投稿元:
レビューを見る
現代編と過去編が交互に進む。両者間の登場人物の当てはめがミステリ的にはポイント。リーダビリティは高く、集中すればあっという間に読める。自分としては、こんなことするのかなあ、という感じで、動機がふに落ちませんでした。
投稿元:
レビューを見る
「罪と祈り」
昭和と平成に跨るある事件。
浅草で暮らし、長年にわたり交番勤務の警察官として地域住民に慕われた濱仲辰司の死体が、隅田川に架かる新大橋の橋脚で発見された。当初は事故死と思われたが、検視で側頭部に殴られた痕が見つかり他殺と断定される。子供の頃に父親が自殺し、親代わりのような辰司の影響で警察官になった芦原賢剛は、所轄の刑事として辰司を殺した犯人を追う。一方、息子の亮輔も、父に別の顔があるのではないか?と疑っていたことから父の過去を調べ始める。すると賢剛の父・智士が自殺した頃から、辰司が変わったことが分かってくる。
この中編のキーになっているのはバブル期に横行した地上げである。地価が上昇し暴力的な手段を使った地上げにより、結果的に命を落とす人々が出ていた時代だ。地上げは暴力的ではあるが、暴力は振らない。振らないならば警察は動けない。そんなバブル期の時代を生きた昭和末期のパートが、亮輔と賢剛が辰司が殺された事件を追う現代のパートと絡みつつ進んでいく。
タイトルからすると、なんとなくハッピーエンドではないのだろうと推測される。昭和末期の時代に生きた辰司や賢剛の父・智士だけでなく、小室や江藤、彩織は、時代に飲まれたとか、義憤にかられた(一部は除く)とか、安易だとか色んな解釈が出来るだろう。結局は誰もが皆悪い。悪いのだが、すぱっと断罪も出来にくい。
特定の条件を満たす日にしか実行できないミステリの上に、昭和末期には複雑な時代背景と人間模様が加味され、その過去が現代を生きる亮輔と賢剛を揺らしていく。
簡単に答えが出せるものではないことを亮輔と賢剛の衝突が示している。正義の父や誇らしい父の消せない過去を知った二人だが、対照的な捉え方をするのだ。どちらが正解とも、言えない、分からないから、10年後に会おうとなったのだろうか。父の消せない過去の代わりに得た親友と共に、どんな解答を出すのだろうか。
投稿元:
レビューを見る
西浅草で父親同士(辰司と智士)も親友だった亮輔と賢剛。且つて交番勤務だった辰司が隅田川で他殺体として発見され、担当所轄刑事の賢剛は本庁捜査一課と組み捜査にあたる。父親の辰司が智士の自殺から気難しくなったことを知った亮輔は、今回の父親の死が、智士の自殺と関係があるのではないかと考え、独自の調査を開始する。徐々に明らかになったことは、バブル末期(昭和が終わるころ)周辺地域における大手不動産会社による地上げと、その不動産会社社員の子供の身代金誘拐事件(未検挙・子供死亡・金は不明)と西浅草出身者の育児放棄事件及びその母親の自殺が関連しており、それに辰司と智士が関わっているのではという疑惑であった。
親世代のバブル時代の話と、現代における子世代の話が交互になっており、都度気分を入れ替えながら読んだ。バブル時代を実感できる身としては、すんなり話が入ってくるが、まったくあの時代を体験していない世代にはリアリティが湧かないかもしれない。
しかし、何というか消化不良。
終盤次々と事実が明らかになってくるが、その成り行きが…。28年前で物証も無ければ仕方ないのかもしれないけど。
辰司の死亡にしても納得しにくい。今の今まで周囲の人の事を考え、苦悩を共に背負ってきたのに、行動があまりにも唐突で、逆に身勝手と思ってしまう。
ラスト亮輔と賢剛の関係も微妙で、個人的に残念な気持ちになる。
もちろんそんな話でも良いのだけど、結局家族だろうが、親友だろうが、自分以外は所詮他人であるという結果の残念さであった。
投稿元:
レビューを見る
貫井さんの最新作ということで購入。
元警察官が殺されたことをきっかけにその息子が事件解明するため、昔の事件と絡めながら、奔走していきます。
約450ページあって、ボリュームのある量でしたが、物語の世界に引き込まれ、ページをめくるのが止まりませんでした。
物語の構成は、一つは現代パートで、殺された元警察官の息子とその友人(こちらは現職刑事)が事件の解明に奔走しています。解明していくうちに様々な過去の事件に繋がっていきます。
もう一つは過去編として、殺された元警察官とその友人(現代パートでの友人の父親)が主人公です。最初は、なぜ父親が登場するの?と疑問をもっていましたが、真相が徐々に明らかとなります。なぜ自殺したのか?どう誘拐事件につながるのか明らかになります。
2つの物語が交互に進行していき、最初は別々の物語と思っていたのが、段々と色々なことがリンクしていきます。そう思った瞬間に無心になって読んじゃいました。
