紙の本
わかりやすい
2018/05/29 14:35
5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:なつめ - この投稿者のレビュー一覧を見る
テレビ放送の講座のテキストですが、読みやすくわかりやすいです。カミュのペストをもう一度、読みたくなります。
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「アルベール・カミュ『ペスト』」中条省平著、NHK出版、2018.06.01
107p ¥566 C9497 (2018.06.28読了)(2018.06.02購入)
カミュ著『ペスト』は、1972年に読みました。46年前ですので、内容は覚えていません。
今回、放送を見、テキストを読んで、カミュというひとは、小説家というよりは、思想家だったんだな、と納得しました。「異邦人」という小説も書くし「シジフォスの神話」という思想書も書くし、いったいどういうひとなんだろうと思っていたので。
『ペスト』もカミュが生きてゆくうえで、どのような考え方の下に生きてゆくのかを小説という形で表現したものである、と云う事なので、なるほどと思いました。
カミュは、「戦争であろうと、災厄であろうと、また死刑であろうと、一切の人間を殺す行為を絶対的に否定する」という考えを持っていたようです。僕も最近、国際法で、戦争をしてもかまわないけど、人を殺した人や人を殺すことを命じた人は、罰せられなければならない、という条文を設けられないのかなあと考えていたので、先人に出会った感じです。
【目次】
【はじめに】海と太陽、不条理と反抗の文学
第1回 不条理の哲学
第2回 神なき世界で生きる
第3回 それぞれの闘い
第4回 われ反抗す、ゆえにわれ在り
●神を信じたら(41頁)
医師は、もし自分が全能の神を信じていたら、人々を治療するのをやめて、人間の面倒をすべて神に任せてしまうだろう
神という観念を信じてそれに頼ってしまうと、結局人間の責任というものがなくなってしまう。
●理念(49頁)
理念は人を殺す
●言わなくても分かる(52頁)
「言わなくても分かる」という感覚は、「言っても分からない」という諦めに容易に転化します。その意味でも、「言わなければ分からない」という、言葉の重要性を徹底して信じる点で、『ペスト』という小説は日本人にとって大きな意味を持つ小説だと思います。
●人間を殺す(70頁)
タルーは、戦争であろうと、災厄であろうと、また死刑であろうと、一切の人間を殺す行為を絶対的に否定する
●聖者(83頁)
人は神なしで聖者になれるか。
☆関連図書(既読)
「異邦人」カミュ著・窪田啓作訳、新潮文庫、1954.09.30
「シジフォスの神話」カミュ著・矢内原伊作訳、新潮文庫、1954.11.15
「ペスト」カミュ著・宮崎嶺雄訳、新潮文庫、1969.10.30
「革命か反抗か―カミュ=サルトル論争」カミュ・サルトル著・佐藤朔訳、新潮文庫、1969.12.02
(2018年6月29日・記)
内容紹介(amazon)
理由のない厄災に、いかに向き合うか
地中海に面した仏領アルジェリアの都市・オラン。おびただしい数の鼠の死骸が発見され、人々は熱病に冒され始める。ペストという「不条理な厄災」に見舞われた街で、人々はいかに生きてゆくのか──。ノーベル賞作家アルベール・カミュ(1913~60)の傑作小説『ペスト』を、現代的視点で読み解く。
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「100分de名著」の「ペスト」の回が面白かったので読んだ本。P79の歴史を作るのはほかの人々だ」などの言葉が良かった。この本を読んでかカミュののことを
を知ることができて良かった。
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ペスト、また読もうかなー
シーシュポスの神話こそが我が青春!なカミュ!
20代の自分を再確認しに何度も戻ってくるよ
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この番組の第4回に内田樹が出演したと見て注文。考えてみればテレビのテキストなので当然放映前に刊行されており、出演は予定と書かれていただけだった。
でも、予備知識なしにペストを読むよりも、読む前にこのテキストに出会えて良かった。主人公リウーの、自分にできることをする、という理念と、カミュの小説外での信念の繋がりは、ただペストを読むだけでは見えてこなかったろう。
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NHKの「100分de名著」で放送されていて面白かったのでカミュの「ペスト」を読んでみた。
が…番組はなんとうまいことわかりやすくまとめてくれていたんだ!!と本編を読んで思ったので、こちらのテキストをあらためて読んでみた。
英語の人物名がごちゃごちゃになって(私、英語名が苦手なもので)いたけど、テキストはわかりすくまとめてあってとても理解しやすい。
そしてこの作品に込められた色々な意味が非常にわかりやすく解説しており、おもしろい!さすが!!
