電子書籍
落としの狩野、と呼ばれた駐在員
2019/10/01 20:08
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ルカ - この投稿者のレビュー一覧を見る
神倉駅前交番駐在の狩野雷太。かつて「落としの狩野」と呼ばれた刑事だった。
狩野が解決する5つの事件が各短篇となり、それらが余韻を残しつつ連なる。
単なる推理ものではなく、人の欲望や思いやり、畏怖、葛藤等の心理描写が秀逸。表題の「偽りの春」は、心の醜さだけでなく、細やかで温かい愛情が感じられるので、一番好きだ。
紙の本
吉田一沙に持っていかれた
2020/01/31 23:33
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:usa_0814 - この投稿者のレビュー一覧を見る
かつて「落としの狩野」と呼ばれた、もと刑事の警察官によって事件が解かれていく短編ミステリ。ですが、どちらかといえば狩野は各編を繋ぐための存在で、各編は犯人の視点で語られるので、彼らが犯罪に手を染めて暴かれるまでの心情が生々しく描かれる作品です。ミステリとしての意外性もある一方で、とにかく人間の描き方が見事。
全五編の連作という体をとっていますが、後半の書き下ろし三編の完成度が高く、特に「サロメの遺言」が珠玉。主人公狩野雷太の存在どころか、物語全編を食ってしまうほど強烈な吉田一沙の個性をここまで描けるのは恐ろしいほどで、失礼な書き方をするなら、彼女を主軸にした連作にするか、書き下ろし三編で一冊の本にしてもよかったのではないかと思うほどでした。
紙の本
「スーパーおまわりさん」が追い詰める!
2022/12/07 21:16
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:higassi - この投稿者のレビュー一覧を見る
「事件は終わった」を読んで、少し前の作品も手に取ってみました。犯人も分かっているのに「スーパーおまわりさん」の狩野雷太がじわじわと(でも最短ルートで)追い詰める展開に引き込まれ一気読みでした。シリーズでもう一作あるので(朝と夕の犯罪)読んでみたいです。
投稿元:
レビューを見る
5つの短編集。
元捜査一課だった刑事が事情があって交番勤務しているが、
その人「狩谷さん」が事件を解決していく。
それぞれに人間臭さがあり、そしてどこか温かいものもあり。
とてもよかったです。
投稿元:
レビューを見る
しゃべり方からは雷太の年齢設定がピンとこないが、軽いような馴れ馴れしいような口調でグイグイ質問されたら答えざるを得ないのだろう。市民にとっては頼もしいお巡りさん。もっと読みたい!
投稿元:
レビューを見る
「神倉駅前交番狩野雷太の推理」という副題のとおり、交番の警官が地域課の特性を生かしながら、その鋭い洞察力を武器に事件を解決していく標題作を含む5つの短編。
30~40代、警官にしては長い髪の毛、にこにこというより、へらへらしてどことなく軽薄な感じ、能と言えば辛抱強くお年寄りの相手をすることくらい・・・としか見えない「交番のおまわりさん」狩野雷太。
ところが、望洋とした外見に反して、彼がのんきな調子で雑談を始めると相手はついボロを出す。
何気ない会話の中から、深い洞察力で隠された事実を見抜くだけでなく、犯人すら気づいていなかったその先の悪をも探り当てる。狩野恐るべしなのだ。
それもそのはず、狩野はかつて、「落としの狩野」と呼ばれた元刑事。ある過去を抱えて、交番勤務をする彼の秘密が、読み進むにつれて次第に明らかになるという手法は鮮やか。
5つの事件それぞれが意表を衝く展開でありながら、狩野の過去という共通する背景もあり、全体として非常にまとまりのある作品。
脇を固める県警の葉桜刑事、狩野の部下のみっちゃんこと月岡など魅力的なメンバーもあり、是非ともシリーズ化を望みます。
投稿元:
レビューを見る
ミステリ短編集。さまざまな事件を扱っていて、どちらかといえば物騒なものもあるけれど。読後はどこかしらほっこりさせられるような読み心地の作品が多いです。
お気に入りは「見知らぬ親友」。その人の受け取り方によって、見えてくるものが180度変わってしまう恐ろしさと悲しさが描かれていて印象的でした。最初からひりひりとした逼塞感とどうしようもない疑心暗鬼がつらかったのだけれど。真相がわかった後もつらい。けれど、まだ最悪の事態にならなくってよかったなあ、というところで一気に救われました。
そこから続く「サロメの遺言」も印象的。これもまた悲しい話。芸術って恐ろしいものなのかも……凡人でよかった、と思えてしまいました。
投稿元:
レビューを見る
「落としの狩野」と言われた元刑事が主人公の連作・・・なのだが、
どれも犯人視点なのが面白かったです。
5編目でそうきたかー!という感じに。
ユニットの作家さんなんですね。他のも読んでみよう!
