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あれ?伊坂作品ってこんな感じだったけ?と思いつつも楽しく読めた。
普通ならここでオシマイっていうタイミングで、まだ左手に100ページくらい残ってたからびっくり。伏線回収っていうにはちょっと足りなかったけど、少しずつ、びっくりがあったしね。
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警察内部に「平和警察」なる組織ができて、民間人のタレコミによって危険人物とみなされたら、連行された挙句に処刑されてしまう、、、
いわゆるディストピア(この言葉の意味がイマイチ掴みきれてないけれど、恐らくそう)小説ってやつになるかと思うのですが、なんか伊坂さんっぽくない設定だなーとは思いましたが、読み進めてみると、そこはやっぱり、伊坂さんの小説でした。
メインテーマは、多分「善と悪」であるかと思いますが、
常日頃、せめて小説の中では勧善懲悪の世界であってほしいと思っている自分好みのお話でした。
ただ、キャラクターに関しては、なんとなく違和感を感じるところがあり、何だろうと考えてみると、平和警察側の登場人物の普通のようで普通ではない、そして逆に普通にサディスティックな行動を取る、その”ドライ”な感情部分ではないかな、と思いました。
善であるはずの国家権力が無実の人間を痛めつけ、それを喜ぶ悪のようであり、その国家権力に対抗する勢力は、世間一般では悪でありながらも、真実を知っている人間から見れば善であり、、、。
また、作中で描かれる正義は、ある者からは善であり、またある者にとっては偽善を恐れ、死を恐れるだけの行動であって、純粋な意味での正義ではなかったり、、というなんとも不思議なパラドックスが作中に渦巻いていました。
また、誰しもが心の中に持っているサディズムを利用した組織が「平和警察」なのでは、と言えなくもないか、とも思いました。
魔女狩り、処刑、コロシアムの殺し合いなんかも民衆の嗜虐的欲求を鎮める手法の一つだったのかなーと。
ただ、その中でも警察内部の何でも屋である真壁捜査官だけは、伊坂作品の住人だと思える人物で、いろんな物事を虫や虫の生態に例えるあたりは、なんだか親しみすら覚えました。
それだけに、いろいろとネタバレになるので書けないモヤモヤを心に抱えたまま読み進めていたのですが、、、そこはやっぱり、流石の伊坂さんでした。
そしてとにかく伏線の回収がいつも以上に凄かったです。
読み終えてみれば、どのシーンももれなく使ってる、油断できない!っと言った具合です。
もはや本のタイトルですら伏線に思えてきます。
まるで魚の全ての部位を余さず使って、美味い料理を作るシェフのようにアーティスティックです。
それと、繰り返しが美しいです。
防犯カメラに映る、同じ場面を断続的に登場させることで、サブリミナルのように物事を印象づけて、更にそこに少しの変化を加えることで、大きなインパクトを与えるといったような繰り返しの美学を勝手に感じました。
久々の伊坂さんだったかな、と思うのですが、小説の中はやっぱりとても居心地が良かったです。
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いつもの様に読みやすいタッチで、登場人物が描かれている。
この物語は正義に関するお話である。
ただ、正義と言うものは、人それぞれである。
正義が集団になれば狂気になる。
何度も繰り返される歴史の話と言っても過言ではないだろう。
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昆虫の擬態をストーリー展開に挿すところが非常に興味深いなと思った。一つのことに対して多角的な視点よりさまざまな見え方があるんだな、と。
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今の腐敗した日本の政治を見てると、こんなふうに中から崩していけないものかと。いつもながら伊坂さんの書くひねりのきいた正義が、私は好きだ。
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まあ相変わらずの伊坂ワールド炸裂です。タイトルを見て、”SFかな?”って思ってたんだけど、よく考えたら、そんな安直なことはしないですよね。蓋を開けてみれば、やっぱり舞台は仙台で、乱用される権力があって、それに反発するいわゆる”普通の人”がいてって、紛れもないいつもの世界観でした。安心して読めるけれども、別にマンネリを感じるわけじゃなく、いつもながらの高品質物語と思いました。
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仕事帰りの電車の中でこの本読んでたら、最寄り駅に着いたのに気がつくのが遅れ、一駅先まで乗り過ごしちゃったよ。何という不覚…。
こんなこと、まずなく、まあ、それくらい話に惹き込まれてたってことだけどな。
世の中の危険人物を捕まえては公開処刑するという仕組みが始まった日本。取り締まるのは、その名も”平和警察”。
「安全地区」に指定された仙台を舞台に繰り広げられる警察vs無垢の市民の物語。
誰が中心人物やら色んな人の話やエピソードが積み重なって進む第一部。
警察を襲った謎の人物を追う平和警察の側から描かれる第二部。
謎の人物から事の顛末が明かされる第三部。
それぞれが公開処刑の場に引き寄せられる第四部。
全てがきちんと回収される第五部。
いつもながらに、少し前に書いてあったところに行きつ戻りつ小さなエピソードの積み重ねを楽しみながら、物語が膨らんで収束していく様を楽しむ。
伊坂幸太郎は悪意に侵食されつつある社会と闘ってるな。
今、正に『自分たちにとって都合のいい情報が、真実として扱われる』といってもおかしくない世界じゃないか?