自分にできることをするだけと感情を押し殺して治療する医師のリウー
たまたまこの町に来て封鎖されてしまった不幸を訴える新聞記者のランベール
何か秘密がありそうな、裕福そうな青年のタルー
ペストという災厄に神の功徳を説く司祭のパヌルー神父
市役所に勤める下級役人のグラン
闇貿易などで金儲けをしている商売人のコタール
ペストなのにその病名を宣言する責任を取りたくない医師会会長リシャール
予審判事のオトン
血清を作り出した老医師カステル
様々な人々がペストという災厄の中で自分の生き方と人生に向き合わざるをえない。
カミュの本質「ためらい」を感じる論理的感性。
自分が善であることを疑わず自分の外側に存在する悪と戦うことの正当性の恐ろしさへの訴え。
このテキストを読んであらためてカミュの鋭い感性と人間への思いを感じる。
小説の「ペスト」を読む前でも後でもこのテキストを読むことをオススメします。
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コロナが本格的に流行期に入った頃、「そういえばペストってどうやって終息したんだっけ?」とふと疑問に思って。そこから、カミュの『ペスト』を読んでみようかなと思ったのです。
でも、カミュの作品と言えば、高校生で『シーシュポスの神話』に挫折、大学生で『異邦人』を読んだもののいまひとつ理解出来ず、という過去があった為、『ペスト』の横に並べられていたこちらの本を購入しました。
わかりやすくて面白かったです。本編の前にこちらを読むことにしてよかった。
結局『ペスト』はまだ読んでいないんですが、もうこの解説本だけで読んだ気になって満足してしまいました。
さて、これから『ペスト』読むかなぁ?
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一時間くらいで読めます.
話の概略がわかります.
訳文は読みやすいです(というか読みやすい部分しか訳出されていない印象).
時間は有限だから,これで十分という人もいてもいいと思います.
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地元の本屋で積んであった。NHKBSの再放送は見逃した。
ざっと40年前、大学時代にカミュの「異邦人」、サルトル「嘔吐」は読んだが、その頃でも不条理とか実存主義なんて遥かな昔と感じていた。
不条理って、「異邦人」の主人公ムルソーのように普通の共感を欠落した人間の話だと思っていた。だから、ペストもそういうテイストの話と思っていた。
群衆劇であり、献身的に医療に携わる者、傍観者であったのがやがて協力するもの、凡庸な老人、神職者、悪人をきっちり描写しているという。
理念が人を殺す。戦争、宗教、死刑制度が殺人を是とする。その制度の中で生きていること。「僕たちはみんなペストのなかにいる。」
キリスト教が人間については悲観論、人間の運命については楽観しているのに対し、人間は原罪を負って生まれてくるものでない、という認識が対比される。
ホント、不条理とか実存主義に自分が無理解だったんだと気付かされた。
共産主義革命へのアンガージュマンを唱えるサルトルとの対立についても知らなかった。
カミュの文章力を褒めている個所も散見され、文学者カミュの認識を改めさせられた。
カミュについて、何にも知らなかったんだなということ、「ペスト」はかなり濃密な興味深い作品だということが今回の収穫。
念のため。
死刑制度について、僕は否定するものではありません。
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アルベール・カミュの『ペスト』を読むにあたって、これを読みながら、NHKオンデマンドで「100分de名著」を見た。手軽にカミュの自伝的な情報も得られて、『ペスト』の読みにも一人で読むのとは違う側面での読みを追加することができた。
カミュは、父を第一次大戦で亡くし、母は耳が不自由で発語障害があり、読み書きができなかったという。『異邦人』で一世を風靡したが、決して家庭に恵まれていたわけではなかった。父の死後は母とアルジェリアで暮らしたが、結核を患ったりして順風満帆とはいかなかった。『ペスト』を執筆中の42年には、二人目の妻をアルジェリアに帰し、自分はフランスに残っている。ナチに対するレジスタンス活動に加わったことも有名である。
解説の中条氏は、ペストをナチスの隠喩として、その戦いをレジスタンスの経験を反映したものと読むことを、「倒錯した読み方」だと指摘する。それは単なる事実の寓話化に貶めるものであり、この『ペスト』という作品の矮小化であるという。もちろん、ペストをナチスの隠喩と「だけ」読むのはもったいないが、ナチスとしての読みを拒むことは難しく、また排除するべきではないだろう。
一方でもちろん単純なナチス批判の書と考えるのは誤りである。彼らを誤りで絶対的悪として断罪して、自らを正しさの側に置くことは倫理的にも現実的にも許されない。中条氏は、カミュの考えを次のように表現する。
「人間は世界の一部でこそあれ、世界と対抗できる存在だと思いあがってはならない。人間にとって不条理や悲惨として立ち現れることもある世界の、圧倒的な不可解さや多様性を前にしたとき、人間は謙虚であらねばならない」
