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面白かった。辻さんの作品の中でもかなり上位。
最初博多弁がきつくて読みづらかったんですが、ぐいんと物語の世界に連れてくものだから一気に読まされた。魅了されたというか。深すぎて。無戸籍児童。なんて身勝手なんだろう。すごく印象的だったのが、無戸籍でも国籍は日本なんですよね。日本人の親と日本人の親とで生まれた子の国籍は日本。ただ戸籍がないから日本国籍を証明することができないだけで、みたいなくだり。ああ、って思った。闇だらけで、切なくて、でも愛があって、気付けてなくてもそれは愛で、すごくもどかしくて切なかった。
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博多の中洲に生きる無国籍の男の子の話し。いろいろあるけど逞しく生き抜いていく。ファンタジーなのかな。何にせよ何とも言えないお手盛りのお話しなのがしんどい。この作者から出てくる気持ち悪い何かに反応してしまうのかもしれない。上手で浅い精神。
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一人っ子政策だった中国では無戸籍はよくある話らしいけど、日本でも無責任な親やDVで逃げて届けが出来ない母子等が増えていると、ニュースで伝えられている。
たまたま作中の蓮司は強く生きられる人間だったので、法制度や手続きの問題まで踏み込んでいないが、無戸籍をテーマにするならば、そこを取り上げてほしかったな。
一度は生で見たいと思っている「博多祇園山笠」への憧憬は気持ちがわかる。
櫛田神社を訪れた時に、こんな狭い境内で重さ1トンもある山を30数秒で担いで走り抜けられるのかと、感慨深い想いがした。
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博多中洲に戸籍がない子供がいた。蓮司。小さい頃から中洲の夜の大人たちに見守られ生きてきた。親ではなく街の人たちの愛を受け、そして山笠への熱い思いがあり、たくましく成長した。
辻さんが書いているだけに泥臭いものがなく、あまり悲惨さ苦しさがなく、その分残念ながら感動の幅も…。
何よりも蓮司が悪の道に入ったり、心を閉ざなかったので良かったです、読後感も悪くないです。蓮司の街への思いを感じ、街に支えられて力強く生きる蓮司、読みながら応援してました。
さらりとしているので読みやすく、蓮司に引き込まれる物語、ある中洲に生きる男のお話でした。
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辻さんの本は「右岸」以来二度目。
右岸もそうだったのだけれど、最後に「安らぎ」をくれるのがいい。
人は、親がいなくても、まともな大人さえ側にいれば、まともに育つものです。
親の身勝手な都合によって、戸籍を持つ事が出来なかった5歳の少年・蓮司。
住居も食事も、ほぼ暴力以外与えることのない親
「中洲」という閉ざされた世界で、そこに生きる人々の優しさを糧に生きてゆく。
加藤あかね・・蓮司の母。
北九州で文亮と結婚していたが正数と逃亡、蓮司を産むが育児放棄の挙句、暴行事件後に幼い蓮司がいなくなるとこれを放置。17才の蓮司がナンバーワンホストになった途端に現れ、タカリまくるが、最後は蓮司に・・
加藤文亮・・あかねの夫。逃亡した二人を追い中洲へ。正数を廃人にした後、刑期を終えて再びあかねの元へ復讐に。そして・・
今野正数・・蓮司の父で売れないホスト。蓮司に対しDVを繰り返すが、あかねを追ってきた文亮に暴行され廃人となる。
宮台響・・・中洲警部交番の警察官。5才の蓮司と知り合って以後、蓮司の戸籍取得を願い奔走するが、加藤文亮による正数暴行事件の後機動隊へ異動、中洲を離れるが8年後に再び中洲警部交番に戻り、恋人・菜月と共に蓮司の行く末を案じる。
瀧本優子・・ホスト時代の蓮司のパトロン。16才の蓮司に未知なるものを感じ、以降後ろ盾となり支え続ける。
優子を自分に惹きつける蓮司の手管が秀逸。
一人娘の母・・・。
緋真・・蓮司にとって生まれて初めての同世代の友人であり、兄妹であり、恋人であり、そして基礎的な学問を教えた教師でもある少女。
さらには・・
伏見源太・・中洲の高層マンションの最上階に部屋を所有するも殆ど寄り付かず、テント暮らしで釣り三昧の日々を過ごす。7才の蓮司と出会って以降、生活のそして心の拠り所となる。
御手洗康子・・かつて中洲の売れっ子ホステスで、スナック「てのごい」のママ。幼い蓮司の食事の面倒を見てくれる一人。人生の転機となる高橋カエルとの縁を結んでくれた恩人。
高橋カエル・・博多祇園山笠・中洲流(ながれ)の重鎮で老舗料亭「千秋」の会長。
康子の店で「中洲が僕の世界」と言い切った7才の蓮司に惚れ込み後見人となる。黒田平治に蓮司を託す。
黒田平治・・高橋が息子と呼ぶ若い衆。蓮司を託される。後に居酒屋経営から高橋カエルの「千秋」を引き継ぐ。ホストを辞めた蓮司が板前を目指し世話になる。博多山笠のリーダー。
井嶋敦・・中洲で客引きをするチンピラ。蓮司を可愛がり、兄のように見守る。集団リンチにあっている所を蓮司の通報で一命を取り留めるが、後に博多川に死体となって発見される。
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中洲は福岡市博多区にある歓楽街。
加藤蓮司は幼い頃からそこで暮している。
父親はホスト、母親はホステス。
両親がそもそも家が無く、蓮司は常に父親に殴られ、母親からはネグレクト。
中洲の人たちの好意で何とか食べ物にありついていた。
5歳の彼を初めて見た警察官・宮台響(みやだいひびき)は当時新人警官。
もちろん、仕事として、夜の街をうろつく幼児は保護して親元に送り届けねばならないが…
生き物は生まれた瞬間からまぎれもなく生きており、それは動かない事実。
だが、人間は誰かに認められないと「生きている」ことにはされないようだ。
人間が社会的生き物だからだろうか?
