紙の本
古いのに 今読んでも 楽しめる本
2024/01/12 21:49
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投稿者:清高 - この投稿者のレビュー一覧を見る
内容・評価
朝日新聞社から出されたナンシー関(カバーのプロフィールによると、「消しゴム版画家、コラムニスト」)のエッセイ集を、武田砂鉄が編集したもの。
大多数は、今でもテレビに出ている人を取り上げている印象である。従って、2018年発行なのに2002年までの内容であるにもかかわらず、2000年前後に生まれた若い人にも楽しめる内容となっている。なお、「人」ではないが、p.130に「いじっている」とあるが、この頃から使われていることに感心するとともに、若い人にも楽しめると思われる。
筆者は武田砂鉄のエッセイを何冊か読んでいるが、選ばれたエッセイが武田の文章に似ているのは気のせいか。武田砂鉄もナンシー関をリスペクトしているという事だろうか。
特に「大多数は」以下の段落を理由として、5点とする。
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2002年、39歳で急逝した消しゴム版画家・ナンシー関。その言葉は今なお、テレビの中に漂う違和感に答え続けてくれる。彼女の大ファンで、日常の違和感を小気味よい筆致であぶり出す武田砂鉄氏が「小耳にはさもう」から選び抜いたベスト・オブ・ベスト!
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「武田鉄矢のどこが嫌なのかを歯をくいしばって考えてみよう。」
ナンシー関さんの、テレビについてのコラム。この一文のとおり、ナンシー関さんの文章は、テレビを見て嫌だと感じる部分をなぜ嫌なのかを掘り下げることをメインとしている。そしてその指摘が鋭すぎて残酷だったりして面白い。谷亮子の出馬を予言したりしている。
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2002年に亡くなったナンシー関が矛先を向けるのは、当時のテレビの中の人たち。だから、十五年以上経過した今となっては、誰だかよく分からん人も登場する。
けれども、彼女が丹念に拾い集めて指摘する、テレビの中の発言から感じる違和感、もっと言えば不快感は、いまの読者にもありありと伝わってくる。なぜなら、その違和感は、いまのテレビ、マスコミ、ネットからも常に垂れ流され、自分たちも確かに感じているんだけど、目をつぶってやり過ごしているものと同じだから。そして、その「おかしいな」「何か嫌だな」という感情に目を瞑らず、かと言って怒り散らすわけでもなく、その違和感の源をピシャリと言い当てる彼女の言葉、その言葉に辿り着くまでの理論は、腑に落ちるものばかりだった。
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話の対象になる芸能人に「さすがに最近見ないな」という人もちらほらいるものの、文章自体は没後16年も経っているとは思えないほど面白い。
小倉智昭の回の「ボクは先代の社長に
たいへんかわいがってもらってね」という
何でもなさそうな一言に対する怒涛の考察は
この本の1つのクライマックスだと思う。
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今、読んでも全然色あせない。さすがナンシー関。
1993-2002だからさすがに故人になった人たち(大橋巨泉、飯島愛、野村沙知代)もいたけど。
とにかくその洞察力と分析力と文章力には舌を巻く。
ほとんど名文。
最後のふざけたオチのつけ方も秀逸。
何度か声に出して笑った。
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どの時代も、毒舌家は一目置かれたり賛美されたりする。
誰もが思っているが口には出さないことを代弁してくれて気分がスッキリするからだ。
「毒舌」とは下から上に突き上げる言質である。
上から下だと、管理し制圧する言葉になり、単に力関係の行使(パワハラ)になってしまう。
・武田鉄矢が人気者であると思うたび、私は日本という国が嫌になる。武田鉄矢は暑苦しい。すべてにおいてなんか過剰だ。自分の語りに自己陶酔している。…
・泉ピン子がバラエティー番組などドラマ以外のところに出てくると、もういきなり辟易する。…
歯に衣着せぬ毒舌の気持ち良さに、20~25年程昔の懐かしさが重なって、そんな時代だったなー、と感慨に浸れる。
有吉弘行、マツコデラックス、梅沢富美雄、坂上忍らの「毒舌家」と違うのは、ナンシー関は個人を相手に語っていることだ。
「毒舌」で地位を築いた北野武にしても社会の空気や一般論・全体の思想に批判をしているが、個人をターゲットにはしていない。
本書はまず最初に有名人の名前が出てきて、この人をナンシー関はどのように見ているのかが語られている。
嫌いな所や残念な所だけでなく、その人について考えたことを正直に発言している。
・高嶋ちさ子。「おもしろい人」でなくて「意外におもしろい人」。バイオリニストというジャンルが「意外」度を増幅させている。
・松岡修造。修造は計算していたのである。みんな天然だと思っているのだろうけど、実は相当考えてやっている。
有名人のどこを見て何を思っているのか。
神田うの、長嶋一茂、島崎和歌子、中山秀征、川島なお美、野村沙知代、ヒロミ、浅香光代、織田裕二、沢田亜矢子、
萩本欣一、藤原紀香、石橋貴明、飯島愛、神田正輝、華原朋美、深田恭子、梅宮アンナ、広末涼子、など…
亡くなった方やあまり見かけなくなった方も多いが皆知っている人で面白く読めた。
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芸能メディアにおける様々な事柄は、時折何食わぬ顔をして茶の間に乱入する。そこで振りかざす胡乱な価値観は、そっちはありがたく頂戴するでしょ的な思い込みに満たされた代物で、正直迷惑なんだよなぁと訝しむ。その視点を様々な言葉によって綴っていくナンシー関は、啓蒙しようとする癖があるメディアに抗う生活の守護者の顔をのぞかせる。トレンドや流行ワードに洗脳されてたまるか。"う、訴えてやる!" と帽子を床に叩きつける故上島竜兵の芸は "怒り帽" というネーミングだと本書で知る。