紙の本
林業の制度や構造の成り立ちがわかる
2019/09/10 11:23
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:akihiro - この投稿者のレビュー一覧を見る
林業が抱える問題点について、なぜそうなったのかを事実に基づいて考察しています。山主、製材業者、建築業者、森林組合、行政など、様々な立場で林業に関わる人たちの思惑が書かれていて勉強になりました。
林業の基本(植え付け〜伐採までのサイクルなど)は知った上で、業界の現状を詳しく知りたい人には良書だと思います。
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ひと頃は落ち目産業とされていたが、このところポジティブな話題が取り上げられるようになった林業。そこに文字通り冷や水をぶっかける本書。
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民間業者に皆伐を任せて、その後の再植林は義務化しないという政府の方針に暗澹たる気持ちになって手にとったが、
CLT材もバイオマスエネルギーも救世主にはならず…と本当に絶望いっぱいの内容だった。
最後にこうすれば希望が生まれるのでは、ということが書いてあるが優秀なフォレスターを育てて地道に森林に手を入れていくしかない、と言うことなのだろう。
林業が盛んなあの土地の図書館には所蔵していなかった、それはどうなんだろうと思った。もちろん再生エネルギー買取が終わって、CLT材の補助金がなくなった後のことまで考えて施策を打っていこうとされていると思うが、だからこそこう言う情報も提供していくのが図書館の役目じゃないのかなと思ったりした。
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おそらく、かなりの産業が同じ構造を抱えている。
経営の多角化、健全な森づくり、林産品の利益の出る商品化。
理念は健全な森づくり。健全に育て守る契約、認証。
そのために、投資できる多角化した経営。川上から川下まで情報を共有する、運命共同体になる、流通と生産消費の一気通貫の事業体つくり。利益を適正配分するシステム作り。
ニーズを将来的に予測することは難しいことを前提としたプロダクトアウトのニーズ掘り起し。生産量ではなく利益の最大化。
広葉樹の家具材への使用。
画一的な指導と補助金よりコーディネートを行政で。
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「現状に改善を積み重ねるフォアキャスト手法が上手くいかずに絶望させられるのなら、到達したい目標から遡り今すべき行動を考えるバックキャストの手法もあるのではないか」で始まる。
その点においては賛同。
「林業が今のままでは森林全体が不幸になる」
沢山のダメな話が紹介されているが林業って本当によその事がわからない。ここに問題がある。
「一度絶望しないとその向こうにある光も見えない」
最前線の1人として決して絶滅はしていないが改良改善と弛まない情熱と努力は必要。
「林業の要諦は間伐にあり」その通り。
「森林組合意識改革は必要。組織改革、コスト意識を持って生産性向上」
森林組合=ダメは余りにも乱暴な言い方。悔しかったらやってみせてみろとつまりは喧嘩売られた訳だ。
「理想の林業とは林木を健全に育てて利益を得るほか森林空間を有効に利用することで健康福祉や観光、そして生物多様性や防災などを両立させる林業だ。」これは藤森隆郎さんが『林業がつくる日本の森林』築地書館でも書かれている。こらには賛同。
「分散投資と多角経営」これを林業でどう実現していくか、ここからが本当の勝負!
