紙の本
様々な作家の表現で読むフェミニズム
2021/08/15 13:27
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投稿者:くらげ - この投稿者のレビュー一覧を見る
『82年生まれ、キム・ジヨン』の作者であるチョ・ナムジュの、淡々としていながら胸に迫るような文章が好きだ。表題作の「ヒョンナムオッパへ」では、自分でも当初は気づかなかった恋人からの精神的な支配を振り解き反論する内容が描かれる。痛切さに加え、爽快感もあるのが良かった。
また、チェ・ウニョンによる父長制の生産する苦しみを描く物語や、ソン・ボミの定型化されたハードボイルドの男女の役割を逆転させた物語、ク・ビョンモの女性に加害した男性がいかにして報いを受けるのかを非日常的に描いた物語など、作家たちの描こうとするテーマを伝えるための様々な表現手法を目の当たりにできる。
この本で読むことのできる、手紙調、ノワール、SF、ファンタジーといった様々な表現の物語は、「フェミニズム」という単語に含まれる様々な事象や課題について、読者が考えたり想像を膨らませたりする範囲を広げてくれるものだと思う。
あと、ラストを飾るキム・ソンジュンの「火星の子」に出てくる犬のライカ、というキャラクターが親しみやすくて好き。
紙の本
女性を中心にとしたストーリーの短編集
2022/12/30 12:31
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投稿者:yy - この投稿者のレビュー一覧を見る
韓国フェミニズム小説集というより女性を中心にしたファンタジーやSF作品も含まれる多様な短編集です。
「82年生まれ、キム・ジヨン」のようなフェミニズム小説を読みたかったので、少し違いました。
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韓国の、フェミニズム小説の、現在位置を示してくれる。とっても活きがいい!
私は1本目『ヒョンナムオッパへ』でグッと掴まれてしまったが、7本とも結構タイプがばらけていて、それぞれ面白かった。
こんなアンソロジーがもっと編まれればいいのに。もっと読みたい。
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各短編を、この順番で読めてよかったなと思った。
ごく身近なシチュエーションの物語から実感をもって読み進めて、気付けばすごく遠いところまで。
普段手に取らないジャンルも含まれていて新鮮だった。
前半で恋人や肉親との精神的な隔たり、分かり合えなさがありありと描かれていたからこそ、「火星の子」のあの連帯が印象に残ってる。
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キムジヨンの著者チョ ナムジュの
「ヒョンナムオッパ」他
韓国の女性作家たちによる「フェミニズム小説集」。
「ヒョンナムオッパ」「あなたの平和」「更年」
「すべてを元の位置へ」は
娘として 妻として 母として
多くの女性に共感を呼ぶ作品であり
「異邦人」はハードボイルドサスペンス
「ハルピュイアと祭りの夜」
は近未来ダークファンタジー
「火星の子」はSFだ。
このようにさまざまな切り口で
女性としてこの世に生きることを
じっくり見つめる一冊に仕上がっている。
作品としては
「ヒョンナムオッパ」が最もわかりやすく
「更年」が最も優れていたと思うが
個人的に一番ショッキングな映像的作品
「ハルピュイアと祭りの夜」に惹かれる。
映像的といっても実写化は難しいほど
凄惨なダークファンタジーだが
「この感じ」はよく理解できる。
「この感じ」が理解できてしまうほど
私の心の底にも溜まっているものがある
ということに気づかされた。
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ヒョンナムオッパへ、あなたの平和、更年、すべてを元の位置へ、異邦人、ハルピュイアと祭りの夜、火星の子。韓国フェミニズム小説集となっている。チョ・ナムジュの「ヒョンナムオッパへ」、主人公の私は司書職公務員。10年前に大学に入学してオッパに会った。それからずっとオッパの庇護と指導の下に生きてきたようなもの。そしてそれは耐えきれないことだと心から感じた。男性が女性を庇護する。それは男性の望む女性像に近づけようとすることかもしれない。女性自身はそれをちっとも望んでいないにもかかわらず。オッパへ別れの手紙を書いた私は自由な世界へ歩みだす。
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「ヒョンナムオッパへ」を含む短編集。
この最初の「ヒョンナムオッパへ」が面白くて最高でした笑
韓国と日本では恋人との付き合い方が違うんだろうなと思いました。
やはりかなりの男尊女卑なお国なのだろうかと。
彼の言いなりになってきた女性が、プロポーズを断る手紙がストーリー。
もう、いろいろ面白くてニヤニヤしました。
最後に、バッキャローで終わるのですが、ほんとそれ。
なんて男だと思う。
彼女はあんたの装飾品か何かかと。
口は出すけどお金も手も貸さない男。
彼女に捨てられた彼の行く末が楽しみでもあります。
やはり女性を怒らせると恐い!
