紙の本
『親子の手帖』
2020/11/16 19:17
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:百書繚乱 - この投稿者のレビュー一覧を見る
親から塾の教師である著者に発せられることば
「私の言うことは聞かないから、先生、この子に厳しく言ってやってください」
「先生、うちの子、勉強しないでしょ。学校のテストの結果、ひどいもんでしたよ」
親から子に発せられることば
「そんな状況なら、塾も部活もやめなさい。中途半端が一番ダメなんだから」
「自分で選んだ学校だろ、お前ならもっとしっかりやれるはず」
「将来困るから、がんばりなさい」
子から著者に発せられることば
「顧問の先生が『やる気がないなら帰れ』って言うから帰ったら、追いかけてきて怒るんです。ありえなくないですか」
「でも、僕、わかってますよ。僕は兄ちゃんより勉強ができないんです」
黒白を判断し責任を押しつけるだけでは解決しないこれらのエピソードをとりあげ、当事者の“関係性”に着目しつつ、もつれた糸を解きほぐしていくきっかけを模索する、親にも子にも寄り添いながら
《現代のたよりない親子たちが、幸せを見つけるための教科書。》──帯のコピー
“教科書”ではあるけれど、どのような言動をすればよいかを示した手軽な“マニュアル”ではなく、どのようにとらえて考えたらよいのか手がかりを差し出す味わい深い“参考書”
《この文章が、方法論になりがちな子育ての話とは別の場所で、親と子が心を通わせることができるきっかけをつくることができれば、そのために心に携える手帳代わりになれたら、そう願っています。》──「あとがき」
著者は20年ほど前、大学院在学中に中学生40名を集めて学習塾を開業、現在は株式会社寺子屋ネット福岡代表取締役、唐人町寺子屋館長、単位制高校「航空高校唐人町」校長として150名余の小中高生の学習指導に携わる
また、書店「とらきつね」店主として各種イベントの企画運営、独自商品の開発を行うかたわら、Twitterでも精力的に発信している
近著『おやときどきこども』(ナナロク社)もあわせて味読したい
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鳥羽さんのまっすぐで,素直で,やわらかくて,自然体な視線がとてもよくて,自分の目線をみなおすよいきっかけになった気がします.
ちょうど自分の子供が小学生になるタイミングで読んだので,これからの学校での集団生活でいろいろあったときに,この本に書いてあったことは忘れても,目線のやわらかさとまっすぐさをわすれずに,子供と楽しくむきあいたい.
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2018.8月。
親子関係の難しさよ。まだうちは幼稚園だけど、こらから直面するであろうことがたくさん書かれていた。誠実に、個と個の関係でいきたい。こういう大人が側にいてくれたら。いや、自分がならなきゃいけないんだけど。
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すぐ子どもをコントロールしたくなったり、親の立場を利用して怒ってしまうことがあって、身につまされる思いで読んだ。
心に添うこと、目の前の子どもをよくみること、そのまま受け入れること、家を安全地帯にすること、心に留めておきたい。
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"子どもたちが学ぶ「道徳」は、「空気を読む」協調性ではなく、むしろそのような協調性を謳う共同体が、いかにして他人を差別し排除するかという構造であるべきなのです。"(p.124)
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著者が塾長を務める寺子屋では、難関校への合格者を多数送り出している。学習塾はまず勉強を教えるところだが、著者はたくさんの親子と親身につきあうなかで、生きづらさを抱えた親子に会いその人たちの受け皿が必要と感じ、お店を併設しイベントも運営するようになった、という。
「彼らが通う教室のすぐそばにとりあえず不思議なものが転がっていればいい、そうすれば、匂いに引き寄せられて、必要な人が必要なものに出会うだろう」とあとがきに記されている。
この本では、受験、カンニング、発達障害、学力と差別、不登校、いじめ、夫婦関係、第3の 居場所、理解のありすぎる親、「自立」という言葉の違和感、総スペクトラム化社会、といったさまざまな具体的問題に著者が立ち会い、そのやりとりがフィクションとして記されている。
