紙の本
最上質のミステリー小説のような実話
2020/12/16 21:54
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投稿者:ふみちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
とにかく面白い、読む前からイギリスで本当にあった話であると読売新聞の書評にあったので(紹介してくださった三中氏に感謝)知っていなかったら、最上級のミステリー小説として読むところだった。綺麗な羽がルアーに使われているのは知っていたが珍鳥のものが日本円にして何十万、何百万の値打ちがあることまでは知らなかった。おそらく犯人のエドウィンはアスペルガー症候群のふりをして罪を免れたのだろうが、少年時代、切手収集家だった私はよく「世界の珍しい切手という切手を手にできたらどんなに幸せだろう」と空想していた、だからあのころ、そんな切手が保管されている博物館というのがあったら、ひょっとしたら忍び込んでいたかもしれない、あのころ私はアスペルガー症候群だったのかも知れない
紙の本
飽くなき欲望の行き着く先
2019/11/10 22:33
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ゲイリーゲイリー - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書を読み、人間は自分の欲望を満たすためだけに、ここまで残酷で非情になれるものなのかと驚嘆した。
本書は3部構成となっており、第1部では鳥類と人間の歴史を分かりやすく述べている。
ヴィクトリア時代に羽根飾り帽子などのファッションのために、どれだけの鳥類が犠牲になったかという部分がとても丁寧に説明されていた。自らの美の追求と富の追求のために、ここまで盲目的になれるものなのかと驚いた。
第2部では、エドウィン・リストに焦点を当てて盗難事件の背景について説明している。
私は本書を読むまで、毛針というものを知らなかった。毛針に憑りつかれたエドウィン・リストが起こした事件の詳細もこの第2部で述べられている。
エドウィン・リストが起こした事件の突拍子のなさはもとより、事件のずさんさと動機の自分勝手さが大英自然博物館に与えた損害と全く見合っていない事実に呆然とした。第1部と第2部はいわゆる前段階で、本書の肝となるのは第3部である。
著者のカーク・ウォレス・ジョンソンは、鳥類のことや毛針のことについて何一つ詳しくないにも関わらず、盗難事件に正当な正義が遂行されていないと考え真相究明に乗り出す。その意志の強さや行動力に心底畏敬の念を抱いた。
第3部の謎が謎を呼ぶ展開や、毛針界の闇、誰にも明かされていない事件の真相などはゴールド・ダガー賞にノミネートされるのも納得の面白さだった。
このフィクション顔負けの怒涛の展開は一読の価値ありだと思う。
ミステリー、サスペンス要素以外にも博物館や文化遺産などの存在意義や、人間がどこまでも責任転換し、自らの罪を認めず己の欲望を正当化する様は読んでいて考えさせる。
「長期的な英知と短期的な私欲がぶつかる戦争で、勝ってきたのはいつも後者のほうだった。」と記述されているが、長期的な英知が飽くなき欲望に勝利することを切に願う。
紙の本
標本事件
2020/07/11 10:13
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投稿者:咲耶子 - この投稿者のレビュー一覧を見る
美しい羽根を持つ鳥が羽根の採取目的に絶滅したって話は世界各地にあるけど、これは大英博物館の鳥標本が大量に盗まれた事件の顛末。
愛好家たちの自分勝手な行動とモラルの低さにがっかり。
そして、そんながっかりエピソードを読みながら文化遺産や自然遺産の大切さを考えさせられます。
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タイトルに惹かれたが、ノンフィクションとは買った時には思っていなかった(無知)
ある標本盗難事件(解決済み)の真相、というよりは、解決の際に消えた標本を著者がインターネットを駆使して追っていく話。純粋に読み物として面白い。
ミステリっぽさもあって、和訳も読みやすい。
博物館での標本盗難が意外と多いこと、
盗む側と、その周囲の人間(本作だと領域はだいぶニッチではあるが)と、博物館や関係者、そして自然科学が好きな人たちとの認識の齟齬が未だ多いことに驚きはあった。
