紙の本
すばらしき知の(再)入門書
2018/07/28 09:49
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投稿者:かにみそ - この投稿者のレビュー一覧を見る
良質な先端知のガイドブックです。
紹介されている文献はどれも重要だけど、敷居が低いとはとても言えないものも多い。
それらへスムーズに誘ってくれて、すぐにでもその本を手に取りたくなってきます。
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著者前書きによれば「本書は、現在生じている人間観の変容にかんする調査報告である。」
フーコーは『言葉と物』で近代の人間観の終焉を告げる新しい学問として精神分析と文化人類学を挙げた。それはおおむね正しいが実際大きな役割を演じたものは別にある。というのが著者の立場。
それは「生命科学の発展」と「認知革命の進行」だ。
それらから導かれる21世紀の科学技術文明における人間定義は「人間とは不合理なロボットである」というものだ。
そして人間というロボットが解明されるということは、その制御や改変を行うテクノロジーが可能になるということだ!
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2018年11月読了。
日経ビジネスで小田嶋隆さんが紹介していたので読んだ。
哲学書。
冒頭で「現在生じている人間観の変容に関する調査報告である」とことわられているように、これまでの人間に対する捉え方が通用しなくなりつつあるということに、少しく思いを致す一冊。
普段読みつけないジャンルの図書であるためか、
読み終わるまでだいぶ時間を要した。
「思考を飛躍させる」、「思考を掘り下げる」とか「思考の幅を広げる」ためには、今まで所与の前提としていた物事にこそメスを入れるようなことが必要だなと思った。
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11月の課題本。著者が過去に書かれた哲学風のエッセーをテーマ別に並べなおした本。正直、序章だけで十分という内容の薄い本だった。特に終盤の書評はあらすじ紹介で終わっているものが多く、退屈であった。
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意外と面白い本だった。
哲学寄りのサイエンス系の一般読み物だが、自然科学の最新の知見が迫る哲学の更新について強調しており、特に進化論によるパラダイム転換を打ち出す。
著者が科学者でないということもあって科学的知識に関してはさほど深く詳述されていない印象。むしろ包括的な概論であり、入門書的である。後半に新しい科学の成果をさぐる読書案内として活用できるブックレビューがあり、どれも面白そうで、読んでみたいと思った。ドーキンスの「利己的な遺伝子」も、あまりにも有名なためおおよその内容を先に知ってしまい読まずに済ませてしまった本も、やはり読んでおくべきと感じた。
そのようなブックガイドとして、知の道案内として有益な本だと思う。
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道徳心理学の原理
・まず直感、それから戦略的な思考。
乗り手(思考)は象(直感)に使える召使い
昔流行った未来学、今は通信の延長に未来を想像する
人が作ったAIが残ることは人類滅亡と言わないのでは
進化論ではなくダーウィンは適者が生き残る
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科学の進化によって、いままで人文系の学問が前提としていた「人間」のとらえ方が揺らいできている。進化論や行動経済学の知見の蓄積、人工知能の発展、功利主義の道徳化など、人間のあり方を考える上で欠かさないトピックについて、網羅しているのが本著だ。
友だちの実験系の心理学者から人間の認知メカニズムの話を聞くと、やたらと「進化」の話になりがちで、それが不思議だった。本著を読み、いまの科学による人間理解の基礎には進化論があることがわかり、謎が解けた。
あと、数十年前から人間活動の影響で、地球が地質学的にあらたなステージに入ったという「人新世」はショッキングな考え方だったな。
現在、人間のあり方を考えるうえでキーとなるコンセプトをうまくまとまめて、そこから問題提起をしている一冊。おすすめ!
