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投稿者:オビー - この投稿者のレビュー一覧を見る
国家の品格+αの新書。
教養の四本柱。
文学や哲学などの人文教養、
政治、経済、歴史、地政学などの社会教養、
自然科学や統計などの科学教養、
これらに生を吹きこむ大衆文化教養。
実体験と読書を中心とした追体験でこの四本柱を血肉とし、バランス感覚を培っている国民を増やすことが、これからの国家、民主主義国家、日本国には必要、というメッセージと受け取りました。
示唆に富む内容ですが、国家の品格ほどのインパクトがなかったので、低めの評価としています。
教養の歴史や考察は難易度高めでした。
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藤原正彦氏(1943年~)は、新田次郎と藤原てい(太平洋戦争直後のベストセラー・ノンフィクション『流れる星は生きている』の著者)の次男で、数学者にしてエッセイスト。1977年発表の米国留学記『若き数学者のアメリカ』で日本エッセイスト・クラブ賞を受賞。2005年発表の『国家の品格』は270万部を超えるベストセラーとなり、「品格」は翌年の流行語大賞にも選ばれた。
本書は、『国家の品格』以後、ますます広範に渡り深化する情報社会において、われわれ日本人(そして日本という国)が生き残っていくためには、日本の歴史・文化に根差した「教養」が最も大事であることを(藤原流に)力強く語ったものである。
印象に残った内容は概ね以下である。
◆現在一般に認識されている「教養」の原型は、古代ギリシアから帝政ローマ時代の、自由人になるための技術「リベラル・アーツ」(音楽、算術、幾何学、天文の数学系4科と、文法、修辞、論理の言語系3科を合わせた、自由7科)である。
◆リベラル・アーツは、帝政ローマ以後はビザンティン帝国やイスラム国家に保存され、約千年のときを経てルネサンスでヨーロッパに復活したが、その後、①教養そのものは、生存競争に勝つにためにも、生活を豊かにするためにも役に立たないと考えられた、②世界のアメリカ化により、ヨーロッパ的なものが否定され、功利性、改良・発明などが重視された、③グローバリズム、新自由主義の浸透により、利潤を最大化し競争に勝つことが求められるようになった、④ヨーロッパは、「教養」により二度の世界大戦を防ぐことができなかった、などにより世界的に「教養」は衰退した。
◆近代以降、古典と哲学を重視したドイツ教養市民層と、スポーツやユーモアを大事にしてバランス感覚を培ったイギリス教養市民層は対照的で、それが二度の世界大戦を含む、過去一世紀の両国のたどった運命に表れている。
◆日本では、明治維新以降ドイツ的教養主義が広まり、第二次大戦の戦前戦中も概して教養主義を貫いてはいたが、ドイツの教養市民層と同じく政治には疎く、戦争に向かう過程では無力だった。戦後の教養層は、GHQ史観、それに基づく戦後体制、対米従属による経済成長ばかりを重視し、日本古来の形(武士道精神、儒教精神、情緒など)を忘れてしまった。
◆深化した情報社会において最も大事なものは、無限の情報の中から最も必要で本質的なものを選択するための、知識や情緒に根差した物差し(座標軸、価値基準)であり、それは現実対応型の知識、即ち、情緒や形と一体となった知識であり、それこそがこれから求められる真の教養である。「生とは何か」を問うのがかつての教養で、「いかに生きるか」を問うのがこれからの教養とも言える。
◆これからの教養とは、人文教養、社会教養、科学教養に加えて、日本が誇る大衆文化教養が柱となるべきである。
「論理に先立つ情緒や形が大事」、「日本は情緒や形を重んじた、他国にない優れた文化を持つ」、「読書に勝る修養はない」などは、藤原先生がこれまで繰り返し主張してきていることで、安心して読み進めることができたが、それらの主張を“教養”というワード・切り口で編みなおした一冊と言えるだろうか。
(2019年1月了)
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教養論は出たら一応だいたい買うようにしているのだが、目新しいことが何も書いてないし全部独断だし。フンボルトに関する記述も杜撰。エッセイとしても面白くもなんともないのだが、固定ファンがいるのだろうか。何かもっと銘文家なんだろうと思っていた。
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最終的には,読書を以てしか教養を得ることはできないと説く.残念ながら,多くの日本人は世界において自分が存在する,と考えず,個として世界を閉じているので,教養を獲得し,世界を俯瞰する,という必然性自体を必要と感じていない.だから,世界あるいは他者に対する寛容性が微塵もない世界が生成されるのだ.他者と自分とで構成されて世界が成り立ち,その一員として自分を客観視している人は,はじめから教養の必要性とその獲得方法は理解している.教養以前の段階に問題がある.
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教養を養うことが情緒を育む、教養を持っていたことが日本が完全に植民地化されなかった理由。だから若い人も本を読むべし、との主張。
老人の愚痴に感じる言い回しが気になってしまう。
なお、著者が現代の素晴らしい大衆芸術として例に挙げた 君の名は を自分はそれほど面白いと思えていません。
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古代ギリシャ→アレクサンダー大王→プトレマイオス朝エジプト アレクサンドリアの図書館→ビザンツ→プロテスタント
数学・哲学や形而上の学問
古代ローマ→フランス→カソリック
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知識階級の性質は、国それぞれ。
イギリスのジェントルマンは代々の大地主で実業から隔離されて生活できるがノブレス・オブリージュにより実業に就く。ユーモアとスポーツを重視し、バランス感覚に秀でているため、政治が極論に流れることがない。
ドイツの知識層は政治経済などの実業を下に見る傾向があり、ナチスの理想主義に流される
日本は開国後ドイツから思想系統を受け入れ、大正時代の高等遊民など政治センスに疎い知識階級が育った。軍閥や左翼の勃興を牽制できなかった。
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市民に教養がなければ民主主義は地獄
『国家の品格』にすごく感銘を受けたので続編として期待して購入.前作ほどじゃないが自分が漠然と感じていたことをずばり筋を通して示してくれた.近代における国ごと教養層の動きの違いなどを示してくれてそれぞれの側面がよく分かった.
