玉.また,6篇の構成や物語の構造体も見事という以外に言葉がない.さらに,主人公太刀洗万智がこの世に産み出された書“さよなら妖精”による,決して癒えることがない(と思っていた)心の傷を癒すかのごとき鎮魂詩としても機能する一篇“ナイフを失われた思い出の中に”には(題目の二重性にも唸るが,それ以上の内容に),知らず涙が零れてくる.“万”能なる“智”を背負う生とはこれほどまでに棘か.