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とても美しく、凝った絵本。マーク・トウェインが娘たちに語って、残した未完の文章から作られた物語。未完なので結末はフィリップ・ステッドが考えた。
貧しく恵まれない少年ジョニーは唯一の友達であるメンドリのペストトキガを売ってくるように祖父から言われ、不思議な物乞いの老婆にペストトキガをやって、かわりに種をもらう。ジャックと豆の木みたいに。種をまくと花が咲き、飢えたジョニーは花を食べてしまう。すると動物と話せるようになり、動物に助けられて行方不明の王子を探す旅に出る。王子は見つかるが…。
と書くと割合普通の話みたいだが、物語には語り手(フィリップ・ステッド)とマーク・トウェインの会話や、ステッド自身の言葉(味わい深いが物語の本筋とはあまり関係がない)がけっこうしばしば、そして長々と挟まれており、なかなか進まない。これを楽しめる人じゃないと面白くない。つまり子ども向けじゃない。大人も全員が楽しめるというものではない。でもちょっと皮肉な物言いが好きな人は楽しめると思う。
私は楽しかった。こんなところが。
「アメリカ合衆国では、道路はどこにでも通じている。船いっぱいに乗りこんだバカタレどもがこの国を「原住民」から力づくでうばいとって以来、われらが聖なる務めといえば、すべての森林を掘り返し、すべての原野にコンクリートでできた大小の川を縦横無尽に走らせることだったのだ。アーメン!」P30
ジョニーを案内してくれたスカンクが、動物同士は自由に会話できるのに、人間だけが人間としか会話できないと話し、「だから人間はものを知らなくて、時代おくれで、孤立してて、さみしいのー話しをする相手がほとんどいないんだから」。P77
絵は素晴らしい。特にペストトキガがイキイキとして愛らしい。