電子書籍
岩倉使節団からインターネットまで
2022/06/08 23:44
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投稿者:福原京だるま - この投稿者のレビュー一覧を見る
日本の通信事情に関する歴史が岩倉使節団の時代からインターネットまで言及されている。明治の時点でアメリカ西海岸からヨーロッパ経由で日本まで海底ケーブルがつながっており(太平洋横断ケーブルはまだ)西海岸から長崎までより長崎から東京までの方が伝送に時間がかかっていたことなど知らないことが多く面白かった。
紙の本
現代の情報戦争をその源流に遡って理解させてくれます!
2018/11/27 12:14
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投稿者:ちこ - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書は、現代社会で巻き起こっている情報戦争をその源流を遡ることで基本的なことから理解させてくれる画期的な書です。明治四年、一本の海底ケーブルから始まった通信ですが、その後、通信は急速な発展を遂げます。太平洋戦争では、日本が政治、外交、軍事、経済などあらゆる資源を投下したにも関わらず、欧米の列強とは大きな格差が生じていたことは明らかです。この大きな原因は、情報・通信の差だったと言えます。これまで以上に重要な位置を占めてきている情報・通信。今後どのようになっていくのでしょうか。詳細は、ぜひ、本書をお読みください。
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約150年に渡る「通信」の歴史を詳細に記している。膨大な資料から綿密な内容となっており、とても論理的でわかりやすい。
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第四章 そして対米通告は遅れた を書きたくてこの本を書いたのだろうという印象。時系列的に多くの資料、裁判記録、手記から当時の状況を追う作業は敬服に値する。
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190202 中央図書館
技術に関わる洞察か、歴史哲学のような視線を期待したが、基本的にシンプルな技術史かな。
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国際通信の歴史が俯瞰できておもしろかった。技術が世界を変えたってのが良くわかる。海底電信ケーブル→短波無線→海底同軸ケーブル→衛星通信→光ファイバーと進歩してきたのを、「有線と無線がまるで源平の盛衰のように交互に主役を務めてきた」ってまとめてたのうまい。それにしても明治4年の岩倉使節団の時にはすでに海底ケーブルが世界一周してたとは。イギリスの国力がすごすぎる。
日米開戦時の開戦通告の話はかなり細かいが、あとがきに書いているミクロ的検証も必要との自らの主張を実行している。不安定な短波無線でしかも暗号なのに電文が長すぎという指摘はなるほど。
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「国際」という言葉は文字通り「国」の「際」で「国境線」をイメージさせますが、その線を垂直に横切る線が海底ケーブルで、その存在が「国際」という概念を作っているのだと知りました。5Gの時代の訪れに通信の未来を感じたりしますが、国際通信そのものは明治4年にデンマーク国籍のグレートノーザン電信会社の海底ケーブルを陸揚げしたところから始まっています。開国はヒト、モノの行き来がオープンになる、ということだけじゃなくて通信網が引かれ情報が開かれたことも意味するのですね。もちろんそこには国家の利害も密接に結びついていて、いかに日本がその不平等性に苦しんできたかも書かれています。またそこにはテクノロジーの影響も大きく、有線、無線、海底ケーブルと人工衛星の主役の移り変わりが繰り返されていたことも初めて知りました。また国家戦略という意味で暗号についても大きく章を割いていて、日米開戦の際の告知の遅れと暗号解読のくだりはものすごい力を込めて検証されています。実はこの本、国際線の飛行機の中で読んだのですが、目的地に到着後、すぐスマホ使える、その凄さを身に染みて感じました。グローバルって海の底と空の上で作られているのですね。あまり表に出てこないけど、ものすごい大きな歴史に触れた読書でした。
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通信業界にいて,規制対応(コンプライアンス)の仕事をすることもあるので,監督象徴である総務省の歴史,考え方を知りたくて手に取ってみた本.
…目的を達成できたかというと,そういう内容の本ではなかったので,達成できなかった.別の本を読む必要があるだろう.
しかし,「通信は外交,安全保障と常に密接にかかわりあっている(現代でも)」という気付きを与えてくれる本ではあった.膨大なディテールが詰め込まれた歴史書であり,固有名詞わんさか.地政学や安全保障に関心がないとかみしめながら読み進めることはできないだろう.私はディテールの部分はほぼ飛ばし読みした.
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1990年代後半.規制緩和,外資開放の結果競合ひしめく状態になっていた国際通信市場だったが,ブルーオーシャンだと信じられていたこの市場は勢いをなくし(1999年で市場規模が3500億円ほど),インターネットの登場により取って代わられ,独自に収益を上げられる市場ではなくなってしまった.公専公接続が1997年に解禁されたことも大きい.外資は次々日本から撤退.
