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紙の本
ちょっと贅沢な気分になってみませんか
2020/01/21 16:45
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:夏の雨 - この投稿者のレビュー一覧を見る
芸術というのは、美術にしろ音楽にしろ文学にしろ、それがなくても生きていくのに支障はない。
それでも、もしそれらがなければ人生はまったく違う景色になるだろう。
多くの人はそのことを知っている。だから。展覧会や音楽会に足を運ぶし、本屋さんの棚を眺める。
総合誌「文藝春秋」は総合誌と呼ばれるだけあって、政治や経済、社会に芸能、実にさまざまなジャンルの情報を提供している。
もちろん、芸術もそうで、この本の初出は「文藝春秋」に掲載されている「中野京子の名画が語る西洋史」。
最近は印刷技術も進んでいて、雑誌連載もカラーページである。
この連載も贅沢で、すでに7年も連載していて、本になる予定もなかったようだ。
そのため、出版化にあたってはその中から厳選した26作が紹介され、作品ごとの導入部分では作品の一部分を拡大掲載する方法は雑誌掲載と同じだが、文章は初出時よりも3、4倍増やしているという。
それに合わせて「欲望」というくくりで章立てされ、書名もそれに合わせた形となっている。
紹介されている作品はブリューゲルの「子どもの遊び」やアングルの「グランド・オダリスク」、フェルメールの「真珠の首飾りの女」など有名な絵画もあるが、レーピンの「ヴォルガの船曳き」など初めて目にする絵画もあった。
なかでもあのドストエフスキーが46歳の時何度も通いつめたという挿話が紹介されているラファエロの「サン・シストの聖母」はよかった。
もちろん、この作品を知らなくても人生に支障はないが、やはりちょっとは得をした気分になれる。
紙の本
絵は己の感性だけで味わえば良し、との鑑賞法はいかに誤解を生みやすいか
2019/08/29 03:51
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:くりくり - この投稿者のレビュー一覧を見る
印象派などの近代以前の絵画は、絵自体に寓意があった。神話や宗教などを題材としたものはもちろん、オランダなどで盛んに描かれた庶民の暮らしを切り取った絵画も意味が込められていた。
中野京子さんの絵画の解説はそこの所をよく解説しているので、おもしろい。絵画作品の善し悪し、評価ではないところが、ぐいぐい読ませるのだ。
本書の最初で、ドラクロアの「怒れるメディア」の解説を持ってきて、本書の意図を明確にしている。「絵は己の感性だけで味わえば良し、との鑑賞法」は「いかに誤解を生みやすいかの好例」として取り上げている。ここではギリシャ神話を知らずに鑑賞すれば、まったく正反対の物語に見えるというのである。
レーピンの「ヴォルガの船曳き」は一見、船着き場に着こうとする船を着岸のために曳いていると思っていたが、何十日も川を遡って曳く過酷な労働だったと紹介。その過酷さを絵を題材に解説する。本作誕生のきっかけを紹介したエピソードにも感動した。レーピンがその過酷な労働をネヴァ川の岸辺の散策途中で知り、この状況を告発すべくスケッチを友人に見せた。友人は、レーピンに「お涙ちょうだいの絵だな、本当に彼らを知りたければヴォルガへ行くべきだ」と言ったのだそうだ。助言通り、ヴォルガに行き船曳達と知り合いになり、彼らの話に耳を傾け、一人一人の個性を知る。「貧民の黒い塊」としてみていたものが人間そのものにレーピンの目は向けられるようになる。こうした解説を読むと、よりいそう絵のすごさが伝わってくる。
ランブール三兄弟「ベリー公のいとも豪華なる時祷書」は、一五世紀前半のフランス国王シャルル五世の弟ベリー公ジャン一世の豪華絢爛な生活ぶりを描いている。この人物がどのような人かはどうでもいいのだが、「当時の室内は寒かった」として、描かれた室内の様子を紹介。バック一面に描かれたタペストリーも寒さしのぎのための必需品だったとか。美術展でも芸術作品として展示されることもしばしばだが、装飾品ではなく、実用品だったのか・・・と知るところとなった。
マセイスの「両替商とその妻」は金融都市となったアントワープの市民生活のワンシーンだ。この当時描かれていたのは悪徳両替商が暴利をむさぼる寓意を込めた絵がおおかった。はたして、この絵に描かれた両替商は良き人か悪しき人かと中野さんが推理する。
また、北方絵画はその細密描写に驚かされるが、ファン・エイクの「宰相ロランの聖母」の解説では、細密にすべて等しく描く北方絵画を「こちゃこちゃ感」と表現。まったく言い得て妙。「この世を描き尽くすぞという、絵を描く原初の喜び」が伝わってくると表している。
最近日本でも展示されたクリムト、フェルメール、ボスの絵も解説。ボスもこちゃこちゃして愉しい。フェルメールの静謐な絵から省かれたものは・・・なにか、是非本書を読んで、「そうだったのかー」と思ってもらいたい。
紙の本
欲望の最後は
2019/08/25 17:38
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投稿者:るう - この投稿者のレビュー一覧を見る
今回、一番印象的だったのはボッティチェッリの作品。
すり鉢状の地獄を描いた暗い暗い絵。
あの華やかな「春」「ヴィーナスの誕生」と同じ画家が描いたとは思えない絶望だらけの絵。
美しさ、きらびやかさを求める欲望の果ては絶望だとしたら。
そう思うとなんとも空しい。
紙の本
安定の面白さ
2019/09/25 14:32
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投稿者:ぷりしら - この投稿者のレビュー一覧を見る
中野さんの絵画シリーズは何を読んでも面白い。
ここまで著作が多いと、複数回取り上げられている絵も多いのだが
(ちょっとした既視感はあっても)マンネリ感はない。
この本も、まず絵の一部だけを見せて、その後絵の全体と解説を付するという
見せ方の工夫をしている。
紙の本
絵画
2019/09/30 18:15
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投稿者:ぽぽ - この投稿者のレビュー一覧を見る
絵画に対しての思い入れがすごいですね。理解しようと本当に勉強してらっしゃるので、作者の心情など、おもしろい。