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結局は日本の一次産業は国の補助金に頼り
切って、自己改革を押し進めることができ
ないことに尽きます。
本来、産業として発展させるのであれば、
長期的視野を持って取り組むべきもので
すが、林業もそうはなっていないようで
す。
では日本の林業はこのまま衰退し続ける
のでしょうか。
いえ、希望はあります。
むしろ、そちらをもっと取り上げて、未
来へと目を向けるべき視野を持って読む
のが正しい一冊です。
絶望している場合ではないのです。
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友人が何を思いたったのか『林業王に!!!俺はなるっ!!!』とい言い出して、東京から家族を捨てて幸福度日本一のここ福井県で林業を始めた次第で、いや、家族は捨ててませんね、M一家の繁栄と長寿をお祈り申し上げます。
さてこの『絶望の林業』。
まさに絶望感でお腹一杯です。食後のコーヒーすら喉を通りません。なんと申しましょうか、絶望の一つとして林業での事故率が全産業平均の15倍と言う安全義務の低さ、まあ、これも『習うより慣れろ』の世界で始まり、慣れる前に死んでしまう若者、おいw結果高齢者しか残っておらず、死亡者の7割が50歳以上という、うーん絶望感。
林業の救世主と言われたバイオマス燃料、セルロースナノファイバーの矛盾、補助金だらけの為に成長していかない業界、環境破壊へ繋がる伐採方法等、うーん絶望感。
しかしです。筆者は最後に『希望の林業』を提言してくれています。是非このような林業界になるよう望み、そして我らのM君ならきっと変えてくれるはずです。
ですのでM君、安全義務をしっかり遵守し、慣れる前に死んではいけません。心より成功をお祈り申し上げます。
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戦前の薪や木炭による広葉樹林需要は、広葉樹林は趣旨から自然発芽するため、苗を植える習慣が無かった。
戦後の高度経済成長期に、エネルギーが石炭、石油に代わり需要減、また建築ブームが起きたため、林を針葉樹林に転換していった。
現在の日本の林業は、投資したコスト以上のリターンを見込めず、補助金を大量投入して食いつないでいる。→成長していない。
買い手がいないから木材がだぶつき、市場価格が下がり、利益が出ず、仕事はいっぱいあるのに赤字状態。
現在、日本では木余りにより「国産材を使おう」という政策が実施されている。しかし、これは木材の質を考慮しておらず、一番高いA材(建築用)は住宅減により売れず、それ以下のB材(合板用)、C材(チップ)、D材(燃料)ばかりが売れる。そうすると山林の所有者はA材の価格低下により儲けが出ない。安定して収益が生まれる構造になっていないのだ。
間伐には「保育間伐(残した木の成長をよくする、使い道無し)」と、「利用間伐(売る)」の2つがある。間伐はオマケ行為ではない。また、列状間伐と切り捨て間伐の際、ずさんに作業すると、残った木を傷つける恐れもある。
また、木材は他の建築材料と比べても安い。それなのに、家を建てる際になんとか安くしようとすると、たいていの建て主は木材部分の単価を削ろうとする。工務店も、仕入れルートが代わり高くなるため、国産材の代わりに外材を推そうとする。国産材は取り扱いが少量になるため、色々不都合なのだ。
森林は境界線の確定が大変であり、所有者と隣の山林の所有者の協力のもと行わなければならないが、そこまでする価値がなく、放置する人が多い。
また、事故率がかなり高く、安全意識も低い。
森林組合が、とにかく補助金に依存(作業費の7割~10割)しているため、改革・カイゼンの意識が無い。また、大量の補助金によってモラルハザードを起こしている。
ほとんどの利益を伐採業者・加工業者が持っていくため、肝心の山主にはまったく利益が入らない状態だ。
建て主は木を好み、建築家は木を嫌う。
木育という、木と子供たちが触れ合うイベントが各地であるが、「木のおもちゃで遊ばせるだけ」となりがち。肝心なのは、「自然界に対する知識と自らの行動をつなげ、未来を考える訓練をすること」。
合板は、鉄筋コンクリートの基礎の型の部分や、建築部分にも多く使われるようになった。
木質バイオマス発電はCO2の排出量がゼロ(木を燃やしたときに出るCO2と、その木が吸ってきたCO2が釣り合うという理論)だが、そもそも伐採、輸送の時に化石燃料を使っているため、ゼロではない。
世界的にも日本的にも、森林面積は増えている。しかし増えているのは造林をした針葉樹林で、広葉樹林はどんどん数が少なくなっている。
【輸出】
中国向きのスギ丸太が一番輸出されている。その理由はなんと「世界一安い」から。質ではない。しかし、生育コストは「世界一高い」。また技術が低く、中国やベトナムの木材加工技術がどんどん上がっているため、ピンチ。