かつて,通信事業は「通信主権」の問題であり,国が強力にリーダーシップを発揮すべきものとしてとらえられてきた.しかし,インターネットの登場により,通信事業が「市場」の問題として議論されている現代では,低廉で良好な通信サービスが提供されるのは,あくまでも市場を通して.政府がかかわるのは,安全保障,犯罪捜査などの観点からになる.※あとは今問題になってるので言うと公正な競争の確保とかね.
通信はつねに暗号と不可分であった.インターネットの世界においてもそう.暗号化されているという安心感がなければ利用者が当たり前に使えるインフラにはならない.
現在主流は公開鍵方式.従来の暗号方式は,共有鍵暗号であり,送信者と受信者が同じ暗号表(鍵)を持つ必要があった.公開鍵方式では,暗号化するためのカギが公開鍵,復号するための鍵が秘密鍵となっており,暗号化は誰でもできるが,復号は秘密鍵を持っていないとできない.公開鍵方式の嚆矢であるRSA暗号は,素因数分解がネタになっている.素数通しを掛け合わせて解を求めるのは簡単だが,この掛け合わせた数値を素因数分解するのは桁が多いと非常に難しい.このように非対称な数学システム(片方の計算は簡単だが戻すのが難しい)を利用するのが公開鍵方式であり.インターネットには欠かせない技術といえる.
国家的通信傍受活動.かつて冷戦時代エシュロンという衛星通信システムを米側が傍受しているという疑惑が浮上した.この当時から主流は海底の光ケーブルであったのだが.
2013年のスノーデン事件でスノーデンが告発したのは,光ケーブルからの傍受を含むもっと広範な傍受活動だった.衛星通信であれば通信会社の協力は不要だったが,光海底ケーブルからの傍受は通信会社の協力なしにはありえない.このような時代にあってはもはや特定対象の諜報活動ではなく潜在的に全個人がその対象となる恐れがある.スノーデンの暴露後,ドイツは米国を経由しないで電子メールをやりとりできるようにし,ブラジルも欧州との直接の海底ケーブルの敷設を決定したという.
インターネットと通信主権.中国やロシアは安全保障やセキュリティのため国家の介入を認めるべきだと提案,米国は自由な情報流通を主張した.ITUの国際電気通信規則(ITR)が議論の場になった.
海底ケーブルの敷設主体も通信事業者からグーグルやアマゾン,マイクロソフト,フェイスブックに変わりつつある.
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通信のお勉強。1800年代から海底ケーブルが敷設されているとは思わなかった。
諸外国に比べ日本の電気通信市場は平穏のようにみえるが、回線を所有していなくても全世界にサービスを展開できるインターネットの時代にあっては、激動期をむかえつつあると考えるべきだろう。実際、現在日本で多く使われている携帯端末はアップルやグーグルであり、パソコンの基本ソフトはマイクロソフトとアップルである。検索エンジンはグーグル、SNSはフェイスブックやツイッターである。ハードの通信設備を所有・管理していれば通信主権は守られるという時代は既に終わっている。利用者が誰と連絡をとり、何を検索し、どのような嗜好を持ってい るかの情報が外国企業のもとに集まりつつある。しかもこれら多くのIT企業が米国の通信傍受活動の実態を暴露したスノーデンにより米国政府に情報提供していたと告発されているのである。各企業が持つビッグデータとAI技術が結びつけば、一企業により世界の政治や経済に影響を与える可能性も高いだろう。
また、海底ケーブルの敷設主体も、通信会社からグーグル、アマゾン、マイクロソフトなどに変わりつつある。「はじめに」で触れたようにマイクロソフトやフェイスブックは次々とケーブル敷設計画に参加している。米国のIT企業は世界各地の自社データセンターを光ファイバーで結ぶプライベートネットワーク構築を目指しているのである。こうなると日本の通信会社に残さ れているのは国内の伝送路の管理だけということになりかねず、通信事業以外の産業にも悪影響 を及ぼす可能性がある。安全保障、通信の秘密、経済的問題などの観点から、日本においても通信施策の再検討、あるいは企業による積極的な事業展開が必要な時期にきているというえるだろう。
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通信インフラという着眼点がユニーク。最初の電信を巡るエピソードは興味深かったし、太平洋戦争開戦時の「宣戦布告の遅れ」についての分析は秀逸。
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【国際通信史の研究は、外交や国際関係、戦争のみならず経済、国際交流の歴史研究にも新たな知見をもたらす可能性を秘めているのである】(文中より引用)
主に日本の近現代における国際通信の歴史を振り返りながら、技術やインフラの発展が時の安全保障や経済にどういった影響を与えたかを概観していく作品。著者は、国際電信電話株式会社(KDD)で自身も通信の歴史の形成に関与した大野哲弥。
「通信」という目に見えないものを上手く歴史に落とし込んだナラティブ力にまず関心してしまいました。そしてそこから浮かび上がってくる通信が歴史に果たした役割の大きさにも驚愕。新たな側面から歴史に光を当てた佳作と言えるのではないかと思います。
渋い内容ですが味わい深さがありました☆5つ