投稿元:
レビューを見る
初めて読む作家で、名前と表紙の雰囲気から何故か男性作者だと勘違いしていたが、女性2人の共同名義らしい。
神倉駅前交番勤務の警官 狩野雷太シリーズの第1作目の短編集のようで、倒叙ミステリとの紹介を見て読み始めたのだが、自分が思っていた本格ミステリの一ジャンルとしての「倒叙ミステリ」とは違っていた。
確かに犯人側の視点で物語が進み、探偵役である警官狩野に追いつめられるのだが、犯人を落とすための犯行時のミスや逃げられない証拠などが、予め読者に明示されていないように思える。
パトロールを通した地域の情報や、会話しながら問い詰めていくのが、警察官らしいのかもしれない。
一般的な倒叙ミステリと比較すると、犯人パートの犯罪を犯すまでが長く、犯人側の心情が細かく描かれているからか、狩野の存在がとても不気味で面白いミステリだった。
特に前半2作品の「鎖された赤」「偽りの春」が好み。
投稿元:
レビューを見る
初めて読む作家さん。「降田天」という作家名は執筆担当とプロット担当、二人のユニット名だそうだ。
サブタイトルの通り、探偵役は神倉駅前交番の狩野。かつて『落としの狩野』と呼ばれる優秀な刑事だったらしいが、訳あって交番勤務へ移ったらしい。
全体的には大倉崇裕さんの福家警部補シリーズのような倒叙方式。
最初に犯人の視点から描き、何らかの理由で狩野に出会ってそこから犯人の罪があぶり出されていく。ただそれで終わりではなく、犯人も気付いていなかった新たな展開が待っているというのがワクワクさせる。
同時に読み手も見ていた景色が違って見えてきたりする。
収録されている五編のうち最後の二編は狩野が交番勤務に変わったきっかけとなる事件とその顛末が描かれている。
特に最終話はいろいろ考えさせられた。
警察が事件の犯人を逮捕し動機や犯罪の詳細を解明するまで、検察や裁判所は裁判でその詳細を明らかにし罪を決定する。
しかしそれで本当の解決とはならない。ましてや狩野が交番勤務に変わったきっかけのような事件が起きれば。
被害者側、加害者側、双方の家族(または遺族)が納得出来るような結末はない。現代のようにネットで勝手な憶測がまことしやかにあっという間に拡散してしまう社会では私刑がまかり通ってしまい、双方共に傷ついてしまうだろう。
一体何が被害者側家族にも加害者側家族にも納得し救いになるのか、難しい。
小説というよりはドラマを見ているかのような描写でテンポよく読める。
他の作品はどうなのかわからないが、機会があれば読んでみたい。
投稿元:
レビューを見る
「落としの狩野」と呼ばれた元刑事の狩野雷太。今は交番に勤務する彼と対峙するのは、一筋縄ではいかない5人の容疑者で…。表題作など全5編を収録したミステリ短編集。
2018年度日本推理作家協会賞(短編部門)作。主人公にあまり魅力は感じなかったけれど、5篇とも趣の違う短編ミステリ佳作集だった。この作者(たち)が「このミス大賞」をとった作品は低評価だった記憶があるのに、すっかり見直した。
(A)
投稿元:
レビューを見る
脛に傷持つ人物がトラブルに巻き込まれ、交番のお巡りさんと関わる羽目になる。後ろ暗い所は隠し通せると思っていたらそのお巡りさん、かつて「落としの狩野」と呼ばれた元刑事が全てを暴くという倒叙形式の短編集。それぞれ最後の締めに苦めの一捻りが効いている。児童誘拐犯の学生が語り手の「鎖された赤」や高齢者詐欺グループのリーダーの「偽りの春」が形式に則った話だけど単純な犯罪者ではない新種の薔薇を狙う園芸家の「名前のない薔薇」や同居している大学の友人に対する殺意「見知らぬ親友」の方が好み。最後の「サロメの遺言」オチは予想つくけどその後の展開が壮絶で読み応えあった。ただサブタイトルの「推理」というよりはちょっとした齟齬を見逃さないといった展開でそこはちょっと拍子抜け。
投稿元:
レビューを見る
初めての作家と思っていたら、二人の作家が小説を書くための筆名の1つとか・・他の名義人がいたりと面白いです。
本題と同じ章、・・めまいがして時刻表に寄りかかる。
パトカーから警官が・・出逢ってしまうとずんずん進んでいくストーリー。
全編はじめに犯罪者が分かってからの流れ。なんとかいう手法ですよね!
安心感があります。
投稿元:
レビューを見る
プロットや展開はすごく良いのだが、これが短編なのが勿体ない。もっと人物描写を掘り下げて長編を書いてほしい。
投稿元:
レビューを見る
交番勤務のお巡りさんが主人公。
落とし物が届いていないかやって来た大学生、バス停でバスを待っていたお年寄り…を見て、優れた洞察力で事件を見つけ出す。
主人公の捜査能力が凄すぎて、不思議な気分になった。事件自体は、色んな背景の人たちが出て来たので面白かった。