中学生が悩みを打ち明ける。「彼は涙目でした。私は次の言葉を待ちました」…といったシーンから本書は始まり、そうしたさりげない一言一言に、まなざしのあたたかさを感じる。また、精神分析の視点から、問題を根の深いところから見据えているため、一見悪者にしか見えない親の態度にも、あくまで親子とそれをとりまく社会との関係性から問題をみて、それを解きほぐしていくためにはどうしたらいいかが真剣に書き綴られている。
書き言葉によるアウトプットといった、偏った受験システムのなかにいて、その学習を指導しながら、同時に、本当の知の喜びはとてもそんなものでは括れないのだと知っている大人が身近にいること・・・そんな環境が地域にあることが希望だと感じた。
いろんな人に手に取ってほしい本です。
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『おやときどきこども』が良かったので読んでみたが、こっちが基礎編、そして『おやときどきこども』が応用編という感じで、悩める親はまずはこっちからがおすすめ。『おやときどきこども』を理解するための補助線にもなる。これが2018年の刊行で、鳥羽さんの本は内容は深いのに何よりわかりやすい、読み易いのがよい。実践者の言葉は嘘がないから響く。
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読んでいてとてもつらかった。ねじれた親子関係の観察記録がいくつかあり、どこまで脚色しているのかは不明だけれど、著者も感情的な対応してることが多く読んでいてとてもつらい気持ちが押し寄せてくる。問題はそのまま「それからこの親子には会ってません」というものがいくつかある。「何かのきっかけで問題が解決することがあります」「どこかで楽に生きられるようになってたらいいなと思います」「幸せを願っています」みたいなしめのものもつらかった。きっと子供目線になってしまってるからつらいんだと思う。唐人町や宗像という地名が出てきて懐かしく感じる。
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幼児期の子育てに対する悩みからそろそろ卒業かなーと思ったら、もう次は、子どもの進学や、学校についての悩みが出てくるなぁと漠然と不安を抱えていたところ、グリーンコープのカタログでこの本が紹介されていたのを見て購入。
母としても、教員としてもとても参考になった。この手の、お受験の実態や問題点を指摘する本はこれまでにもけっこう読んだけど、首都圏の事情について書かれているものが多く、福岡とは事情が違うので参考にならないことも多かった。この本は福岡で塾を経営しながら地域の教育に携わっている方が書いたものなので、いちいち納得できた。
私は小学校からずっと福岡で暮らし、県内の公立の中学校で教員をしてきたので、著者が書いているように福岡では相変わらず偏差値重視、公立高校重視の教育が続いていてなかなか変わらないこともよくわかる。(最近はあえて、私立の特色のある学校・子どもの個性に合う学校を選ぶ保護者も多くなっているが、学力がトップクラスの子はやはり公立重視だし、私立も偏差値の呪縛からは逃れられない)。
いろいろな弊害を目の当たりにしている私自身も、福岡のこの風土の中では、結局わが子にも「偏差値の高い公立高校を目指しなさい」的なことを言ってしまいそうだ…自分自身もそのように生きてきて、県立高校・公立大学・公務員という安定の道を選び、そんな生き方しか知らないから(夫も似たようなものだし)…という不安がある。でもこの本に出てくる様々な親子の事例を読んで、親が自分の思うように子どもをコントロールすることがいかに間違っているかよくわかった。「あなたの好きな道を選びなさい」と言いながら、実は自分の期待通りの道を選ばせようとする親たち。子どもたちは、親の言葉と行動の矛盾にちゃんと気づいている。
人生の先輩として、私は自分の生き方を子どもに見せながら、善悪の判断や、人への思いやりだけはきちんと教えながら、やっぱりわが子たちには(そして教え子たちにも)自分の好きなことを見つけ、好きなことを勉強しなさい、好きなことで人の役に立てるように頑張ってみなさい、と伝えようと思った。
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著者は、学習塾を設立し、自ら小中高生の指導にあたっている先生でもある。
巷に溢れる育児本は、赤ちゃんから小学校低学年くらいの子ども向けが多い。
本書はそこから先のお話が多め。
土を作り、種を植え、水をやった後の、芽を出して葉が青々とし始めたくらい。
絡まった糸を、どう絡まっているのか、その原因や状況を説明してくれているような。