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すごくリアルなものからSFまで、色々なジャンルの短編集。日本と似てるけど違う国で、同じように悩んでいる女性たちに共感。
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短編集でタイトルでもある『ヒョンナムオッパへ』は良かったけど他のお話は文化の違いなのかよく分からなかった。
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「82年生まれキムジオン」からの流れで、同書の作者も参加しているこちらのフェミニズム短編集を手に取った。
前半は、「82年」同様の現代韓国で男尊女卑に苦しむ女性がテーマ。表題のヒョンナムオッパは、主人公の女性を支配的に操作する恋人。以前韓国ドラマでカップルが男性名義で携帯電話を共同契約する(別れた後、女性は携帯の機種変に四苦八苦するという)場面があってびっくりしたのだが、男性の支配下にいることを恋愛感情だと勘違いする怖さを改めて感じた。それはDVにつながる発想だよなあ…
他にも、前半には疲れた母親像とそれを冷淡に見つめる娘、しきたりにこだわって息子の嫁に自分が押し付けられたことと同じことをさせようとする母親像なども描かれ、この辺りは日本と似ていて息苦しい。
後半は、男女を入れ替えたハードボイルド小説、非現実的な世界で男性に踏み躙られる女性像を描いたもの、火星に飛ばされるクローンの女性など、フェミニズム小説といっても幅広いことを感じさせる作品揃い。中でも面白かったのが、女装大会に参加した男性達が、脱げないヒール靴、動きにくいワンピース、落ちないメイクをされて弓矢で追われるという話「ハルピュイアと祭りの夜」。なぜ彼らが殺されるのか…その理由が明らかになるときに思わずスカッとした気分を味わってしまった。
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前半は、リアルな生活を描いた小説、後半に行くにつれてミステリー、SFなど作品の雰囲気が変わって面白かった。
本書のタイトルである「ヒョンナムオッパへ」や「更年」「あなたの平和」は、私自身より年上世代の女性が書いたんだろうなという感じがすごくした。
個人的には「すべてを元の位置へ」が面白かった。
読み終えた時に、これは何の話だったのだろう、 フェミニズムとのつながりはなんだろうと考えさせられた。
男性中心社会の暴力性への違和感を、都市開発のために廃墟となった建物への違和感として象徴的に書いているそうだが、それを持ってしてもあのシーン、行為、結末の意味は何だったのか未だにわからない。
また間をおいて読んでみて、その時の自分は何を感じるのかが気になるような作品だった。
フェミニズム小説といっても、色々な視点があり、どれも違った作風になるのが面白いなと思った
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韓国の女性作家達による、フェミニズム短編集。
「82年生まれ、キム・ジヨン」が日本でもベストセラーとなった、チョ・ナムジュさんをはじめとする7人の作家が、現在の韓国のリアルを描くものからノワール、SF、ミステリーと多岐にわたるジャンルでフェミニズムをテーマに置いている。
個人的には、日本で初めて紹介されたというキム・イソルさんの「更年」が、世代的にもドンピシャで、読みながらヒリヒリする感じがあった。
「私の持ち分はこれからどんどん減っていくだろう。
ほかのアイドルが、もっと大勢の友だちが、いつかは異性が、私の持ち分を蹴散らしていくだろう。
そして私にはただ、ご飯を作って洗濯をしてくれる人としての必要性しか残らないだろう。
子どもの世界での私の居場所は、そうやって消えていくのだろう。」
いやー、本当これですよ!今の自分。
大した収入にはならないけれど、仕事という家庭とは別の場所があることに救われているな、と実感しています。
キム・イソルさんの他の作品も紹介されないかなぁ。
2021.5.29
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設定がバリエーションに富んでいました。大学の先輩後輩、義理の妹ができることと母のこと、息子娘を見つめる母のこと、元女性刑事のことなどなど。ショッキングなストーリーも多々ありましたが、それ以上に多様な面白さがありました。
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フェミニズムをテーマにした韓国の女性作家たちによる短編集。
『ヒョンナムオッパへ』
「ジェンダー規範に従うことを選ぶ女も悪い」「DVだ搾取だと言いつつ女も結構良い思いしている」「女も差別され支配されることを望んでいる」……こんな声を鮮やかに蹴散らす一作。支配と暴力は巧妙に始まり、気づくことさえさせないものだ、ということを抉り出す。
『更年』
「あなたの身近な男性――例えば息子や夫が性暴力の加害者になったらどうしますか?」……誰もが答えに詰まる質問を淡々と投げかける。後味は悪い。でも、その悪さこそが答えなのかもしれない。
『ハルピュイアと祭りの夜』
「Not ALL Men!」「自分は加害者じゃないから差別とか言われても困る」という言葉に潜む傲慢と加害性を告発する短編ホラー。ミサンダリーすら感じるオチに、それでも胸がスッとしてしまうことに私が女性として抱えている憤怒と憎悪を思い知らされる。中立であることは公平や正義を担保しない。
『火星の子』
遥か未来、火星に送り込まれたクローン女性とライカ(スプートニクと共に爆死したソ連の実験動物の幽霊)、ダイモス(探査ロボット)の織り成す小話。生命賛歌とシスターフッドの温かさが何とも爽やか。
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フェミニズムを題材にして、気鋭の女性作家たちが短編を持ち寄った、韓国の小説集。察するに日本より型にはまった社会であろうに、問題意識はあくまで鋭く深い。同じ題材で日本だったらこういくかと唸らせられるほど、多様な描き方にもっと韓国文学を読みたくなった。