貫井さんの小説として、思わぬ展開・ミスリードが醍醐味なのですが、この作品もそうでした。読む進めると、こうなるんじゃないか、ああなるんじゃないかと色々推理していたのですが、全然違う方向へと進むので、次はどうなるんだろうと期待しながら、読んでいました。
後半まで、全然犯人が想像できなかったのですが、登場した瞬間、見事に騙されました。その文字が出た瞬間、思わず「えっ?」と思いました。たしかこの人って…。やっぱり貫井さんは日本語の使い方が上手いなと思いました。
ちなみに登場人物が多いので、メモしたほうが良いかもと思います。解明していくと、それが現代と過去の人との繋がりで、同一人物を線で結べます。それが気持ちいいかもしれませんし、スッキリします。
ある元警察官の殺人事件が主軸となっていますが、最終的には、様々な人間が交差したヒューマンミステリーだなという印象でした。
何かをしている最中は、それが最善と思いながら、それに向かって行動するも、後にそれが後悔となって、十字架を背負って生きていかなければならない。何か得体の知れないような感覚がガツンときて、切なかったです。
誘拐事件は、結末が分かっていたもののそれまでの過程を読み進めるにつれて、しんどいなと思いました。
前半の和気あいあいの会話が懐かしく感じます。
息子の推理力ですが、父親である警察官の血なのか、ずば抜けて良いです。一般市民なのにこれだけの情報で、真相を解明するとは、意表を突きます。また、殺人事件もそれだけで血が出る?とちょっと思いましたが、あまり深くは考えないようにしました。
全体的に切なかったですが、読み応えのある作品でした。現代パートでの二人の関係が、今後、より良くなることを願います。
投稿元:
レビューを見る
30年前に起こった二つの事件と、30年後の元警官殺し。無関係なのか、あるいは何か秘密があるのか。
元警官の息子と、警察官になったその親友。親友の父親は30年前に自殺。いくつもちりばめられたいわくありげな秘密たち。
ぼんやりと浮かび上がる怪しい人物。おそらくあいつが犯人だろう。だけどそうだとして、そもそもの事件とのかかわりは何なんだ…
30年前と今の、それぞれの幼馴染たちの付き合い、という二つの円が重なり合うとき、事件の真相が明らかになる。
バブル期の非現実的狂乱を知っている身としては、これはもしかするとどこにでもあった事件たちなんじゃないかと思えてくる。
生まれ育った土地を、出ていく者と残る者。30年の時を隔てて存在するのはヒトとヒトの「つながり」。
何度も繰り返し浮かぶ問い。「なぜ」。
とある場面で何げなく明らかになった「 」の中の言葉。その瞬間、世界が真っ白になった。
頭の中を駆け巡る30年前と今のいくつもの場面、やり取りされた言葉たち、あああぁ、そういうことだったのか。
茫然となりつつもページをめくる手が止められない。
やりきれなさの中でかすかに安堵する自分に気付く。そうだったのか。
文句なしに面白い。これぞミステリ、と自信をもってオススメできる…のだけど、いくつか気になることもありて…
投稿元:
レビューを見る
過去と現在、親たちとその子供たちが交互に描かれる。物語には引き込まれていく。面白かった。
誘拐という最悪な犯罪を犯す根拠が薄い。今は犯罪を許せないと言いながら、いつか妥協できるっぽい感じのラストはちょっと不満。
投稿元:
レビューを見る
約1年ぶりの貫井徳郎さんの新刊であり、長編としては約2年ぶりになる。帯から重そうな話であることは察せられる。実際、重いし、救いもない。貫井さんらしい大作だ。しかし、どう消化すべきか、大変困ってしまった。
元警察官の辰司が、隅田川で死亡した。息子の亮輔と、幼馴染みの刑事・賢剛は、それぞれに辰司の死の謎を追う。賢剛が4歳のとき、父・智士は自殺していた。辰司の死と、何か関係があるのか。調べるうちに、狂騒の時代の記憶が浮かび上がる。
現代とバブル時代、30年を隔てた2つの時代が、並行して描かれる。手法自体は珍しくはない。2つの時代が交錯した末に、どんな真相が明かされるのか。手練れの貫井徳郎の作品であるから、当然大きな期待を抱き、重苦しくても読み進む。
自分自身、バブルという時代の知識はあるが、当時は地方在住で、テレビの中の記憶でしかない。恩恵は受けていないが、損もしていない。だから、このようにバブルに翻弄された人々の苦悩や怒りは、理解できていないだろうし、彼らがどういう思いで決断し、覚悟を固め、実行に移したのかも決してわかるまい。
それにしてもである。やはり、短絡的と言わざるを得ない。他に手段はなかったのか? バブルを実感として知らなくても、あの出来事は鮮明に記憶している。まさかその裏で、こんな計画が。想定外のアクシデントには違いないが、もちろん事実は揺るがない。打ちのめされる面々に、同情はできなかった。
