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猫を抱いた父の改題本とは知りませんでした。ですので追加された箇所を読みました。やはり著者の文章は素敵です。
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まずタイトルがしみじみ良い。かかりきりになっている間はそれぞれのインタビュイーに恋をしている、と言ってもいいのではないだろうか。
作品からこぼれたあれもこれも、こぼしておくにはもったいなさ過ぎて、こうしてエッセイとしてまた別の光で磨かれて本当によかった。既に鬼籍に入られた方も、その方について語ってくれる方も、どの方の魅力も滲んでくる。東君平さん、児玉清さん、東海林のり子さん…。
そうそう、これを読んだ今日から我々も、栗林中将のことは「閣下」とお呼びしなくては。
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梯さんの書くものはどれも、凜としていて、しかも優しい。このエッセイ集もその持ち味がとてもよく出ていて、読んでいると固まった心がほぐれていくようだ。
どの文章もいいのだけど、吉本隆明・森瑤子・児玉清・黒岩比佐子など、直接接した人たちの思い出を語るところが、とりわけ忘れがたく心に残る。硫黄島司令官栗林忠道のテーラーをつとめた方の思い出話にも胸を打たれた。未読の「散るぞ悲しき」を早速読もうと思った。
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はじめての梯さんの本。先輩に借りた本ですが、借りてなかったら自分ではきっと手に取ることなかっただろうなー。戦争に関する話は苦手なので、前半は飛ばして読もうとおもってましたが、まぁためしに読んでみようと思ったところぐんぐん引き込まれました。それは梯さんの言葉選びのセンスの良さのせいだと思います。
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『散るぞ悲しき―硫黄島総指揮官・栗林忠道』や『狂うひと―「死の棘」の妻・島尾ミホ』(どちらも未読)などの評伝を書いた梯久美子(かけはし・くみこ)さんが様々な媒体で発表したエッセイを集めたもの。
文庫化にあたってタイトルを『猫を抱いた父』から『好きになった人』に改題。旅行記を一本新たに収録。
梯さんが出合った『好きになった人』達に対する尊敬と慈しみを感じます。
取材に同行したカメラマンが「オノ・ヨーコの目に似ている」と評した島尾ミホさん。太平洋戦争で犠牲になった人々の残した手紙や遺品から立ちのぼる彼ら彼女らの生き様。家族のこと。子供時代のこと。不思議な縁があった猫達のことも。
そして、なんてこと!
詩人で童話作家の東君平さんとのエピソードがある!
20代の頃彼の詩に触れ、感銘を受けて何冊か本を持っていましたが、処分してしまって・・・。
いままですっかり忘れてしまっていましたが、意外なところでお名前を見かけてびっくりしました。
ウン十年の時を経て『好きになった人』に再会できました☆
解説は梯さんとプライベートでも交流のある作家の中島京子さん。
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戦時中も含めて、昭和という時代が
立体的に浮かび上がる、好エッセイ。
人物に対する確かな観察と、
控えめなユーモアが良い。
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梯さんの書く評伝をいいなと思うのは、その書き方が上手いのはもちろんだけど、書かれた人物が魅力的で、梯さんがその人を大好きだから(情熱を感じるから)だと思っていたが、それはそうなのだが、私は梯さんという人がそもそも好きなんじゃないかと思うようになった。だから、無名の人を書いたものもいいんじゃないかと思い、読んでみた。
良かった。
有名な人も出てくるが、本格的な評伝とは違い、ちょっとしたエピソードだが、その人の人柄が伝わる。有名ではない人も、例えば梯さんの家族や、旅先で出会った人たちのも。もちろん書いている梯さん自身のも。
そして、読後感はとてもあたたかく、優しい。
私はある有名文化人の講演で質疑応答の時間に、質問した老人の長くなりそうな話を、その有名文化人がぶった切ったのを見たことがあり、雰囲気を読まない長い話は迷惑だから仕方ないけれど、なんとなく気の毒になったことがあり、もう随分経つのに、この本の森瑤子さんのエピソードで思い出したのだった。森さんの深い優しさ。それは梯さんが書いている、「目の前にいる相手にそのときの自分のすべてを惜しみなく差し出している」(P203)ことと通じる。
目の前に人がいながらスマホいじる人の多さよ。本当に懐の深い人はそんなことしないものだと、これを読んでつくづく思った。
すごくインパクトがあるとか、爆笑できるとか、そういう本ではないけれど、またいつでも読み返したい。そして読み返したらまた同じようにあたたかい気持ちになれるだろう。いいエッセイだった。