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音楽院のフルート奏者による鳥の標本盗難事件のノンフィクション。
1850年ごろアルフレッド・ラッセル・ウォレスは、何年もかけて命がけでマレー諸島でさまざまな生物を採取し、標本を作成した。そしてそれらはその都度英国に送られ大英博物館に買われた。
ダーウィンら科学者たちは、自然選択による進化論を確立しようとしていた。
19世紀末には珍しい鳥の羽を帽子に飾るファッションが流行し、羽毛産業が栄え大量の鳥が殺されていった。
今も毛針にとらわれた人たちは、違法だとうすうす感じながらも珍しく美しい羽を手に入れようとする。
博物館は、自然標本を収集・保存して未来につなぎ、新たな知見が得られると主張する。
標本の由来や博物館の成り立ち、毛針の歴史など分かりやすく丁寧に書かれていて、引き込まれるように読んだ。いろんな立場があるけれど、どの時代も人間の欲って深いなぁと思った。
写真で紹介されている盗難が起きたトリング博物館の外観の美しさや鳥類の仮剥製のリアルさにびっくりした。
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鳥の標本の盗難事件を扱ったノンフィクション。
『釣りに使う毛針を作るために、貴重な標本を盗む』という行為もさることながら、『こんなに簡単に盗み出せるのか』というのも衝撃だった。そして案外、バレる時はあっさりバレるのだ……と、色々と絵に描いたような展開が寧ろ面白い。これ、売る相手を選んでいれば、逃げおおせたんじゃないだろうかw 色んな意味で客は選ぶべきであるw
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原題を訳すと。ただの「羽根泥棒」となる。邦題の付けかたは、漢字16文字で推理小説を連想させるもので、購買意欲をそそらせる。もちろん推理小説ではない。学術的に貴重な鳥類の標本が、博物館から盗まれる。その羽根を、フライフィッシングで使う毛針の材料にするためだ。本事件の犯人は本の中盤で逮捕される。その後の展開が非常に面白いのだ。結局、何も解決しないのだが、人間の持つ心の闇、偏執狂、強欲といったものが、筆者によってさらさせる。
科学系の出版社からの発行であるが、よくこの本を出版してくれたものだ。感謝。
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ノンフィクションだけど、フィクションみたいな話。
タイトル通りの事件だけど、冒頭でその鳥の羽の標本をウォレスなどの学者が命がけで収集してきた事が描写されているので、それが簡単に私利私欲の為になきものにされてしまうのがあまりにも切ない。
毛針というものに魅了されてしまう気持ちも分からなくもないけれど、それでもあまりにも身勝手な行動、そして全くの反省のなさになんだか気持ち悪さを覚えた。
結局真実が解明されたとしても、羽は戻ってこない訳で、モヤモヤは残る。最後に一人の青年が改心する所だけが唯一の救いかな。
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★相容れないタコつぼの趣味の世界★鳥の標本が博物館から大量に盗まれる。一般の人には使途の想像がつかないが、観賞用の毛ばりづくりには美しい羽根がたいへんな価値を持つ。自然科学の重要性をまったく理解しない趣味の人々はは、博物館に放置されていることこそ問題だとさえとらえる。相容れない世界観を持つ人々を追いかけた。
糸口は世間ではさほど話題にならなかった窃盗事件。そこから、鳥の標本集めを通じてイギリスの植民地の歴史をたどり、鳥の羽を生かしたファッションの盛衰といった歴史をふまる。盗難事件に舞い戻り、毛ばりづくりの関係者に嫌われながらも追いかける。時間軸の深みと現実のビビッドさを縦横無尽にからめた語り口が素晴らしい。
ある分野に異常な熱量を持ったいわいるオタクにはある意味、常識が通じない。窃盗事件の犯人である学生をアスペルガー(それも曖昧な判定)という理由で執行猶予にしか問わなかった裁判所の常識もまた、世間には通じないものかもしれない。常識の在り方にもいくつも疑問を投げかける。
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面白かった