悪意が善意を駆逐するような胸糞悪くなるような話だけれど、ここに描かれている権力の暴走や市井で跋扈する暴力(言葉の暴力も含めて)は誇張されているだけで、日常どこにでも転がっているのだろう。
それらに対して、元々作者には、日本はもっと素晴らしい国民ときちんとした法律で成り立っている筈とのささやかで真っ直ぐな希望があったと思うが、『何がどう変わろうと、別に、世の中が正しい状態になるわけじゃない』と登場人物に語らせるにあっては、真っ直ぐさだけではなく、長い物に巻かれながらも強かに世の中を生き抜く力が大事との思いが加わったように思える。
読みようによっては何が真実だったか推し量れないような話なのは、『大事なのは、行ったり来たりのバランスだよ』と語る作者の今回行き着いたところかと。
佐藤誠人って、同姓同名の奴が知り合いにいたけど、今はどうしてるんだろうなぁ…。
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前半の散りばめられたストーリーが、後半に一気にリンクして盛り上がる仕立てはさすが。
ただ、伊坂幸太郎という期待値が大きすぎるせいか、他の作品と比べると三つ星かな。
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序盤、登場人物がかなり多く読むことを挫折しそうになる。が、なんとか持ちこたえて最後まで読むことができた。
正しさに正解などない。
正義は人によって本当に様々である。
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なんと表現したらよいのか…。
小説としては抜群に面白い!
前半の畳み掛けるようなスピード感から物語の核心へ迫っていく後半。
人それぞれの心理描写とそこから絡まっていく人間関係。
予想もつかないのに、「あっ、あれから繋がるのか!」となる驚きの展開の連続。
その一方で感じる不安感と恐怖感。
そして、世界観に対してなのか、自分の感覚に対してなのか分からない嫌悪感。
語り口が淡々としているだけに、実際にありえる事であることをお話の中だけの事と錯覚しようとしてしまう感じがする。
なんとも凄かった。
解説、良かったなぁ。
これまで読んだことの無いタイプの解説。重くもなく軽くもなく自分の言葉でしっかりと語られているのに、感想文的ではなく細部にまで掘り起こされていた。
二十歳のミュージシャンの文章とはびっくり。だからこその解説なのかもしれない。
帯もいいな。この言葉、作品を全部表してるのに、どこか皮肉めいていて好きだな。
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人は群れると人間らしく振る舞えなくなる。
正しいかどうかも分からず大勢で群がるその姿はまるで昆虫のよう。
"正義"溢れるディストピアを知って感じる、どうしようもない無力感。
そんな絶望の中にキラリと希望が光る展開に釘付け。.
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『振り子の揺れを真ん中で止めることはできない。
大事なのは、行ったり来たりのバランス。』.