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認知科学(認知心理学、行動経済学、人工知能研究)と進化論(社会生物学、行動生態学、進化心理学)を中心とした評論や書評を集めたもので、ブックガイドとしての価値もある。スタンスは「読まなくていい本の読書案内」に似ており、橘氏との対談も、よくかみ合っている。
ヘルダーは「人類歴史哲学考」において、自然だけでなく人類の歴史をも神のあらわれとみなし、自然と歴史の発展を統一的に捉えるスピノザ主義的な歴史哲学を提唱した(大村晴雄「ヘルダーとカント」)。
神話を歴史が自然へと変換されたものとみなして分析する手法は、カントの批判哲学の継承・発展だった。18世紀の批判哲学者は、20世紀において神話学者として生まれ変わった。
共有地の悲劇は、1968年に生物学者のG.ハーディンが資源管理の重要性を訴えるために唱えたもの。とはいえ、現実の世の中は、町内会から労働組合、国家間同盟まで、人間は種々の協力体制を考案し、維持しており、悲劇を防ぐために様々な工夫がなされている。
人間の道徳感情は、共有地の悲劇を避けるために発達したものであるため、同じ常識を共有するグループのみ奉仕し、同じ常識を共有しないグループ外には攻撃性となって表れる。ジョシュア・グリーンは、これを常識的道徳の悲劇と呼び、問題の種類に応じて、問題が共有地の悲劇に関わるものなら、感情の道徳的直観に従い、常識的道徳の悲劇に関わるものなら、思考を理性に切り替える二つのモードで対応することを提案する(モラル・トライブズ)。
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対談とかはハイコンテクストで何が問題になってるのかいまいち分からなかった。まあ評論なのだが、各々、専門の人からするとどうなのだろうか。
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本の紹介レビューとしては星4つ。筆者の論考は星2つ。平均して星3つ。レビュー本として読めば満足できる内容。
筆者も書いているように、独自の論考はいいところの寄せ集めにしか見えない。本として読みたいのは筆者のアイディア・視点から事実を再構築する世界観であり、そこが根本的に欠けている。
逆に他の本の解説はとても魅力的でどれも読みたいと思わせる。筆者の本領発揮である。
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タイトルの『人間の解剖はサルの解剖のため…』は、カールマルクスによる資本論で用いられた言葉である。ネットで検索し、この句の続きを探してみた。すると「人間の解剖は、猿の解剖のための一つの鍵である。より低級な動物種類にあるより高級なものへの予兆は、このより高級なもの自体がすでに知られているばあいにだけ、理解することができる」とある。逆説!猿が人間のために解剖されるのでは、と思う。まんまと著者の思惑に嵌り、ここから考えてみる。
我々が理解したいのは人間なのか猿なのか。客体としての事物を理解する手掛かりは、常に人間自身の主観を通じていて、擬人化の罠、ストーリーの後付けをしている。つまり、人間自身を理解する事が対象を忠実に理解する鍵になる。
本著は言う。人間は他律的であると言うことから完全には自律していないと言う意味でロボットである。遺伝子の複製にしか興味がない、利己的な遺伝子の乗り物に過ぎない。また、この社会にはギャップを引き起こすように巧妙に作られた誘蛾灯がそこかしこにしかけられている。100メートルおきにジャンクフードやスイーツが手に入る。
つまり、人間は一見、意識して自我を通しているようで、他者や環境プログラミングの存在により既定され、他律的に動き、相対的に物事を解釈し、意味づけている存在に過ぎない。こうした社会的生物としての複雑系において、自他を区別し、認知しているのだろう。
では、猿は。客体としての猿は、そうしたフィルターを通したアイコンとしての猿。人間に認知された枠内なサルだ。ペットとして飼っている訳でもなければ、大多数の人間にとって「猿」に特別な意味は無い。だからこそ、脳内に再現するサル的イメージが共通言語として機能する。
人間がプリセットされる義務的・道徳的直観と功利主義的思考を区別しながら双方ともに受け入れる二重思考。第二次世界大戦においてアメリカ兵の発砲率はわずか10から15% 、これは兵士の道徳的直観が殺人行為に抵抗したためである。それが訓練することにより、ベトナム戦争では、90%以上に達した。道徳観も功利主義も社会要求により変化し、人間は変わる。個々に仕事というコマンドを、生存欲求というミッションを満たしながらこなしていく。個々を満たす事で、より高次元の規模の大きな要求が満たされていく。
全ての生物の反応を登録し、予見しておかねば、全能の世界などあり得ないから、人生にやり直しなど効かない。この反応をある程度、予測してコントロールしようというのが労働である。労働は神による支配を擬似的に再現する。どこに向かうのかは、本著に少しヒントがある気がした。
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相変わらずの膨大なブックガイド。1冊読み終えると次読みたい本が50冊増えるという不思議。
著者が近年関心を寄せている進化心理学、認知心理学、人工知能研究に関するアンソロジー。主題を一貫して論じていくタイプではないけど、読者がその先に思考を走らせるためのTipsが仔細に提示されている。
びっきりしたのは、大澤氏、千葉氏、著者の鼎談パートで交わされている内容がちんぷんかんぷんだったこと!素人を意識しない研究者の議論って、こんなに前提知識をはしょりながら展開するんだーと垣間見た気分。
目下準備中という、骨太な主義主張を展開するような次回作に期待でござい。