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公共図書館に関する独自のトピックを設定し、歴史的に概観した図書。各章は分担執筆の形をとり、それぞれの章で独自の「問い」を立て、検証している。
面白いと思ったのが、学生の席貸し排除や専門性確保の目的で、貸出を伸ばし、館外奉仕を行う「市民の図書館」が広まり、公共図書館が発展していく。ただ開館時間問題の不在や滞在型のニーズにより、現場の図書館員は悩む姿があった。新たなモデルを構築して、認めていく必要があるという指摘は今後の公共図書館の未来につながっていくと思う。
あと都道府県立図書館の役割が変革して、いまだに見いだせていないというのは、なんとかせねばなぁ…
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公共図書館。
さまざまな資料を、無料で、どんな人でも読めるのは図書館の大きな特徴であり、利点である。
一方で、ベストセラーを数多く所蔵し、本にお金を使いたくない人のための「無料貸本屋」になっているという批判もある。
公共図書館はどうして今のような形になったのだろう?
もしもっとよい「ほかの形」があるとしたらどんなものだろう?
図書館の歴史を語る本は多くあるが、本書の特色は、時系列をただ追うだけでなく、「どんな本が読めたのか」「図書館で働く人々」「本が書架に並ぶまで」といったトピックごとに整理・考察することにより、図書館の成り立ちの背景をより深く知れることにある。
図書館で働く人々にはもちろんだろうが、利用者の立場から読んでも目から鱗でおもしろい。
特に、いわゆるベストセラーが置かれるようになったのはごく最近のことであるとか、一昔前に学生の「自習室」替わりとなっていた閲覧室使用の変遷などといった話はとても興味深い。
公共図書館の役割は、「貸出」と「レファレンス(参考調査)」に大別されるという。
こうした役割がよりよい形で提供されるために、困難を乗り越えつつ、図書館はさらに進んでいくのだろう。
そんな来し方・行く末を考える興味深い1冊である。
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司書資格の科目の「図書館史」では現代史が駆け足になるが(せいぜいが「中小レポート」と「市民の図書館」くらい)、主要なトピックを拾って丁寧な解説がついていて勉強になった。図書館関係の本は、とかく当事者が自画自賛したり、自虐的だったり、理想論的だったりするが、この本は公平な記述に徹しようとする努力を感じた。