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冒頭より、本書の目的は「公務員教育プログラム」「公務員教育プログラムで扱われる行政学」の2点について国際比較を行うことにより、公務員がどのように育成されているのかを検討し、暮らしやすいまちづくりの方策を考える(要旨)…だそうである。
結論からいうと、行政を比較する手法についてはあまり記載がなく、筆者自身も本書の中で比較分析を実践しているわけではない。
前半は、アメリカ行政学の理論のざっくりとした説明が大半。合間に他国比較の視点が僅かに入る。霞ヶ関全省庁の紹介も書かれているが、特段他書と比較し目新しいものはない。第4章は、米仏加香港フィンランドにおける行政の簡単な「紹介」。ここでも比較分析は特段なされていない。
第5章は、比較行政というよりも、新潮流である「解釈論主義」の紹介となっている。設問列挙しないインタビュー方式や、参与観察法(集団に所属して集団の価値観・文化を解釈)など。科学的な仮説・観察・結論方式を批判し、多様で主観的なものを解釈しようとする立場である。政策担当者の言動の例(曖昧な表現をしながら、実際の意図は別にある)は、現実的によくある事例なので興味深かった。この章は、公務員向けに参与観察法を紹介したかった…ということか?参与観察法で複数行政組織の比較研究をするには、複数行政組織に採用される必要があり、人事的マグレで他政府への出向など経験することや、弁護士資格など特殊技能を保持し複数組織を渡り歩くなどしなければ、あまり現実的ではない気がする。