紙の本
人間社会の固有性
2023/07/09 14:37
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投稿者:K2 - この投稿者のレビュー一覧を見る
探検家と歴史家の異色の対談。現代の辺境と日本の中世に類似性を見出す。現代の日本社会とは異質で、かつ類似した社会が、時空を超えて存在していたとすれば、現代社会で共有されている価値観が、必ずしも普遍的ではないことを示す。かといって、もちろん両者が同一の社会であるはずもなく、多種多様な社会が存立することに、人間社会の固有性を見出せる。その含意は、西欧的近代の批判であろうか。
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おもしろかった!
2020/09/17 21:54
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投稿者:qima - この投稿者のレビュー一覧を見る
高野さんの本は久しぶり。いつも出だしからあっという間に引き込まれて、気がついたら全部読み終わっています。あー楽しかった!
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世界の辺境と中世
2020/02/08 15:52
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投稿者:雄ヤギ - この投稿者のレビュー一覧を見る
辺境を旅するジャーナリストと、中世日本を研究する研究者の対談本。高野さんが詳しいソマリアと室町時代の共通点が多いという理由らしいが、予想以上に面白かった。
日本ではもう中世を実感できないが、発展途上国ではまだ場所によって中世が感じられるというのは面白かった。
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20190602
清水「 中世の人も滅多なことでは多数決をやらないんですよね。だらだら話し合うことによって白黒つけない。白黒つけちゃうと、少数派のメンツを潰しちゃうことになるから。だから中を取るというか、ストレートな対立を生まないようにするというか。」
高野「みんなになじませていくという感じですよね。」
清水「 根回しですよね。それってたぶん、狭い世界で生きていくための一つの知恵なんですよね。前近代社会の意思決定の仕方としては、一番ポピュラーな形かもしれないですよね。」
p.330
近未来ニッポンに中学氏族が出現する
p.406
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面白すぎる。「辺境の怪書、歴史の驚書、ハードボイルド読書合戦」の前に出版された本。「驚きと興奮に満ちた対談本」とあるが、偽りなしと感じた。
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【二人が今も「ここ」ではない何処かを熱く追い求めていることだけは間違いないし、その熱さは十分にこの本に乗り遷っていると思う】(文中より引用)
世界の「辺境」と呼ばれるところを旅する作家の高野秀行と,日本中世の民衆の姿を生き生きと描き出す歴史家の清水克行の対談本。「ここではないどこか」を求め続ける二人の縦横無尽な対談ぶりが興味深い作品です。
ただただ知的好奇心を満たすことのできる,紛れもない「希書」と言える作品。一見したところ無関係でありそうな辺境と日本中世というテーマが,「そんなところで!」という形でつながり合っていく様は圧巻です。
続編に当たる作品も読みましたが☆5つ
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日本史は苦手だがタイトルが気になって読んだ。対談なので読みやすかった。もののふ道とか馬の価値とかも知らなかったし、宗教や国家に対する考え方も興味深かった。文庫には追章もあってお得。
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ここ最近で読んだ本で一番面白いかもしれない。
お互いが自分の専門分野に引きつけながら、結果的に日本の中世とイスラム世界が結びついていく。
対談であるがゆえに自由に展開される話題の豊富さ、そして両者の良さが見事に現れていた。
こういう対談こそ新しい価値観との出会いを生んでいく「対話」の形なんだろうな。めちゃくちゃ面白かった。
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エンタメノンフのパイオニアと、中世史研究者という異色の対談。この対談が成立するきっかけツイートをした柳下氏が解説という心憎さ。最近、日本の平安から室町・戦国時代までの本を読んでいたため、二人の会話に抵抗なく付いていけた。高野氏は世界の辺境を旅して、清水氏は史料の海の中を漕ぎ分けて、人類史に迫っていく。本当の暴力で平和を維持していた武士と、多数決という暴力的手続きで平和な世と思っている現代人という対比が新鮮だ。
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”【謎の独立国家ソマリランド/高野秀行】氏族による庇護と報復のシステムを読んでいて思い出したのが『喧嘩両成敗の誕生』(清水克行)で描かれていた室町時代の日本社会である。このふたつ、まったく同じ。”
このツイートを目にした高野秀行が清水克行の『喧嘩両成敗の誕生』を読み、直接会って話したところどんどん話題が広がって、思いもよらない角度から物事を見直してみると新たな仮説が湧いてきたりして、想像を絶するような話の展開が猛烈に面白い。
世界の辺境という地理的要因と、歴史という時間軸。
現代の日本から遠く離れたこのふたつが同じというのは、文明の進化の方向を考えるうえで興味深い。
ただ、進化=善とばかりは言えないが。
中央政府の力が弱くなってきた時に台頭してくるのが氏族という集団。
個人に何かあった時に、無条件で庇護してくれて報復してくれる。
暴力的な互助会のようなもの(?)