長期的な利益(標本を後世へ受け継ぐ)と短期的な利益(死蔵された美しい羽根を集める)の問題は考えさせられる
蒐集家の気持ちは分かるが、ロクに反省していない連中ばかりなので腹立つ。最後に改心した人が出たのは救いか。
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☆信州大学附属図書館の所蔵はこちらです☆
http://www-lib.shinshu-u.ac.jp/opc/recordID/catalog.bib/BB2883781X
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大英自然史博物館のトリング別館で、非常に貴重な鳥の標本が大量に盗まれた。警察が解決出来なかった事件をアメリカのジャーナリストが解く。
物凄く面白かった。ドキュメント+ミステリー。(以下若干ネタバレ)犯人は留学中のアメリカの音大生で、フライフィッシングの毛針製作で有名。盗んだ羽や鳥を高値で売っていた。しばらく事件は発覚しなかったが、ある偶然から発覚し、逮捕され裁判にかけられる。しかし執行猶予がついてしまう。(なぜかまではネタバレしない)
という所までが本の半分。以降は著者が犯人にアプローチし、盗まれた鳥の行方を追う。インターネット時代らしい捜索が新しいドキュメントだなと感じさせる。
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基本フォーマットは、タイトル通り、珍鳥の標本が大英自然史博物館から大量に盗まれるという事件の犯罪ルポ。でも、この事件、蓋を開けたら予想以上にいろいろな問題のてんこ盛り。
珍鳥の羽毛をめぐる歴史的・文化的背景から始まって、その羽毛を使って作られる毛針のマニアックな世界、毛針愛好家たちによるエゴと不法取引、絶滅危惧種保護の問題、そして博物館の存在意義まで。どれを取っても重量感があって、それだけで本が一冊書けてしまいそうな問題ばかり。これらが300ページ余りの単行本の中で次から次へと立ち現れるのだから、息つくヒマがない。
しかも、この疾走感あふれるルポを書いた著者は、これまでに犯罪調査の経験もルポライティングの経験もゼロ、鳥の生物学や博物館学についても素人だというのだから、驚愕もの。最初はちょっとした好奇心から始まった調査が、徐々に正義感に燃えるようになり、警察と裁判所が見切った事件を切り崩すに至る。著者の熱量がどんどん上がっていく様は、前述した問題のてんこ盛りと並ぶ、本書の読みどころだ。
ところで、本書の発行者は京都に本社がある科学同人社。全く知らない出版社だったのだけれど、本書に挟んであったチラシを見ると、なかなか面白そうなラインアップを揃えている。今後、要watch。
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大英自然史博物館から貴重な鳥の剥製が盗まれた実話を追ったノンフィクション。
盗み自体は、なんて事はない内容だが、共犯者の存在、盗まれた剥製の追跡など、面白い。
特異な毛針コミュニティの存在も初めて知った。
ただし、真相究明という点では若干消化不良の感あり。
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最初に標本窃盗シーンから入り、鳥受難の歴史になる。昔は帽子などファッションに鳥の羽が使われていたんですね。そしてようやく、犯人の生い立ちに入る。親がなんでもさせるという意向で、毛針づくりを始めるのだけど、フルートの練習をし、こちらはエリート校の入学が叶う。そのままで有名楽団員になれるところを軽い気持ちで毛針盗難に走る。しばらく不安になるが、すぐにいいフルートを買うために、大胆に売り始める。それでもしばらくは捕まらないのだが、数年してちょっとしたことで不信を持たれ逮捕される。それから裁判の話に移る。犯行は認めたが、精神的病気ということが通って、刑務所には入らなくすむことになる。なかなかドラマチックな展開。また熱狂的な毛針の世界の話が面白い。もう少し短くて良かった気もするが。
Amazon.com、BuzzFeed、Forbesなどで、2018年の年間ベストブックに選出! ?2019年アメリカ探偵作家クラブ賞ノンフィクション部門、 2019年英国推理作家協会ゴールド・ダガー賞ノンフィクション部門にノミネート! ?『ネイチャー』、『サイエンス』、『ニューヨーク・タイムズ』、『ウォール・ストリート・ジャーナル』などでも絶賛レビュー掲載