紙の本
美と破壊の女優 京マチ子
2019/05/03 01:09
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投稿者:bookman - この投稿者のレビュー一覧を見る
映画館で「京マチ子映画祭」が始まったので、それに合わせて購入しました。映画製作の時代背景や批評等、実によく調べているので、映画を見るときの参考になるだけでなく、映画の見方を深めることができました。たいへん優れた本です。
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この本の出版を待つようにして天に召された京マチ子。どんな弔辞よりも京マチ子愛に満ち満ちた本です。研究書というよりラブレターかな?でも、京マチ子が、映画史、文化史、いや戦後史で果たした役割を懇切丁寧に次の時代に残すべく論理的な構成になっています。実際、自分でも「羅生門」の女優というイメージしかありませんでした。それも顔のイメージがアイコンになる女優ではなく、メイクによってどんな役柄も演じることが出来るという彼女の顔の特徴?いや女優としての才能の現れなのだと知りました。「羅生門」でもどれが本当かわからない女の存在を演じ分けていたから、印象が定まらなかったのかも。処女と娼婦と少女に淑女、まさにリアルHow many いい顔!そして、その顔を乗せる肉体のボリューム感。って書きましたが、本書を読むまで、ボリューム感が女優を賛美するキーワードなんて知りませんでした。ボリューム、ボリューム、本書の使い方で現在、女性を評したら吹っ飛ばされそうです。ただ敗戦のコンプレックスや戦前の精神主義を払拭するには彼女の身体が必要だったのでしょう。本書の記述に導かれてYoutubeで溝口健二の「赤線地帯」を検索したら、まさに「ウチ、ビーナスや」のシーンが出て来て、その躍動感に打ち抜かれました。「ヴァンプ女優」として「グランプリ女優」として、常に顔と身体で、敗戦日本に生命力を与え、プライドを与え、そして外貨も稼ぐ、そんな女優だったのです。彼女も巡るアメリカ映画と日本映画の関係性はジョン・ダワー「敗北を抱きしめて」を思い起こさせました。そして「コメディエンヌ」へ。まさに大女優としての一生でした。
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京マチ子愛が感じられた。 2年前の「スター女優の文化社会学」で原節子と京マチ子が論じられた時、京マチ子贔屓のような印象だったが(間違ってたらごめんなさい)やっぱりなと思った。
京マチ子さんがお亡くなりになり、ご本人がこの本を手に取られたのか気になったが、確か間に合った、届けられたと知ったような気がする(間違ってたらごめんなさい)。
お読みになるお元気はあったのだろうか。死の直前にこのような愛あふれる論考を手にすることができたら、どれほど嬉しかっただろうと思う。自分の出演作、演技をここまで丹念に論じてくれた、それもうんと若い学者さんが。私が京マチ子なら(なんじゃそりゃ)死ぬほど嬉しいと思う。晩年は第一線を退かれていたが、どのような心持ちでお過ごしになっていたのか。スター女優である(あった)ご自分をどう思っておられたのか。わからないが、この著作の完成で、女優一筋で生きた甲斐が最期にも強く感じられたと思う。
8月の京マチ子映画祭には是非行きたい。ものすごく京マチ子さんの映画が見たくなる本であった。
このように1冊の本がまとめられたおかげで、お亡くなりになった後何年も、私のように「もっと京マチ子の映画が見たい」と思う人が続くだろう。
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ようやく京マチ子さんの本格的な研究書が出たと思ったら、そのあと間もなく訃報が報道された。ともあれ、時代の経過と共に変化、進化する映画女優京マチ子の魅力とその秘密をきちんと分析した本で、楽しく興味深く読んだ。
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名優・京マチ子さん逝去……95歳
名優・京マチ子さんが心不全で逝去。
ご冥福をお祈りします。2月に関連書が刊行されています。