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「分解」を通して、食べること、生きること、循環について多くのことを気づかされた。この本にフレーベルの幼稚園が出てきたのには驚いた。
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好きな作家さんの本がこういうテーマに近いものが多いせいかあまり目新しさを感じなかったのと、この本のように引用や事象の羅列がほとんどみたいな構成って好みではなくて、引き込まれなかった。
カレル・チャペックの話とか要素要素では面白い話もあった。
合理化を推し進めて大量生産・大量消費を繰り返し、人間自体を消費する社会、ネグリの「帝国」(学生の頃読んだけど全く共感できない本だった、その話は置くとして)、そういうものを否定することが当然として議論が進むのが個人的にひっかかる。まだ私はそうしたくない。それはその目的に沿って正しいし、地球と私たち自身が使い捨てられるとして、その正しさは損なわれないのではないかと思ってしまう(私はそうなって欲しくはないが)。
否定しようと思えば価値観vs価値観の戦いにならざるを得ない。もしくは、人間に価値を付けてはいけないのか、いけないならそれはなぜなのかという問いに答えを出すしかないと思うが、私にはまだそれが分からない。
バタヤの項なんて結構危ういラインで話をしているなあと感じた。彼らを分解者として定義し、マルチチュード的役割を見るというのは、どうなんだろう。彼らの不安定で不衛生で犯罪に手を出す者もいる状況、ギリギリの生を生きざるを得ない成り行きは、そういう状況にない者が観念の言葉遊びで消費していいものなのか。マルチチュードの思想自体にもそんな風の地に足ついてない感じがあるが。
藤原さん自身もその懸念をちらっと書いてはいたが…現代だって似たようなことをするホームレスはいるのに自分は絶対やる気ないだろう、それなのによく言うよな、と思ってしまった。彼らは彼ら自身の生を必死で生きているのに、やれ分解者だ、帝国のシステムを食らう可能性だなどという言葉を上から被せられても、うんざりするだけだろう。バタヤの町に入った神父たちのように、その思想をもって只中に入り、自ら実践をするというなら、立派だと思うけど。
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世界は足し算ではなく、割り算引き算でできている。
つくることは、分解すること。
「時」が、「解く」から生まれるように。
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現代思想でチラッと読んだときに面白かったこと.それが一冊にまとまっていること.またサントリー学芸賞を受賞しているとのこと.まだ読み始めだけど,読みやすいし,たぶんこれまで読んできた思考は違う何かを感じさせる.
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能動態と受動態の均衡に隠されている「中動態」のような、「分解」を生産と消費のサイクルに発見するエピソードたち。
つまらないビジネス書が土台にしている、人的資本の価値増進にとって有利であり合理的であることを選び続ける、レベル上げゲームに真剣に取り組み続けること、そのドラクエ的ガバナンスの凡庸さ、退屈さ、アホらしさが「分解」の豊さを参照すると目立ってくる。
凡庸さ、退屈さは忘却に依ることは明らか、その忘れてた部分(実際に多く子供の時分に確かに経験している)を思い出させてくれる良書。
どのエピソードも素晴らしいが、蟻の街の物語はとくに面白く、情景的でもあり、印象に残る。
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分解があるから循環していく。一見ドロドロで汚そうだったり、ゴミや屑だったりするものもその後の分解、再生のプロセスの一部として必要な過程なのだと思う。死んだ後、火葬しても二酸化炭素を発生させるだけだから、土葬して微生物に分解され、還元されたいという科学者の話しは興味深かった。
少し文章が回りくどく、難解な言葉も出てくるので、理解しないまま読み進めたところがあり、機会があれば再読したいと思う。
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独特の言い回しや難しい単語も多く、理解しながら読み進めるには相当時間がかかるけれど、本当に学びしかなかった。買って、使って、壊れたら捨てて、新しいものを買うという現代人にとってあたりまえのフローに抗うことが分解者の責務だと考え、わたしは分解者になりたい。古着も、古本も、メルカリも、広義の意味では分解だと思う。フレーベル、カレルチャペック、アガンベン。あと金継ぎの歴史。江戸のエコシステムはもうちょっと個別で研究したい。一言ではまとめられないけれど、わたしは読んで考える権利を放棄しなかった。
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ところどころ難解で、単純な生物学の話だけでなく人文学やナチズム、歴史、言語学にも話が展開される。要所要所ではきちんと解説もされるが、着いていくのに必死になる。
しかし、それだけの労力を割く価値はあると思った。分解という一見知った気になっている概念を様々な現象に応用し、捉え直す。私自身まだまだ理解しきれないまま一度目の読書が終わってしまったが、また再読してみたいと思わせる、様々なヒントの詰まった一冊。