真に同情すべきは、何も知らずに育った亮輔と賢剛だろう。今回の件がなければ、知ることもなかった。知らずに死ねたらどんなによかったか。何より、刑事である賢剛は、知ってしまった事実をどう報告すればいいのか? 警視庁の上層部が、肝心の部分を隠蔽するであろうことは、容易に想像できるが…。
構成力はさすがとはいえ、感情移入は難しく、結果の重大さを考えれば、帯にあるような傑作とは言い難いのが偽らざる感想である。亮輔と賢剛は、生涯十字架を背負って生きていくのだ。あまりに罪深く、身勝手ではないか。
投稿元:
レビューを見る
貫井氏の待望の2年振り長編新作で期待し過ぎた、また貫井作品なので自然とハードルも高めに設定してしまうということもあってか厳しいが期待以下だった。
親子2代にわたる友情を丁寧に描いているのは間違いなく、その部分に関しては高評価なのだが、その他の部分が貫井作品らしくなく手薄な印象。かつプロットも甘く感じた。
同じ誘拐関連で奥田英朗の新作が大傑作だっただけに非常に残念だった。
貫井作品を愛するが故にヒドイ評価を書きましたが、勿論そこらへんの小説より十分面白いのは間違いありません。
投稿元:
レビューを見る
事件の真相が最後にわかって、犯人に同情的な気持ちになってたところに、「お前、それを死んだ子供の親の前で言えるのか。犯人にも同情すべきところがありますって、刑事のお前が被害者の前で言えるのか」の亮輔のセリフにはっとさせらました。ストーリー的にも面白かったです。
投稿元:
レビューを見る
重苦しすぎる。
貫井さんらしさがないというか、誰の作品かわからない。
同じようなテーマ、時代設定のものを最近立て続けに読んだからかだろうか。
何か納得いかないのだが。
投稿元:
レビューを見る
元警察官の殺人事件の真相を巡るミステリー小説。
死亡した元警察官の息子と28年前に自殺した元警察官の親友の息子の視点の現代パートとその警察官と親友との28年前のパートが交互に描かれる構成で、前者は犯人探しがメインで後者はクライム小説仕立てになっていてぐいぐい読ませます。
バルブの時代に翻弄された下町の人たちを描きたかったのだと思いますが、どちらも警察官の事件にかかわる動機が衝動的な感じがする点がちょっと気になり、ラストの感動がちょっと薄れた感じです。
とはいっても、昭和から併催に変わる時代感が十分に出ている力作でそれなりには面白かったです。
投稿元:
レビューを見る
警官を定年退官している亮輔の父辰治が殺された。何か過去の出来事が関係してるのではと調べ始める・・・昭和も終わろうとする頃、バブル真っ盛り。不動産屋の手先、地上げ屋が強引な手口で土地を売らせていた。辰治らが住む浅草界隈で同様だった。不動産業者に一泡吹かせようと考えて・・・
ううむ。これは巧かった。
過去の事情が段々と明らかになってゆくその感じがぞくぞくする。そしてその真相に迫ってゆく現代のパートも巧い。
大方の事情が分かりつつも、一番肝心な事はなかなか分からない。殺人の動機は何か?ラストで、そういうことだったのかと崩れ落ちた。拍手拍手。
投稿元:
レビューを見る
下町浅草界隈を舞台にした殺人事件、隅田川の存在感、誘拐事件・・・と先に読んだ奥田英朗さんの「罪の轍」と似通った背景を持つだけにこの作品の薄っぺらさが際立つ。
世の中がバブルに沸いた時代。札束で頬を叩くように土地を買いあさる開発業者、地上げの陰に泣く弱者たち、そして天皇崩御による新時代の到来というあの頃の空気感が蘇る。
下町の庶民目線で消費されるものたちの怒りを描き出す意図はわかるけれど、彼らがあの犯罪に手を染める必然性がうまく伝わって来ず、どうにも短絡的で愚かな行動にしか思えない。
バブル期の父たちの目線と、現在の息子たちの目線で交互に語られる物語は、4人の主要人物が紛らわしくて何度も前を見返し、物語に集中できない。主人公である息子たちも魅力的とは言えず、特に所轄刑事の賢剛は捜査1課の刑事への鬱屈みたいなのがいちいち面倒くさい。
帯には「貫井徳郎史上、最も切なく悲しい事件」とあるんだけど、全く感情移入できず、切なくも悲しくもない。ラストもなんだか中途半端で、この始末どうつけるのか想像にお任せなの?それとも、続編への布石?とモヤモヤ。
あ~これほど辛口になるのは貫井さんの大ファンで、久しぶりの新作に期待をしていたからです。
貫井さん、こんなもんじゃないのに~!とファンだからこその感想になってしまったのをお許しください。
投稿元:
レビューを見る
最初なかなか進まなかったけど中盤からは一気読み。
現代とバブルの頃が行ったり来たりでもう一度読もうと思ったけどめんどくさくなってやめた。
あの犯罪を思いつくってないよなあ。お金は使わないなら返そうよ。と思った。
投稿元:
レビューを見る
2世代に渡る壮大なミステリー。現在と過去を交互に語るうちに真相に近づいていくのが秀逸。公衆電話とスマホの使い方にも時代の変遷を感じた。シリーズ化はできないネタだろうけど、ぜひ次回作に期待したい。