蓮司には戸籍がない。
親が出生届を出さなかったからだ。
学校にも通えないし、健康保険もない、銀行口座も作れない。
確かに生きている命なのに、まるで国からはなかったことにされているようだ。
宮台は、最初は法を守る立場の警官の仕事として彼に出会うが、そのうち個人的に、彼に戸籍を与えたいと奔走し、せめて学校だけでも、と役所を尋ねて回る。
調べれば国から受けられる補助はあるのだ。
だが、立ちはだかる壁は他でもない、蓮司の母親。
どうしようもない毒親だ。
蓮司は素直に育ったと思う。
毒親に対しても「産んでもらった恩がある」と言う。
愛情なんかこれっぽっちも貰わなかったのに。
その代り、中洲の人たちから愛情をもらい、生かされてきた。
長い長い人生を読んだ気がするが、物語の終わりに蓮司はやっと二十歳になった。
彼の二十歳の決断は、国家ではなく、自分で自分を認めること。
読んでいてやはり哀しいし、やりきれないし、究極の決断ではあるが、確固としてゆるぎない、そんな風にも思える。
宮台の努力は、結果としては報われなかったが、見守る彼の視線も、蓮司に対する応援の一つだったことは間違いないと思う。
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よかった。
ネグレクトか虐待にさらされてる蓮司、でも、取り巻く人々が優しい。
そんなものだとも思うし、そうであってほしいとも思う。
親が無関心でも悪くても、寄り添う人がいれば生きていける。
母親に対する複雑な感情、そう、人の感情なんてそんなに単純じゃないって思う。
読後感があたたかい。
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日記調に進められていく真夜中の子供の成長記録。
中盤まで面白さに欠けだれだれで読んでいくが、第二章から冒頭の続きに入り物語は一気に推し進められていくのでどんどん読む速度も加速する。
単なる成長記録が物語になっていくのと昔の関係が後半にもどんどんつながっていくので安心する。つい登場人物のファンになっていたりする。結末はそうだろうなとは思っていたけどがっかりもせず、うまくまとめられた良作でした。
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10歳で一人で繁華街で生き延びていく子ども。
驚いたが、実際に法の狭間に落ちていると、このようなことになるのか、とも感じた。
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博多の中州に生きる無戸籍の少年の物語。絶対に自分には関係のない世界なのに、描写に我が事の如く胸が痛む。作家の力であり言葉の力。
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以前博多の夜間保育園のドキュメントを見て、あの子たちも親も大変だと思ったが、それよりもさらに無戸籍児という存在に改めて衝撃を受ける。
どう育つのかはらはらしながら読んだが、読後感は良かった。
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戸籍っていったい何だろう。自分を証明してくれるもの?蓮司は博多の中洲で生まれ育った無戸籍の子どもだ。両親はいるが育ててもらったというより、ただ近くにいるというだけで食事も住まいも教育も十分とはいえない環境で育った。
途中から蓮司を見守る中洲の人々のような目線になって読み進んでいく。蓮司の優しい行動にほっとする。蓮司が少しでも幸せな状況になればうれしくなり、良くないことが起きると心配になる。だから蓮司が母親にした行動は驚きというよりも、理解できる気持ちのほうが大きかった。
無戸籍だからといって私たちとなにが違うのか。受けられる権利や社会保障は全然違うけれど、人間としての本質はなんら変わりない。無戸籍児に戸籍を与えて救うことよりも、むしろその子どもが今まで生きてきたことを知り、受け入れて、求めることを知り、未来の可能性を自分で切り開いていくことを見守ることが大切なのではないかと感じた。先日『ねほりんぱほりん』で無戸籍児のテーマを見たばかりなので、よけいに身につまされた。
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過酷な状態の中でも人とのつながりと優しさによって逞しく成長していく少年の姿を描いたお話し。
夜の世界というイメージが強い中洲の表層的な空気だけでなく、その根底にある人の温もりも感じさせてくれる作品でした。
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読みやすく、面白かった。
福岡、中洲が舞台。
無戸籍の子、蓮司と、景観、響と、街に暮らす大人たちの物語。
ネグレクト+無戸籍という過酷な環境に育つ蓮司を時に助け、食べさせ、見守る大人たち。
けれど根本的解決にはなかなか至らず、ついに事件は起きてしまう。
結局、因果応報?一番の被害者は子どもである蓮司であることは間違いない。
重い内容なのに、軽く読めるのはちょっともったいないような…。
辻さんの作風なのか。
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主人公の成長を傍らで見守るような気持ちになった。身勝手な親により無戸籍で、さらに親のネグレクトに耐えながら、中洲で生きるために、まだ幼いにも関わらず状況に合わせて感情を使い分け、心の蓋を開け閉めする様子がいたたまれなくなった。
中洲の殺伐、混沌とした雰囲気のなかに、人々の心の温かさもあり、主人公がその温かさを自然と引き出していたのだと思う。
主人公が憧れる中洲の祭りを実際に見てみたくなった。