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読了。とても良かった。くつろいだ気持ちになりたいときにまた読むと良さそう。
ずいぶん気持ちのいい本だと思ったら、装丁がクラフト・エヴィング商會だった。
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著者の小説『伴走者』を読む前に引っかかっていたのは、実はこちらのエッセイのほうだった。ようやく読めた。なかなか良かった。
最初は、方向音痴だなんだと、うじうじと書いてるなとスキっとしなかった。「どこでもない場所」という表題も、いろいろ迷って流されて、自分(の主張)がない男の軟弱な気持ちの表れのように感じた。
「遠くなんかどこにもない。どこに行っても次の「ここ」があるだけで、自分からは逃げられないのだ。」
つい、恩田陸の『まひるの月を追いかけて』でみつけたフレーズを思い出していた。
そんな、見た目のソース顔の印象とは裏腹の、目立たない、でしゃばらない、受注体質の著者。幼い頃の様々な思い出、エピソードから、もう根っから心優しい性根がうかがえる。読むうちに、こいつの言うことには耳を傾けなければいけないのかもしれない、と不思議と思わされる。
「背もたれ問題」という章、
「背もたれを倒すと、後ろの席に座っている人と僕との間に、何かしらの関係性が生まれるような気がして、それがどうも苦痛なのだ」
という記述に、なんでもかんでも権利を振りかざす昨今の風潮に、ふっと涼風を送るような爽快さがある。
多少は(著者よりは)世知辛く社会の荒波に揉まれ、世相の風雪に晒されて来た身からすると、こうした主張控えめに流される生き方も悪くないものだと、つい思ってしまう。
ともかく、弱い立場から発せられる言葉のひとつひとつが素直に心に届く。
「正しい言葉はそれが正しいというだけで既に暴力なのだ」
こんな言葉は、正論を振りかざし自分の主張を通そうとすることの多い昨今、ふと足を止めて耳を貸さなければならない発言だなと、ハッとさせられる。
『伴走者』のマラソンの舞台となったキューバを訪れたことも記されている。
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迷子は楽しい。
それは自分が物心ついてからの迷子体質なので半分負け惜しみなのだけど、どんなまっすぐな道でも迷いようのない道でも迷子になれる私は天才じゃないかと思う。
浅生鴨さんの文体は肩の力が抜けていて好きなのだが、本書は迷子の心得?からはじまる、まさに私にぴったりの一冊だった(だからといってミニスカポリスに手錠をかけられたりはしたくないけど)。
迷子にはいろんな発見があって、迷い込んだ道で面白いお店や建物や街並みに出会えたりする。ラッキー!と思うこともある(そこがどこだかわからないので二度と辿り着けないのが難点だけど、それも一期一会で悪くない)。
確かに目的地に着けなかったり約束の時間に間に合わなかったり元の場所に帰れなくなったりは困るのだが、そこは迷子慣れしているので大抵なんとかなる。
著者は文字通り「道に迷う」だけでなく、人生のいろんな場面で迷走したことをエッセイの中で開陳してくれている、楽しい。ゆるい。まあいいかな、と思える。もちろん中には深い悩みや苦悩もあるのだけど、それも含めて「迷うこと、悪くないかも」と思わせてくれるのがすてき。
全迷子必読の書と言えましょう。
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その町の人たちが新聞を読んだり、店員と他愛のない噂話をしたりしながら、朝食を食べているのを横目にのんびりコーヒーやお茶を飲むのが好きなのだ。
これでいいのだ。僕が本当に欲しかったのは、車ではなかった。オープンカーでもなかった。僕は自分の気持ちを変えるための型が欲しかったのだ。どんなときでも、自分の気持ちを明るくするものが欲しかったのだ。
でもh本当言えば、やっぱり悔しかった。きっと僕は、また深夜に繁華街を歩くのだ。彼らのことを忘れるために。自分の不甲斐なさから逃げるために。
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「事実は小説よりも奇なり」などという言葉はあるけれど、これが事実なのか小説なのか、本当に分からなくなるから、まさに迷子だ。
浅生鴨さんの最新刊「どこでもない場所」は、エッセイ本として出版されているが、まるで短編小説を読んでいるかのようだった。
ただ、この世の中に「事実」などというものはなくて、全ての物事は「自分の目」というフィルターを通してのみ表現される幻想なのだから、それが真実だろうと幻想だろうと、他の人から見れば等しく「物語」なのだろうとも思う。
表題作の「どこでもない場所」では、まるで浅生鴨さんの頭の中の宇宙空間を所在無く漂っている感覚に陥る。
今目に見えているものが何であるかも、自分自身さえも分からなくなり、ただただ居心地が悪くて、頼りがなくて、不安になる。
それでも「迷子でいいのだ」と断言することができるのは、流されているようで、実はものすごい強い意志なのではないだろうかとも思う。
そして、物語の終わりに、今日もどこかで、サングラスをかけたずんぐりむっくりのおじさんが、迷子になってるのに戸惑うでもなく、飄々と道に迷っている姿を想像して、私はニンマリするのである。
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ゆるゆる道に迷っても、結局たいていのことはなんとかなるので大丈夫、と、別に読者を励まそうとして書かれたものではないと思うのだけど、ゆるゆると肯定されたような気がする本だった。
笑えるエピソードは笑えて、そうだなあと思うエピソードは、そうだなあと思う。そしていつも迷子になると言うくらいなんだから外に出るの嫌にならないのかなと思うのだけどめちゃくちゃいろんなところを旅していて、ギャップではないけどちょっと面白かった。
香川のおばあちゃん、おばあちゃんの葬式エピソードが特に面白かった。
エピソードひとつひとつがちょうどいい長さなので、寝る前に少しずつ、とか、あまり長い分量読める気分ではないけどなにかちょっと読みたい、というときにぴったりな本だった。
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最後のエッセイ「弁慶」のおわり方がこの本の締めくくりにキュッと心のねじを巻いてくれる感じがして好きです.
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不器用で生きるのが下手な感じ、とても共感できる。
回避するわけでもなく、受け止めて不運なことも「まあいいか」といえる余裕。
感想をうまく表現できないけれど、とても素敵。
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エッセイ。最近のエッセイはとてもサービス満点でとにかく笑えるものやら専門家によるとても興味深い話やら内容が濃いものが多い。それらはとても為になったり、楽しい時間を過ごすことが出来る。
この本はそういったエッセイを期待して読むとちょっとあてが外れるかもしれない。
著者独特の飄々というのかふわふわ?ふらふら?というのかファニーな感じを湛えた文章だ。最初は取っ付きがあまりよろしくないと思いながら、だんだんその世界に馴染んでいく。そしてああとその感じを深く共感する。とてもそれ分かると。
ただし、明確なゴールを持たない、現在ここにいるという確固たるものを持たないながらも、鴨さんが一筋の道として得てきたもの歩んできた人生は鴨さんにしかなし得ないものであるとも思う。
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最後のエッセイの、最後の段落で泣きそうになった。ここにたどり着くために読んできたんじゃないかとさえ思った。
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爆笑とまではいかないけど思わず笑ってしまうユーモアと、ゆるゆるした雰囲気だけど結構グサッと刺さるようなことも書いてある。(アメリカに行った先輩の話、機会があれば〜の話とか…)
作者さんが本当にたくさんの経験をしてきたんだなあと思う
なんとかなる気がしてふらっと外国に行ってみたりしたくなる
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不思議な程の寛容力と、どんな場所での何事にも動じないメンタルの強さ。
しかし目標「困った人」って……
「すごく困った人」になる事が出来そうな方ではないかと思いました。