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借りたもの。
現代の脳科学研究から人間の関係性の問題――孤独と共感――をテーマに絞ったもの。
統計不足、研究途中ということもあり、腑に落ちないものが多い……
それだけ脳も心も、未だブラックボックスだった。
孤独と共感は、人間の善意・悪意に繋がる。
共感についてはだいぶ広義な意味で取り上げている。
利他的行動、ゲーム理論、動物の行動学などの見地から。
人間を動かす利他行動が戦略的に有利であること――「利己的な遺伝子」の反証――について、利己に走る人を罰する善行が起こることに、私はネット私刑の元型を見る。
協力しない者に利益はない、という霊長類の行動。
他者との一体感、協調する行動が社会的な接着剤として働くこと。
〈ダンスの進化〉では、直立姿勢、歩行能力がダンスを生み出した可能性を示唆(白黒判断付けられるものではないらしい)。音楽やリズムに合わせて他者と同調すそことを求められるダンスによってグループの結束を強化する。
つまり、人は孤独に生きていくことはできない。
若年層が感じる孤独感についての研究が興味深かった。
私もそれに苛まれていたため。その理由は判然としなかったが、掲載されているものは総じて当事者の否定的な捉え方に起因していることを指摘。ではその理由は?
その解決方法のような「自尊心を高める」ことも、間違った方法を行ると、ただの自己愛(本来の自分より誇大に自己を認識)してしまう。
ついでに学業成績と自尊心は無関係(p.89)とのこと。脳画像を用いた個別の学習指導についての提言は気になるが、かつてのエセ科学のような人相学にならないことを切に願う……
他者との関りで、どうしてもネックになってしまう対立と、その極みのような暴力について。
暴力と自己愛についての関係……「暴力に訴える人は総じて劣等感を持っている」という話に関して、どちらかというと「自分を誇張して認識している人が、その事実を突きつけた人に対して暴力を振るう」という。