また、カミュの作中のヒロイズムへの批判に対して、次のように評価をしている。
「現代において、天災はつねに法や行政の対応と結びついています。ですから、たんに個人のヒロイックな行動では対応できないというもどかしい現実を冷静に描いているところが、小説家カミュの優れたところです」
として、
「可能なかぎりの洞察力がなければ、真の善良さも美しい愛もない」という言葉に対して、「たとえば災厄と戦うに際して「がんばることは美しい」といった美談が語られることが往々にしてあります。しかし、「がんばらない」「がんばれない」人にとって、「がんばる」ことの賛美が一面では抑圧になることをきちんと見なくてはいけない」と指摘するのである。ヒロイズムの賛美は、別の形での抑圧につながる。天災への対抗はヒロイズムの問題ではなく、誠実さの問題なのである。
『ペスト』では、パヌルーという教会の神父が登場人物として描かれ、限界状況での宗教について彼の行動やリウーとの対話を通して表現されている。カミュは『無信仰者とキリスト教徒』と題するドミニコ会修道院で行った講演にて次のように語ったという。
「キリスト教は、人間については悲観論者でありながら、人間の運命については楽観論者なのです。さて、人間の運命について悲観論者であるわたしは、人間については楽観論者なのだと、わたしはいいましょう。しかも、それは、わたしにはつねに不足なも��に思われる人間主義の名においてではなくて、何者をも否定しないようにしようとするところの無知の名においてなのです」
中条氏は、「信仰にせよ、政治的な信念にせよ、それに固執しているかぎり連帯できません。抽象的な理念に絶対的な正義や真実を見ていたら、結局、ランベールのいったように殺し合いになってしまう」と分析している。「信仰」や「政治的信念」に、人間主義(ヒューマニズム)を加えることも忘れてはいけない。
また、内田樹の論評を引いて、「自分が善であることを疑わず、自分の外側に悪の存在を想定して、その悪と戦うことが自分の存在を正当化すると考えるような思考のパターンが「ペスト」なのだ、ときわめて示唆的な読解を提示しています」と書く。非常に魅力的な読みである。
また、最重要と言ってもよい登場人物であるタルーの立場をこう分析する。「「あらゆる場合に犠牲者の側に立つこと」、つまり、この世界に殺す者たちと殺されるものたちがいた場合、絶対に自分は殺される者たちの側に立つ、という決意表明です」―― これはヒューマニズムとも違うし、宗教的なものとも違う境地である。
タルーは、作中「人は神なしで聖者になれるか。これこそ、今日僕の知るかぎり唯一の具体的な問題だ」という。
「タルーは「人間に他者を断罪する権利をけっして認めず」、しかし、「誰も他者を断罪せずにはいられないことを知っていた」ため、「分裂と矛盾のなかを生きて」きました。それゆえに、「人間への手助けのなかに、聖性を求め平和を探していた」のかもしれません。いまリウーの心に残るのは、「ひとつの生の温かみと、ひとつの死の面影」だけですが、その認識と記憶で充分なのだと彼は悟ります」
記憶 ―― 忘れない、ということが持つ意味と意義こそが、この小説で書かれたかったことのひとつであった。
この思考に至るまでに捨てたものについて思いを至らせなければ、この結論の重みはわからないのではないか。
「『ペスト』はけっして勇敢さの美談ではないし、特別に強い精神をもった主人公による美しいヒロイズムの物語ではない、ということが分かります。これはむしろアンチ・ヒューマニズム、アンチ・ヒロイズムの小説であって、英雄主義に対する懐疑は随所で言及されています」
この小説をアンチ・ヒロイズムとしてのみではなく、アンチ・ヒューマニズムとして読むことができるのかはひとつの試金石なのかもしれない。
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『ペスト』(アルベール・カミュ)のレビュー
https://booklog.jp/users/sawataku/archives/1/4102114033
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背景や、著者の他の著作まで紹介され、読み解かれる。カミュのペストに合わせ読むことで、一層自分の感じたことがクリアになった気がします。
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他の作品やサルトルとの絡みも織り混ぜたとてもわかりやすいテキスト。
予習として読むのもアリだが、個人的には本編読了後余韻を楽しむためにこのテキストを読むのがオススメ。
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『ペスト』という物語の中で、カミュが何を描こうとしているかが解説されています。
「自分はどう在るか」について、カミュが歩んできた人生がどのように影響していると考えられているのかがとても興味深く、『ペスト』も読んでみたくなりました。
今この時代だからこそ、より響く内容だと感じました。