間伐でスギ��粉は減らない。間伐すると空いたスペースに枝葉が広がり、日光もよく当たるようになるため、切った木以上に花粉が出る。
【これからの林業を復活させるには】
・間伐材の利用を目的とした、多様な商品群の開発。付加価値を上げる。
・恒続林(定期的に間伐をし、間伐部分は自然の樹木が種子を落とし生えてくるように誘導、森を持続させていくような異年齢広針混交林)の生育
・長期的な視点で動く森林経営を支える別の収益源を持ち、分散投資と多角経営をする。
・森づくりを「森林生態系の健全化」を目標年、樹齢・樹種・製品の多様化を目指す。
一般の市場では消費者の欲しがるものを生産して提供すべき(マーケット・イン)だが、林業にはそぐわない。プロダクトアウトであるべき。それには新技術、デザイン、売り方、宣伝、営業がカギを握る。
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林業に関して知っていると思っていた観念がいい意味で全て打ち壊された。
長年の取材に裏打ちされた言説には非常に説得力がある。
要は木材自体の利益を上げるに尽きると思うが、人は意外と木へのこだわりがない気がする。いかに売れる・使ってもらえる商材へと変えていくかが今後の課題だが、ビジネス的には面白い分野だと思った。
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最後は「希望の林業」の話もちょっとだけあったけど、絶望のイメージしか残らなかった。大丈夫か日本の森林。スギヒノキはもういらないよー。
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林野庁の林業政策の問題点等を痛烈に批判しており示唆に富む。理想の林業像についても言及してるが、実現可能性については疑問も残る。
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いま、日本の林業現場で何が行われているのか?
官製“成長産業”の不都合な真実!
https://www.shinsensha.com/books/2614/ ,
http://ikoma.cocolog-nifty.com/
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絶望的な状況の林業にはたして希望はあるのだろうか?
日本における林業の絶望的な状況を多くの具体的な数値で明らかにする衝撃の作品。あまりの現実にページをめくるのがつらかった。
輸入材と国産材。安い輸入材に押されて日本の林業が苦しんでいるという考えは根本から違っていたようだ。
補助金にドップリと浸かった世界。業界に再浮上する見込みは残念ながら見つからない。環境に優しいバイオマスや太陽光発電に補助金が出るから森林を切り倒すような風潮。
日本の国土の大半は森林。実は純粋な自然林はほとんどなく人の手が入っているのが日本の里山。数千年かけて造られた国土は今後どのようになっていくのだろうか。
子のテーマはもっと掘り下げてみたい。深く考えさせられる一冊でした。
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知り合いの大工さんに
「こんなことが この国の山では…」
と お話したところ
全く、その通り!
のお話が山ほど(!)出てまいりました
それでも、僕(たち)は「木の家」を
創っていきたいのです
いきなり 暗い難しいお話をしても
なかなか人は聞いてはくれないので
こうやって 話が届いている人と
この現状を語り合いたいのです
日本には
まだ この国の山を憂いている
まだ この国の木を憂いている
人が 少ないだろうけれど
確実に いる
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そもそも林業はスパンが超長期
素材としての用途が多いために低級が売れる
長いスパンで育てたのに価格は二束三文
そもそも山の境界線がわからない
境界線の調べ方もかなり面倒
外材のほうが安く品質もいい
獣害対策や機械化は高コスト
機械化すると仕事量を増やさないと効率減
低間伐技術で他の木を傷つける
木材流通の利害関係者が多い
事故率15倍の労働環境
労災に消極的な空気感
補助金漬けゆえ補助金がないと動こうとしない
災害復旧にも出動しないことも
山主が地元にいないこともあるため無断伐採横行
木材の在庫管理がガバガバ
木育が小手先だけで無意味
合板なら安い低級木材でも可
産廃なのに未利用材と偽る業者
国産材が輸出で売れるのは安いから
ついに主伐にまで補助金が
クリーンウッド法は抜け道だらけ
むしろ林野庁が抜け道を教えている
教育機関で教えられたことが現場の先輩がしてない
耳の痛い視察アドバイスはスルーする林野庁
任期中に成果を求める林政担当者
林地は、ほかの金融資産と負の相関を持つことから、長期的には安定しており投資のポートフォリオに組み込める