紙の本
摩訶不思議な魅力。
2020/07/21 15:47
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投稿者:名取の姫小松 - この投稿者のレビュー一覧を見る
怪奇な事件の謎解きに挑む由利先生と三津木。曰くありげな美少年に、好奇心の強い若い女性など、いかにもな筋立てで進むミステリ。戦前の作なので、民法での遺産相続順が違うから、と考えながら読書。
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由利・三津木シリーズ作品集第三巻。
昭和13年~14年に書かれた9作品を収録。
謎解き以上に活劇として楽しめるし、当時の世相や文化や生活も感じられて面白い。
話を盛り上げるためとは言え、由利や三津木の失敗や見逃し、後手に回る感が半端ない。
それでも表題作のガラスの棺で水葬されるシーンや『銀色の舞踏靴』の劇場内で上の客席から靴が落ちてくるシーンなど劇的な演出はワクワクさせる。
また『真珠郎』を彷彿とさせる恐ろしいまでの美少年であったり、他の作品にも影響していそうな登場人物名、片足の悪い男がやたら出てきたりと思わずニヤニヤしてしまう。
巻末の挿し絵ギャラリーも良かった。出来れば挿し絵込みで読みたかった。
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これまた名作ぞろいの一冊。豪華絢爛、百花繚乱という印象です。やっぱり美男美女(というか美少年!)が多くって耽美。そして美しくもおどろおどろしい物語に魅せられるのはもちろん、案外と犯人が分からなくて騙されました。「悪魔の設計図」って犯人当てだったのか。でもこれはなかなか当てられませんよ……動機の面がまったく思いもよらなくって。
「仮面劇場」と「双仮面」がお気に入り。やはりこういうどろどろした因縁たっぷりの物語には引き付けられます。惨劇たっぷり、そしてそれを予測させられるもったいつけた書き方(笑)もいいんだよなあ。ミステリとしてもいろいろ騙されました。先の展開が読めず、ぐいぐいとラストまで引っ張られます。
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「双仮面」一凛の薔薇、これまでの集大成のようなジュブナイル風スリラー中編です。「猿と死美人」猿と水上警察「木乃伊の花嫁」おフランス帰りとは大層なものなのか?「白蠟少年」隅田川の香水屍体事件「悪魔の家」朝鮮の悪魔除けの踊りに使う仮面「悪魔の設計図」蔦代ちゃん大活躍「銀色の舞踏靴」誌上美人投票とキチンとした性分「黒衣の人」勇気を出して秘密の帳を開きなさい、とここまで短編です。表題作「仮面劇場」本格ミステリ一歩手前の出来の良いスリラー長編で、これが一番面白かったです。水上、美少年そして香り系の話が多かったかな。
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由利・三津木探偵小説集成第3巻
この「由利・三津木探偵小説」は全体的に耽美的で外連味たっぷりです。
横溝正史の怪しい美少年といったら「真珠郎」が有名だと思うのですが、こちらの「白鑞少年」「仮面劇場」「双仮面」の青年たちもかなりのもの。全盛期の角川映画でただただ耽美に撮ったら迫力のものができただろうなあと思う…残念ながら現在感覚だと差別的な価値観もあるのでもう映画化は無理だろう…
こちらの第3集は全体的に由利先生も三津木俊助もドジが多いというか、なぜその状況で目を離したんだ?とか、犯人の目星つけてるにしては詰めが甘いというか…。
横溝正史もエッセイで「話を面白くするためには探偵が間抜けに見えてしまう」というジレンマを書いていましたが、今回も「こういう理由だから由利・三津木が失敗しても仕方ないんだよ」と二人を庇って(?)います 笑
そして現在小説では「伏線が巡らされて全てが見事に回収される」が重要視されているような傾向がありますが、この頃の小説は伏線引いた側から作者が回収していくのがなんか楽しい 笑。「怪しい人影があった」と書いてすぐに「この人影は実はこういう人で…」と教えてくれたり、「このことは読者諸君も覚えておいてほしい」などと怪しいところを教えてくれたり、このような作者と読者の対話的話の書き方というか、いきなり作者が喋りだすのは結構好きです。