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何が正義で、何が正しいのかは誰にも分からない。
助けられた子供にとって何とかライダーは正義の味方だし、親を殺された怪獣にとって彼は悪でしかない。
正しさが振り子のようにいったり来たりする世の中で、
行きすぎたら戻る
スピードを出し過ぎたら緩める
それをしっかり出来るかどうか、それだけなんだなあとしみじみと感じた。
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子どもの頃は夢のようなことばかり考えていた。宇宙人が攻めてきたらどうしようと怯えたり、超能力で物を持ち上げてみようと念力を送る練習をしてみたりといった具合だ。私が特に夢見がちな子どもだった訳ではなく、大なり小なりそういうことを皆が経験しているのではないだろうか。
私が幼少期から少年時代を過ごした1960年代後半から70年代にかけては、アメリカのアポロ計画で人類が月面に立ったり、ユリゲラーが超能力ブームを起こしたりと、好景気も含めて世の中全体がグングンと発展していた時期だった。その頃テレビや雑誌に登場していた近未来は、タイヤのない車が透明チューブの中を走り、ロボットが家庭内で活躍する風景だった。一方でアメリカとソビエトの冷戦による核戦争の危機が叫ばれたり、ノストラダムスの大予言が誠しなやかに流布されたりと、心落ち着かない情報が飛び交っている時期でもあった。
そういう意味では、当時の子どもたちが頭の中に描いていた近未来は、明るく輝かしいものと深刻で陰鬱なものの双方が、微妙に入り混じっていたのかもしれない。
先日、書店の平台にずらっと並んでいたのが、伊坂幸太郎さんの書かれた 「火星に住むつもりかい? (光文社文庫)」という物語だ。風力発電の風車がアップになった表紙を見た時には、タイトルも含めて宇宙開発の物語なのかと思った。しかし、読み始めてすぐに背筋がゾクッとするような怖さを覚えた。この物語は、すぐにでも起こりうる近未来の物語だったのだ。
物語の舞台は仙台。世の中の安全と平和を守るために、日本では各地を「安全地区」として順番に指定し平和警察が取り締まるようになっていた。しかし、それは中世のヨーロッパで行われていた”魔女狩り”と同じようなものだった。
密告などによって危険人物としてマークされた人物は、平和警察によって罪を認めるまで過酷な取り調べを受けることになる。実際に危険思想を持っているかどうか、犯罪を起こす準備をしていたかどうかは関係がなく、とにかくマークされただけで過酷な取り調べで命を落とすか、嘘の自供をして犯人扱いをされてギロチンで公開処刑されるかのどちらかだった。
周囲の人を信じることができなくなった不条理な世の中だが、その中で犯人扱いをされた人を救う「正義の味方」が現れた。見たことのない武器を使って悪人を退治し、さらに誤って逮捕された無実の人を救う黒ずくめの人物。その人物の活躍によって徐々に世の中が変わっていこうとするが。
伊坂幸太郎さんの描かれる世界は、奇想天外ながらも「もしかしたらありえる」と感じるような設定が絶妙だ。こうなると嫌だなと思いつつも、そうなってしまうかもしれないと思わされる世界。しかし、そこを打ち破ってくれる正義の味方の登場と、その周辺にある様々な人間模様など物語の中にグイグイと引き込まれてしまうすごさがある。
読み終わった時に読み終わったことを残念に思ってしまうぐらい面白い内容で、一気読みしてしまった一冊だった。
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架空の日本(仙台)が舞台。平和警察が魔女狩りのように、市民を拘束し拷問で危険人物であると白状させる世界。
平和警察に運命を翻弄される人々、平和警察(と県警の人間)が描かれていく。群像劇のように、それぞれのエピソードが絡みながら、徐々に収束していく様は相変わらず見事!
伊坂氏の小説によく出てくる、理不尽な悪(暴力)が本作もいやーな感じで描かれていた。明るい未来を描いた終わりかなと思いつつ、そこも軽く突き放すのもうまい描き方だった。
相変わらず、登場人物の描き方は魅力的。続編ができたら嬉しい。
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設定もいいし、伏線の回収は伊坂作品らしくてグッド。ただ、もっと短くていいし、スカッとしない感は残る。
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少し近未来の話。
魔王とか、モダンタイムスとか、ゴールデンスランバーっぽい感じです。
なんとなく本の分厚さとかタイトルから内容がイメージできなかったので読んでいなかったのだけれど、読んでいったらあっという間に読んでしまった。
平和警察だとか、監視社会だとか、それに立ち向かっていくお話。