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完璧なものは、ナポリ人にとって、自分から遠い。自動的に機能する損傷のない新品は、ナポリ人にとっては根本において不気味である。それが何もしなくてもきちんとはたらくからであり、最終的にはどのように、そしてどこに向かって動くのかを一度として知ることができないからだ。
壊れたものは自分に近い。技術の本質は壊れたものの機能にある。そして、壊れた機械を扱うなかで、ナポリ人は、しかしながらすべての技術を克服し、君臨している。壊れているものの修理を通じて、そのメカニズムを体で理解して、ようやくものと深い関係が築ける、というのがナポリ人の哲学である。
完璧な機械を扱う場合、人間と機械の関係の「始まり」は生まれない。「技術」はむしろ、人間が、自分に敵対的で閉鎖的な機械のオートマティズムに拒否権を発動するところではじめて始まるのである。
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藤原さんの文章を、新聞や小誌のコラムで度々目にし、興味を持っていました。
まとまったものを読みたいと思っていたところで、自分に興味の有りそうなテーマの本と出会えたと、手に取りました。
思っていた本と違い読みこなすのが大変で自分には難しかった。しかし面白かった。思索というものはこうして広げて深めていくものなんだなぁと、あまり、考えてこなかったものの見方を教えられたように思います。
カレル・チャペックや随所に出てくる著作の引用などについての素養がないので理解がついて行かず文章世界の中になかなか入れませんでしたが、後半4章屑拾いの話、5章スカベンジャーの話、6章つくろう、ほどこす、とき、とけ…などは、興味深く読めました。
6章に出てくるスカラベについては、子供の頃願いを叶え魔を避ける力のある昆虫としてペンダントを持っていて持ち歩いたりしていたので「糞虫」と知って愕然としました。今まで知らなかったということにも…
また、2章で語られるフレーベルのことは、フレーベル社は知っていても全く知らないことばかりだったので無知を恥じつつ知ることが出来てよかったと思いました。
パンを焼いたりヨーグルトを作ったり、自分は発酵については周りの人よりは興味を持っている方だ、なんて思っていましたがこれを読むとその浅薄さに踊り出したいような恥ずかしさを感じます。
6章の「ほどく」と「むすぶ」の項を読んでいる時田口ランディさんの著書「ほつれとむすぼれ」を思い出しました。(内容はほとんど忘れてしまいましたが…)
おそらく著者の真意のほとんどを正確に汲み取れなかった読者なんだろうな(とほほ)と思うものの、時々はこのような難易度高い読書を志したいと思いました。
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縦横無尽に分解というテーマで話が進む。理解の難しいところもあったが、考えさせられる良い本だった。人はとこしえを希求してとかれることを忌避しているのだろうか。シンプルなルールを求め、逆に支配されるイリイチの道具概念にも通ずる批判を感じる。とくとむすぶの往復であることを大事にしたい。
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分解という行為を、生理的見解、修復という視点など様々な見方から扱った本。
最近Kandytownが終わらせ方の話をしていたが、通じるものがあるように感じた。
どのように人生を終わらせるのか。
新品が当たり前に良いのだという価値観は疑う価値があると確かに思った。
使い込まれることによる味や、使い込むことによる愛着は確かにある。苦労の先に得るものがあるのだ。
完璧なものは思考を停止させ、周囲のものを怯えさせる。そこには周囲のものが存在する価値がないからである。
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土に還元できない、分解できない、という視点。当たり前のような指摘であって、正面から深く考察することはなかった。日本の場合、死者は火葬するのが一般的である。つまり、土には還らない。あるいは、資本主義のもとで生産費が安価な塩化ビニールなど人工的に作り出された物質は当然ながら分解できない。生物というサイクルの中で、いかに人間だけが傲慢であるのか。人間の社会もまた、様々なものを"便利"な技術革新によって排除してきた。人とほとんど話すことなくボタン一つで商品が届いたり、自分で考えることなく答えが導き出されたり。ところが、分解とか壊れるとか、マイナスと捉えていたことをめぐっては、今まで見えてこなかったことがわかったり、あるいは偶発的に人との関わりが生まれたりなどと、そこに様々な変化が生まれる。おそらく、新自由主義と権威主義のなかでますますひどい世界になっていくなかで、(ネグリとハートに関連した議論もあったが)必要なのはこういう視点だろうなと思った。こんな視点をアカデミックに繋げて論じられる著者は凄すぎるなと。
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掃除のおじさんの話が気になり手に取った。
思っていた内容と違い、様々な「分解」を巡る話は興味深くも自分には少々難しく感じるところもあった。
ただ、今まで目を向けたり思案することのなかった内容だった為、新たな視点に気づかせてくれた良い1冊でした。