【双仮面】
近頃世間を騒がしている怪盗、狙ったものは必ず盗み、後に薔薇を残すことからついた渾名が「風流騎士」。
その風流騎士に怯えるのは船成金の雨宮万造氏だった。屋敷に暮らすのは万造氏の甥の恭介と姪の千晶。
…という始まり方だったので、怪人二十面相とかアルセーヌ・ルパンの痛快怪盗紳士系かと思ったら、殺人は多いし、老富豪の若い頃が酷いし、見かけは好青年本性は残酷な若者はいるし、双子の入れ替わりだとか、怪老人だとか、アラブ系の王子だとか、劇場での立ち回りだとか、死体はどんどん増えていくし色々てんこ盛りでした。生まれ持った運命とか、遺された人とかが、ちょっと哀しい怪奇浪漫だった。
【猿と死美人】
猿とともに船で流された美女を保護した三津木俊助は、ある屋敷の秘密に迫る。
【木乃伊の花嫁】
大学教授鮎沢氏の娘京子と、弟子の鷲尾氏は婚約していた。だが二人のもとには「この婚礼は取りやめろ。京子さんは木乃伊の花嫁だ。手を触れてはならぬ」という脅迫状が届き…。
【白鑞(びゃくろう)少年】
身震いするほどの美少年なのだ。肌は蝋石のよう、ふさふさした髪、ギリシャ人のような顔立ち。そんな美少年が白木の棺に眠っている。その死体を盗み出した女は、涙ながらに復讐を誓うのだった。
【悪魔の家】
悪魔の影に怯える一家があった。その家の冷酷な主人が殺されて…。
…悪魔アクマと不気味な雰囲気だったが、なんか大袈裟な仕掛けの割には被害者以外は悪い人はいなかった。
【悪魔の設計図】
同じ入れ墨を持った女たちの死。彼女たちの近くには、女を魅了する青年の姿があった。
そしてその背後には、執念深い老���豪のたてた悪魔の計画があったのだ。
…殺し合い推奨の遺言嬢、印象的な死体の飾り方など、のちに獄門島とか犬神家でみられるような仕掛けが色々あってなかなか面白い。
【銀色の舞踏靴】
同じ銀色の舞踏靴を履いた女性たちが殺される。
…卑屈で偏狂的な男の執念が不気味。
【黒衣の人】
女優が殺された家でまた女性の死体が見つかる。女優殺しの容疑者として死んだ青年の妹は、兄の無罪を晴らそうとする。
…神秘的効果で人をその気にさせる仕掛けが面白い。
【仮面劇場】
150ページ程度の長編で波乱万丈でとても劇場的だった。耽美探偵小説として仕掛けはばっちりだし登場人物も個性的だしもっと有名になってもいいのにと思うけれど、現在だと差別と言われてしまう設定もあるので難しいのかな。
ガラスの棺に入れられて海に流された美少年。蝋人形のような肌、類まれなる美貌、しかし死んだような表情。そう、この少年、虹之助は盲聾唖者だったのだ。
大富豪未亡人の大道寺綾子は虹之助に興味を持ち保護する。だが由利麟太郎はその好奇心を警戒し「その少年は手放しなさい」と諭す。
綾子には現在お付き合いしている男性がいた。素封家甲野家の親戚であり、冒険家の志賀恭三。だが綾子が虹之助を連れて甲野家を訪れると、一家は激しく狼狽する。
そこから起こる殺人連鎖。甲野家の抱える秘密とは。勢力的で魅力的な志賀恭介と、由利麟太郎との心理戦が始まる。
…かなり劇場的だし、由利先生と志賀恭三のやり取りとか、盲聾唖者の美青年という存在感などなど、これはもっと有名になって良い小説ではなかろうか。
…とは思いつつ、結局はある人物が悪意なく余計なことばっかりしたために死体が増えてったので、「いい気なもんだ…」とも思ってしまいました。。
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戦前の時代の話だからか、権力者の家の者はピストルを簡単に所持できる。
横溝正史のお気に入りの名前なのか、「鮎」、「珠」の字を持つ登場人物は美男美女。あと「静馬」も多い。犬神家の一族にも出てきたっけ。
毒薬を所持している人多数。殺して、最後犯行がバレたときは自殺にも使う。犯人はほぼ最後に死ぬ。そして由利先生はそれを肯定的に観ている感がある。
誘拐する時に麻酔薬使う人いすぎ。
冒険感のある、サスペンス要素もあるミステリなので一気読みおすすめ。この巻はちゃんとミステリでした。