逆に権力者が「お国のために」と言い出したら、それはもう相当弱体化しているということなのだそうだ。
守ってくれるはずの存在が「力を貸せ」って言うってことは、そういうことだよね。
武田氏も北条氏もこの発言後衰退した。
大日本帝国も。
肝心の「謎の独立国家ソマリランド」を何年も前から読みたいと思っていながら読めずにいるうちに、「恋するソマリア」なんて続編が出てしまったけれど、本書にも続編がもう出ていた。
「辺境の怪書、歴史の驚書、ハードボイルド読書合戦」
ああ、タイトルだけでそそられる。
この中に取り上げられている「ピダハン」は吉野朔美も紹介していたなあ。
読みたい本がまた増える。
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世界各地を巡るノンフィクション作家と日本中世史を専門とする歴史家のふたりが、アフリカ・ソマリ人をはじめ、アフリカ・中東・アジア各地の文化と、室町〜江戸時代にかけての日本文化を比較したりする対談集。盗みに対する対処や、人の命の扱われ方、アジールの在り方、帰属意識の問題から、犬を食べたり食べなかったり、恋愛観の話に至るまで、ありとあらゆる各地と日本の文化の紹介・比較がされている。個人的にはコメとプランテーションからずんだ餅に話題が広がったのが、面白かったです。大変興味深いうえに、著者たちの著書の他に話の元になった参考書も多数挙げられており、特定の話題について詳しく知りたい時の助けにもなりそう。それらの本も読んでみたい。大変面白い本でした。
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以前読んだ高野氏の著書『未来国家ブータン』の中に「周回遅れのトップランナー」というブータンを称することばが紹介されていた。
今回は、著者が近年フィールドワークをしているアフリカのソマリアと室町時代の共通点を探る内容となっており、周回どころか800年の時差を超えて並走している両国(?)を、中世史専門の歴史学者と語り合っていて面白い。
ブータンの時も、UMAミゲ(雪男)を追いながら各地の伝承を紹介するが、それが日本における遠野物語的な昔話や神隠し的エピソードとも共通しているところがあり、時空を超えてヒトの所業は似てくるところがあるというのが分かる。
本書は前半は、ソマリアと室町時代の日本について、目には目をといった復讐の方法や、応仁の乱もソマリア内戦も都が戦場になったが故の長期化など、様々な共通点をあげつらうが、徐々にソマリアと室町時代を超えて、様々な土地、時代などでの相違点について、互いの知識、見識を披露し合う様が展開されていく。
歴史学者の清水が最後のほうにこう語る。
「研究者のよくないところは、自分の専門分野を中世史、近世史というふうに考えちゃうことで、お互いに相乗りしないと、時代の変わり目のことが抜けちゃうんですよね。」
この考えは、歴史を学ぶ上での心がけというだけでないだろう。
時代という時間の流れの縦軸の話だけではなく、横軸の空間的にも区切りを設けてはいけないということが、高野の豊富な辺境体験と突合することで見えてくる様々な気づきからも頷ける。
両者の広範囲の知識量、読書量にも舌を巻いた。
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「謎の独立国家ソマリランド」で有名な辺境をかけめぐるノンフィクション作家と、日本中世史を専門とする歴史学者の対談。
それだけ聞くと、「何その組み合わせ?」となるのですが、文庫カバー裏の紹介文にあるとおり、「現代アフリカのソマリ人と室町時代の日本人はそっくり!」なのだそうで。。
読んでいて感じたのは、「あぁ、面白い大学の授業ってこんな感じだったな」ということ。一本筋ではなく、むしろ脱線が本著の本質なのではというくらいに会話が脱線するのですが、それがいちいち興味深い。
対談集というのが余計に取っつきやすくさせているのですが、こういう「高い知的レベルの雑談」みたいな本、なかなか無い気がします。個人的には、仕事の後のクールダウンにはピッタリです。
しょーもない話ですが、もし若い人が入ってこなくて困っている学術分野があったら、こういう対談本を作って中学・高校に課題図書として押し込むと良いのではないでしょうか(笑
気軽に読める非常に良い本でした。
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現代日本人にとって異郷、マージナルであるソマリランドと中世日本を生きる人々には意外な共通項が?という、教養があると意外なところに知的な楽しみが見つけられてよいなと思う本。そう、価値観は1つでもないし、不変でもないということを知れるのが、歴史の勉強や、海外旅行をしたり、SFを読む最大の楽しみですよね。
ところで、タイトル、『世界の終りとハードボイルドワンダーランド』にかけてますよね?
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「今は日本の農村に行っても戦前の暮らしが垣間見えれば良い方で、とても前近代は体感できない。これから前近代史研究を志す人は世界の辺境に行ってみた方がよいかもしれない」と語られるように、世界の辺境を眺めることで日本の近代史、そして今に続く文化の形が見えてくる。