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【大都市が生んだ「第九」、「時代遅れ」だったバッハ】なぜモーツァルトは就活で苦しんだ? ワーグナー「勝利の方程式」とは? 歴史の流れを明快に解き明かす画期的音楽史。
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第3章までは、普通の音楽史に書かれている普通の進行だが、第4章の「ベートーベンの時代」から面白くなってくる。
市民の時代において、市民と向き合うことで生まれてきたのがベートーベンの音楽である。
キーワードは、①わかりやすい(簡易・単主題) ②うるさい(刺激・エネルギー・力) ③新しがる(資本主義・驚き)
ちょっと強引に作曲家と時代を関連付けすぎていると感じる部分もあるが、代表的作曲家が存在した時代背景についての認識を持っているのと、持たずにいるのでは、聴こえてくる音が全く違ってくるだろう。
ベートーベン以降はシェーンベルクに至る(ロマン派から近代)、社会と音楽の変遷が非常分かりやすくまとめられている。この様な説明を受けると、それぞれの作曲家が出てきたのは偶然ではなく必然だったのだと思わされる。
この本で直接的に書かれているわけでは無いが、ワーグナーとヒットラーが台頭してきた背景があまりにも似ているのにビックリ。
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タイトルに惹かれて図書館で借りた。次の予約が入っていて延長不可とのこと。人気なのかな?
「ベートーヴェンを聴けば世界史がわかる」というのは、クラシック音楽のある曲を聴けば、その時代の様相が見えてくるというような意味合いかと思うが、それはなかなか素人には難しい。
本書を読んで、クラッシック音楽の曲作りには、その時代の様相が反映されているんだなということがおぼろげなながら分かった。
誰のために曲を作るのか、どんな目的で作るのか、また作曲家はどのようなことを志向して作曲するのか、どんな境遇で作曲するのか、、、そういうことで生みだされる曲の作りは違ったものとなる。
第一章ではグレゴリオ聖歌の話。第二章では宗教改革を行ったルターの賛美歌やオペラの話。第三章ではバッハ、ヘンデル、テレマン、ハイドン、モーツァルト、第四章ではベートーヴェン、第五章ではロマン派のメンデルスゾーン、シューマン、ショパン、第六章ではワーグナー、そして、第七章ではマーラー、シュトラウス、ラヴェルらについて書かれている。
教会のための曲作り、王侯貴族のための曲作り、そして庶民のための曲作り、市民の富裕層のための格調高い曲作りへと、時代とともに対象や目的は変遷する。ワーグナーの時代に至っては、主役が聴衆から芸術家(作曲家)へと入れ替わり、そういう曲作りとなっていく。
第三章のバッハ、ヘンデル、テレマンの3人に比較は面白かった。最も知名度が低いと感じられるテレマンが、その時代では最も活躍していたようだ。バッハの志向は、その時代には受けず、むしろ後世になって受け入れられた。
あの天才モーツァルトは音楽で、悠々生涯を終えたのかと思いきや、時代の影響をうけ、求職に苦労する生涯だったようだ。「バッハやテレマンなどが正規雇用の宮廷楽長だとすると、モーツァルトは非正規雇用の扱いでした」などいう著者の表現が分かりやすくて面白い。
続く第四章では、著者の熱い語りに、読者は間違いなくベートーヴェンに魅了されるはずだ。著者独特の「〇〇でございます」調が、この章だけ多発する(笑)。
庶民をターゲットとしたベートーヴェンの革新的な曲作りについて、著者はその特徴を「わかりやすい✖うるさい✖新しい」と端的に表現し、その一つひとつを検証するような形で述べている。
著者の熱弁を読み進めるに際し、思わず交響曲第一から第九までの9つを聴き比べながら読まざるを得なかった。
また、ベートーヴェンの生涯を語り、「ベートーヴェンは音楽だけでなくその人生も作品なのです」は著者の名言だなと思う。
これまで、クラシック音楽については、一把一絡げの感覚であったが、本書を読んで少なくとも今後は、本書に登場する著名な作曲家を聴く時には、本書の章立てくらいには意識を区別して聴くようにしたい。
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近現代日本史を主戦場とする片山先生が書く西洋古典音楽史。
まぁ、伊福部だって北海道の原野からポッと生まれ出てきたわけでなく、現代音楽を理解しようと思ったら土台としての19世紀以前を「教養」として掘り下げるんでしょうが、そこは片山先生だけあって、掘り下げ方というか、掘り拡げ方が半端ではない、と。
吉松隆にも諸井誠にも書けないスーパー音楽史、その口調は「でございます」なのだけど、それで想起したのが、小沢昭一さんでございますな。
あしたの、ベートーヴェンのこころだぁ!