とはいえ『国家の品格』に比べるといまひとつ物足りなさもある.前作と被る部分もあったし,どうすべきかという主張が少なかったように思う.
今後もちゃんと自分の頭で物事を判断できるように,本をはじめいろんな知識をつけようと思えた.
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現代においては死語と化した「教養」について、『国家の品格』の著者が述べる文化論。
その衰退の要因として、次の4点を挙げる。
①生活を豊かにするのには役に立たないと見下す現代人
②アメリカ化
③グローバリズム
④二つの世界大戦
そして、教養を主体とした、ヨーロッパさらに日本の歴史が詳らかに綴られる。少数エリートに独占されていた教養は、戦争を押しとどめる上では無力だった、と。
しかし、民主主義は教養がなければ成り立たないと、解き明かす。
では、情報社会の現代に対応する教養とは何かといえば、「生を吹き込まれた知識、情緒や形と一体になった知識」だそうだ。
それには、我が国が誇る「大衆文化教養」が役に立つと述べ、アニメ映画『君の名は』にも触れる。
それらを自らの血肉にするには、読書が欠かせない、と強調する。
ブクログの利用者の中には、我が意を得たり!と、感嘆する人もいることだろう。
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年取ったなぁ。。。丁寧さに欠けた文章がもったいない。正論が老害に見えてしまう。すごい正しいこと言ってるのに。天才数学者が長年の知見で綴った名著であることは間違いない。賛否あっても、深く参考になる一冊。
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古典的な教養論だが、情報過多の現代こそ必要な生き方。
最初は軽く読み流すつもりだったが、実は「現代日本への警鐘」として、あるいは現代人へ生き方の問題提起として、真摯に受け止めた。
アメリカ主導の市場原理主義・新自由主義が主流となる中で、金融資本主義による覇権が至上の価値となり、
実務・金銭・収益の物差しがスタンダードとなった。
歴史的に敬意を払われてきた「教養主義」は時代遅れとして捨てられていくようだ。
権力者にとって、うるさい教養人が居なくなり、享楽主義者ばかりとなるのは望ましい社会である。
しかし経済的成功が国民を幸せにしないのは、戦前の第一次大戦時の好況も、戦後の高度成長期の好況も同じ。
物質的成功は精神の充足を導かなかった。むしろ更に高みを求めて、結果的に転げてしまった。
人間としての幹を鍛えることが、強靱な国家を形成する。
そのための肥やしが、読書であり、教養だ。
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教養は、世の中の一過性の流行や言動に流される事なく、自分としての意見を持ち正しい判断へと導くもなのだと痛感。少々書く内容に偏りがあるが納得できる所も多い。
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ものすごく単純な解釈をすれば、リテラシーを高めるために本を読んで教養を身につけようという内容。
藤原先生はロマンチストに見えますね。
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民主主義は成熟した国民がいてはじめて成り立つ。ポピュリズムは選挙を経て国民から選ばれたという前提が成り立つために、独裁政権よりもたちが悪いと思ってしまう。
いつの時代も教養のあるもの申す市民は権力者に嫌われるものかもしれません。本を読み考えて行動するひとが増えることは、政治や経済を他人任せにしないで、自分達の足で立って考えるきっかけになるのではないでしょうか。
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語りおろし的な、さーっと読める本だが、なかなかに本質をついていて、現代人必読の書。
藤原氏の辿ってきた戦後の生育体験、アメリカでの学究生活からの知見、今までの日本の大学生に接してきた経験、豊富な読書体験などに裏打ちされた話はどの世代が読んでも有益だと思う。
ドイツの教養主義の誕生を歴史的背景から考察し、エリート知識層の功罪と、それが輸入された日本の戦前高等学校文化の系譜は興味深い。今まであまり疑問視しなかったけれど、今から見ればかなり偏った文化的態度が日本の知識層カルチャーであるなと相対化できる。
アメリカの知識層、支配層の内奥に接した藤原氏だけに、アメリカの日本支配の真相にも触れている。
本物の教養を持った藤原氏だからこそ語れる日本の良さ、あるべき姿への提言は、どこにもおもねることはないが、その藤原氏をして大切と言わしめる日本の心は、どこか古き良き日本だ。
例えば、見えないところにまで気を配る文化、他者を慮る文化、努力する文化など。四季を感じたり、先祖や自然の尊さを大切にする文化。強い者に巻かれず弱いものを助ける文化。年寄りの情緒的な傾斜もあるかもしれないが、逆説的だけれど、海外に行って帰ってきた人が改めて日本の良さを語る時、そういう場所に回帰していくように思う。
それを、ガチガチの保守政治家が説く「美しい日本」みたいなものとは一緒にしたくはないが、日本の存在意義として大切にすることを提言している。
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西洋史が大半を占めていますが、とても勉強になりました。また、教養=読書の重要性を改めて再認識しました。
将来の日本を担う子供たちへ、今後も読書を強く勧めていきたいと思います。