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開発にずっと関わってきた末延さんのリーダーとしての考え方がとても勉強になった。開発秘話としても、読み応えのある物語だった。
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「仕事は、臆病なほうがうまくいく」
著者:安原ゆかり
発行:2018年9月25日
日系BP社
「三フッ化イソプロピルオキソプロピルアミノカルボニルピロリジンカルボニルメチルプロピルアミノカルボニルベンゾイルアミノ酢酸ナトリウム」
まるで落語の寿限無。これは、ポーラが発売して大ヒットとなった日本で初めてのしわ改善医薬部外品「リンクルショット メディカル セラム」につかわれている、しわ改善のための有効成分「ニールワン」の正式名称だという。四つのアミノ酸誘導体で構成されているそうだ。
この本は、上記商品の開発秘話もの。主役は、現在、ポーラ・オルビスHD執行役員へと出世した末延則子氏。氏の仕事の流儀を紹介している。
著者は、日経PP社の編集委員で、日経マネーなどいくつかの編集長を務めた人のようだ。それにしては、本のできが悪すぎる。文章が下手くそということではなく、構成や文そのものに迫力がなく、通り一遍の内容になっている。最後は、おまけみたいにポーラの社長、鈴木郷史氏へのインタビューがあるが、質問部分が推敲されておらず、鈴木氏への質問と答も、本文に出てきた内容のまるっきりの繰り返しだったりする。
書きたくて取材して書いた本ではなく、ポーラからお金を頂戴して作った本、という印象を受けた。
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ポーラの経営に翳りが見えたのは、1990年代。働く女性が増え、女性の在宅時間が短くなったことで訪問販売の売上高は急減。
医薬品の素材開発の際に行うのが「ステージゲート法」という仕事の進め方。スタートし、次のステージに進む前に検証する場(ゲート)をつくる。そのたびに選別していくことで合理的に可能性のあるテーマだけが残っていく。
ケガやばい菌などで身体に炎症ができるとき、皮膚には正常でないコラーゲン(悪いコラーゲン)ができる。好中球エラスターゼという酵素は、炎症を修復する。これがしわのある箇所で起きていた。微弱な炎症を体の傷と勘違いして、好中球エラスターゼが発動し、エラスチンやコラーゲンが壊れて皮膚からしなやかさや弾力が失われる。紫外線や、まばたきなどで強い圧力がかかるところに深いしわが出来るメカニズム。
末延氏も、電車の中などでつい人の目尻のしわばかりに目が行ってしまった。
「あの人のしわは取りやすそう」などと思ったりして。
発売から1年、2017年1-12月のリンクルショットの売上は予想を30億円上回る130億円。1万5千円の高級品にも拘わらず、買った人の約21%が初めてポーラの化粧品を購入する人だった。
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15年、15億円をかけたプロジェクトを信念持ってやり遂げられる人のどこが臆病なのか、とタイトルにはピンと来ないし、リーダーとしての部下育成の工夫や、コミュニケーション上の工夫等が事実関連の途中で入ってきて読みづらい。ただ世の中に前例が無いものを作り上げていくとは、ある事象の定義を決めること、そしてそのメカニズムを見つける基礎研究から始めること、そして前例がない故に売上規模が読めないこと、など様々なハードルを超えなければ、そもそも商品開発に至らないのだと、改めて画期的な商品を世に出すことの困難さを知ることが出来た。それにしても、通常の医薬部外品の承認が2、3年が通常、新規効能で5年、この「ニールワン」の承認は8年かかっているが、もう少し何とかならないものだろうかと思ってしまう。