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音楽の提供者ではなく、受け手の変遷を軸にして、音楽史を振り返る1冊。教会を中心とした宗教音楽から、王侯・貴族に向けた音楽へ、そして市民に向けた音楽へと、社会の変化を反映しつつ変容を遂げていく音楽。そのなかで、市民向けの音楽を創造したという意味で、ベートヴェンは比類なき業績を残した。
さらに面白かったのが、大国のグローバリゼーションに対抗し、民族を重視し、小国が存在感を増していく流れの中で、ワーグナーが台頭していったという流れ。
音楽というのは、あとから振り返っても、いろんな意味付けが可能ですが、こうして世界史と重ね合わせながら語られるのはとても新鮮でした。
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表題とはことなり内容は西洋音楽史をグレゴリオ聖歌あたりからラヴェルまで概観したもの。新書というボリュームの限られた本で長い音楽史を書いているので、非常に著者の独断的見解が強い。
ベートーヴェンやワーグナーについては、それなりに記述が大がそれでも薄い感じがする。
西洋音楽は19世紀に頂点を迎えここにクラシック音楽の聞くべき多くがあるという解説になっている。(著者は、本来は20世紀音楽を説きたいらしいが)19世紀にできた音楽を聴き理解することは大いに充実したこと思うのでそういう観点で読むならいいのかも。
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美術や文学と違い、受取手の存在が必要な音楽。それだからこそ音楽は時代・社会を反映するという観点から西洋音楽史を見ていく。
自分の音楽の追求と近代市民というニーズへの応えが一致したベートーヴェン。学校というシステムができることで難解で退屈であることが権威という商品価値を持つようになった。ドイツより先に理想のドイツをつくったワーグナー、日本の近代化もワーグナーモデルの影響下で進展した。
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音楽の変遷が社会情勢に大きく影響していることがよくわかった。こんな社会だったからこんな曲が生まれたのだと知ればクラシック音楽がより奥深く楽しめる気がした。
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西洋音楽史がそれぞれの時代背景と共に俯瞰できる。興味深く読めたが、タイトルからして、ベートーヴェンについて深掘りした本だと期待していたのに、そうではなかったのが残念。最近、タイトルがキャッチーで内容を表していない本が多くて困る。
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教会音楽?クラシック音楽?バッハ?ベートーヴェン?ワーグナー?なにが違うの???
…と、音楽的素養のない私にはそう感じられるのだが、この本を読んで、世の中や教会の権威、音楽の受け取り手の世界史の中での変容に応じて(またはあらがう形で)、音楽が歴史を紡いできたことを知ることが出来た。当時の世の中の受け取り手に向けて、こういう意味合いで作られた音楽…という作品の背景を知り、敷居の高い音楽、全く分からない音の羅列を、理解するヒントが得られたような気がする。
ベートーヴェンの運命の、覚えやすい冒頭のメロディーは、なぜそうなっているのか、が分かる。
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タイトルをそのまま鵜呑みにすると、本書の全体を勘違いする。ベートーヴェンは、クラシック音楽の聴き手に、一般市民が参加できる素地を作った意味で、エポックと言えるが、ベートーヴェン以前、以後を通して、クラシック音楽を方向付けしてきた音楽史が語られている。誰が支えてきたか聴き手の変遷から、その時代の社会環境から、音楽家の狙いがわかりやすく解説されている。著名な音楽家の人となりや、作品を通して、クラシック音楽の世界を再構築できる。
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至高の芸術のシンボルと考えられるクラシック音楽も実は世間の荒波にもまれてできあがったものであることをこの本は分かりやすく示してくれた。結果としてクラシック音楽に親しみを持てるようになったのがこの本を読んだ収穫といえる。
またこれはヨーロッパの中世から近代に至る思想史や思潮と言ったものを概観するのにもよい。話しかけるようなやさしい文体だが、多くの示唆を伴う。
現代の音楽もまた後世の人々から世相と関連づけて語られることになるのだろうか。そんなことを考えさせられた。
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社会史の観点で音楽史をざっくり語ったもの。重厚な読書ができた気はしないが、1日で読み終わる平易さがお手軽で、教養に富んだ筆者の語り口も面白かった。
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クラシック音楽は他の芸術とは違い、作り手よりも受容先の状況が重要となる演奏する人と聴衆がいなければ成り立たないので、死後評価される画家、文学者のような人はほとんどおらず、異端の音楽家というのもクラシックの世界ではほぼいない。
元々教会音楽から始まった受容は王侯貴族、大都市のブルジョアと受け継がれる。グレゴリオ聖歌は、もっとも神の作り出したものに近い人間のみで奏でる音楽であるが、それに宗教改革を経て、ラテン語から現地の言葉、歌いやすいメロディといった世俗的な要素が加わっていき、王侯貴族のオペラや室内楽になっていった。バッハは教会に所属して音楽を作っていったが、どちらかというと後世に評価された作曲家である。モーツアルトの頃には王侯貴族から市民への富の移転が進み、需要家としてのシフトもおこる。ヘンデルはロンドンに行って成功したが、モーツアルトは失意のうちになくなる。ベートーヴェンは、市民階級に受け入れられるようなシンプルなメロディーの繰り返しを用いて、わかりやすく、うるさく、新しい音楽を作っていった。市民階級の成熟とともに、精緻化が進み、クラシック音楽の中での差異化がすすみ教養としても分化が進む。
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インタビューから文字起こししたという経緯の本らしく、随所に「え?そうなの?」というようなエピソード(特にシェーンベルク!)が散りばめられていて、なかなかに読ませる。ただし、題名の「世界史がわかる」はオーバーな題名。正確には、世界史の「一部がわかる」程度で、世界史というよりは音楽史の本である。